mixiユーザー(id:4541837)

2015年03月01日11:08

419 view

バーは男の酒場

銀座外堀通りの古色蒼然のビルの10階にあるモーリ・バーや駿河台山の上ホテル本館のノンノンなど、私の好きなバーは、どういうわけか、男だけの店が多い。どちらも、お洒落という形容はお世辞にも使えない、味も素っ気もない、ただ坐って好きな酒を客が呑むだけの無骨な店だ。そういうところが、私は好きだ。酒呑みはみな、そうではないかという気がする。

女性がいるのが嫌いなわけではもちろんないのだが、バーは私は、そういうほうが、何か独特の落ち着きを、そこにやってくる者にもたらすようにも、感じる。
駅舎全体を建て替えるまえの東京駅にくっついて建てられていた、なかなか渋い雰囲気の満ちていた東京ステーションホテルのなかにあったバー・カメリアも、そうだったな。

海外で私が一番好きな、やはり古色蒼然のニューヨーク44丁目の小体なアルゴンキン・ホテルのその44丁目の通りからでも気軽に入れるブルー・バーも、そういえばやはりそうである。このブルー・バーの窓からは、五月新緑に覆われた街路樹、秋の色づいた葉、小雪の舞う街路など季節ごとのこの東海岸の大都市のたたずまいが眺められ、それも、とてもよい。

酒場には年寄りがいるほうがよい。そういう人がいるだけで、店の空気が引き締まると、私はここに書いたことがある。
バーでも、品がある老婦人がいる店が素敵だったことを、私は知っている。男だけのバーというのは、そういうものに近い空気があり、それが、基本的には男がひとりで酒を呑むという時間と場に、適合しているのではないだろうか。
だから、そういうバーに団体で来るやつはどうかしている。

上記全体の正反対のバーが、だから、日本橋に出来たマンダリン・ホテルの階上のレセプション・フロアにあるバーだ。
メインバーがレセプションのすぐ傍に、それもただ衝立てだけの仕切りで設けられているのもどうかと思うが、さらに気に食わないのが、そのバーのバーテンダーは、みな若い女性ばかりだということだ。
坐っただけで、私は居心地の悪さを感じた。
以来、二度と行っていないので、その後それが変わったのかどうかは、知らない。
ちなみに札幌の老舗オーセンティック・バーの山崎のカウンターの内側にはひとり女性バーテンダーがいたが、この人は感じが良く、店の空気に合っていた。マティーニの味も引き締まり、よかった。博多の何とかいった高級ホテルのバーはマティーニというのだが、その名が泣くほど情けない味だった。若い男のバーテンダーだった。

マンダリンのこの人員配置は、明らかに、新宿パークハイアットのバーの、イケメンで高身長の若い男性ばかりをスタッフにそろえた、意図が見え透いた作戦の逆を行き、その女性だけバーテンダーで男の客寄せを狙ったものだろう。
まあ、どんな営業戦略をとろうが販促策をとろうが、個々の店の自由である。だがすくなくとも私は、そういう策を考えるバーに、品性というものを感じない。
新宿パークハイアットのバーが最悪なのは、バーの誇りであるべきドライ・マティーニの味がたるみ、ぼやけていることだ。だがここの設えとそのこととは、よく符合もしている。
このホテルのこのメインバーの名は、笑えることに、ニューヨーク・バーという。これはおかしい。新宿バーといえ。
18 18

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する