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秘密のバイト大作戦。コミュの【荒野に生きるチーム 第7話】

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【第1話】http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=27085334
【第2話】http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=27339378
【第3話】http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=27587337
【第4話】http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=27759142
【第5話】http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=27918407
【第6話】http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=28025390

※ご注意
【第6.5話】http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=28118510
 からの続きです。
【第6.5話】を読んでからこちらを読んで下さい。


【第7話】記憶



 初めてではない。
 自分の手で人を殺めるこの感覚。なぜだろう。今の僕には分からない。しかし、人間の首を絞めることは呆気なかった。



 僕はきっと笑ってる。笑い屋としてではなく、心から。




 食欲も性欲も人の脳が出すアルファ信号に過ぎない。だからきっと僕の脳は今、『殺欲』とでも言えるようなメッセージを発しているに違いない。今の僕は、殺し屋だ。




 だが、萩原にとっては幸運なことに、僕は同時に『気分屋』でもあった。僕は萩原が声を出さなくなると、そのまま手を放した。



 パタリと床に転がる萩原の体。恐らくは死んではいない。僕はどっちでも良かった。この男が死んでも、死ななくても。



 ただ、何となく。全く意味もなく、僕は萩原を殺さないと言う選択をした。



 突然、体の中から鈍器で殴られるような感触が僕を襲う。



 ‥‥ドクン。



 心臓の鼓動が何かを訴える。その正体は分からず、僕は萩原の体をまさぐった。拳銃と、サトーと言う男を眠らせたらしい薬を回収しポケットに入れ、萩原から聞いた出口へと向かうべく部屋を出た。



 僕は廊下の奥へと進んでいった。
 それにしても静かだ。あまり人間がいないことは萩原から聞いていたが、ここまで人の気配が無いのも不気味だった。
 そう考える間に奥の非常階段にたどり着いた。



 あとはここから降りるだけだ。
 ドアのノブに手をかけたその瞬間、



「おい、そっちは入るな!」
「!?」



「そっちは非常用の階段だから行くな。お前は誰だ。新人か?」
 横を見ると制服の男が近づいてきた。制服を来ている僕を仲間と思っているのだろう。



「おい、答えろ。名前はなんだ?」
 少しだけ声を荒げながらだんだんと近づいてくる。そして、僕からもう3メートルほどの距離まで近づき、僕の顔を凝視した。



 その一瞬だけで良かった。
「お前は!!」
 そう男が叫んだ時には僕は男の目の前まで接近し、拳銃を握った手を思い切り振り下ろしていた。その後は簡単だった。



 今回も僕は殺しをしなかった。拳銃を撃つと、音で誰か来るかもしれないと思ったからだ。人の来ない非常階段に男の体を寝かせた。
 萩原と同様、別に殺してしまっても良かった。ここでなら首を絞めても大丈夫。だが、今は外へ向かうことを優先して僕は階段を下り始めた。



 どうやら、僕がいたのは五階だったようだ。一階の階段を通り過ぎ。B2と書かれたドアを開ける。
 萩原は仮にもEMJだ。誰かに見つかるような逃げ道は確保していないはずだ。だから、僕は何の躊躇いもなくドアの中へ入る。
 中は聞いた通り、倉庫だった。埃くささが立ちこめる。天井には蜘蛛の巣が張っている。
 僕はそのまま倉庫を突っ切り、奥のドアを開けた。



 そこは、駐車場であった。だだっ広いコンクリートの部屋。やたらと少ないが、何台かの車が停まっていて、地面にはペンキで番号が書かれている。
 さらに奧には地上とつながった階段があるのだろう。そこを上がれば、外だ。そして‥‥



 ‥‥ドクン。



 再び大きく心臓が鳴る。この感覚は何だろう。僕は何か恐ろしい事実が心のどこかに潜んでいるような気がした。
 決して開けてはならないパンドラの箱。しかし、その正体が分からない。



 普通の人間はどう思うんだろう。人の首を絞めた時。その心を支配するのは、畏れか、罪悪感か。はたまた、快楽か‥‥。
 僕は何故、このような行動を起こしているのだろう。
 昨日、絢が訪ねてきた。ナメヌマとの怪しげな関係を知り、どこか見透かされたような目を向けられた。そして、僕は全てが嫌になった。



 だが、何かが違う。何か僕の中で決定的な矛盾が生まれつつある。それでも、それが何なのか分からない。
 僕は外へ出て、何をしたいのだろう。
 復讐か?
 それとも全て忘れ去ってしまうことか?
 僕は、大きな間違いを犯したのだろうか。しかし、もう後戻りは出来ない。



 門を曲がれば、ついに出口だ。天井の標識で僕は分かった。
 ところが、僕が目にしたのは予想に反する映像だった。



「え、なんで‥‥」
 そこには巨大なシャッターがあり、僕の前に立ちはだかった。これでは、外に出られないではないか。



「!?」



 悪寒は当たるものだ。急な寒気を感じ、僕はゆっくり後ろを振り返る。



 20人はいるだろうか。防護服を纏った男達。奴らはライフルを構え、その全てが僕を向いている。



 人は死ぬ瞬間、走馬灯を見ると言う。しかし、僕は見なかった。無重力空間にフワリと浮くような、そして頭がぼやけて自分が何を見ているかも分からない。そんな夢を見ているような心地だった。
 それでも、きっと今僕は笑っている。







「撃つな!!」



 響き渡る怒号の後、防護服の男たちは一斉にライフルを降ろし、突然敬礼をした。



 ?



 男達が開けた道から現れたのは、グレーのスーツに身を固めた白髪の混じった初老の紳士だった。これがカリスマ性なのだろう。顔つきが他の連中と違う。



「まだ殺してはいかん。こいつには金をかけたからな。」
 男は微笑みを浮かべながら、そう言い放った。



 ‥‥どういうことだ?



 まだ殺してはいかん?




 ‥‥ドクン。




 !?




 体の中を稲妻が走った。




 ‥‥そうか。




 EMJ。ナメヌマ。吉良。笑い屋。
 僕はそのどれも知らない。
 『記憶に無い』のではない。『知らない』のだ。
 それらの言葉1つ1つは確かに知っている。
 だが、それらが一体何のことなのか。全く分からない。



 そして絢。
 確かに、僕は絢と言う名は知っている。そして、その女性に好意を持っていることも。
 昨日現れたあの女は絢と名乗った。それで僕は彼女を『絢』と認識していたが、本当は僕は絢の顔など知らなかったのだ。



 僕は記憶を辿ってみたが、留置場以前の記憶が無い。おそらくは存在しないのだ。
 僕は気づいたら牢屋にいた。そして、いくつかの細切れのワードが頭の中に『あった』。だが、その前までの出来事は‥‥存在しない。何故牢獄にいたかも分からないのだ。
 僕の脳内を海に例えるなら、その記憶たちは一つ一つ独立した小さな島。他と何のつながりもない小さな島。
 何より、僕は自分の名前が分からない。



 一体、僕は‥‥誰だ




 スーツの男がゆっくり近づいてくる。その手には、巨大な注射器があった。何か薬だろうか。



 男は僕を見下ろした。
「おやすみの時間だ」



 僕の目の前で男が注射器を構えた刹那、突然大きな音が部屋中に響いた。



 ガガガガガ‥‥



「何っ!?」
 スーツの男が大きく目を見開き驚愕の表情を浮かべている。



 後ろを振り返った。先ほどのシャッターがゆっくりと上がっている。その下からは、何人かの足が見える。



「チェックメイトだぜ」



 シャッターが上がりきった先にいた男が大胆不敵な笑みを浮かべ、言った。
 背は低く、痩身で真っ黒の光沢のあるスーツを着ている。その外見で一番特徴的な部位、ひょろりと細く伸びた髭、ドジョウ髭を指で遊んでいる。



 男の右には年端もいかない少女。そして、左には‥‥昨日『絢』と名乗った女がいた!
 男の後ろにも誰かがいるようだが、よく見えない。




「すべて、貴様の仕業だったのか」
 グレースーツの男が怒りの表情を浮かべ言い放つ。



「ハハハ、今頃気付いたのかい。マヌケな悪党だぜ、警視総監殿。いんやHOW会長、城山学っつった方がいいかな!」
 ドジョウ髭は続ける。



「あんたの言う通りさ。全部、今この時のために俺がやったんだ。笑い屋としてバイトを雇った。葬式にそいつを送り込んだ。城山学と名乗らせ、あんたらの笑い屋にぶつけた。葬式での殺人事件。そして、狂言誘拐で身代金8110万要求。何もかも俺の目論見通りだ。あんたは俺の手のひらで踊ってただけだよ」



 そしてドジョウ髭は僕の方に顔を向けた。目を細めながら、少し声のトーンを下げる。
「ふーん、こいつがあんたの悪だくみのオモチャだな。可哀想に」



「貴様、タダで済むと思ってるのか」
 警視総監が鬼の形相でドジョウ髭を睨む。



 が、ドジョウ髭はそれを無視して、後ろにいた人物に軽く顔を向けた。 ‥‥そしてサスペンスドラマのワンシーンのように、高らかに声を張り上げた。

「お前さんも見てみな。こいつが警察どもの悪事の産物。『8110』だ!」



 ドジョウ髭の後ろからひょっこりと現れた青年。




 ぽかんとした表情をしているその人物。







 その人物の名は‥‥












 荒野智武であった。

コメント(12)

 あえて言わない。いつもの、言ってやんない。


 僕は誰ですかさん作 第2弾。



 はい皆さん今晩は。
 いかがお過ごしでしょうか。

 爆弾が投下されましたね。
 僕はこれを読んで、あまりのことに、飲みに行きました。
 どこか遠くへ行ってしまいたくなりました。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
 ↑
 全話の中から、このラインを探して下さい。
 ここが記憶の分かれ目です。


 ある時期、いろんなトピで僕が騒いでいたのが記憶にある方もおられるかと思います。
 その正体がこれです。
 あのとき、何を大げさなことを、とか思っていた方、納得していただけましたでしょうか。

 皆様のご香典、お待ちしております。
うっ!やられた…

なるほど、そうですか。
こういうことなのね。
うん、第一話から読み返したくなりました。

そしてウミガメの産卵のように書き上げたというやっきーさんの最終話が読みたいっす!
 まだ書き上げてませんって。ようやくこの7話のところまできたところです。
迫力ですね。ええ。お疲れ様でした!

やっきーさん、
さすが、荒野チーム壮大ですね、完全に読者なのでとても
楽しんでしまいました。ご馳走様でした(礼)
あながち、一番最初の予想は外れてないかも、と期待に胸膨らませておりまする。ぬーん。
え〜っと...え〜っと...

ち〜ん♪合掌!!
 まだ書き終わってないから言えるんですけどね。

 荒野チーム最終話、これまで出てきた全ての伏線を、端役の細かいところに至るまで全部繋げて、さらに一捻りさせた上に、アクロバティックに着地させ、ブラボーと拍手せざるを得ないような話になります。

 いやそれは無理やろー。

 でも最後まで読んで下さいね。
いや〜僕誰さんすごいな〜
いままでの流れを一気にご破算!って勢いで。
こりゃたまげた。
【荒野に生きるチーム 第7.1話】に続きます。

http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=28290729
あわわわ・・・・

お、面白いっっ
そうきたのかっ
そうくるんですね。


とりあえず、読み返します。

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