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2012年08月10日17:36

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解糖系とミトコンドリア系 その1

 安保徹『人が病気になるたった2つの原因〜低酸素・低体温』を読み終えました。この本のカバーを開くと、折り返しに次のような言葉が記されています。「人間のエネルギーの作り方。1)酸素を使わない解糖系 2)酸素を使うミトコンドリア系。この二つを理解するだけで人生は変る」

 安保さんのこれまでの著作では、免疫担当細胞(リンパ球/顆粒球)と自律神経(交感神経/副交感神経)の働きの関係に重点が置かれてきたのですが、今回の著作では、生命エネルギーを生み出している細胞の働きそのものにフォーカスしてあるのが特徴。

 細胞は、ブドウ糖などの栄養分を取り入れると、まず細胞質の中で解糖系と呼ばれる醗酵と似たプロセスを通してエネルギーを生み出しますが、このプロセスでは酸素は必要とされません(無酸素系)。いってみればこれは光合成を行う生物が誕生し酸素が地上に満ち渡る前の原始生命体が営んでいたシンプルで即効性のあるエネルギーの作り方です。

 次いで細胞は、この解糖系のプロセスの最終生成物であるピルビン酸をビタミンB群の助けを借りながらミトコンドリアの中に取り込み、酸素も利用しながら2段階プロセス(クレブス回路+電子伝達系)で大量のエネルギーを生み出します(有酸素系)。行程が複雑なので即効性はありませんが、解糖系がつくり出すエネルギーの実に18倍ものエネルギーを、ミトコンドリアはつくり出すことができます。

 ヒトのような多細胞生物が生き、社会を形成し、様々なものを創造しながら暮らしててゆく上で、ミトコンドリア系エネルギー産生は必須ですが、 あまり効率がよくない解糖系の働きも残してあるのが面白いところ……。

 100m競走のように瞬発力が求められるときは無酸素でエネルギーを調達する解糖系が働きますが、解糖系には持続力がないため、すぐに疲れてしまいます。一方、有酸素でエネルギーを生み出すミトコンドリア系は瞬発力には向かないけれど、マラソンなど持続力やスタミナ求められる場合にはこちらが働きます。

 ところで前から疑問に思っていたことがあるのですが、それはがん細胞が嫌気性の細胞であり、酸素を嫌うということです。あれほど活発に増殖をしてゆくのだからさそかしエネルギーがいるだろう、だったら、ミトコンドリア系のエネルギー産生率の高い高酸素環境を選べばよいのに、ガンはなぜ敢えて効率の悪い低酸素状態を選ぶのだろうと……

 安保さんによると、「ガンは自分の体に悪さをする存在ではなく、生きにくい状況に適応しようとする体の知恵そのものです。低酸素・低体温の状態に適応し、最大限のエネルギーを発揮する存在といってもいいかもしれません。ガンは必死になって生き延びようとしているだけで、広い意味では、あなた自身の体がそうやって延命を図っているのです」ということになります。

 ガンは病理ではなく、低体温・低酸素状態を生き抜こうする細胞の知恵、適応反応だというのが安保さんの見解なのですが。この視点からみると、「なぜ敢えて効率の悪い低酸素状態をえらぶのだろう?」という疑問は逆転します。つまり、生態環境が低酸素・低体温状態になったから、その環境に適応しようとして、解糖系を優位にする細胞に変化を遂げたということです。そして、実は細胞というのは、解糖系優位の環境下の方が活発に分裂増殖するのだそうです。

 がん細胞にはミトコンドリアが正常細胞と比べる少ないようです。通常、肝臓や心臓、脳などエネルギーをたくさん消費する臓器の細胞にはミトコンドリアが多いと習いますから、分裂増殖が素早いがん細胞が、なぜミトコンドリア系を避けるのか頭が混乱してしまっていたのですが、その理由のひとつは、こうした発想の逆転で解けます。

 ついで、異常細胞などが自殺を遂げるアポトーシスについて考察してみても、アポトーシスシグナルがミトコンドリアから発せられることを考えると、ミトコンドリアを不活性状態で抑制しておいた方がやはりガンにとって生存有利になるとも言えます。

 ちなみに、無酸素の解糖系下でガンが増殖するという見地は、すでに20世紀の初頭ドイツの生化学者、オットー・ワールブルグによって発見されていたのですが、遺伝子の異変からガンを研究するのが潮流となってしまったために、ガンが発生する下地、環境という観点からの研究が立ち後れてしまったとも言えるかもしれません。

 振り返ってみると、コンステレーションワークなどで本人以外にガンを配置すると、ガンが必ずしも死を招く敵ではなく、代役が本人を守る為にここにいると表現することが多いことに注目していたので、安保さんのガンの低体温・低酸素環境適応説は、なかなか興味深いです。

 ともかく低体温を回避し、血液循環を高め、抹消への酸素及び栄養の補給路を確保するというアプローチは、免疫力、基礎体力を向上させる上での要となるのですが、それが単に免疫システムや自律神経系のレベルの話だけでなく、細胞レベルでの解糖系とミトコンドリア系のバランスの問題でもあることを押さえておくことは重要だと思います。

 なお、ミトコンドリア系を活性化させるためには、ミトコンドリアでどのようにしてエネルギーがつくられているのかそのプロセスと関連する栄養素についてしっかりと学び、ミトコンドリアが活性しやすいような栄養環境、酸素環境を用意することがなによりも大切になってきます。

 なのでまず貧血(貧血とは立ちくらみのことではありません。赤血球数の低下、ヘモグロビン濃度の低下、赤血球サイズの低下等による酸素運搬能力の低下のことです)がないかどうかチェクして、貧血があるならしっかりと改善をしておくこと、次いで、できるだけからだを芯から温める方法(足湯、枇杷の葉温湿布、干し生姜茶)を採用し、ゆったりとした深い呼吸法によって全身に酸素をよく行き渡らせてゆくことなどがあげられると思います。

 最初の貧血改善はとっても大切です……もしここを改善しないまま呼吸法や血液循環をアップすることばかりやると、痩せ馬にムチを当てるようなことにもなりかねないからです。

 


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