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2018年11月19日22:26

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徒然読書日記18-34《海うそ／梨木香歩》

《海うそ／梨木香歩》

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http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin

昭和の初め、
主人公である若い人文地理学者が
南九州の遅島を訪ねます。
亡くなった教授の残した、
未完の報告書を補完する調査のためです。
主人公は相次いで身近な人を亡くしたばかりで、
心に傷を負っての旅でした。
静かな島を覆う喪失感が、
主人公の心と響きあいます。
古来よりこの島は、
修験道の霊場として栄えてきた場所でしたが、
明治維新後、新政府の命により、
廃仏毀釈のために寺院はすべて破壊され、
同時に島の民間信仰も根絶やしにされてしまいました。
万物の形は仮のもので、
その本質は空であり、
不変のものなどありはしない。
島の時の流れに、
この世の儚さと虚しさが、
そこはかとなく感じられます。
調査を終えた主人公はこの地を離れますが、
太平洋戦争を経て50年後ふたたび島を訪れます。
そして・・・。

物語の舞台となっている〝遅島〟は、
実は架空の島なんですが、
島の湿度や気温だけでなく、
荒涼感、寂寞感、閉塞感まで、
しっかり伝わってくるように描かれています。
そのリアルさに捉えられ、
気づかぬうちに物語の世界へ、
ずるずるひきずりこまれてしまいました。
時というのは流れ去るものではなく、
積み重なっていくものなのかもしれません。
そして時は、積み重なって在るのではなく、
積み重なって消失していくものなのかも。

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