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詩人の森コミュの空色の歌/NagoMitill

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こんにちは。 和 路流(Nago Mitill)と申します。
日常のなかで、風にまかせて、自由に詩を綴っています。

こちらにお部屋をお借りして、徒然に創作した詩を掲載しております。比較的、明るめ&前向きな詩が中心です。
どうぞ、のんびりご賞味ください。

詩のブログ 『*Eternal×Blue*』も運営しています。
こちらの『空色の歌』と重複する詩が多いかと思いますが、よろしければご訪問ください。空の背景で綴っております。携帯からも青空ご覧になれます。

http://nagomitill.blog.shinobi.jp/

コメント(57)

「なくした恋の記憶」


今、意識して忘れようとしている。
目をそむけ、何もかも知らないように振舞う。
忘却という時の贈りものが
破れ、爛れた傷口を、甘く苦い感傷に変えるのを待っている。

けれど、ささいなことを切っ掛けにして
忘れていたはずの感情が、ふいに蘇り、
僕を、強く揺らす。
胸に深く突き刺さる痛み、ほとばしる悲しみ、
そして、雪崩のような苦しいだけの、愛おしさ。
君への喪失感は、まだ生々しすぎて
無理やり縫い付けておいた傷口を引き裂き、赤い血が零れる。

記憶の中の痛みに
立ち向かえるだけの勇気が、本当は欲しい。
僕の中の君という存在を、黒く染めたくないから。
君を追いかけ、罵りたくなる、僕の醜い感情を
ただ、今は自分に泣くことを許して 止める。

いつかは君を、僕の優しい記憶にする。
懐かしい愛おしさで、君の笑顔を思い出す。


                (2007年・筆)  
「call me my name」

今も まだ、あなたを愛していること
確かめるために、私の名を呼んで。

私の名前を、呼んでください。

あなたが、私の名を呼んで、
私の存在を、ここに認めてくれる。
それだけで 私は
明日を生きていく勇気が持てるのです。

だから どうか
私の名を呼んで。
私の名前を、呼んでください。

あなたが私の名前を呼んでくれる限り、
私は、ここにいます。
そして、私も、あなたの名前を 呼び続けます。

愛しい人、愛しい人
愛しい人よと。

                     
(2000年・筆)
「壊の音」

激しい音を秘めたまま、きみは大人になるのかと
僕はいつも問いかけてきた。

一体何を、きみに贈ればよいのだろう。
僕がきみに残せるものは…かすれたこの言葉だけだ。

大人気ない、大人気ないと、僕は言われ続けたけれど
こうして、きみも大人になっていく
ああ、時が過ぎるのは早いね。

きみはこれから、この世界で何を見出すのだろう。
僕の不安の一つ一つを、きみは激しく噛み砕いていく。
きみはこれから、何を思うのだろう。
何を変えて行くのだろう。
僕はそれを、見ていてあげられるだろうか。

けれど、後悔も後ろめたさも、きみには似合わない。
そうだね、
きみは、きみが生きたいように行けばいいと、
この頃僕は そう思えるようになった。

…激しい音を秘めたまま、大人になったきみを
僕は、きっと見てみたいんだ。
                                          (1999年・筆)
「クオリティー・オブ・マイライフ」

真っ直ぐな道を、今、ずっと夢見ている。
前を向こうとするほど、進みにくくなる この道。
でも
僕は、行くよ。

今の自分の力を
もっと、素直に信じてみたいんだ。
欲しいものは、欲しいと、はっきり声を上げて
望みがあることを 自分の胸に問いただし、
一歩を踏み出す勇気を、この2本の足に搾り出させる。
だって、きっと
自分で望まなければ、何も手に入りはしない。

行く先に、何があるか知っているわけじゃない。
欲しいものが、そこにあるのかも分からない。
はっきりしているのは、前を向こうとするほど進みにくくなるということだけ。

知らない世界を、僕は見たがり、
掴めないものを、僕は追う。
そして、傷つき、迷うにちがいない。

でも 今、
真っ直ぐな道を、ずっと夢見ている。

最後まで付き合ってくれるかと、自分の胸に問いただし、
僕は、行くよ。

                                          (2007年・筆)
「春待ち」


青い空を夢見て 目を閉ざし
僕は ずっと待っていたんだ
春が僕のもとへ やってくるのを

春が来て あたたかな陽と優しい風が辺りに満ちたら
その時 僕は目覚め 大きく花開こうと思っていた
灰色の重い空の下 木枯らしの吹きすさぶ不毛の地の上
僕は ずっと待ち続けた 春が僕のもとへ やってくるのを

何年もの間 目を閉ざし続けた僕は
現実逃避という名の 長い長い夢を見ていた
鏡を直視することもできず 斜め向こうの歪んだ自分と目を合わせ
何もかも上手くいかないのは まだ自分のもとに春が来ていないせいだと信じて
僕は ずっと待ち続けた 春が僕のもとへ やってくるのを
彼方の青空に憧れながら
僕は ずっと恨み続けていたんだ 春が僕のもとへ やってこないのを

でも それでは駄目なのだね 人は花とは違うから

何十年何百年と雪の下で ひたすら望む春が来るのを待つことはできない
春を待つ傲慢さが 植物である花が持たない 人の可能性を忘れさせていた
僕には 足がある 春を探しに行くための
人は花とは違うから 
自分で あたたかな地を目指さなければならないのだね

青い空を信じて 僕は立ち上がる
あたたかな春の地を目指し 灰色の地を旅立つ
僕が自分を独り閉じ込めていた白い雪を ゆっくり踏みしめながら


                (2007年・筆)
「小さきものよ」

                         
小さきもの
弱きものよ、行きなさい。
あなたは幼く、そして儚い。
けれど
あなたが築く輝かしい世界を、
私は きっと見てみたい。
試されるための この地で、
あなたは苦しむでしょう、泣くでしょう。
それでも
小さきものよ、行きなさい。
あなたは美しく、そして貴い。

私は、ずっと 夢を見てきました。
いつの日か、この耳に届く
あなたの歌を 信じるためならば、
私は全てを捧げましょう。
あなたは憎むでしょう、怒るでしょう。
けれど いつか、笑うでしょう。
あなたが紡ぐ力強い声を、
私は きっと聴いてみたい。

あなたは脆く、そして儚い。
けれど、行きなさい。
あなたは逞しく、そして貴い。

小さきもの
弱きものよ、行きなさい。
                              
               (2005年・筆)
「天国の底」


手のひらを 空へ かざそう。
瞳を軽く交わしあい、
そして、僕たちは生きていこう。

いつの日か、何処からともなく集まっていた。
他人と自分の涙で、冷たく手を染めて巡り会って。
新たな自分が知ることを、互いに、認め。
そして、僕たちは再び生き始めるのだろう。
僕ら、この心臓が打ち始めた時は違うけれど
一緒に居れば、きっと必ず、鼓動が重なる瞬間が存在する。

罪を許してくれとは、互いに問わない。
ただ、誰もが悲しみを胸に抱えて
いつか、それを語り合えればいいと
ここから互いのために祈っている。
魂の熱を 分かち合おう。
この手は、誰かを支えるためにある。

「善」でも、「悪」でも
どちらでも構わないし、どちらである必要性もない。
ただ この手を差し伸べるから、力強く笑って。
そして、共に生きていこう。
自分が信じ、愛するもののために。
未来を共に夢見ることが許される、この天国の底で。

手のひらを 空へ かざそう。
瞳を軽く交わしあい、
そして、僕たちは生きていこう。

                                         (1997年・筆)
「許される日まで」


許されることを望む 孤独な魂が
最後に頼るべきなのは
形の無い彼方の神なのでしょうか

でも無神論者には辿り着ける天国などありはしない
たとえ 世界中の誰もが私を許すと言っても
形の無い彼方の神が私を許すと 誰かが言っても
私が私を許さない限り 何時までたっても この心が軽くなることはないのです

この途方もない罪悪感が どこからやってくるのか
私には分からないのです
大それた犯罪をなしたわけでもなく
どこまでも ただ普通に生きてきたはずなのに
私の中の誰かが 私を責め続ける
私を許さないと 胸の奥底から叫ぶのです

無神論者には そうして辿り着ける天国などないから
私は この地上を 許しを求めて彷徨う
たとえ 形の無い彼方の神が私を許すと言っても
私が私を許せない限り 真に許される時は来ないのです

それでも 何時かは自分を許せる私になりたいから
旅することを 私は止めない
最後は 自分を許して空へ旅立つことが出来るように
私は 立ち向かい 戦い続けたいのです
許される日まで


                
          (2007年・筆)
「今をゼロにする勇気」


常に ゼロ、
今が、ゼロなんだ。
だから、僕は生きる。

目的、理由、使命、
そんなものが人生にあるべきなんて、僕には思えないんだ。
呼吸する一つの体と、この心だけが
ただ、僕のものだ。

今が ゼロ、
全て、ゼロなんだ。
なのに、どうして運命が必要なんだい?
常に ゼロ、
今も、ゼロなんだ。
だから、僕は走る。

将来の可能性を はかってから走り出せるほど
僕の命は長くないから
不安も、悲しみも、僕にはないんだ。
僕は、僕だけのもの。
苦しんでいられるほど、僕は暇じゃないんだ。
だから、僕は歌う。

常に ゼロ、
今が、ゼロなんだ。
だから、僕は踊る、走り続ける、小さな大地の上を。
悩み、迷い、痛み、
そんなものが人生に必要だなんて、僕には思えないんだ。
強さも、誇りも、自信も、
僕はいらない。
僕の中に はじめから全てはあったんだ。

過去は ゼロ、
未来も、ゼロなんだ。
なのに、どうして人生に価値が必要なんだい?
なぜ、今 叫ばない?
なぜ、今 歌わない?
いつまでも迷っていられるほど、この人生は長くはない。

常に ゼロ、
今が、ゼロなんだ。
だから、僕は生きる。

                                          (2000年・筆)
「魂の色は七色」

魂の色は 七色だから、
君が 今 何色でも、これから何色になっても、
それで、いいんだ。

君よ、
囚われずに、変わっていけ。
風に乗り空を駆ける、あの雲のように。
君が 今 何色でも、これから何色になっても、
君は、君だ。
世界に ただ一つの、美しい魂だ。

移ろい、流れていく この世界の中で、
僕も変わっていく、とりどりの七色に。
でも、忘れないで。
僕が僕であることに、変わりはないということを。

君よ、
恐れずに、変わっていけ。
魂の色は 七色だから、
君が どんな色であっても、
それで、いいんだ。



             (2007年・筆)
「約束の場所へ」


どこへ行こうとも、最後は あなたの隣へ戻ります。
そこが、私の帰るべき場所だから。

あなたは覚えていますか、あの日の約束を。
あなたと私が
未来で出会うために交わした、たった一つの約束です。
私は、覚えています。何時までも、鮮やかに。

夢に、見るのです。
澄んだ青い空の下、金色に輝く麦の穂の海
そこを抜けて辿り着く、風駆ける緑の丘です。
この世界から、あらゆる苦しみや悲しみが消え、
互いに、憎むことも、争うことも無く
誰もが幸福に生きることができる、そんな日が来たら
空と海が溶ける青い水平線を見ながら、この丘の上で
もう一度会おうと、約束したのです。

あなたは、笑っているでしょうね。
苦しい時は何時も、輝くような笑顔で あなたを思い出します。
忘れないのです、あの日の約束を。
あなたの隣へ戻るために、私は
たとえ少しずつでも、歩むのを止めずに、今、生きています。
何時か、約束の日がやって来るのを、ずっと信じているのです。

美しく平和に満ちた、優しい未来で
あなたは、笑っているでしょうね。

あなたは覚えていますか、あの日の約束を。 
私は、覚えています。そして、信じているのです、今も鮮やかに。
あなたと もう一度出会う、未来の約束を。

どこへ行こうとも私は、最後は、あなたの隣へ戻ります。
そこが、私の帰るべき場所だから。


 
             (2007年・筆)
「appetite」


そこにあるものが 美味しいのであれば
あなたは今、幸福なのです。

腹を満たすためだけでなく、
心を満たすために、人は食事をするのです。

懐かしい人たちと囲んだ美味しい記憶のにおいが、
温かくやわらかいスープへと私をいざないます。
顔がある人間が作った料理を、だから私は食べたいのです。
時に他者を傷つけ、あるいは殺すことさえもする人間の手が、
人間のために作る料理を味わいたいのです。
そして、この胸にある記憶を あなたと分かち合うために
私は料理を作り、満腹するのです。

そこにあるものが 美味しいのであれば
あなたは今、幸福なのです。

腹を満たすためだけでなく、
心を満たすために、人は食事をするのです。

生きるために あなたは今、ものを食べるのです。
                                              
                                           (2006年・筆)
「僕の自由」


自転車を乗り捨てて、駆け上がった歩道橋の上。
流れる車を下に見ながら、一人 跳ねて踊った。
土砂降りの雨で、制服は ぐしゃぐしゃ。
泥にまみれても、気分は最高だった。
灰色の空を見上げながら、その時 思った。
僕には、自由がある。
今、ここから飛び込んで、車の波に血を ぶち撒けるのも、僕の自由で、
明日から続く未来を見に、生き続けるのも、同じだけの僕の自由だ。

広い世界を見るのが怖くて、自分で目を逸らしていたのに、
自分で作った狭い部屋の中で、
世界は狭い、誰も僕を受け入れてくれないと嘆き、
世界を憎んだつもりで、自分を嫌悪していた。
群れるより孤独がいいと、冷めたふりを装いながら、
他人の価値観に依存した定規で、自分の度量を測ってたんだ。

泥まみれの制服で踊った時、分かった。
今、死を選ぶのも、生を選ぶのも、
同じだけの価値がある、僕の自由。
世界を狭めるのも、世界と繋がるのも、僕の自由。

自由が無造作に与えられているという幸運を噛み締めながら、
完全な自由は、ただ孤独を生むのだと知った、若い日の僕。

孤独に死ぬのも、世界に僕を生かすのも、
僕の自由。
古ぼけた歩道橋の上で、踊らなくなった今も、
灰色の空を見上げながら、自由の意味を考えている。

僕は、自由だ。


              (2007年・筆)
「風のように僕は」


進むべき方角は、分かっている。
誰かが、そこから僕を呼んでいるんだ。
ずっと 昔、
この世界に生まれ出でた時から僕は、
その呼び声を、聞いてきた。

小さい頃は 夢が一杯あったなんて、
可能性を自分で削っていくような生き方は、したくない。
どの道を選んでも、目指す目的地は同じと気付いた。
幼き日々、若き頃と同じ方角へ向かって、
走り続けている、今も。

遠く、彼方から、僕を呼ぶ声がする。
誰かが そこから僕を呼んでいて、進むべき方角は分かっているのに、
全力で駆け抜けることを、いつも ためらってしまうのは、
自分を信じる勇気が、僕に足りないからだ。

迷う時は、いつも僕に問う。
ここで立ち止まりたいのか、それとも、先へ進みたいのか。
答えは、前から分かっている。
僕は きっと、立ち止まっては いられない。

辿り着けなくてもいい、そこへ行ってみたいのだ。
走れない時は歩もう、それでも前に進む。
胸の奥、心の彼方から、誰かが僕を呼んでいるんだ。
そこへ向かって駆けるため、僕は生まれてきた。
空わたる青き風のように、僕は 精一杯 生きたい。

幼き日々、若き頃と同じ夢へ向かって、
走り続けている、今も。
生き続けていく、これからも。
風のように僕は、精一杯 生きたい。



                (2007年・筆)
「あたたかな青き水」


愛するものも守るものも無い地上で、生きていけと言われたら、
それは、僕の苦痛による彷徨の始まり。
魂に蓄えておいた恵みを切り崩しながら、
うるおい求めて、乾いた大地を さまよう。

水を、水を、
あの懐かしく安らかな青い水を、僕にくれ。
手の中で必死に握り締めている、最後の希望の一片に、
青く美しい水を、心ゆくまで与えてやりたいのだ。
この最後の希望が、乾き切り、砕け散ってしまう前に。

荒れた道の先、銀の湖面を見かけては走り、
逃げ去る銀の水に むしろ前より乾いては、絶望の砂地に転がる。
ただ夢の中でのみ、緑の蜃気楼と そこに満ちる青い水を見るだろう。
その時、僕は思い知るにちがいない。
本当に大切にすべきものが、何だったのかということを。

久遠の彷徨の果て、最後に思い出すのは きっと
君の手の優しい体温だから。
どうか、僕の手を離さないでいて
僕に君を守らせてくれ、僕の心を守るために。

一度 失ってしまえば、そう簡単には取り戻せないこと、
もう僕は知ってる、君までの距離 乾いた地の上を さまよってきたから。

今、強く握り締める
この手は、離しては いけない手。
君は、僕の希望を救う 青い水。



               (2007年・筆)
「螺旋の光、虹色の夢」


輝ける あなたよ、 
その命は、いつまで続くと思う?
悲しいほど 遠く広い この地上で、 
私たちの声は、どこまで伝わるのだろうか。

去り行くものは、限り無く遥か。
猛々しく この身を躍った、温かな血潮も、
語り尽くせぬ、深き晴れやかな大地へと、
言葉 記す間も無く、喰われるだろう。

螺旋の先に見えるものを、
あなたも また、望んだのですか?

ついばむように命を吸い続け、
残るものは、なんでしょう?
…あなたが追いかけるものは、いつも螺旋階段の上。
けれど、今、輝こうとする あなたよ、
聞こえますか?
夢見ることは、私たちの罪ではないのです。

あなたに訪れるものは、すべてが一瞬、淡い虹色の光。
あなたよ、 
夢見る命の光を掻き分けて、夢より確かな声を切り拓け、
この虹色の螺旋の彼方に。

あなたが追いかけるものは、永久に螺旋階段の上。
けれど、すべてが沈黙の帳へと色を変える前に、
まばたきにも等しい、あなたの命の螺旋が消え行く前に、
輝ける あなたよ、
夢見ることは、罪ではないのです。


                                           (1999年・筆)
「on the edge」


境界線の上に立って、
迷っている時間が無いのなら、
今、線を蹴って走り出そう。

なあ、人生は賭けみたいなもんだろう?
誰に どう言われようと、誰に どう思われようと、
自分が 今、思い切れるか、そうじゃないか、
それが、すべてなんだ。

どこまでも続く白い平行線の上で踊って、
チャンスが寄って来るのを、ずっと待っているよりも、
ゼロじゃない可能性を探しに、 
今を、賭けてみたくなったんだ。

どちらへ足を踏み出すのか、必要なのは、
あと少しの、なけなしの僕の度胸だけ。

境界線の上に立って、
迷っている自分が嫌なのなら、
今、線を蹴って明日へ走りだそう。


                 (2007年・筆)
「二つの虹のもとへ」


晴れた日に、雨が降ったら、
約束します、その時は空を見上げると。
空の端に、虹があったら、
二つ目の淡い虹を探しに、扉をくぐること、
それが、私の楽しみなのです。

そこには、あなたが、あなたがいるから。

何もかもが、ひどく懐かしいのです。
雨に洗われた風の匂い、高鳴る私の胸の鼓動。
二つの虹が架かるところへ、どうしても走り出したくなる私は、
知っているのです。
もう二度と取り戻せない優しい思い出が、
あの虹のもとで、微笑んでいることを。

雨にぬれた青い空に、虹があったら、
約束します、その時は笑顔で あなたを思うと。

そこには、あなたが、あなたがいるから。


             (2007年・筆)
「泣くことの意味を教えて」


『泣かない大人になりなさい』、そういうふうに育てられ、
それが正しかったのか、疑問を持った時には、
僕は、『泣けない大人』になっていた。

涙の無い僕の世界では、何も悲しくないのです。
胸しめつける、痛みも苦しみも、ない。
ただ、この世界は全てが色褪せていて、ガラス越しの鈍い感覚、
モノクロームなのです。

君が、あの時 何故泣いたのか、僕には分からなくて。
笑顔に意味があることさえ、知らなかった。
君の優しさに気付けなかった僕の隣、もう君はいない。

涙の無い僕の世界では、何も悲しくないのです。
涙に変えられなかった凍えた感情が、淀んだ怒りとなって積もるだけ。
この世界には、いつも理不尽な怒りが渦巻いていて、
ガラス越し、僕を拒否する外の世界へと向かっていくのです。
そして僕を、モノクロームの中、孤独にする。

泣くことの意味を知らなかった僕は、 
僕を孤独にしているのが、僕自身だと気付かなかった。
君の涙、君の悲しみが、分からなかった。
泣けなかった、大人の僕。
でも本当は きっと、泣きたかった。
涙の無い、泣いてはいけない、意地っ張りな僕の世界を打ち壊し、
モノクロームじゃない君を抱きしめて、
声に出して僕の心を伝えたかった。

泣くことの意味が分かったら、僕は悲しみ、苦しむだろう。
それでもいいと思える勇気が、僕の感情を自由にする、
僕の世界を、鮮やかにする。
素直に泣いて笑える、そんな大人になれたら出かけよう、外の世界へ。

もう一度、君と出会うために。


             (2007年・筆)
“Dear my company”


僕ら、心の中どこかで繋がっていること、
互いに分かっていたから、何気なく別れたんだ。

涙も感慨もなく、当たり前に笑って別れてから
電話もメールも、ずっと、やり取りしていない。
でも、疑っていない、何年たっても変わらないこと
この空の下で一緒に生きている、僕らは仲間だ。

思い出したように時々、メッセージもない無口な手紙だ け往復している。
無理に会おうとも思わない。
この先、二度と会えなくても、心は繋がっているから、
寂しくなんてない、お互い苦笑いで思っている。
きっと、あいつは、相変わらずで、何とかやってんだろ う。
僕も、そうだから。

もし、偶然、また会うことがあったら、
素直に喜んで、朝まで飲み明かそう。
でも、たぶん、本心は明かさない、大事なことは話さな い。
言わなくても分かってる、僕ら心の中どこかで繋がって いること。
遠く離れて、別々の道を歩んでいても
何時も一緒に生きている、僕らは仲間だ。

僕ら、共犯者のようで、魂のあり方が、どこか似過ぎて いること、
互いに分かっていたから、何気なく別れたんだ。
未来で会う約束があってもなくても
僕ら、心の中どこかで何時も繋がっている
同じ場所目指して、同じような道を歩んでいる。

この空の下で、一緒に生きている。
僕らは、仲間だ。


(2007年・筆)
「優しい人になりたい」


目を逸らさずに、君の隣に立つ。
苦笑いせずに、君の名を呼ぶ。
そんな日が、いつか、いつか来るだろうか?

嘘吐きと、君に言われるのが怖い。
強く約束できない、自分も怖い。
予測できない闇の向こうの未来に、僕は ただ強く震える。

強くなれたはずのチャンスを、僕は幾つも見過ごしてきた。
自分に優しいだけの世界で、自分を包むのが好きだった。
傷つけられるのが怖いから、優しいふりをしていただけで、
僕は本当は、優しい人なんかじゃなかったんだ。

だから、君の優しさが怖くて、信じられなくて、
でも、眩しかった。
そして、つらかった。
君の隣で、その優しさに値しない自分を見つめることが。

逃げたいという胸の葛藤、苦しむ僕を引き止めるのは、
予測できない闇の向こうの希望。
僕の優しさを信じてくれた君の優しさに、僕は ただ強く震える。

優しい人に、なりたい。
たとえ いつか、君が僕を裏切っても、強く許せるような。

目を逸らさずに、君の隣に立つ。
苦笑いせずに、君の名を呼ぶ。
ためらわずに、君を信じる。
そう出来る日が、いつか、いつか来るだろうか?

予測できない闇の向こうへ続く未来に、今、僕は ただ強く震えている。


               (2007年・筆)
「いつか君に届く歌」


この遠い空の下、僕ら どこまで行けるか分からないけれど、
手を繋いで行こう、二人なら、
虹の光の向こうまでも、きっと歩んでいける。

今は、まだ遠いところにいるのだろう、君は
それでも見上げてますか、僕と同じ この青い空を。
もし君に会えたら、僕が差し出すだろう この手があることを、
どうか、忘れないで、おぼえておいて
手を繋ぐ相手がいること、君と共に歩む日を僕が待っていることを。
同じ空の下にいる限り、僕らは決して独りじゃない。

この広い空の下、どこまで届くか分からないけれど、
この声が君に届くまで、君に会える日まで、
僕は歌う。
君と手を繋ぎたいから、手を繋いでいたいから、
僕 独りでは辿り付けない、美しい世界を、
君と一緒に、見たいから。

世界は広くて、僕は一人だから、
時々、僕は とても孤独になる。
そんな日は いつも、空を見上げて思っているよ。
君のことを、この同じ空の下 どこかで生きている君がいることを。

いつか届く、そう信じているから、頼りなくても僕は歌う。
君がいるから、僕は歌えるんだ。

この遠い空の下、僕ら どこまで行けるか分からないけれど、
手を繋いでいよう、忘れないで、
この手が君に繋がっていること、今、君と共に歩む僕がいることを。

同じ空の下にいる限り、僕らは決して独りじゃない。


             (2007年・筆)
「幸福の定義」


無いものねだりなんだ、僕らは。
今 ここに無いものばかり欲しくなって、追ってしまう。
冷めた日常のなか、本当に大切にすべきもの どこかへ見失っていく。

衣食住 足りていれば、ヒトとして十分なはずなのに、
今や、お腹が いっぱいでも、僕らは幸福になれない。
ささやかな日常に鈍くなった心が、満ち足りない寂しさで僕らを駆り立てる。
空しさを埋める糧を、僕らに追い求めさせる。

無いものねだりなんだ、僕らは。
ここに無いもの、まだ手にしていないもの、ありふれてないもの、自分のものにすれば、
幸福になれるような、そんな気がするんだ。
だから、死が少なくなった この豊かな社会でヒトは、
むしろ 自分を殺したり、他人を殺したり、するのだろう。
死が ありふれた社会では、生が望まれ、大切にされるように。

いつから僕らは、幸福が どこか遠いところにあって、
ここには無いのだと、そう思うようになったのだろう。
いつから僕は、心を満たす糧を むなしくどこかへ追い続ける、
無いものねだりの人間に、なったんだろう。

どこかで分かってるんだ。
何を手に入れても、どこを探しても、
心を満たす手段など、この世界のどこにも見つかりはしない。
僕は、いつまでたっても幸福になんてなれない。
自分が幸福だと、自分でそう思えない限り。

無いものねだりなんだ、僕らは。
物に満たされた社会のなか、本当に大切なもの どこかへ見失ってしまう。
幸福になるためのすべが、初めから ここにあること、忘れてしまっている。

幸福の定義は、常に自分の心に依存しているんだ。
僕の心を満たせるのは、僕の心でしかない。


                (2007年・筆)
「初夏の祈り」


雨と緑を含んだ風が、私を過去へと連れて行く。
かすかな夏の匂い、高くなっていく空の青。
何も変わらない、ある初夏の日。

泣かせてください、ただ強く。 理由は問わずに。
まぶしく愛おしい思い出が、今、この季節にだけ輝いて、
私は、あなたを片時も忘れていなかった自分に、気付くのです。

失われたもの、優しい あなたの気配が、
もう一度、私のかたわらに戻ってくるような、そんな気がするから、
懐かしい夏の匂いに、涙が込み上げてしまうのです。
どれほどの祈りを、この胸に積もらせても、
もう、あなたに会うことは叶わない、分かっているのに。

雨と緑を含んだ風が、再び夏を連れて来る。
何も変わらない、でも、あなたはいない、ある初夏の日。
泣かせてください、ただ強く。
懐かしい匂いのなか、今も あなたが私に寄り添っているような、
そんな気がしてしまうから。


             (2007年・筆)
「青い記憶」


目を閉じれば、僕の意識は遠く旅立って行く。
ここではない どこかへ。
過去の、今の、未来の情景が、
ぱらぱらのカケラ、光の破片となって、僕のなかを通り抜ける。

僕は、鳥になる、魚になる、雲になる。
青い、青い風になって、海の上、駆けて行く。
思い出すのだ、囚われることなきもの、その強き存在を。
僕の魂は、こんなにも、自由だ。

風の甘い匂い、覚えているはずもない
はじまりの場所は、青、青い記憶。

ここではない どこかへ、帰りたい。ずっと、そう感じてきた。
だが、いつかは そこへ戻るのだ、焦らずとも、不安に思わずとも。
そして、魂は いつも、この青い記憶と繋がっている。

取り戻すのだ、囚われることなきもの、その強き輝きを。
肉体という ただの物質を、僕という無二の存在に変える、形無き思いの結晶。
僕を形作る、唯一のチカラ。

目を開けば、僕の意識は小さな体のなか。
でも、確かに この体に宿る、形無きもの、青い記憶。
僕の魂は、こんなにも、自由だ。



              (2007年・筆)
「夜明けの空は無条件に僕を包む」


眠れないまま白い朝日を浴びてしまった、そんな日は、
いつもより目に染みる空の青、負けた気持ちで見つめている。

抜けるような澄んだ空、明るい日差しに輝く鮮やかな世界。
当たり前に美しいはずの全てが、急に嫌になるのは、こんな時なんだ。
世界中のキレイなもの、僕のものにはならない、そんな気がして。

いつのどこの過ちが、僕を こんな遠くまで連れて来てしまったのだろう。
振り返ると、僕が傷つけた人たちの顔ばかり浮かんできて、
強い疎外感に、胸が締め付けられる。

謝りたい、そう思ってしまうのは きっと、
僕が、許されたいから。
世界は、まだ僕を受け入れているのだと、僕は ここで生きていていいのだと、
何かに ただ、認めてもらいたくて。
色んなもの あきらめ切れずに、また空を見上げている。
夜明けの冷たい風、胸いっぱいに吸い込んでいる。

誰も傷つけずに生きることできたら。心から、そう願うよ。
でも、それは不可能なことだね。
当たり前に僕らは、別の人間だから、別の心を互いに持っているから。
取り出して見せること叶わない僕の心。
伝えられないこともある、伝わらないこともある。

色んなもの あきらめずに、また空を見上げる。
夜明けの青が目に染みる、朝の風 立ち上がって受け止める。
それでも やっぱり、世界はキレイだと、まだ そう思えるから。

 

              (2007年・筆)
"the last piece of my heart"


あなたと手を繋ぐ夢をみる。
それは、優しい夢なのです。

若かった頃の私は、自分に足りないもの埋め合わせたくて、あなたを求めていた。
どうしようもなく寂しい気持ち、あなたが側にいてくれれば、きっと満たされるからと。
どこかで失くしてしまった心のカケラ、当てはまる唯一のピース、それが、あなた。

でも、あなたと手を繋いで、知ったのです。
あなたというピースが、私の胸を温かく埋めるように、
あなたのなかにも、私の心のカケラが確かに息づいていることを。
だから、もう良いのです。
どこにでも、自由に行ってください、あなた。
私のためだけに あなたが生きることを、私は決して望みはしない。

預けたのです、あなたに、私の心のピースを。
独りで生きているのではないこと、私に教えてくれたのは、あなた。
遠く離れていても、この手は いつも あなたに繋がっている。
分かっているから、私は強く生きていける。

ただ、忘れないでいて欲しいのです。
あなたが、私のラスト・ピースであることを。
そして、どこへ行こうとも最後は私の隣へ戻り、
もう一度、手を繋いでください。
あなたというピースのため、私の隣は今もずっと空いている。

あなたと手を繋ぐ夢をみる。
それは、優しい最後の夢なのです。



              (2007年・筆)
「扉」


扉を閉ざして、耳をふさげば、
僕は一人、一人きり、
誰も僕を傷つけないし、誰も僕を見ない、
そんな、安穏とした世界に浸れるだろう。

けれど、僕は一人、一人きり。

扉を開いて、外へ踏み出せば、
きっと、僕は傷つくだろう、
でも 一人じゃない、きっと 一人きりじゃない。

優しい 自分だけの楽園を守ることしかできないほど、
僕は臆病な人間では、なかったはずだ。
傷ついてもいい、僕は人として、
人とともに、生きたい。

いつだって、扉は開いていたんだ。
僕が、気付かないふりをしていただけで。
ここを飛び立つ勇気が、ただ僕に足りなかった。

扉を開いて、外へ踏み出せば、
世界は、それほど 優しくはないだろう。
でも 一人じゃない、きっと 一人きりじゃない。



          (2007年・筆)
「永遠を探す理由」


失うことを恐れながら、僕らは生きていくのだね。

きみの言葉に、穏やかに耳を傾けながら、
僕は、いつまでも、いつまでも、この時が続けばいいと願っている。

ああ、でも いつか失われるからこそ、すべては こんなにも愛おしく美しいのだろう。

たとえば、空の青でさえ、遠い未来には無くなってしまうように、
この世界には、永遠なんてありえない、分かっているのに。

いつか きみも、いつか 僕も、この世界から消えていく。
失われるという未来は、こんなにも ただ恐ろしくて、
僕は、空の彼方に、永遠を探してしまうんだ。

きみの笑顔に、心を震わせながら、
僕は、いつまでも、いつまでも、この ぬくもりがあればいいと祈っている。

失うことを恐れながら、それでも僕は、きみと生きる。

ああ、いつか失われるからこそ、すべては、こんなにも愛おしく美しい。


              (2007年・筆)
「道化師の祈り」


あなたに笑ってほしい。
そのために私は、いつも笑っていようと思います。

どれほどの悲しみが、みじめさが、苦しみが、この胸に渦巻いても、
あなたの前で、私は泣かない。
馬鹿な強がりでもいい、いつでも私は笑顔でいたいのです。

悲しいからと、嘆きにすがりついていても、どうにかなるわけでなく、
私が不幸に顔を染めていれば、あなたの顔も暗く歪み、
悲しみを、ただ増殖させてしまう。 だから、私は笑います。
はじめは嘘の笑いでも、あなたが笑顔でいてくれるなら、
本当の笑顔を取り戻すのも、そう難しいことではないのです。
そして、あなたが悲しみにくれる時、私は笑顔で あなたを受け止める。
あなたの笑顔を、取り戻すために。

どうしても耐え難く つらい時には、私は一人で泣きます。
青い空の下で、深い夜空の底で、
自分のために、私は泣きます。
泣いて泣いて、涙が尽きたら、
あなたのために、私のために、
私は もう一度笑える。 笑顔で時を歩める。

私が泣き笑いをしていることに気付いても、どうか黙っていて。
無理を強いているのではなく、自分のために、
私は笑って生きることを、心に決めたのです。
あなたに笑ってほしい、そのためなら私は、どんなピエロにもなる。

限られた命を、あなたと、少しでも より幸福に生きたいのです。
道化師の祈りが儚いものだったとしても、私は、
あなたのために、私のために、
いつも、笑っていようと思います。



                (2007年・筆)
「灰色の選択肢」


何もかも白黒つけられれば、いいのに。
そしたら、今よりは もっとラクになれるだろう。

迷いがあるのは、ツラいんだ。
曖昧で未知数の未来が、僕を戸惑わせる。
でも、何かを選び取ることは、なおさら恐ろしくて。

選ばなくちゃいけないことは、たくさんあるのに、
100%正しいと割り切れる選択は、少ない。
選択肢をキープしたまま、僕は日々、空回り、
見つかるはずも無い別の出口、探している。

ねえ、今 ここで何かを選んでしまえば、僕は変わってしまうよ。
そして、選べなかった未来は、僕から失われて行く。
選び取るものが、正しいと、そう「正しいんだ」と、
誰かが保証してくれれば、きっとラクになれるのに。

迷いを受け止める強さのない僕は、 
ただ選択肢を灰色に染めている。
選び取れたはずの未来も、やがて灰色に染まって行く。

どこかで選ばなければいけない、前に進めない、
本当は分かっているから、胸の奥は焦りで燻ぶっている。
かき集めた勇気で、灰色の迷いに立ち向かっている。

灰色に広がる選択肢。
何もかも たやすく白黒つけられたら、いいのに。
そしたら、今よりは もっとラクになれるだろう。


                                            (2007年・筆)
「ネットの闇の向こう」


メールは嫌いなんだ。
きみの心が見えない。

暗くて深い闇のなかへ、言葉のカケラ、ぽんと放り出すようで。
きみが僕の声を正しく拾ってくれるか、それさえも分からない。
あやふやな不安感、耐え難いまま、送信ボタンを押している。

ネットの向こう、確かに きみは、そこにいるはずなのに。
きみの顔が見えない。きみの声が聞こえない。

時間も場所も越えて人を繋ぐ、便利な道具だと僕は聞いたけれど、
本当に僕らは繋がっているのか?
どこかへ消してしまいたくなるほど、この機械は僕を孤独にすることがある。

暗いネットの闇の向こう、このアドレスに、きみは いるはずなのに。
小さな機械、強く握りしめ、輝く画面を見つめていても、
きみの声が聞こえない。きみの心が分からない。

僕の声は きみに届いていますか?


                (2007年・筆)
「緑の呼び声」


吹き上げてくる風に手を広げて、
降り注ぐ雨に この身を溶かして、
ある日、どこかへ消えてしまいたくなる。

久しぶりに気分のいい日だったから、ふと思いついて。
緑が まだ綺麗なうちに、
空の青が胸に ひどく染みて、
見上げても見えない星が僕を呼ぶから、
すべてを捨てて ここから立ち去れば、二度と戻れはしない。

懐かしい歌声が、緑深き闇の向こうから僕を呼ぶ。
安らぎをくれるという優しい調べを、幾人が聞いてきたのか、
僕は何度、その呼び声を聞いたのか。
その甘い響きは さざ波のようで、いつからかずっと僕の耳に こだまする。
繰り返し、打ち返し、ふと湧き上がり、
忘れていた故郷のように、僕を捕らえる。
僕は立ち止まり、見つめる。緑の闇の向こうを。

強い風が吹いて木々がざわめき、僕を呼ぶ声がして振り返る。
世界がまだ綺麗なうちに、ふと どこかへ消えてしまいたくなる。

繋いだ きみの手の体温、僕の名を呼ぶ きみの声。
それが もし無ければ僕は、どうなってしまうのだろう。
分からない、本当は、分からない。
孤独に抗う術を、僕は まだ知らないから。

緑ゆらす風に誘われて、
降り注ぐ光に この手を差し出して、
どこかへ消えてしまいたくなる。自由な鳥のように。

気付けば風は止み、さざ波の呼び声は遠く日常の中へと消える。
まだ僕は行かない。
この地上に、僕の名を呼ぶ人がいる限り。


                  (2007年・筆)
「君のそばへ行く」


君のそばへ行く。
あらゆる迷いを越えて、
僕は君と共に生きよう。

君を愛するということは、
僕にとって、恐怖と等しい。
いつか失う、美しき命を前に、
僕は震え、立ち尽くすしかない。

できれば遠い空の下から、どこかで生きる君の幸せ、祈りたかった。

でも今、あらゆる迷いを越えて、
僕は、君のそばへ行く。
いつ失われるか分からない命の前に、僕たちは無力で、
失ってからでは遅く、生きている今が すべてなのだと、
ある雨の日、宵闇へ向かって帰りながら、気付いた。
死ぬ時に後悔する、そんな思いなら、吐き出すしかないんだ。

この声が、まだ君に届くうちに、
僕は、君のそばへ行く。
すべての悲しみや苦しみと引き換えに、
僕は、君と共に歩もう。



                    (2007年・筆)
「追憶の香り」


いつか、この星で、この国で、
季節が巡らなくなる、そんな時が来ればきっと、
あなたのことを、もう思い出さなくなるのだろう。

陽の傾き、風の音、花の香り、
どこかへ捨てたつもりの思い出が、よみがえるのは唐突で、
在りし日と同じ情景に、聞こえるはずも無い あなたの声が重なる。

あの日は晴れていて、遠く臨んだ夕焼けは澄んだ茜色。
群青の闇が濃くなっていくなか、肌寒さに唇を噛み、
大切なものが失われていくのを、ただ何も出来ずに見つめていた。

止めるすべもなく、無常に季節は巡っていく。
生きている限り、忘れられないものが思い出なのか、
痛みの記憶が感傷に変わるのを、今も待っている、祈るように。

淡い秋の夕闇、金木犀の残り香に、あなたの面影をみた。



                    (2007年・筆)
「"hometown"」


夢をみていた場所に、帰りたくなる。
きっと、そこが僕の "hometown"
繰り返す冷めた日常で見失ってしまった、あの日の風、
僕に思い出させてくれる、約束の場所。

都会の霞んだ夜空へ、見えない星を追うように、
つかめない未来が不安で、誰かに答え委ねたくなる。
だけど、誰が何を占おうと、僕は納得できないのだろう。
どんな夢をみて、ここまで生きてきたのか、
一番知っているのは、僕自身のはずだ。

疲れた時は いつも、帰りたくなる。
未来を夢みていた、あの場所へ。
すべてが輝いていたわけではなく、あの頃は あの頃なりに悩んでいた。
懸命に、生きてた。
分かったんだ。今を精一杯生きていれば、未来の自分は僕を責めたりしない。
今の僕は、あの頃の僕を責めはしない。

どんな夢をみて、追いかけ、たとえ それが叶わなくても、
大切な人たちと共に、穏やかに生きる事できれば、それで十分幸せなのだと、
臆病な僕は、心の底では そう夢みていたのだ、本当は。

駄目な自分に打ちひしがれ、弱さに涙して、
それでも生きられる、生きていこうと自分に約束した日、
校舎のフェンス越し、涙で霞んだ空はキレイな青、
頬を冷やす風は、懐かしい匂いがした。

都会の霞んだ夜空で、目指すべき星を見失っても、
夢をみていた場所を、忘れはしない。
あの日の風が、僕を導く。
きっと、そこが僕の "hometown"



                   (2007年・筆)
「あなたを忘れない」


何時が、あなたとの永遠の別れになったのか、
僕は、もう思い出せない。
さよなら、さよなら、
二度と会えぬ人よ。
僕は、あなたを忘れない。

数え切れないほどの人々と、
僕は、出会い、言葉を交わし、そして、別れてきた。
眠れない夜は、夜明けまで数えている。
もう二度と会えない、あなたのことを。

出会えば何時かは必ず別れる。
それが、すぐか、もっと長いか、それだけの違いなのだと、
気付いた時、僕は胸が一杯になった。
この世界には別れが多すぎて、
僕は、時々、もう出会うことさえ怖くなってしまう。
でも、本当に怖いのは、あなたに出会えないこと。
出会えた あなたを、忘れてしまうこと。
さよなら、さよなら、
僕は、別れを恐れはしない。
そして、あなたを忘れない。

あなたは、きっと覚えていないだろう。
街角で、駅で、コンビニで、ネットで…出会った僕のことを。
二度と会えぬ あなたを、僕は その笑顔で覚えているから、
誰かの心の片隅に、笑顔のような存在で残れるような、
そんな人で僕はありたい、一瞬の邂逅を大切に生きたい。

さよなら、さよなら、
二度と会えぬ人よ。
僕は、あなたを忘れない。

                            

                    (2008年・筆)

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