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2016年09月20日23:35

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黄金のコメディ・フェスティバル2016

 一昨日は目白へ行って『黄金のコメディ・フェスティバル2016』を観てきました。

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 1公演につき2劇団が休憩10分を挟んで45分ずつで100分、公演は3タイプあるので、計6劇団が期間中、入れ代わり立ち代わりひたすらコメディを上演し続けるイベントです。
 ちなみに45分という時間は、一日に3公演まわすため割り出された数字だとは思いますが、見る方としてもそのあたりが集中力の限界かなという気はします。上演する方としては短すぎるかもしれませんが、大きめのネタでも頑張れば収まらなくはないといったところではないでしょうか。

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 今年で4回目を迎えるこの催し、以前から興味はあったのですが、どうせなら6つの劇団すべてを観たいものの、そうなると1日ぶっ通しで観劇し続けることになり、それはさすがに体力的にしんどそうで二の足を踏んでいました。今年も開催の時期となり、別に1日で見る必要はなくて三日で1公演ずつでもいいかなと思っていたのですけど、川崎から目白へ三往復するのは、それはそれでしんどく、結局、ままよとばかりに18日の通し券をネットでポチッてスケジュールを確定させました。


 会場のシアター風姿花伝は山手線目白駅、西武池袋線椎名町駅、西武新宿線下落合駅からそれぞれ微妙に離れたところにあります。目白通り沿いにあるので場所はわかりやすいのですが、駅そのものからのアクセスはかならずしも良くありません。
 どうしようかと思っていたのですけど、目白駅の改札口から出たらちょうど前のバス停にバスが来たところで、バス停から近いとのことだったのでとりあえず乗りこんで4つめのバス停で降りたら、本当にすぐ近くで開場前に着いてしまって間を持たせるのにかえって苦心しました。

 劇場はおもちゃ屋さんの2階にあって、脇の階段をのぼってまわりこみ正面のバルコニーから受付を通って入るという不思議な作りになっています。最初はもともとおもちゃ屋さんの倉庫だったのかと思ったのですけど、だったらバルコニーが設けられているはずもなく、おそらく最初からこういう劇場だったのでしょう。
 江古田の兎亭とか、東京の北西部は住宅街の中に忽然とこういう劇場があって、やはり、独特の文化を感じます。私の知る限り、川崎市川崎区にある劇場は新川通り沿いの大衆演劇の常打ち小屋、大島劇場だけです。相互の文化の差異に瞑目するのみです。


 最初の公演の前半は劇団asif〜の『想像し創造する騒々しい宗三』でした。ここは開演前に「最近、起こったこと」や「架空の物語のタイトル」や「好きな台詞」といった項目について観客が書いた用紙を集めておき、ストーリーがあるところへくるとランダムにそれを引いてそこへ書いてある通りに演じるということをしていました。そのため、この部分は上演ごとに内容が異なります。いかにも演劇っぽい仕掛けといえますが、私が実際に体験したのはこれがまだ2度目です。意外とレアな機会といえます。
 お話の発端は、母親の過干渉(このツカミの描写がなかなか秀逸)で引きこもりになってしまった主人公の宗三がネットゲームで知り合った女性と実際に会うことになったものの、やはり、自信がなくて知り合いに代役を頼むというものです。ところがこの代役が本気になってしまい、さすがに見かねた宗三がそれを阻止すべく事実を隠したままつきまとって、なんだかんだすったもんだするという内容です。
 正体を明かせないままあれこれ働きかけなければならないという状況はコメディの基本で、そこを踏まえながら慣れた手つきで喜劇を組み立てている様子は余裕すら感じさせます。
 前述の用紙はストーリーの各所で用いられていましたが、最も頻繁に使われたのはデートの場所となった遊園地で辣腕演出家・東野シャイダー(この大会の審査員の一人である西田シャトナーをモデルにしたキャラ)と出会い、新たな演出のために手伝うくだりにおいてでした。サバンナが舞台だったのでなんとなく演者はライオンっぽくやっていたところ、手に取った用紙には「オレはゴリラだー!」とあったので、急にゴリラにならなければいけなくなっていました。

 後半はアナログスイッチという劇団の『囚われたもの達と一人の少女』です。偶然居合わせた客たちが、あるトラブルによって百貨店の一角に閉じこめられ、そこから生じるあれやこれやを描くという、まさにシチュエーション・コメディの王道中の王道、コメディ・フェステイバルと銘打っておいてこういう演目がなければ、それはちょっと問題じゃないかというぐらいのTHE王道です。
 外部との遮断が長引いてさすがに雰囲気が険悪になりかけたころ、そのうちの一人がこんな提案をします。
「第一次大戦のとき、ドイツ軍の捕虜になったフランスの兵士たちは今のようにいがみあったが、その中の一つのグループがメンバー全員で一人の少女を想像し、彼女が実際にそこにいて自分たちを見ていると思うことで自らの言動を律し、結果としてそのグループだけは終戦まで秩序を維持し続けたといいます。自分たちもそういう少女を想像してみませんか」
 いちおう賛成し、最初は手探りで少女を作り始めたものの、次第にヒートアップして、むしろ、抑制が効かなくなってくるあたりの展開はさすがです。
 架空の一点にフォーカスし、そこへの反応を態度を次々に明らかにしていくことで、各登場人物たちの内面や属性がどんどん露呈されていくという構造も、いかにもまっとうな演劇論っぽく、このまま演劇科の学生に課題として出してもいいぐらいです。
 で、よくできているのですけど、こういう場合はよくできているぶんだけ、あまり書くことがないのですな。つまらなかったら、つまらないなりに書けるのですけど、おもしろくないから書くことがないのではなくて、よくできていると書けないものなんだなと思いました。まる。

 そして、最初の公演が終わりました。私はどうしたらいいのかわからなかったので、とりあえず劇場を出て山手通りを北へと歩き、駅としては最寄りの西武池袋線椎名町駅の駅前のマルマンマートでなんとなくスナック菓子を買って戻ってきたら次の公演の開場時間になっていたので、また入場しました。

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 さて、次の公演の前半はスズキプロジェクト・バージョンファイブというグループの『TSUMI』です。キャッチコピーが「芸人が造るお笑いコメディ!」なので、この人たちは俳優さんというより、芸人さんたちなのでしょうか。たしかに、そうなのかなあという感じのお芝居ではありました。
 冒頭、シェアハウスの住人たちが集まっているところで中の一人が入ってきた女に唐突に刺し殺され、同時にすぐ時間が巻き戻ってその直前の状況で意識を取り戻します。殺された当人は当然ながらもう殺されたくないので、なんとか同じことにならないよう周囲に働きかけるのですが、それ以外は腰が引けていたり、他のことばかり気にかけていたりで、緊迫した状況にもかかわらずそのずれた感じでどんどん笑いをとっていきます。
 やがて謎の女の存在、その女がいる向かいのシェアハウスの存在とその住人、そこを訪れたこちらの住人がまるで操られたように戻ってきて当人を殺したり、また別の人物の介入などどんどん事態は複雑怪奇にからまりあっていきます。こんなもん、45分で終わるんかいといった展開をみせますが、実はかなりきっちりオチがつきます。ちょっとメタっぽく終わるので、好き嫌いはわかれるかもしれませんが、まったく有無を言わせず終わります。
 冒頭、登場人物たちの紹介があって、時間は限られているし、その割に人物は多くてどうせ憶えきれないし、明らかに無駄な気がその時はしたのですけど、実はここがかなり重要な伏線になっていて、なるほどやられたと思いました。
 ただ、オチはオチとして、ストーリーがどうというよりは、どんどん緊迫した状況に追いこんで、そこでの抜いた感じのやりとりがコメディとしてはメインな感じでして、なるほど芸人さんたちなのかなと私が思ったのは、その仕組みゆえです。
 中に、じぇーむすというすごい人がいて、この人は庵野秀明とか浦沢直樹を脱構築した芸風というか、余計なものを挟んでは収拾がつかなくなった結果、放り投げてみんながびっくりするというのが持ちネタみたいでして、いきなり劇中で「五打席連続死球を受けて死んだ衣笠をやれ」とネタを振られていました。共演者の一人が、「断ってもいいんだぞ」と声をかけていたので、ここのところは公演ごとに違うのだと思いますが、なんにせよ、独り舞台を与えられて引き下がる芸人なり俳優はいませんから受けるのですけど、これが全然できないんですよ。
「野村」
 とか口走ったりして、これは紺野あさ美の元カレで現カープのエース野村祐輔ではなくて、野村謙二郎の方だと思うのですけど、彼が監督だったのは一昨年までで昨年からは緒方孝市だし、そもそも衣笠祥雄はカープ黄金時代第一期のレジェンドで、その退団の後にノムケンが入団しているのは在団時期が重なってすらいません。そんなことをこちらが考えているうちに、早々にネタが尽きて第五打席までやらなくてはいけないはずなのに、第二打席ぐらいでうやむやになっていつの間にか本筋の芝居が再開しているのでした。

 彼のすごさを伝える能力が私にはなくて本当に申し訳ないのですけど、このくだりが異様におかしくて笑ったし、他のお客さんたちにもすごく受けていたのですが、どこがどうおかしかったかはまるで説明できません。
 話をオトすにしても、その方向性みたいなものがあると思うのですけど、この人の場合はあまりにも突拍子もなくて、素人目にもそっちじゃオチないだろうというところへすっ飛ばしていって、いろいろ試してみるけど、結局どうにもならないという、その一部始終がおかしいのです。まったく伝わっていないと思いますが。

 この後、後半の劇団ICHIGEKI☆必殺の芝居も終わり、いっしょに舞台に上がって終演後の告知をするときも、「国際線ターミナル」とか持ち出してきます。おそらく、バルコニーという言葉からターミナルを連想して、それに国際線をつけたと思うのですけど、そこからどうやったって終演後の注意事項に戻ることなんてできやしないわけで、業を煮やした演出のすずきつかさが「ICHIGEKI☆必殺さん、お願いします」と他劇団に丸投げすると、ICHIGEKI☆必殺の脚本・演出イマダトムが簡にして要を得た告知でこの件をまたたくまに片付けてしまいました。
 なんといいますか、ふだんはどんな生活をしているのか、ちょっと知りたくなる人でした。

 そして、後半の劇団ICHIGEKI☆必殺による『Z Medicine』は異色のホラーをベースにしたコメディです。新薬の治験のため、研究所のある孤島へ集められた7人の男女と研究者、そして、その製薬会社のオーナーの娘とそのお付きの女性が登場人物です。
 なんの問題もないと思われていたのですが、治験者のうちの二人がなぜかゾンビ化し、残りの人たちを襲い始めます。隔離され限定された環境のなか、全員がゾンビ化してしまうのか、それともワクチンの開発成功し生き延びることができるのか。テンパった状況で変なことをするとおもしろさが倍増するというテクニックが多用される一方、実はゾンビ化した人たちは和気あいあいとしていたりして、嗅覚が敏感になって匂いが気になるので研究所中のファブリーズを集め始めるというナンセンス展開も並行してヒートアップしていきます。
 ラストは最初えっと思うけど、ちょっと思い返してみるとたしかに劇中へ伏線がしこまれていました。ここで、「〜っぽいですね」と映画のタイトルを挙げてしまいそうになりますが、そのままネタバレしてしまうのでできませぬ。


 二つめの公演の後、私はまた劇場を出て椎名町駅前のマルマンストアへ行って食べるあてもないスナック菓子を買い、今度は山手通りをずっと下って西武新宿線中井駅まで歩くとちょうどいい頃合いになったので戻りました。
 劇場の近くにはうなぎ屋ぐらいしかなくて、他の人たちがどうやって時間をつぶしたの気になったのですけど、劇場のホームページによると目白駅方面にむけては飲食店が並んでいるそうなので、そっちへ行けばよかったみたいです。バスで通りすぎてしまったので、見落としていました。

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 最後の公演の前半はOLヴィーナスはちみつシアターの『星くず14号〜PLAY』です。かわいい劇団名にかわいいタイトル、思わずほんわかしたハートフルなコメディを思い浮かべたのですが、そんな甘っちょろいものではありませんでした。
 ある職場に採用されたばかりの新人が出勤してくるところから、お芝居は始まります。そして、新人の後から出勤してきた社員たちが全員女性なのですが、ガングロギャル(天然記念物ですな)、ヤンキー(さらに母親だったので、ヤンママ)、お嬢様、ウシジマくん(なんでやねん)、元AV嬢(この中ではなんかふつう)といったキツイ、しかも、アッパー系の人たちばかり。
 ところで、ここでキャスト表を眺めてみると、こりゃあ男の名前じゃないかなあというのが一つ。ということは、あの人はオカマさん(この表記がアリなのかすらわかりません。ダメだったら直します)なんでしょうか。見るとなかには女優が演じているのに、あえて男っぽい扮装の人もいるし、セクシャリティについてある種の葛藤というか緊張を抱えているっぽくはあるのですけど、劇中で明示的な言及はありません。それだけにまた気にはなったりするのですが。

 ここで観客に提示されていなかった、この会社がなにをするところかが次第に明らかになってきます。それは女性向け出会い系サイトのサクラなのですが、一方で新人の方も秘密を抱えていて、ここらへんのちょっとこみいった状況が解明されていくくだりはなかなかにテンポもよく、スリリングです。
 そして、その日は職場で特別なイベントが催されることになっていて、それは事前に選び出した会員を騙して東京のあちこちを走りまわらせ、最終的に夢の島へ誘導して最初に到着した会員に賭けていた社員のボーナスがオッズ倍されるというものでした。
 おもしろ半分の賭けの対象にされる会員たち、自分はそのなかでも特にどんな扱いを受けていたのかを知った主人公は……、といったあたりでなかなかハードな展開をみせます。
 今回、このコメディ・フェスティバルで上演された6つの芝居のうち、この芝居の主人公の直面させられた状況が最も過酷ではないかと思います。観ていて、おいおい、そこまでやるかと思ったほどです。もちろん、そうしないとその後の主人公のガチギレがないし、それがないとその後の大立ち回りができません。
 ここは劇団というよりは、ライヴ・パフォーマンスがメインのようで、大立ち回りのダンスシーンがおそらく最大の山場です。そこへ持っていくために逆算していくと、主人公をそれはまあむごいところまで追いこまなくてはならないという、構成の上での要請もあるのでしょうが、最もガーリーな劇団名とタイトルの作品で最も主人公がタフでハードな試練を課され、クライマックスの歌とダンスが運動量が圧倒的だったことはなにかと印象的でした。もっとも、さらに掘り下げても、「戦後、強くなったのはストッキングと女性である」みたいな陳腐にして「昭和かよ」な結論にしかたどりつけない気がするので、これ以上は考えないことにします。
 まあでも、舞台上から漂ってくる雰囲気についていえば、このグループのそれが群を抜いて体育会系っぽかったです。

 そういえば、ロビーでは各劇団のグッズ販売もしていて、ふつうはそういうものはあまりばんばん売れたりはしないのですけど、ここのチェキ券(終演後、キャストとツーショットで、あるいはキャスト全員と写真が撮れる)だけは飛ぶように売れてました。

 そして、最後の公演の後半、その日の大トリにあたったのが劇団鋼鉄村松の『MARK(x):マークエックス』です。
 クレジットカードをなくしたけれど運転免許証を持っていないから再発行が面倒で放置し、そうするとスイカにチャージできないから残高が足りなくなって出勤もせず引き籠もってアニメを見続けていたらバイトをクビになった主人公のところへ、異世界の悪の組織の女幹部が次元の壁を超えて送りこまれてきます。彼女は主人公を騙して自ら思うがまま爆発させられる首輪をつけさせ、生殺与奪の権を握って彼を奴隷にし、働かせ資金を稼がせてそれを元手にこちらの世界の支配をも目論んでいました。
 首輪は、寝坊していると電気ショックで目覚めさせ、就寝時間に起きていると麻酔を注射して規則正しい生活リズムを維持させ、食べすぎは電気ショックにより抑えて理想的な摂取量をキープ、クレジットカードやスイカにもなるのでどこかへ忘れることもなく、至れり尽くせりの機能で主人公の生活をサポートします。健康な生活を取り戻した主人公に女幹部は仕事もみつけてやり、気のいい店長や先輩に恵まれて主人公は仕事に打ちこみ、これまでにないほど充実した生活を送りました。
 無気力でだらしない主人公にとって女幹部による管理と支配は、幸せで満ち足りた毎日を送るために欠かせないものだったのです。主人公に自由の尊さを説く人もいましたが、そういう実感を伴わない言葉は彼にはピンときませんでした。しかし、こうした支配者と奴隷の幸福な関係に、やがて終止符を打たれる時がきます。
 主人公がある秘密を有していることを知った女幹部は奴隷にプライバシーはないとその開示を命令、しかし、主人公は自らの命と引き換えにしてもとそれを拒否したのです。それはしょーもなさすぎるほどにしょーもないことに端を発しているのですが、この破局はやがて全宇宙どころか全並行世界の命運を左右するほどの大騒動へ発展していくのでした。
 空間も時間も超越するほどのスケールを誇りながら、そのきっかけとなる感情はかなりダメ方向にベクトルの振れた身近といえば身近すぎる感情です。この壮大さと卑小さの対比、ズレがまずこのお芝居のコメディとしての基調をなしています。
 とはいえ、お芝居そのものが盛り上がるかどうかは、ここまで読まれた方には自明なように女幹部がどれほど魅力的かにかかっています。高飛車な態度、主人公に対する仕打ちの理不尽さ、そして、ときおり見せる女の子らしさ、その出し引きのタイミング。そして、今作の脚本・演出の人はずっと女性のそういうところを追求してきたような印象が私にはあって、今回は最高精度でその成果が発揮されていると思います。
 それにですね、演じている小山まりあさんがいいです。なんだかさん付けしちゃいましたが。小柄でかわいい声の女優さんですが、迫力があって上背のある男優陣をびしびし虐げる雄姿には惚れ惚れします。悪の組織の女幹部といえば、すでにいくつもテンプレートがあって、基本的にはそこに忠実に演じられているわけですけど、私は見ながら『ロケットマン』での役、クラリンダを思い浮かべていました。同じ俳優さんが演じているのだから当たり前ともいえますけど、勝ち気な感じとかはよく似ていると思うし、今回の女幹部のベースになったキャラクターではないでしょうか。
 『ロケットマン』はその世界観というか宇宙観に通じるものがありそうだし、直接に受け継いでいるものはないけれど、『ロケットマン』が『ニキータ』なら、『マークエックス』は『レオン』ぐらいのつながりはあるように思います。

 そんなこんなで6劇団による3公演をすべて観ると終演が21時半すぎ、帰宅するとほぼ23時でさすがに疲れました。でも、どこもそれぞれに独自色を打ち出しておもしろく、帰りの山手線と京急線では興奮でしばらく頭がぼおっとしていました。車中で、そういえば図らずも重なったこともあったよなと思ったりもして、たとえば、6作品中のうち3作品は主人公が現行の引きこもりか、最近まで引きこもっていた人でした。
 そこへの視線みたいなものもそれぞれ似ていて、頭ごなしに否定しているわけではないけれど、いずれは抜け出すべきものだし、そのためには小さなきっかけでも自分でつかんで自分で少しづつでも変わっていく、とにかく自分が気持ちを切り換えて変わる必要があるといったところでしょうか。
 昭和のドラマだと熱血先生が登校拒否の生徒のところへやってきて、「いいから来いよ」と連れ出し、ちょっといい感じの触れあいなんかあったりして、「先生、俺やっぱり明日から学校行くよ」なんて朗らかに言って、「そうか、あっはっは」みたいな終わり方をしそうですけど、やはり、時代は変わったということでしょう。
 少し前に、引きこもりの人を無理やり連れだす業者がテレビに取り上げられてプチ騒ぎになっていましたけど、荒っぽい手口もさることながら、引きこもり観のズレみたいなものが実は最大の炎上ポイントだったのかもしれません。

 さらにその3作品のうち、2作品はネット上のプロフィールを偽っていました。ここにまた、リアルとネットでのパーソナリティの乖離とかが出てくるわけですけど、このあたりが特別な問題として取り上げられているのではなく、ごく日常の一コマとして扱われているのが2016年だったのだなあと、しばらくしてから思い出すことがあるのかもしれません。

 そういう要素を入れていくと今っぽいコメディになりますが、もちろん、そうでなくてストイックにオールド・スタイルのシット・コムを目指すもいいし、飛び道具でいきなり眉間を撃ち抜くようなのもいいし、ホラーやSFとフュージョンしてみてもいいし、というか、実際にそんなバリエーションのあふれるコメディを楽しめるイベントでした。来年も行きたいけど、川崎から目白はやっぱりしんどいし、いっそ大島劇場でやってもらえませんかねえってのは、無理ですよね、やっぱり。

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