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意味不明小説(ショートショート)コミュの「ぶらっくほーる」

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おれの部屋にはブラックホールがあって靴下やらボールペンやら小銭やら車の鍵なんかが時々入ってしまって出てこないので非常に困るのだけれどこないだその穴を覗いたらなんか黒っぽいものがモゾモゾひっかかっているではないか。つまんでみるとそいつはなんだか悲しい目をしておれを見て「サガサナイデクダチーサガサナイデクダチー」と虫の鳴くような声で言うのでなんだおまえはなんなんなんだおまえはとおれはなんだか苛苛してなんか切なくて苦しくなってでもそいつを放したらもう取り返しのつかないような気がしてばたばた暴れるそいつを懐に入れてとにかくここに置いといたらまた穴に落ちてしまうからと急いで家を出た。どこに行くあてもなくこいつは何を食べさせたらいいんだろうかとくるくるあたまを回転させて考えて八百屋に行ったけど何も買わなくて足がだるく肺がぎしぎしするのでコンビニに入って栄養ドリンクを買って飲んで中古ゴルフ屋が目についたのでなんとなく入ってパターを買ってしまって一体おれは何をしているんだろかと夜の道をハアハア言いながら勝手に空回りするような足のおもむくままに自販機の横を通り過ぎまたまた自販機の横を通り過ぎまたまた自販機の横を通り過ぎなんか同じところをずっと走っているような気がするのだが時おり自販機の横でジュースを飲んでるマネキンの女と俺が見えた。走馬灯のように遠のいていく自販機の明かりを振り返り振り返り墨汁を吹き付けたような闇の中に点滅するおれの体。黒いヤツは胸元から顔を出してなんだか嬉しそうにあかりをまぶしそうに見つめてきゅんきゅん鳴くので自販機んところに捨てちまおうかと考えて立ち止まったら急にそいつの目がまん丸になって震えだした。気がつくとそこは別れた彼女のマンションの前ではないか。ああこいつはあいつのものなのか、さてどうしたものかと錆びた螺旋階段を登ったり降りたりしているうちにあいつの部屋の電気が急につくもんだから慌ててそのまま屋上にあがってしまった。空にはまん丸の月が昇っててさてまあホントにどうしたもんかと黒いヤツを見るといつのまにかさなぎみたいにまん丸になってボーリングの玉のようにエライ重くなったもんだからおもわず手を離しちまってそいつはコンクリートにゴトリと落ちた。ああしんぢまったのかしんぢまったのかとおれは別に悲しくもなくおもむろにパターをとりだしてコンとばかりにそいつを排水溝の穴に転がすと思いのほか簡単にすぅと音もなく吸い込まれて消えちまった。途端に肺が妙にすーすーして夜の冷気が吹き抜けておれの手は青白くだんだん透きとおっていくではないか。見あげるとお月さんはそのまま。おれは手すりに駆け上がり手を伸ばした。あいつのかわりに持って帰らなきゃおれが死んぢまうッとしゃにむに手を伸ばしているうちにケイタイが鳴るので出ると彼女の友達からだった。
「あんたドコにいるの?わかってんだからね」
え?どこにいるってわかんないよなに言ってんだよおれはストーカーじゃねえよおれはおれはただ捨てにきただけだ捨てにきただけだおれはパターを振ってお月様を突っついてはずそうとしているだけだこうしてこうしてあの月をちょいと横にずらせばその裏側に黒い穴があっておれはそこから帰れるのだ帰れるのだ。お月様を持って帰れるのだ。


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