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2016年07月06日22:56

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エッセイ集461:「南シナ海から法と秩序を考える」

中国の南シナ海への海洋進出が「国連海洋法条約に違反する」としたフィリピンの国際仲裁裁判所への申し立てに対する判断がいよいよ今月12日に下されます。中国に不利な決定になることが予測され、中国はますます強硬な姿勢を見せています

中国が主張するように、「国連海洋法条約」においても領有権などの争いはまずは当事者間での平和的な解決が原則とされていますが、それができないからこそフィリピンは国際仲裁裁判所に申し立てを行ったのであり、中国も当然それに応じて仲裁裁判に参加すべきであったというのが常識的な見解と思われます。

そして中国が仲裁裁判に参加しなかったこと自体が、逆に自らが主張する「九段線」などという領海に全く根拠がないということを証明しているというのが大方の見方です。

ただ司法判断はそれが常に中立・公平なものとも必ずしも断言できません。例えば、韓国の「いわゆる慰安婦問題」においても、戦後の日韓の国家間の賠償は解決済みにも関わらず、時の韓国の裁判所の「慰安婦問題に対応しないのは韓国政府の怠慢」という判断をその根拠として韓国政府が強硬な要求を出してきたことは記憶に新しいことです。

また日本でも地方裁判所と上級裁判所で判断が分かれることも多々あります。日本には、最高裁判所判事の国民審査という直接投票制度があり、それにより司法の独走防止が形式上担保されていますが、その制度自体、司法が必ずしも常に中立・公平であるとは認めていない証左でもあります。

そういうことで、中国は国際仲裁裁判所の判断を無視し、国連海洋法条約から脱退しようとする勢いです。中国が国連下の国連海洋法条約(ただし米国は未批准)から脱退しようとするのは、北朝鮮が金正日時代に核拡散防止条約から脱退したのと似ているようにも思われます。

その「国連」自身は、理念としては普遍的な価値(自由・平等など)を含んではいますが、その英名”United Nations”の通りそのルーツは「連合国」であり、すなわち第二次世界大戦の戦勝国が築き上げた秩序です。

その秩序に乗り遅れた国は、その秩序の中では決定的な逆転はほとんど不可能です。さらにその戦勝国の中でも、中国(その実質的属国の北朝鮮を含む)やロシア(=旧ソ連)は「乗り遅れ組」です。さらにイスラム諸国は第一次大戦時からの「乗り遅れ組」であり、その一部はイスラム国(IS)と称する国連が承認しない国を作っています。

折しもその国連も改革が叫ばれており、多くの人々がその進化を願っています。しかし現在の国連(United Nations=連合国)による秩序がそうであるように、「秩序」を作るものは「力」であり、逆に言うと「秩序」は「力」に従属するものなのかも知れません。

今後の「南シナ海」の状況が「法の秩序」に支配されて推移することが期待されています。しかしそもそも「秩序」が「力」に従属するものだとすれば、それは結局、南シナ海に限定されない広範な領域での「力」関係に支配されて推移していく可能性が大きい、即ち「法は力なり」というよりもむしろ「力は法なり」という現実的な視点を持っておくことも、将来を見誤らないためには重要ではないかと思っています。

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