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2018年10月31日17:53

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少し訳ありな作品を朗読の台本としてアップ致します。『「おたんじょう日おめでとう。」「ありがとう。」』


※1 金銭が絡まなければ使用自由。
大幅な改変等はツイッター @annawtbpollylaまで要許可申請。

自作発言は厳禁です。 ※





※2 この作品は、本来、朗読の台本として作られたものではありませんが、作品をまとめる便宜上、ここでは朗読の台本と分類致します。

※3 朗読に要するお時間は目安として7分前後となっています。


※4 数年越しにこちらの作品に絵をつけました!リンク先のツイートにて。
https://twitter.com/annawtbpollyla/status/1389588120102850563

※5 もし良ければこちらの作品を一緒に見てくださると、より楽しめると思われます。
「怛翌と翻意。」
https://mixi.jp/view_diary.pl?org_id=1961298012&owner_id=24167653&id=1961297721




『「おたんじょう日おめでとう。」「ありがとう。」』


作・宵嵐 八倉(しょうらん やぐら)





 
 ここは、とある森。
きょうはこの森にすむ子ぎつねの、
おたんじょう日会がひらかれていました。





 子ぎつねにはたくさん友だちがいます。
おたんじょう日会にきた友だちたちは、おのおの子ぎつねにプレゼントをもちより、
ひとつの、大きなはこの中に入れていきました。





 子ぎつねの友だちのひとりの子だぬきは、
かぞくのようじで、
そのおたんじょう日会におくれてしまいました。





 子だぬきは、ごめんなさいとひとりごとを言いながら、
プレゼントのスカーフをかかえ、
子ぎつねの家へとはしります。





 しかし、どうしたことでしょう。
子ぎつねの家につき、とびらのまえでよびますが、
なかなか子ぎつねは出てきてくれません。





 ようやくとびらをあけてくれた子ぎつねは、
なぜかはわかりませんが、
ひどくおこっているようすでした。





 子だぬきは、そんな子ぎつねに、
おくれてごめん。と、こえをかけましたが、
子ぎつねは、「友だちなんていらない」と
どなってとびらを閉めてしまいました。





 子だぬきはなにがなんだかわからず、
どうしたのかと、なんども聞きつづけると、
ようやく子ぎつねはこたえてくれました。
子ぎつねは、なみだをうかべて言いました。





「みんなが はこに入れてくれたプレゼントが、
いつのまにかすべてなくなってた。
だれかがぬすんだんだ。」





 なんと、子ぎつねへのプレゼントが
だれかによってぬすまれてしまっていたのです。





 しかも、この日は、友だちの色んな動物たちが
じゆうに出入りしていましたので、
だれがぬすんだのかもわかりません。





 子ぎつねは、友だちたちが大すきでした。
なのに、だれがぬすんだのかはわかりませんが、
友だちたちのうちだれかがぬすんだのはたしかです。





 子だぬきもまた、
ふかく傷つきました。
子だぬきもまた、
友だちみんなが大すきでした。





 それからというもの、
子ぎつねは、子だぬきとも、
ほかの友だちとも、あそばなくなりました。

 



 また、いつ、だれが、
ひどいうらぎりをするか
わからないからです。





 子だぬきは、そんな子ぎつねをしんぱいするとともに、
なにやら、いやなおもいもありました。
ぬすんだのは、ぼくじゃないのに。





 しばらくすると子ぎつねは、
どういう風のふきまわしでしょうか。
むかしあそんでいたオスの動物たちとはあそばず、
メスの動物たちを新しく友だちにし、あそぶようになりました。





 それを見た、むかしからの友だちたちは、おこります。
じぶんたちとはあそばないで、なんで。
子だぬきはそれを見て、ひどくかなしくなってしまいました。





 そこからさらにしばらくして、
子ぎつねにガールフレンドができたといううわさが
子だぬきの耳にはいりました。





 子だぬきは、だいじな友だちがとられた気がして、
またさらに、ふかくおちこみましたが、
それと同じくして、うれしいという気もちに気づきました。





 あのときの友だちたちのことはもう信じられなくても、
子ぎつねにもあたらしく友だちができて、そこで楽しそうにしているのが
子だぬきにとっては、やっぱりうれしかったのです。





 しかし、またしばらくすると、
子ぎつねがガールフレンドとけんかして、
わかれてしまったと聞きました。





 子だぬきは、もう。と、ため息をつくとともに、
じぶんがなぐさめに行けないことを、
またしてもかなしむのでした。





 そうしているあいだに、子ぎつねと子だぬきが
いっしょにあそばなくなってから、
かなりのじかんがすぎていきました。





 そのあいだ、ずっと、
子ぎつねはむかしの友だちを見かけるたび、
そのむねをくるしくするのでした。





 そしてある日、
子だぬきは、かぞくのじじょうで
べつの森へと、おひっこしをすることになってしまいました。





 子ぎつねがそのことを知ったのは、
子だぬきが
べつの森にいってしまったあとでした。





 子ぎつねはそれを知ると、
いてもたってもいられず、
森をとびだしました。





 むかしの友だちや、むかしのガールフレンドから
聞き出した話をもとに、まいにちまいにち、
はしりまわって子だぬきをさがします。





 しかし、それでも子だぬきはみつかりません。
しかし、それでも子ぎつねはさがします。
いまさらあって、じぶんがなにをするつもりなのかも、わからないままに。





 なんにちも、なんにちも、
またなんにちも、なんにちも、はしりまわり、
ついに子ぎつねは、子だぬきを見つけました。





 子だぬきはおどろき、また、
その子ぎつねのぼろぼろなすがたに、おもわずあやまってしまいます。
それを見た子ぎつねは、少し笑えてきました。
そして、こんどは子ぎつねが子だぬきにあやまりました。





 すると子だぬきは、なにかを思い出したようにあわてだし、
少しまっているように言い、新しい家から
なにかをもってきました。





 それは、ずっとわたせないでいた、スカーフでした。





 それから子だぬきと子ぎつねは、
はずかしそうにしながら、
そしておだやかな笑みをうかべながら、
なにかを話しているのでした。







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