コカンボナ糧秣交付所にありて
吉田嘉七
椰子折れて倒れし道を
前線よりよろめき来たる
数名の兵をつれたる
将校の、われに頭を下げ、
給はらば我食ふならず。
一線は補給とだえて既にひと月
密林は焼き払われて
わずかに残りし青き葉はなべて喰へど、
未だ来ず、米だに、塩だに、
戦友は待ちに待てれば
かくわれら出で来しものを、
一粒にても、一かけにても得たきものをと、
ひたすらに乞える言葉や。
鋭くもわが胸をつき、煮え沸る腸の にえたぎるはらわたの
いかにとや我は答えん。
連絡は早くとだえて、
交付所とは既に名のみに、
糧秣はかげすらも無く、
今椰子の実にいのち依る身の
苦しさや、はりさけんわが心。
ああ、いかにとや我は答えん。
好みてはなど断らん。
糧秣はこれわが任なるを。
かかる間も憎さも憎し、
これ見よがしに敵機来て舞う。
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