もう会えない場面をふと身近に感じてしまい
立ち竦んで身体の重みを空洞に浸してから
空白を煎じつめれば再会できるのかと問う
前だけみて進む脚はいつしか折れて方向の喪失
俺を決定的に狂わせた泥沼の愛もどきは輝いて
穏やかさと激しい狂気に満ちた多幸の山頂から
転がり落ちるように感情の密林に埋めたけど
一方的に封印しながらも常時の作動と覚醒が
無意識の領域で漏洩しているのを知っている
低い気圧が眼球を圧迫して水分を濁らすから
毛穴から胸いっぱい呼吸をして風呂に投げ出す
ふやけた皮をひっぱって伸ばして蒼白な血管
浮かんでいる表面を窪んだ眼球で撫でつける
塗り替えた動作を更に加筆しながら情動を誘う
扇動する言葉を渦めかせ刻みつけることで消す
訪れずに通過する福音を忌み耳垢を掻き落とす
欠落した感情をもう一歩削った先に描く風景が
苦しみを倍加させようとも行き先がそこで待つ
罠に落ちて身動きを堰き止めてそこへ飛びたい
鎖を引き摺って心を囚われてそこで野垂れたい
涎を零れ落としだらしなく辛酸の飴を舐めたい
杭を打ち込まれ損傷された未来を泳いでいたい
もう会えない場面が思いがけずに会いにくる晩
ぼろぼろの夢の中でうなだれてたうなじに明かり
かすかに灯るように電灯の蛾が鱗粉で踊ってる
撒き散らした粉を肌に塗りたくりながら踊るのは
脱け殻の亡霊の踊り、空虚が与える刹那の生気
飛び疲れて破れることを厭わず揺らいでいれたら
赤く黄ばんだ月の余韻を墓標に胸を澱をまた開く
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