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2016年12月14日23:49

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NHK『クローズアップ現代+』で取り上げられた『君の名は』

 『君の名は』の興行収入が200億円を超え、歴代邦画ランキング2位につけたとのことです。

 とにかく不思議なのは、ここまでの動きをみせるなら、ふつうは私のような門外漢にもその兆しぐらい伝わってくるはずなのに、あれよあれよというまに『シン・ゴジラ』を抜いて圧倒的な観客を動員し続けていることです。

 テレビ局の製作するしょうもない映画のどうでもいいディテールをさんざん押しつけられ、当然ながらこれっぽっちも見にいく気になんかならない状況に慣れさせられている身には、本当に異例の事態といえます。

 なんだかんだいいながら、最初の口火は口コミによったにせよ、本格的な大量動員が始まるのは、マスコミに取り上げられてからというのが、これまでの通例でした。
 たとえば、細田守監督なんかは日テレが宮崎駿の後釜に据えるべく、頑張って推しています。他局のクールの出かかりをつぶせるキラー・コンテンツとしての宮崎作品の威力が忘れられないのでしょうが、タイムシフト視聴が広まってきた現在、このやり方がどこまで有効かは疑わしくもあります。

 一方の新海誠監督は、初の長編映画『雲のむこう、約束の場所』こそ2004年、12年前の作品でキャリアは実はけっこうあるのですが、その後の3作品も含めて興行収入は1.5億円が上限だったそうです。
 あちらの業界のことは詳しくわかりませんが、興行収入は映画館の取り分も含めてのもので、製作元の売り上げである配給収入はその約半分といわれますから、とてもじゃないけど黒字にはなってないというか、よく作り続けられたものだなと思います。当時すでに熱狂的なファンがいたそうなので、グッズやDVDでなんとかトントンぐらいまで持っていけたのでしょうか。それでもなんとか資金を集められたのは、超低金利時代ゆえと思いますが。

 そして、いきなり、200億円。宮崎駿でさえ、1979年の『ルパン三世 カリオストロの城』の後、ヒット作・話題作を連発し続けて営々と25年、8作品目にしようやく至った高みにあっさり肉薄しています。

 これはいったいどういうことなのか。思いつくかぎりもっともダメな仮説としては、菊田一夫の一世を風靡したラジオドラマ『君の名は』と間違えて高齢者が足を運んだのではというものですが、本放送が1952年なのでようやく物心ついてから聴いたにしても現在70歳すぎということになり、しかも、その後でけっこう何度もドラマ化されたのに、それらは別にそれほどヒットはしていません。1991年の鈴木京香と倉田てつをによる朝ドラの『君の名は』なんか、ずいぶんな前評判でしたが、ふたを開けてみるとかなりしょんぼりな結果でした。そう考えると、鈴木京香って実はかなり茨の道を歩いて今の位置にたどりついてますな。
 いずれにせよ、勘違いで配収200憶はいきません。

 先日、NHKの『クローズアップ現代+』でこのことが取り上げられ、いくつか仮説が立てられ検証が試みられるも、結局はわからんということで匙が投げられていました。しかし、興味深い現象も報告されており、試写会を行って数十人の中高齢者に見てもらってから、一人ずつインタビューをするという、いかにもNHKらしい悠長なことをしているのですが、そうすると過去の自分の出会いや別れといった実際の体験を絡めて話をする人がとても多かったということです。
 番組ではいくつかその様子も放送されていましたが、ネットにありがちな隙あらば自分が足りというようなのもではなく(食べログを自分の日記帳にする神経がどうも私にはわかりません)、かつての自分の至らなさについて悔やむようでもあり、懐かしむようでもあり、それはそれで愛おしんだり、それまで必然だと思っていたことが実は偶然の積み重ねにすぎないと気づいたり、それこそ万感胸に迫るといった様子でした。

 思うに、かつて経験した出会いや別れについて、自分では気づいてなかった意味や視点を与えられ、心の中でその再体験を促されるような映画になっているのではないでしょうか。企画としては若年層をターゲットにした作品らしいのですが、そうなるといろいろ体験している中高年向けということになるし、きわめて個人的で内省的な部分に触れてくる映画だけに、それについて発言・発信するよりは何度も映画館に向かってくり返し鑑賞するということになっているのかもしれません。

 世界的コンテンツのゴジラをあの庵野“エヴァはどうなったんだ”秀明が監督し、評判も上々だった『シン・ゴジラ』の興収は80億円です。もちろん、これはこれで十分に素晴らしい数字ですが、一般にはほぼ無名の監督による、別にどのメディアの後押しも受けていない映画が、くり返しになりますがその2倍半の200億円です。当然ですが、ちょっとやそっとのことではこの数字にはなりません。

 興行収入を延べ入場者数と読みかえるとすると、延べ入場者数=入場者数×平均入場回数になります。マス・メディアが積極的に介在していない以上、入場者数そのものに限度があると考えるなら、平均入場者数がきわめて高い値になったのではないかという仮説が成り立ちます。
 推測ですが、新しく新海作品に触れた中高齢層の一部にかなり頻繁にリピートしている、それこそ行き倒している人たちがいるのではないでしょうか。もちろん、すでにストーリーはわかりきっているわけですけど、その人たちは映画を見ることで過去の自分の体験と対話をしているのかもしれません。仏壇に語りかけている年寄り状態ですな。

 今後しばらくの邦画のトレンドを決定づける作品ともいわれていますが、私はいまさら億劫なので、地上波で放送されたら見るつもりです。そう思って待っている『アナと雪の女王』はその兆しすらありませんが。

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