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2015年12月12日03:04

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『安全地帯を一歩踏み出す勇気』

 グループワークが表面的な動きや流れを超えて、ぐんぐんと深まり、参加者それぞれの自己防御的な警戒心が解かれ、内面のプロセスが再編成に向けてダイナミックに進展してゆくためには、ふたつの要素が欠かせないように思います。

 ひとつは参加者が防御的な姿勢を解いても大丈夫だなと感じることができる安心感のあるフィールドが形成されていること、もうひとつは未知なるものへ向けてのチャレンジ精神が呼び起こされること。

 一見すると安全であると感じることと、不確実なものに向かって危険を冒して進んでゆくこととは矛盾しているように見えるかもしれませんが、実際に、ワークの流れがうまく展開してゆくときには、このふたつの要素がうまくからまりあって、新しい扉を押し開いてゆくようです。どちからが欠けても、ワークはうまく進んでゆかないからです。

 ワークをファシリテートしてゆくガイド役の人には、かならずこの二つを併せ持ち、その矛盾する圧力に耐えられるだけの圧力鍋的資質が求められてきます。

 不確定な未知のエリアに参入してゆくにあたっては、しっかりとした安定感のある踏み板を崩してしまったりしてはもちろんダメだけれど、その踏み板の安定感を保つことにかまけ、未知へとジャンプすることを忘れてしまっては元も子もありません。踏み板の確かさは、ジャンプすることをサポートするためにこそあるのですから。
 
 先日、茂木健一郎氏の「脳を活かす勉強法」を読んでいたら、ワーク状況で必須となるこうした相矛盾し合う二つの要素というのは、どうやら脳の機能の創造的な発現と深い関係をもっているらしいことが書かれていました……。

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 「(安全確実なものと、挑戦的なものの)のバランスがとれた状態を具体的には、脳科学の専門用語では“偶有性 contingency”といいます。“偶有性”とは半分は安全で予想できること、半分は予想できないこと。この両方が混ざっている状態のことです。実はこの偶有性の中にこそ、大変な叡智が詰め込まれているのです」

 「人生を豊かにするには、チャレンジングなものとセキュアなもののポートフォリオ“組み合わせ方”をどのように行うかがすべてだといっても過言ではありません……セキュアベース=安全基地が固められてこそ、チャレンジができる。これは勉強法に限らず、人生をさらに豊かにするための方程式といえるでしょう。どちらか一方が極端に多くてもダメ。バランスが大切なのです」

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 そしてさらに茂木さんの見解で注目に値するのは、矛盾し合うこの二つの傾向性(セキュアとチャレンジ)のバランスをとってゆくのは「脳のエモーション、つまり感情のシステム」だという指摘です。

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 「脳の中にこのチャレンジングなものとセキュアなもののバランスをとる感情=エモーションの働きがあるのです……実は人間の感情というのは、人生のさまざまな不確実な出来事に対して、どのように適応するか、という不確実性に対する適応戦略であるということが、最近の脳科学の研究で分かってきました……情動系と呼ばれる脳の感情システムにおいて、中心的役割を担っているのがドーパミンです……情感が豊かな人は、より不確実なことに対応できる人ということができるでしょう」

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 そして何から何まで初めて珍しく、周囲がチャレンジに満ちていた子供たちが、未知なるものに立ち向かう不安を超えて前に進み続けることができたのは、背景に安全基地(セキュアベース)があったからだといいます……

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 「“安全基地”とは、何かがあった時に逃げ込める場所のことです。外に出てさまざまなことにチャレンジし、もし失敗して傷ついたとしても、安全基地に逃げ込めばそこには自分を温かく見守ってくれるものがある……多くの子どもにとって、特に幼少期にこの安全基地となるのは“親”です」

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 セキュアベースの構築が十分でなかった場合には、不確実なもの、未知なるものに向けて前進してゆくチャレンジの精神がどうしても減衰しがちになってしまうのですが、どうやら脳というものは、適切なセキュアベースの感覚を見失わないかぎり、もともとは不確実さを好むものらしいのです……イギリスで、こんな研究があったようです。

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 「教授は、サルが確実にジュースをもらえる場合と、2回に1回しかジュースがもらえない場合のドーパミンの活動を比較したのです。当然、ジュースをもらえた時はドーパミンが放出されました。しかし、ジュースがもらえるかどうか分からないという不確実な状況でも、別のかたちでドーパミンが放出されていたのです……どういうことかというと、つまり、ジュースがもらえることと同じくらい、不確実な状況を楽しんでいたのです。これは人間の場合も同じ現象が起きることが分かっています」

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 最初はおっかなびっくりであったとしても、不確実なものに直面し、チャレンジしてゆくことの喜びをいったん知ってしまえば、脳はますます不確実なものに直面することを喜ぶようになり、そうすることによって〈生〉の振り幅がだんだん大きく豊かに広がってゆくもののようです。

 とどのつまり、うまくドーパミン回路をまわるコツがつかめると、脳というのは適切な負荷(チャレンジ)を受けて、それを楽しむようになり、どんどん学習が進むらしいということ……

 この場合、学習というのは脳の神経細胞のシナプスが新しいネットワークを結んでゆくということと同義らしいのですが……

 知っていることの繰り返しというのは脳にとっては退屈極まることのようで、それではドーパミンがほとんど出てこないみたいです。知らないもの、未知の領域にチャレンジして、ひとつの限界を突破したとき、脳はドーパミンを分泌して快感を覚えるようにできているようです。

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