芸術の日本　美術・評論を中心にコミュの没後70年　坂口安吾展　あちらこちら命がけ／神奈川近代文学館

坂口安吾はこんなに人気あるの
？！

とびっくりの盛況！！

特に50代60代と思われる女性が
多かった

写真①左下

中華街・元町駅階上のバラ

写真①神奈川近代文学館

坂口安吾(1906ー1955)
太宰治(1909ー1948)、織田作之助(1913ー1947)とともに無頼派、新戯作派の代表的作家

安吾の仕事は、純文学からミステリーまでの小説群と、「日本文化私観」「堕落論」など批評的エッセイがありますが、私は、「日本文化私観」が好きで、日本文化あるいは文化一般を考える毎に読み返しています。

神奈川近代文学館の「坂口安吾展」は、安吾の生涯の軌跡を辿りながら創作の果実を味わうというオーソドックスな展開なのですが、そこは無類の無頼派、破天荒なエピソード満載です。

写真①右上、中

蒲田の自宅書斎を模した展示。

年譜によると1947年は、「桜の森の満開の下」「不連続殺人事件」など代表作を発表。『ヒロポン(覚醒剤)を常用して猛烈に仕事をする。』とある。
　

写真②左上、下

今回目を惹いたのは、安吾27歳(1932年)、前年「風博士」を発表し新進作家と呼ばれた頃のエピソード

1932年8月、矢田津世子(1907―1944)と出会う

矢田津世子は秋田県生まれの当時25歳。1930年に文壇デビューした女流作家。

写真②左上、下

見ての通りの、はっきりした顔立ちの秋田美人。後年、川端康成が女優になるよう勧めたのも頷けます。

翌年1933年1月から文通が始まっり、2人は急速に親密な間柄となり、矢田家の新潟の親戚と坂口家の繋がりもあり、両家公認の交際となりました。

しかし、この年の6月、津世子が新聞記者和田日出吉(1898―1977)と道ならぬ恋(和田は既婚者)をしていることを知り、安吾は失恋します。その後交際は途絶える。

1936年1月安吾との交際を再開。

3月津世子が代表作「神楽坂」を発表。女性視点で書かれた『妾を題材』にしている。同年の芥川賞候補となる。
5月津世子が安吾が住む本郷菊富士ホテルを訪ねる。安吾に絶縁の手紙を出す。
6月安吾が津世子に絶縁の手紙を出す。

安吾は、この間の事情を「二十七歳」「三十歳」という私小説にして発表している。

『テーブルをはさんで椅子にかけて、二人は睨みあっていた。
　私は私のヒゲヅラが気にかゝっていたのを忘れない。その私にくらべれば、矢田さんは一つのことしか思いこんでいなかったようだ。やがて私をハッキリと、ひときわ睨みすくめて、言った。
「私はあなたのお顔を見たら、一と言だけ怒鳴って、扉をしめて、すぐ立去るつもりでした。私はあなたを愛しています、と、その一と言だけ」
　私はそう驚きもしなかったようだ。はじめから、もう、たゞならぬものがあったから、我々が我々の最も重大なことにふれる日だということを、私はすでに知っていたに相違ない。～中略～「僕もあなたを愛していました。四年間、気違いのように、思いつづけていたのです。この部屋で、四年前、あなたが訪ねてこられた日から気違いのようなものでした。いわばそれから、あなたのことばかり思いつめていたようなものです」
　私がこう言い終ると、あの人がスックと立ち上ったように思ったが、実際は、あの人が顔を上げたゞけなのだ。その顔が青ざめはてて、怒りのために、ひきしまり、狂ったように、きつかったのだ。
「四年前に、なぜ、四年前に」
　変に、だるく、くりかえした。
「なぜ、四年前に、それを仰有おっしゃって下さらなかったのです」
　そして、かすかに、つけ加えた。
「四年間……」
　すると、あの人は、うつろな目をあけたまま、茫然と虚脱し、放心しているのだ。』「三十歳」より

果たして、この会話の内容が事実であったかどうかは不明であります。

矢田津世子もまた、不倫相手の和田日出吉が妻と別れようとすると、津世子は“離婚は許さない”と拒んだようです。『妾』を題材にした「神楽坂」の作家です。

小説家同士の恋愛とは、かくも虚実織り交ぜた展開となるのでしょう。

矢田津世子は、1944年3月14日肺炎により下落合の自宅で37歳の生涯を終えました。

写真②右下

和田日出吉は、妻と離婚し独身になっていたが、津世子の死を契機に、20歳年下で26歳の従姉妹と再婚した。
従姉妹は、小津安二郎監督の名作「お茶漬けの味」のヒロイン木暮実千代。

写真②右上

坂口安吾は、1947年9月新宿のバーで知り合った梶三千代と結婚する。
三千代の実家は向島で料亭を経営していた。

1949年伊豆海岸　安吾と三千代

1955年2月17日　桐生市の自宅で脳出血により死去。48歳没。

面白かった
牧野信一、坂口安吾、太宰治、織田作之助、檀一雄、尾崎士郎、矢田津世子、中原中也、小林秀雄、三好達治、大岡昇平、川端康成など文壇のエピソード満載です

★★★★★

おすすめします

天気が良いので、そのまま山手を
散策しました

写真③右上

フリッツ・エリスマン邸

写真③右中

ゲーリッグ・ホール

写真③左下

カトリック山手教会

写真③左上

イタリア山庭園　外交官の家

外交官の家
明治政府の外交官　内田定槌氏の邸宅　明治43年(1910) 渋谷南平台に竣工(1997年移築)　設計は米J.M.ガーディナー　重要文化財

写真③下中　右下

ブラフ18番館　イチョウ