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2016年12月23日06:32

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石原莞爾の日蓮主義

日蓮の漠然とした言葉で綴られた布教の要素は、日本が孤立と続けている間は、政治的な意味しか持ちませんでした。しかし、明治時代に入り、仏教に対して新たな関心が生まれると、仏教思想と日本のナショナリズムとを結びつける努力がなされるようになりました。日蓮の著作の多くが秘めた熱狂的なナショナリズムのために、日蓮宗は他の宗派以上に、一種の仏教ナショナリズムを作り出そうと尽力した。この日蓮復活の最前線にいたのが、布教者で元僧侶の田中智学(巴之助)(1861〜1939年)でした。田中智学は少年時代から仏教僧の訓練を受け始めたが、18歳の頃にはそれを止めました。以後、日蓮の宗教とナショナリズムを独特な形で結びつけたものの布教を目的として、様々な在家の組織の創立に生涯を捧げたのです。

日蓮が自己自身の啓示の基礎に、法華経の数章を選んでそれを拡大解釈したように、田中智学は日蓮の教説と日本の皇室を結びつけるために、立正安国論から数節を引き出した。日本の救済者たる役割を果たすべく予定されているという日蓮の信念を強調するより、むしろ田中智学は、世界の再生という日本の使命に関する日蓮の漠然とした主張に力点を置いた。田中智学は日本を成り立たせる超越道徳原則が、万世一系の皇統を通じて受け継がれたという前提から出発しています。日本には道徳的正義がこのように存在し続けてきたので、信仰を国内だけでなく世界中に普及するには、日本が中心となるのが最も理想的であると日蓮は考えたと、田中智学は主張します。こうして、国体のなかに集約される日本の基本的性格が、日蓮の教説と必然的に融合するとみなされるのです。日蓮は日本の世界的使命について語っていたので、田中智学の信者は「日本こそ本門の本尊、本門の題目、本門の戒壇」であると主張することができたのです。

こうして、国体は特定の国家の教義を越えた、道徳的世界の規範にまで高まりました。日蓮の教義をそのような限界にまで拡張したため、田中智学の信者は、もはや宗教について語っているのではなく、「日蓮主義」と称するイデオロギーについて話しているのだと認めました。その半神秘的な信条は、日蓮の最終段階でした。1914年以来、「日蓮主義」は主として、国柱会という東京に本部を置く日蓮宗系ナショナリストの組織によって広められていきました。

石原莞爾の入信を媒介したのが、この特殊な日蓮解釈でした。1919年に教育総監部勤務を命じられ、その間石原莞爾は同僚の将校と議論をし、日蓮信仰を厳しく批判されたので、日蓮に関する幾つかの本を読んだのです。翌年4月、石原莞爾は一般集会を予告する国柱会のポスターにたまたま気付いた。それは田中智学の講演を宣伝したものでした。講演会に出席して、日蓮の教えに基づき日本の世界的使命を説く田中智学の理論に、石原莞爾は感銘を受けた。数週間以内に入信し、国柱会の信行員になることを認められました。日本国柱会という在家の組織に入会したことは、石原莞爾が正式の宗教団体の一員となる一歩手前まで行ったということであり、この事実は、国柱会の活動と目標が、石原莞爾の関心に合っていたかを説明するものでした。

数年後に、石原莞爾は「日蓮聖人の国体観」が日蓮信仰に引き付けたと書いています。けれども、実際、国体観は日蓮の国体観というよりも田中智学でした。国体原理が一国だけの特殊主義であると思われることが多々あり、非常に悩まされたが、それは、神道のような特殊な宗教によって決してもちらすことのできない、普遍主義のなかに融合したとみなされたのです。自国の根本原理が世界的使命を負うだけでなく、日本軍将校としての自身の訓練と役割が、同様に世界的意味を帯びてきたのです。

そのような信仰は明らかに、石原莞爾の世界観に極めて重要な影響を与えました。その新たな視点から見れば、日蓮の国体原理と日本に押し寄せ始めた様々なイデオロギーとが、地球的規模で対決しているように見えました。日本建国の原理は海外で神聖な責務を獲得したにもかかわらず、国内では民主主義イデオロギーによって大いに脅かされています。この破壊思想の主な源はアメリカ合衆国であるので、日本の最大の敵は同国でなければならない。従って、純政治的考慮も無視できないが、そうした見方が石原莞爾の国際関係観を、特にイデオロギー的文脈のなかに位置づける効果を持ったのです。日蓮信仰が必ずしも国体の卓越性を熱烈に信じさせたわけではなく、もちろんアメリカ合衆国に憎しみを募らせるわけでもない。両者は当時の日本軍将校の多くに共通するものであったが、日蓮信者はそのなかにわずかしかいなかった。しかし、少なくとも石原莞爾にとって、日蓮主義は、全国的に疑問や欲求不満が渦巻く時代に、日本観や世界観に目的意識と信頼感を与えるのに役立ったのです。
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