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Essay [Cocktail Short Story]コミュのマンハッタン

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カナディアンウィスキー60ml/スウィート・ベルモット60ml
アロマチックビターズ1dash/レッド・チェリー1個

気高き「カクテルの女王」。
「カクテルの王様」マティーニと並び称される。

このカクテルが生まれたのは、1876年のこと。
第19代大統領選挙の応援パーティーが開かれた某クラブで、
ある婦人が即興で作ったカクテルと言われている。

その婦人こそが、英国首相チャーチルの母ジェニー・ジェローム。
そして、クラブの名は「マンハッタン」。

「マンハッタン」はニューヨークの島の名だが、
元々の意味は、インディアンの言葉で「酔っ払い」だそうだ。
まさにカクテルの名に相応しい。

甘み、苦味が絶妙なバランスのカクテルだ。
バーテンダーの個性、その時の体調により、
甘みを強く感じることもあれば、
苦味を強く感じることもある。

飲み始めの頃、私はあるバーで、このカクテルを頼んだ。
恥ずかしい話ではあるが、当時はカクテルの知識もなく、初心者の私でも
名前だけは知っていたこのカクテルの名を、思わず口にしたのだ。

その時は、苦味ばかりを強く感じ、
まるでカクテルから、
「お前には、まだ早すぎる。」
と言われた気分だった。

私にとって「マンハッタン」は、「大人のカクテル」になり、
しばらくの間、距離を置くことになる。

あれからもう7年が経ち、
私も少しは経験を積み、少しは大人になったと思う。

未だに「マンハッタン」は、口の悪い叔父の様な存在で、
気安く飲める酒ではない。
それでもたまに、憎まれ口を聞きたくなって、不意に頼みたくなる。

久しぶりにこの酒を飲む。
あれ程、苦いと感じたカクテルが、とても丸く、甘みを強く感じる。
そして、いつの間にか「苦味」も「旨味」として感じていた。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

私達は徐々に老いて行く、
「死」に向かって確実に。。。

確かに、「若さ」とは素晴らしいものだ。
ただ、それを永遠に保つことは不可能だ。

衰えた五感で感じる世界は、決して「醜い」世界ではない。
それは、その瞬間にしか感じることのできない「美しい」世界。

老いて初めて見えるもの。
老いて初めて気づくことが沢山あるに違いない。
そして、そのことは徐々に人生を豊かにすることと変わりない。

これからは私は、もっと多くの苦労を知り、
心の痛みを知ることになる。
それは、「苦味」の本当の味わいを知るための、長い道程。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


いつまでも姿を変えることなく、
静かに時を刻み、
私達を出迎えてくれる。
カクテルの名は「マンハッタン」。


コメント(4)

遅くなりましたが、やっと完成いたしました。
皆様の感想をお待ちしています。
苦さは、大人な味をイメージ。その時々で味わいが変わる。それも、楽しい体験かも知れません。
さややさん>
子供の頃に「苦い」としか感じなかったものが、大人になると
とても旨く感じる経験は誰にでもありそうです。
裏のテーマは最近の「若さ」偏重に対する疑問かもしれません。
年を取ることも、また魅力的です。
良い大人になりたいものです。

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