馬場悠男著 <NHKカルチャーラジオ 科学と人間>テキスト
日本では考えられないことだが、トルコでは最近「進化論」について教育の場で教えないことになったらしい。人間は神が創造したというイスラム教の教義に反するというのが理由らしい。その点では同じルーツのユダヤ教、キリスト教も進化論を拒否する傾向が強いようだ。「宗教」と「科学」との関係はそれだけで研究テーマになりそうだ。そんな難しいことはさておいて、現在世界中に生息している私たち人間(ホモサピエンス)がアフリカ大陸で猿人−原人−旧人−新人へと進化した後アフリカ大陸を出てユーラシア大陸に進出しそこにいた旧人を駆逐(一部交雑)して世界の大陸に広がったというのは科学的に認められたことである。
NHKのラジオ放送用に書かれた本書は、猿人・原人・旧人からホモサピエンスの出現、ホモサピエンスの世界進出などについて簡潔で分かりやすく書かれていて読みやすい。
最後の章で、人類の出現から現代文明までを見てきた著者は、「銃。病原菌・鉄」の著者J.ダイアモンドの別著「文明崩壊」の言葉を借り、過去の地域文明が地域環境を破壊し崩壊したことから現代文明も同じように環境破壊から地球規模での文明の崩壊の危機にあることを指摘している。この指摘は的を射ていると思うが、著者が現代文明が生き延びるためには身の丈サイズの生き方が必要と説き、日本人にその英知の可能性があると書いている。その点についてはバブルに狂奔しアベノミクスの欺瞞に踊った日本人にその資格があるとは到底思えないと考えるのは天邪鬼な私だけであろうか?
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