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2017年05月10日18:58

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初めて見たもの - 吉田嘉七 『やけあと』 復員第一詩集 


初めて見たもの

      吉田嘉七

米もないでせう
金もないでせう
あなたの背負ふリュックサックも
生活の苦しみも重いでせう

だけど
女が窓から汽車にのる

生きてゆくため、食ふためには
人は何でも捨てるでせう
復員列車にわり込んで
他人の足を踏むくらい
そいつは何でもないでせう

だけど
女が窓から汽車にのる

通り道から便所まで
なるほど兵隊でいっぱいです
あなたの入る場所もない
けれどのらねばならぬとすれば
ガラスの壊れた窓しかない
これは止むを得ぬことでせう

だけど
女が窓から汽車にのる

身体も心も弾丸傷だらけ   たまきずだらけ
だうにか生きて帰つて来た
わたくしたちが日本を見る
その最初の汽車の窓から

ああ
女が窓から汽車にのる



hhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhh

吉田さんはガダルカナルとインパールを戦い抜いた部隊に所属し、
太平洋戦争初戦から敗戦の日まで陸軍主計下士官としてつとめられた方です。

サイゴンの捕虜収容所を経由して日本に復員帰還されました。

広島県大竹港に上陸され、母上の待たれる東京に帰るための復員列車でご覧になった光景を歌った詞です。

過ぎ去ったことではなく、今のことどうしてこの日記に刻みます。




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