１９６０年代から半世紀のときが過ぎた。この時代はロックも黎明期で、アルバムよりもシングル・レコードがポップ・ミュージックの主流だった。今改めて聴いてみると、ヴォーカル・メロディーやコーラス・ハーモニーを重視した魅力的な曲が多いことに気づく。ビートルズをはじめとして英国勢が世界を席巻したために、ブリティッシュ・インベイジョンと言われたムーブメントの曲を再評価する。
・ 曲 バンド アルバム
�� I want to hold your hand / The Beatles [ The Beatles (best) 1963-1970 ]
時代を代表したビートルズはさすがにヴォーカルもコーラスも技術的にうまい。しかし演奏はドラムスもギターも羽のように軽かった。にもかかわらず、「こんなうるさいものは音楽じゃない」と言われたのがこの曲。今聴いてみると、少しだけ哀感があって、さすがは英国。プログレを含むすべてのロックの源流と言えるだろう。
�� Go now / The Moody Blues [ The magnificent Moodies 1964-66]
ムーディー・ブルースは最初はジャスティン・ヘイワードが加入していなかった。デニー・レインがヴォーカルとギターのフロントマンだった時期に、この曲をヒットさせた。ビートルズとも親交のあった彼らは、さすがにコーラスが豊潤だ。デニー・レインは脱退後、ポール・マッカートニーのウィングスでギタリストを務めた。
�� I've been wrong / The Hollies [ Hollies 1965 ]
この時代のビート・ポップで、私が一番好きなのは、実はホリーズだ。軽いことは他のバンドと同じだが、ともかくハイトーンのヴォーカルとハイトーンのコーラスが流麗だ。メロディー重視で陰影が深く、全員の声がビートルズよりも高め。ジョン・レノンのようなブルースっぽい曲はない。私としては元祖イエス・タイプだと言いたい。
�� Curly / The Move [ The Move the collection 1967-1970 ]
ザ・ムーヴは、ジェフ・リンとロイ・ウッドのバンドで、エレクトリック・ライト・オーケストラの前身である。軽快なポップ・センスが当時としても抜群。それでいてどことなく憂愁を含んだメロディーがずらりと並ぶ。この曲ではリコーダーを使い、バックにオーケストラ。ＥＬＯの前奏曲と言える。
�� Auntie Mary's dress shop / Tomorrow [ Tomorrow 1968 ]
トゥモローは、初期ビートルズ・タイプの軽快なビート・ポップのバンド。ドラムスが出て来ても、存在しないと思えるほどに軽い。軽いポップス風かと思えば、途中で拍子変化を見せるなど、なかなか侮れないところもある。英国風の翳りがあるのはさすが。
�� Victoria / The Kinks [ Arthur or the decline and fall of the British Empire 1969 ]
キンクスもビート・ポップの人気バンドだった。しかし１９６９年に発表された本作は、アーサー王伝説に関係するトータル・アルバムとなっている。ビートルズの「サージェント・ペパーズ」に触発され、アルバム単位で芸術性をアピール。オーケストラも使っていて、プログレまでもう一歩のところだ。軽快なメロディーだが、女性名の叙情的な曲。
�� Hung up on a dream / The Zombies [ The best of The Zombies 1968- ]
ゾンビーズは、優しい夢見るようなヴォーカルの背景に、靄がかかったようなメロトロンが流れる。この曲などメロトロン・ロックの最初期バージョンの１つだろう。このバンドは、スロー・バラードやミディアム・テンポの曲が多くて優雅。
�� Beside the fire / The World Of Oz [ The World Of Oz 1969 ]
ザ・ワールド・オブ・オズはマイナーだが、ハイトーン・ヴォーカルが、郷愁を感じさせる愛すべきバンドだ。それでいてシャープで明快。バックはオーケストラだ。１９６９年ともなると、ビート・ポップからサイケ・ポップという範疇に発展していたと言うべきかもしれない。
�� Pretty flamingo / Manfred Mann [ Abbey road NW8 1963-66]
マンフレッド・マンは、その後プログレに転じて、アースバンドで多彩な音楽性と秀逸なメロディーの名盤を残している。６０年代中盤はやはりビート・ポップで、生ギターにコーラス。オルガンも入る。
�� Imagination of Alice / Deep Feeling [ Pretty colours 1966-68 ]
ディープ・フィーリングは、艶めくようなハイトーン・ヴォーカルにバックはブラス隊。そして女性コーラスが入って、ある意味でアメリカン、あるいは歌謡曲のような親しみやすさ。ミディアム・テンポでささやくように歌う。ムーディー・ブルースのようにフルートを入れた曲もある。
[次点] In my mind lives a forest / Rainy Daze [ That Acapulco gold 1967 ]
レイニー・デイズは、これもマイナーなバンドだが、メロディーと同時にビートを重視してダンス風の曲も多い。ビートルズ・フォロワーだと思われ、バックにオルガンとコーラス。この曲では、途中で拍子変化まで見られる。
○他に候補としたバンド
Donovan,Gods, Man, Pretty Things, Syn, Warriors
以上のほかに、ＶＡアルバム（The British Invasion)所収のバンド
Yardbirds, Billy J.Kramer with The Dakotas, Spencer Davis Group, Ian whitcomb, Gerry & the Pacemakers, Thoghts, Peter & Gordon, Creation, Seekers, Sorrows, Troggs
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