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2014年02月25日12:14

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2-22ワカンdeリベンジ 鍋割山

2月22日(土)

寄大橋→雨山峠コース→寄コシバ沢右岸尾根→鍋割峠→鍋割山→小丸→大丸→金冷シ→大倉尾根コース

二度の記録的大雪に喜び勇んで繰り出したものの、ツボ足地獄に嵌まって無念の撤退となった先週末。

早速そのリベンジを果たすべく、ワカンを持って前回と同じコースに突入だ。

電車に乗り込むと約2時間で新松田駅に到着。
悠長にバスを待っていられない気分なので、改札口を抜けてそのままタクシーに乗り込む。

降りようと思っていた寄バス停付近では、鍋割山南稜を目指すと見られる10人近い団体ハイカーが見えた。

団体は、自分のようなひねくれた単独行者にとっては山における大きな脅威の一つだ。

狭い登山道をゾロゾロと列を成し、時には山に関係の無い世間話で大声で盛り上がる人々。

山と静かに向き合って雑念を払い、自然とふれ合う喜びを全身全霊で味わいたい自分にとっては、彼ら集団ハイカーは山の景観を損なう存在であり、自然の雰囲気をブチ壊す雑音の発信源でもある、
と言っても過言ではない。(いや、過言だ。)

気の合う仲間でワイワイ登る楽しさは学生時代に山サークルに所属していたのでよく知っているし大変良い思い出なのだが、いまはすっかり孤独癖が身についてしまった。
人と一緒にいるとかなり気を遣う性格で、逆に相手に気を遣わせるのも嫌なので、気軽な単独行が好きなんだとも思う。

集団を避けるべく、バス停を過ぎて寄大橋まで入ってもらった。
4200円。

単独行はコストが高いが、山行の為に自分だけの自由な時間を買ったと考えれば良い。
バス停からの30分の車道歩きもカットできた。

ゲートをくぐると、ずいぶん雪が減ったのがわかる。トレースを見ると1週間で数人しか入っていないようだ。

自分がツボ足で大苦戦した足跡と踏み抜きがまだはっきり残っており、激闘したあの日の事を思い出しながら懐かしく足跡を辿る。

寄コシバ沢に入ると、上のほうに先行する単独男性が見えた。

沢に足を踏み入れた途端、ズボッ!と強烈な踏み抜きが始まった。
やはりガレ沢の雪は吹き溜まりが凄い。思わず笑みがこぼれる。

先週はこの吹き溜まりで激闘した末に沈没し、撤退に追い込まれた。
しかし今日は、この吹き溜まりを一番楽しみにしてきたのだ。
さあ出番だぞ、アルミワカン!

ワカン結びを固め、雪が盛り上がっている沢の中央をガツガツと登って行く。
うむ、素晴らしい揚力だ!

右岸の斜面には先週出会った笑顔が素敵なワカンマンの足跡がまだ残っており、沢伝いの緩斜面を行く夏道とは違う方向の、植林の急斜面へと向かっていた。

お世話になった先週のワカンマンに敬意をこめて、その足跡を辿る事にする。

急傾斜の植林帯を進むが、雪質は軟らかくてワカンが沈む。
日中の融解と夜間の凝固を繰り返した雪は、ワカンで割れると周囲にもヒビが入って連鎖的に割れ砕かれるので足場が悪い。

足跡は北北西に進路をとっており、本来のルートとはズレている。
ワカンマンの足跡だけでなく、スノーシューの比較的新しい痕跡もある。先程の先行者のものかもしれない。

やがて稜線に飛び出し、登山道に合流。
やはり鍋割峠よりも100m以上 西にズレていた。

今日は天気がイマイチだ。時折薄日は射すが曇り空で、主脈主稜線にもガスがかかっている。

本来の予定では、鍋割山山頂手前から鍋割山北尾根を下降し、途中で一本東の尾根に移って尊仏ノ土平に下りて、塔ノ岳西尾根から塔ノ岳に上がるつもりだった。

あるいは、鍋割山北尾根を下りて熊木沢出合から棚沢ノ頭に登って主脈線に乗り、不動ノ峰、丹沢山、塔ノ岳へと主脈稜線歩きを楽しみたかったのだが…。

今日の雪質と展望の悪さを考えると、どうにも気が進まなくなってしまった。

とりあえず思い付いたのは、この鍋割山西稜を西に向かい、茅ノ木棚沢ノ頭、雨山峠を抜けて雨山、檜岳、伊勢沢ノ頭を縦走するコース。
ほぼ誰にも会う事が無い静かな山歩きを堪能できる。

いつもメールで登山届を出している実家の弟と妹にコースの変更をメールし、早速、西に向けて出発。

稜線の南西斜面にはまだ雪が多い。
雪が凍結しているのでワカンを外し、オクトスのチェーンアイゼンを装着。

やがて途中で道を間違えてしまった事に気付き、立ち止まる。
戻りながら辺りを見回すと、正規の登山道らしき道形が見えた。

トラバースを開始する。しかしこれがなかなか危険だった。

雪の表面は凍結しているが、昼に向かって徐々に気温が上がりつつあり、少し融けて非常に滑りやすくなっている。
しかも、雪の層が全般的に固まって浮き上がり、雪の下の地面との分離が進んでいるように感じる。
一歩間違えれば足元の雪塊ごと足を持って行かれ、滑っても引っかかるような木が無い斜面を転げ落ちてしまいそうだ。
足場を作ろうと足を強く雪面に踏み込むのも危険に思えた。

冷や汗をかいたが何とかトラバースに成功し、道を慎重に辿る。

間もなく、鎖場に到着。
エアリアマップでは茅ノ木棚沢ノ頭付近に危険マークが2箇所あり、いずれも丹沢屈指の急峻な鎖場だ。

夏場には何度も通過していて慣れてはいるのだが…、今回はここで立ちすくんでしまった。

鎖の上部が雪で埋まっている。
垂直に近いとも思えるこの鎖場を見下ろすと、あちこちに雪がついており、凍結して滑りやすいと思われる箇所も見える。

足場が悪い上に、鎖を下りている最中に上の斜面の雪の塊が崩れて落下してくる可能性がある。
ただでさえ鎖が濡れているのに、雪塊に直撃されたら危険だ。

しばらく考えたが、やはり怖い。
この鎖場は一連のスムーズな動作の一貫で登り下りするなら造作も無いが、何度も繰り返し上から覗きこんでしまうと、その回数に比例してどんどん怖じ気づいてしまう。

悩んだが、ついに諦めた。

世界を股にかける超一流のスナイパー、ゴルゴ13のセリフを思い出す。
「勇敢な者は早死にする。臆病者だけが生き残る事ができる。」

さらに、鍋割山頂の東西分岐の看板の文言を思い出す。
西へ向かう登山者に向けて「この先、危険箇所多し。引き返す勇気も必要です。」
確か、そう書いてあった。
3シーズンなら構わず突き進むが、雪があるとやはり山の難度は1ランクアップするようだ。
来た道を引き返し、鍋割峠を過ぎて鍋割山へ向かう。

ここは普段は木段を一歩一歩踏みしめて鍋割山への最後のひと踏ん張り!という登りなのだが、木段はすっかり雪に埋もれて急斜面となっていた。

再びワカンの出番だ。
せっかく持って来たのだからもっと使いたい。
山頂までの距離は200mなのだが、ここが一番キツかった。
主脈主稜線の堂々たる山並みに励まされながらゆっくりと登る。

やがて緩斜面になると山頂直下で、西側の大展望が素晴らしい。
山頂はいつも賑わっているのだが、西に少し下りるだけで誰にも邪魔されずに昼寝でもできそうな空間が広がる。

例えば、塔ノ岳山頂の喧騒を避けるには少し西に下った不動の清水のベンチが静かで良いのと同じだ。

さて、鍋割山頂まで50m。登山道を外れ、ワカン歩きをたっぷりと楽しむ。

もちろん普段は植生を守る為に正規の登山道を歩くが、いまは雪がたっぷり積もっており、ワカンを使っているので雪への圧力は分散され、植生を傷める心配は無いだろう。

西から這い上がってきた自分を見て、山頂にいた人たちはちょっと不審顔だ。
ちょうど鍋割山の山頂標識の真後ろから飛び出す形になり、目立ってしまった。

見渡すと、大勢の登山者が寛いでいる。
雪面に腰を下ろし、冷えきったおにぎりを食べる。

富士山も相模湾も雲の向こうに霞んで見えない。

カセットガスコンロで湯を沸かし、生姜葛湯を飲む。葛のとろみと生姜の効果で身体が暖まるから、冬は必需品だ。

山頂標識が雪に埋もれて鍋割山の「鍋」だけが出ているのを見て箸でつつくポーズを取ったりジャンプしたりして騒いでる若者たちがいる。

これから下山なのだろう、「さあビールに温泉!」と矯声を上げる若い女性もいる。

やがて、単独行の高齢男性がやってきた。
景色や山荘を写真撮影した後に、ノートに何かメモを書いている。

顔に人柄の良さがにじみ出ていて、いかにも山が好きでたまらないという感じだ。
さらに、今度は「鍋」標識の後ろにしゃがんで標識の前に手を回し、御自身と標識を一緒に写真に収めようとしている。

ここで立ち上がり、「撮りますよ」と声をかけた。

単独行同士で親しみを感じるし、独りだと山を背景に自分を入れた写真が撮れない切なさはよくわかる。

片手にコップを持っている自分の姿を見て「いやお食事中で申し訳ないよ」と、気恥ずかしそうな笑顔で一度は辞退なさったが、重ねて「お撮りしますよ」と言ってデジカメを受け取った。
可能な限り背景の山々をフレームに収め、シャッターを押す。
大先輩の、いい記念の一枚になると良いな。


結局、山頂には一時間いた。
長過ぎる休憩の理由はただ一つ。人が減るのを待っていたからだ。

鍋割山は午後3時近くになると山頂はほぼ無人になり、普段は賑わう鍋割山東稜(鍋割山と塔ノ岳を結ぶ稜線)にも人がいなくなって静けさをたっぷりと味わえる。

小丸、大丸、そして塔ノ岳直下の金冷シへと続くこの稜線を歩くのは久しぶりだ。
次第に雲の隙間から青空が覗き、遠望が利くようになってきた。

南北の展望がとても素晴らしいのがこの稜線の魅力だが、小丸尾根分岐の道標裏からの南側の大展望は格別で、夕方の心地よい微風に身をまかせながら満喫する事ができた。

気分良く歩き続けたが、ふと気付くと道を外れていた。
雪の上の足跡を辿ってしまったのだが、踏み跡が薄く、前方に丹沢山が見えている。方向がおかしい。

来た道を引き返すと、大丸の道標に辿り着いた。

鍋割山から行く場合、大丸の道標から少し右に折れなければならないのだが、誤って直進してしまう人がいるようだ。
自分もうっかりしてしまった。超A級登山道だからと油断しているとこういう目に合う。

やがて、金冷シに到着。
この時間は大倉尾根にも人はほとんどいない。

尊仏山荘泊まりであろう登山者や、自分と同じような時差下山者をごく稀に見かけるのみだ。

雪と泥が混じり、まるでココアを流したような色合いの登山道。
雪は滑りやすく土はぬかるんでいるが、それでもゴロゴロした石ころや階段が雪に隠れているのが幸いで、いつもよりは歩きやすい。

ここはもう、ひたすら延々と我慢の下りを無心にこなすのみだ。

ふと、すぐ横で何か動くものの気配を感じ、立ち止まる。
見るとシカが3頭、登山道脇で横断するタイミングを計っているかのように立っていて、こちらを見ている。
驚かさないように何か安心できる音を出してやろうと、頬っぺたの中でフォーフォーフォッと優しく声を出しつつ軽く頷き、どうぞ、というジェスチャーをすると、ロープを跨いで一斉に登山道を横切り、反対側に移ってまだこちらを見ている。

どうやら母鹿と子鹿二頭の親子連れのようだ。

と、いきなり登山道を跨いでもう一頭の大きな鹿が現れ、三頭に合流した。
立派な角がある。お父さんだろう。
一家が全員勢揃いして、奇妙な声を出す人間を凝視している。

かつて豊かな森林を誇っていた丹沢の植生を食い荒らしながら激増したシカは、山域面積あたりの適正生息頭数を遥かに上回っている事から、駆除の対象とされている。
山の植生だけではなく、農作物への被害も深刻だ。
また、ヒルやダニを運ぶ厄介者でもある。

しかし、よく言われるように、動物に罪は無い。
姿を見ると実に可愛らしいし、家族連れというのもまた何とも微笑ましい。

西丹沢のシカは警戒心が強くてすぐに逃げるが、東丹沢のシカは人間嫌いではないようだ。

別れを告げて、再び歩き出す。

退屈な大倉尾根下りで唯一気を紛らしてくれるのは、秦野市街を中心とする夜景だ。
時々足を止めて遠くの夜景を眺め、沁々と感慨に耽る。

途中からFM横浜を聴きながら歩き、下山を完了したのは夜7時だった。

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