夢のなかで、畑中さんの顔がカラスになっていた。彼はうす暗い階段のおどり場で知らない誰かとたむろしていて、ぼくはそれを階下から見上げている。変わり果てた様相にぼくが驚くことはなく、ちゃんと畑中さんだとも認識していた。彼は丸椅子に腰をかけ足を組
どうやら携帯電話の誤操作で義父に電話をかけていたらしかった。でも、どういう誤操作をすればそんなことになるのかよくわからなかった。以前の履歴からリダイアルをしてしまった、というならまだ話はわかるが、常から義父とは電話でやりとりすることがない
初対面にもかかわらず、タメ口で話してしまうことがある。これは不敬ということではなく、相手がとにかく気さくで陽気な雰囲気があり、むしろ敬語を使うことが不自然に思えてしまうケースだ。出会った瞬間からその親密な笑顔に取り込まれ、気づけば間に距離
茂木田さんは水の綺麗なところに棲む生き物みたいに繊細で注意深い人だ。きっと彼の中には物事を精査するネットが、細やかに綿密に張り巡らされてある。だから、たとえスナック菓子ひとつをつまむにしても、すんなりとはいかない。それがどんな成分でできて
配管の留め具に足をかけ、アパートをよじのぼった。なかなか難儀な道のりだった。当然のことながら壁面は侵入者に優しく作られてはいない。こちらにどれだけの正当性があろうとも、聞き入れる余地なく無情に立っている。むしろ反り立っている。ぼくは、すこし