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2009年10月26日04:17

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佐野眞一『東電OL症候群(シンドローム)』

昨日家に引き篭もっていて、186ページあたりから一気に読み終えた。全443ページの文庫本。

日本社会の深い闇を感じてしまう。ここ2〜3週間に起こった俺の出来事も、その闇の中にあることを実感させられた。東電OLの存在、孤独な女性の存在がリアルに感じられてしまった。



「女性読者からの手紙」の紹介(53〜54ページ)をいくつか引用。

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人間は、あそこまで堕落できるのか。いや自分自身を貶めることができるのか。被害者が哀れで、あまりの純粋さに、泣けて仕方がなかった。


私は渡辺泰子さんのとった行動が異常なことだとは思いません。私もきっと何かがあればこうなるかもしれないと思うからです。


人間というものは生きていく上で色々なトラウマをかかえて、それにしばられているんだなという感じを強く受けました。


国家権力の恐ろしさと闇の深さが逆説として浮き上がって来ます。泰子さんは死を通してゴビンダ氏の存在を借り、そのことを言いたかったのだと思わずにはいられません。


私も泰子さんほどではありませんが、死んだ父が大好きでした。泰子さんには男根幻想のようなものがあったんじゃないでしょうか。

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207ページ
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「シンデレラ物語の裏側――東電OL殺人事件を読み解く」というシンポジウムが開かれた。(中略)そこでいまさらながら実感させられたのは、メルトダウンする一方のこの国の状況を最も敏感に肉体で感じとっているのは女性たちだな、ということだった。

(中略)

父親から性的虐待を受けたという女性の告白があった。(中略)彼女たちがなぜカミングアウトする気になったかはわからない。しかし、東電OLの渡辺泰子が彼女たちの背後にいて、背中を押すようにして告白させているような気がしてならなかった。

斎藤(引用者注:精神科医)は三人の女性の話を引き取る形で、

「男の人は母的な人と出会うことで簡単に異性愛にたどりつけますが、女の人が異性愛にたどりつくためには、母を一度徹底的に否定することによって、つまり産みの母を一度魔女にしておいて、母の生まれ変わりとしての白馬に乗った王子様に出会う。このプロセスには母を捨てるという罪悪感が常に付きまとうから非常に厄介なんです」

という総括をした。その分析は、泰子に対してもあてはまっているように思われた。

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バレリー・ライトマンという米国の女性記者とのインタビュー。「日本に対して「違和感」のようなものをお感じになることはありませんか」という質問に対しての回答を引用。

220ページ
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日本にはいいところがたくさんあります。アメリカに比べてとても安全ですし、(中略)基本的に単一民族ですから、(中略)みんな協調性があって住みやすい。しかしその一方、難しいところもいっぱいあります。第一に個人の自由が確立していない。誰かが、人と違うことを言ったりやったりすると、すぐに批判を受ける。やはり単一民族ということが影響して、異分子を排除するという方向にある。異分子がいると、いじめに遭う。

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女性記者からの質問に対する著者の回答を引用。

227ページ
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つまり、渡辺さんが抱えていた心の闇が、われわれの世の中の闇、とりわけ司法の闇を照らし出しているのではないか、というのが私のモチーフです。

ある意味で渡辺泰子さんは、大変に病んだ女性だったと思います。しかし、病んだ社会というのは、実は病んだものにしか見えない、というふうに私は思っています。

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フランス週刊誌のイタリア人記者に対する質問と回答を引用。

248ページ
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――なぜ、あなたはこの事件に興味を持ったんですか。

まず、人権の問題です。こんな裁判はほかの国だったら絶対にありえません。それと、泰子さんの悲惨な人生です。その二つが幾重にもからみあっている。しかしそれ以上に、この事件が、現在の日本社会をすごく象徴している事件だと思ったからです。会社、家族、警察という組織の中で、個人がいかに小さく無力な存在か。この事件は、そのことをありありと私たちに伝えています。

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250ページ
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海外のメディアはなぜこの事件にこうも「発熱」し、日本のメディアはそれと反対にこの事件を「風化」の方向にもっていこうとしているのだろうか。その報道姿勢の彼我の違いにこそ、この事件がもつ「世界性」と、それに気づかない日本社会の「特殊性」が浮かびあがっているのではないか。

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294ページ
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彼女の詩には、大都会に生きる女性のどうにもならない孤独感がにじみでている。

「私は誰かを愛したという実感を得たことがない」「私は誰かに愛されたという実感を得たことがない」「私は誰かを愛せるだろうか」「私は誰かに愛されるだろうか」。

そんな自問自答のフレーズが繰り返しリフレインされる。

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「東電OL症候群」でぐぐれ
http://www.google.co.jp/search?hl=ja&q=%E6%9D%B1%E9%9B%BBOL%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4

http://www.amazon.co.jp/dp/4101316341


佐野眞一『東電OL殺人事件』[2008年03月29日]
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=759420828&owner_id=7106525
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