2500年にわたる仏教の流れのなかで、坐禅や瞑想の実践法を説いた経典というのは、実は、一般の人達だけでなく、仏教徒たちにもあまり知られていないものが多いようです。物語的な比喩に満ちた、大乗的な教えが広く知られているのに対して、瞑想の実践法があまり知られていないのは、いつの時代にも、瞑想の実践に関心をよせ、実践を続けるひとたちの数が少ないことを反映しているからかもしれません……。
今、手元に須田道輝著『ブッダの瞑想』というユニークな本があります。この本のなかでは、仏教僧や仏教に関心を持つ人たちの間でも、ほとんど知られることのない『解脱道論』『清浄道論』などがとりあげられています。
これらの経典は、かなり古い時代に実践されていたブッダの瞑想の数々を具体的に説かれているもので、須田氏によって、その多様な世界の一端が平易なかたちで現代に蘇ってきた感があります。
実は、意外と思われるかもしれませんが、ブッダの瞑想の中には、青、黄、赤、白などの色彩を積極的に用いる十一切入と呼ばれる瞑想のリストがあって、今日の日記のタイトルに掲げた “ニーラカシナ”も、そのなかのひとつなのです。
ニーラカシナとは、青を表すニーラと、すべて一切のものを意味するカシナからできている言葉で、つまるところ、青一色の世界に浸りきり、青とひとつになる瞑想といったところです。(オーラソーマに親しんでいらっしゃる方は、青色の球体に包まれる瞑想をご存知だと思いますが、実は、この球体に包まれるという観想法は、阿字観や月輪観とも深い関係があるようです)
禅において課される無字の公案と呼ばれる基本的な瞑想課題では、「ムー」という音とひとつになり、最終的にはそのムーの音すら超えてゆくプロセスを辿ることになりますが、この古代仏教の観想法ニーラカシナでは、色彩の世界を超えてゆくためにあえて色彩を積極的に使ってゆきます……青によって青の世界を超えてゆくということになります……。
問:青色一切入とはなんであるか
答:この心青相によるがゆえに、青色一切入という。
心を乱すことなく、そこにとどめておくことである。
これを修という」(行門品第八の二)
――限りなきブルーが四方八方に満ち渡り、どこまでも広がってゆく――
「青一切入を観ずれば、世界全体に周満す」(行門品第八の二)
――最初は、ブルーを見る私と見られるブルーの間に区別があったのが、瞑想が深まりにつれて、ただただ、ひたすらのブルーのなかに溶け去ってゆく……ブルーの広がりと共に、限りない静寂(しじま)が降りてくる……
「新学の坐禅瞑想者は、青色の相をはっきり自覚するために、曼荼羅をつくって 修習するがよい」(行門品第八の一)
『清浄道論』には、初心者が青色とひとつになる瞑想に入ってゆくための手がかりとして、まずは青色の曼荼羅をつくり、それに瞑想をすることを勧めているのですが、大きさや、形については「円形の大きさは篩の大きさ、または大皿の大きさの相」と説いています。(たぶん月輪観は、黄色一切入と関連があるのかもしれません)
瞑想の坐を組む、周囲2.6メートル四方をきれいに掃除し、清めたあと、青色の花や布、あるいは青い顔料を入れた泥を練って、円相曼荼羅をつくりあげ、曼荼羅ができたら、曼荼羅から遠くもなく、近すぎもしない位置、約1.3メートルほど離れたところに座具を引いて、曼荼羅を凝視するポジションを取ります。
こうしてみると、OSHOのグリシャンカール瞑想というのは、現代に蘇り、新たにアレンジされた、ブッダのニーラカシナだと言ってもよいかもしれないという思いがよぎったりもします……
OSHOグリシャンカール瞑想
http://www2u.biglobe.ne.jp/~ocean/healingshop/cd&book/cd/meditation.cd/gourishan.html
ちなみに、宇宙が誕生して10億年ほど経った頃の宇宙には、銀河の種子、銀河の卵たちと呼ばれるプレ銀河が散らばっていたようです……今はよく知られている渦巻銀河や楕円銀河のような形もまだ定まらず、サイズも今の銀河と比べるとかなり小さかったようですが、特筆すべきことは、それらがみな一様にブルーに輝いていること……
地球から100億光年以上離れたあたりに、その青い銀河の種子たちは集まっているそうですが、誕生してまもない頃の銀河がすべてブルーだったというのは、感慨深いものがあります。
現在の宇宙に散らばる銀河や星雲が、めくるめく色彩にあふれており、ほとんど極彩色の宝石を散りばめたようであることは、宇宙空間の映像を特集している科学雑誌のグラビア写真を見ると、一目瞭然なのですが、これらの多様な色の銀河もみな、ひとえの広大無辺なブルーの海から生まれてきたと思うと、何かが止ってゆくような気配を感じます……。
1億年咲き続けた生命
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=13032650&owner_id=64170
ログインしてコメントを確認・投稿する