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2017年09月11日13:54

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神山征二郎「郡上一揆」(2000) 沖島勲「一万年、後…。」(2007)

 フィルムセンターは、時間だけは余裕がある私たちのような映画ファンに
とっては、時間があいたときに、ふだんなら観ないジャンルの映画を気軽に
楽しめることも魅力の一つである。たとえ「はずれ」であっても、一般料金
520円だから、散歩がわりに外出したと思えばよいし、今回のように
普段みないジャンルだからこそ、とても、上質な映画体験ができることもある。

 今回の「郡上一揆」はその大当たり!

 土屋嘉男さんの訃報があり、まだまだ土屋さんのありし日を偲ぶのは
つらく、かといって、部屋にとじこもってばかりだとよけいに淋しくなるので、
でかけたフィルムセンター。

 「郡上一揆」は、ふだん時代劇はほとんどみない私からしても、とても
丁寧に作られた、骨太の見応えのある時代劇だった。

Movie walker http://movie.walkerplus.com/mv31771/

 江戸時代に郡上で、実際に起こった、年貢の取り立てをめぐる農民の命がけ
の抵抗を、農民側の視点から描いた力作。

 自分たちの生活を守ろうとする必死の思いを、キャスト全員がとても誠実
に演じていたのが何より心に残った。主人公の定次郎(緒方直人)、助左衛門
(加藤剛)親子、知恵袋的な四郎左衛門(林隆三)、リーダー的な善右衛門
(山本圭)ほか、必死に奔走する百姓たち、自らも百姓の生まれで、
一揆を起こした農民たちを陰ながら支援する、定宿の亭主秩父屋半七
(篠田三郎)など、2000年時点で、俳優としての実力者をそろえた
だけのことはあり、農民たちの必死の思いで、スクリーンに耳目が吸い寄せ
られるような、いい映画を観るときの快感を味わった。
 緒方直人はこれまで、こんないい役者と思わなかったのだが、幼い頃より
百姓でありながら、父に「人の役にたつ人間になれ」と厳しく育てられ、
その言葉どおりに、命がけで郡上の人々を守ろうとする意志の強い「百姓」
をとても実直に演じていて心動かされた。
 訴訟に成功しても、「百姓」たちには過酷な「死」が待っている。
 地元の歴史を残しておこうとする、郡上八幡の人々の大規模エキストラなど
の協力も迫力があった。なにかと弊害の多い「製作委員会」制度だが、この
ような形で多くの人々が参加できるものなら、いい作品もできる。
 結局、要は、脚本、監督、キャストを含め、総合芸術としての「映画」
のよしあしが問題なだけだ、と強く思った。

 姫神のテーマ音楽が素晴らしかったし、全体としての音楽の使い方も、
郡上の自然にピッタリだなあ、と思ってよくみたら、音楽監督は和田薫
だった。どこまでも、私のDNAに伊福部節は染み付いているらしい(^_^;

 がらっと、雰囲気がかわって、沖島勲の「一万年、後…」
http://movie.walkerplus.com/mv43684/

 こちらは、「映画」というより「不条理劇」だろう。これも、フィルム
センターでもなkれば、ほとんどみないジャンルだ。この種の映画は、
みるその人、その時によってうけとるメッセージは違うのが当然だろう。
 私は、「神は人の最後を見守るものだ」という終わり近くのフレーズが
とても心に残った。

 阿藤快の怪演!ちょっとこの主役はほかには考えられない。

 のめり込めたわけでも、飲み込めたわけでもないのだが、不思議な映画
体験をさせてもらった。

 フィルムセンターは整理券を発行するシステムに切り替え、待ち合いの
ソファー席をほとんどなくして、座り心地のよくないパイプ椅子にかえて
しまうらしい。確かに、ソファーでの長時間の席取りや待ち合いはトラブル
も多かったし、整理券発行によって、待ち時間が減らせるのはいいかもし
れないが、それは、神保町などのように、近くに待時間をすごせる、喫茶店
や食事所があってこそ。意外と京橋はそれらがないので、「整理券を発行し
て時間まで、銀座などで時間を過ごしていただいて」という係の説明(
ちらっと聞いただけだが)はかなり無理がある。公的機関なのに?公的機関
だから?利用者のことを一番に考えてほしいものだが…



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