アクセプトの「Perpetual flow」が、music termの月間売れ筋（6/6-7/5)で、なんと第１位！
しかも、旧作の「Mebius」も４位、「Taiji」も７位に付けているではないか。
「叙情美と幻想美のプログレは、謎のバンド編成にして陰影ある英国的メロディーの洪水だ。キーボードの広大な空間に、ヴォーカルとギターが泣き叫ぶ。ハード・ロックや電子音楽まで含んだシンフォ・ロックの傑作！」
このコピーは、私が、ＳＯＷさんと綿密に打ち合わせながら書いたもの。使っていただけて嬉しい。
前回の日記で、「キーボード・オーケストレーションの壮麗な曲１０選」を選出したが、そこで掲げた１１のバンドに比べて、アクセプトのキーボード・オーケストレーションは、勝るとも劣らないほど洪水度が高い曲が多い。今回は、キーボード・オーケストレーションの壮麗な曲を中心に、「Perpetual flow」を概観する。
�� Perpetual dance（アルバム１曲め）
キング・クリムゾン「エピタフ」タイプの曲が大好きな私にとって、キーボードの轟音から始まるこの重厚な曲は、シンフォニック・ロックの美を象徴している。フルート、ハープ、生ギター、そしてピアノと多彩な音。しかし何よりも重要なのは、透明感の高いヴォーカルだ。この声とキーボード、更には男女合唱が一体となり、透明な奔流となって押し寄せる。まるで、永遠に流れる時間の河だ。
ファースト・アルバムの「永遠の少年」と対になる作品だが、ヴォーカルのシャウトやキーボードの起伏によって、よりドラマチックな作品になった。オープニングを飾るにふさわしいシンフォの名曲。
�� Beyond that hill（アルバム・ラスト１０曲め）
生ギターやフルートといったアコースティックな音響から始まって、やがてキーボードが何重にも空間を埋め尽くしていくという様式美は、アクセプトの得意とするところだが、この曲は特に圧巻。壮麗な上にも壮麗にキーボードが展開し、丘の上から遥かに見晴らす明るい光景を描き出す。
「朝靄の中に朝の光を見出すだろう。後光の中に彼が立っている。隠されていた秘密が、君の心に流れ込む。天を見上げよう。そして、自由に飛翔しよう」
何十もの爪弾かれる弦楽器群。いったいどうやってこんな音響を出しているのだろう。弦楽器の音響と合唱とキーボードが、光に包まれた荘厳な自然を現前させる。高らかに歌われるヴォーカル・メロディーがたまらずに感動的だ。
�� Bridge (War song)（アルバム２曲め）
電話音、笑い声、爆撃音、銃撃、そして、ケチャ、赤ん坊の笑い声。これらは、効果音として、曲の冒頭に用いられているというわけではない。メロディアスな男性コーラスやキーボードが展開する間を通じて、これら具象音が連続して流れている。ミュージック・コンクレートとシンフォニック・ロックの合体だ。これは、自然に聴こえるけど、ほとんど試みられたことのない音楽なのだ。
そして、キーボードは、映像を次々と映し出すかのような空間を、通低音のように作り出している。
�� As times goes by（アルバム８曲め）
この曲は、静かな曲で、枯淡でさえあるが、私が特に愛惜している曲だ。なんといっても、音による旅路の描写。幻想の旅。美しいヴォーカルに続いて、キーボードが寒い空気の流れとなって、私たちを連れ去って行く。私たちは、北風になって、森や大地の上を渡って行く。風車がまわり続け、森の精霊たちの小さなささやき声が交わされる。
キーボードも流麗だが、清澄な空気の中でギターの音色が孤独に響き渡っている。
�� When the night comes（アルバム７曲め）
「夜がやって来る」という曲名そのままに、だんだんと黄昏の闇が迫ってくる。ヴォーカルも、ここではあえて低い声で歌っている。この曲でも、笛、和太鼓、ささやき声、ガムランなど、様々な音響が効果的に使われている。キーボードは、空間の隅から隅まで、低く重厚に流れ込んでくる。夕闇は、誰の力をもってしても抵抗することができないことを表しているかのようだ。
�Α，修梁召裡偽覆砲弔い討癲�一言ずつ。どれもキーボードが魅力的。
・ To the self（アルバム３曲め）
ツイン・リード・ギターがまるでウィッシュボーン・アッシュのように叙情的な曲。ヴォーカルとギターが中心の曲なのだが、それでもバックにオルガンが鳴り続けている。
・ Hold on to your love（アルバム４曲め）
ＡＯＲ風のラブ・ソングだが、オープニングは「エピタフ」のようにキーボードの洪水。そして、曲のエンディングも洪水となって、轟音で終わる。
・ Flashback（アルバム５曲め）
キーボード中心でクラウス・シュルツェ風の前衛曲。しかし音響はむしろメシアンのような弦楽オーケストラだ。やがてドラムスの打撃音が闘争し、まるでタンジェリン・ドリームの「アテム」。こんな感性を共有するシンフォ・バンドは、かつていなかったのではないか。
・ Don't cry anymore（アルバム６曲め）
ハード・ロックのラブ・ソング。ハードだけど、メロディーが美しいので甘美なのだ。ギターが中心だが、間奏でヒサがサックスまで吹いている。後半にはキーボードが前面に押し出されてくる。
・ Snowflake（アルバム９曲め）
ヴァンゲリス風のキーボードの短い音響による叙景。この曲だけは、キーボード音が空間一杯に広がっていない。雪が静かに降ってくる点描画だ。しかしラスト近くでは、せせらぎのような音響が聴こえ、春が近づいていることを感じさせる。
○music term
http://www.musicterm.jp/
○叙情美と幻想美のシンフォ／アクセプト「Perpetual flow」 （２００４年６月８日）
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1927734943&owner_id=9666295
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