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2018年12月16日15:45

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過去に作った随筆を投下します。「昨日習ったばかりの随筆」

「昨日習ったばかりの随筆」



かつて作成したこちらの随筆を小説のカテゴリに保管しておきます。



※ 金銭が絡まなければ使用自由。
大幅な改変等はツイッター @annawtbpollylaまで要許可申請。

自作発言は厳禁です。 ※




【本編】

 昨日習ったばかりの随筆と呼ばれるものを、早速練習してみよう。



 3限目からの大学へ向かう電車の座席で暇な時間を過ごしていた私は、そうふと思い立ち、青色の上着のポケットから携帯電話を取り出した。中々に意味が分からなくて良い。随筆をしようと思い立ち、電話を取り出すなどという行為は。

 ガタン、ガタンと音を立て、私を乗せた電車が走る。

 向かいの窓の外に見える景色は目まぐるしく交代していく。あ、ケーキ屋さん。と思えばもうそこにケーキ屋さんはない。あの漢字、何て読むのかな。と思えばもうそこには倉庫はない。

 景色の交代がゆっくりになるのは次の駅が近づく合図。それ以外の可能性はないと言って良い。そしてどんどんゆっくりになり、駅に到着するとぴたりと止まる。しばらくすると、また電車は動き出し、駅を発つ。私はこの文章を打っているため分からないが、恐らく窓の外側の景色はまた目まぐるしい交代が行われ始めている事だろう。



 ところで、先ほどは少しだけ嘘を書いた。ガタン、ガタン。そんな音は鳴っていない。しゅうぅぅぅぅ……ごとん、しゅうぅぅ……ごとんごとん。どちらかと言えばこっちの方が違い。

 ここで、老婆が近くに立っている事に気が付いた。この文章を打つために下ばかり見ていたから気づくのが遅れたようだ。いかにも不愉快そうな顔をしている。……とりあえず立って席を退こう。

 私は席を立ち、そそくさと扉の横へと移動した。あの老婆が私の厚意に応じてあの席に座ったかどうかは確認しない。あの老婆に「やっぱり最近の若い奴はダメだね。こんな目の前にお年寄りが居るのに席を譲りやしない」と思われるのを想像するだけで嫌気が差すからした事であり、別にあの老婆に座って欲しくてした事ではないからだ。私の行為は席から退いた時点で目的を達成している。

 

 その時、再び窓の外に目をやり、気づいた。この時点で私の中で結論は出ていたが、念のため色々な状況を頭の中で整理し、検算を行う。

 この景色。そして、この電車に乗ってから経った時間。ぼんやりとした記憶の中にある、先ほど止まった駅の様子。

 なるほど、どうやら私は乗り過ごしたようだ。

 初めての経験というものには失敗がつきものではあるものの、これは少々不注意が過ぎる。しかも今日は試験の日で、遅れるわけには行かないというのに。とりあえず次の駅で降り、最速で帰り電車に乗って戻ればぎりぎり間に合う。

 幸いな事に私は心配性で、この時間、この電車で乗り過ごした時の脳内予行演習は既に済ませてある。歩いて悠々と間に合う予定が、早歩きで何とか間に合うのに変わってしまうが、ただそれだけだ。



 だから反省するのはまた次の機会として、今はこの、不意にできた時間にこの文章を読み返し、適宜修正を加えるという行為に楽しみを見出す事とする。



完。
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