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改憲阻止!民治主義を_市民の会コミュの(5/10)砂川事件 (【資料】 昭和三四年一二月一六日  最高裁判所大法廷  砂川事件本判決全文 掲載)

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 裁判官垂水克己の補足意見は次のとおりである。
一、争点と本判決理由の構成 原判決は次のような趣旨のことをいう「わが国が日
米安全保障条約(その国内法的部面)により米軍の駐留を許容していることは憲法
九条二項前段の禁止する戦力の保持に当たる。だから駐留米軍は右憲法の条項上存
在を許されないものである。ほかならぬ憲法がその存在を許さないものであるとい
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うことこそ、駐留米軍の施設または区域内の平穏に関する法益が一般国民の同種法
益以上の厚い保護を受けるべき合理的理由がないとされるべき唯一の、しかし何よ
りも有力な根拠である。すなわち、原判示の刑事特別法二条は駐留米軍を保護する
ため軽犯罪法一条三二号所定の一般の場合よりも特に重い刑をもつて臨むものであ
るから、結局、右特別法二条は何の合理的理由もないのに駐留米軍を特に厚く保護
するものであり、「何人も「適正な」(垂水註、この三字に注意)手続によらなけ
れば刑罰を科せられない」ことを趣旨とする憲法三一条に違反し無効なものである。
被告人らが起訴状記載通りの行為をした事実は証拠により認められるが、これに対
しては違憲無効な刑事特別法二条は適用すべき限りでない。彼等の行為は起訴状に
明示された訴因としては犯罪を構成しない。」と。
 これに対し、上告趣意はいう「右刑事特別法二条は駐留米軍の施設、地域内の平
穏に関する法益を一般のそれよりも厚く保護すべき数個の合理的理由があるから憲
法三一条に違反しない(第一点)。米軍の駐留を許容する日米安全保障条約も憲法
九条二項前段に違反しない(第二点)。のみならず、元来、同条約(その国内法的
部面)についても、またこれに関する政府の締約行為や国会各院の承認行為につい
ても、それらが憲法に適合するか否かを判断することは、憲法上、司法裁判所の違
憲審査権の限界外にある。原判決が同条約とこれに基く米軍の駐留を違憲とした判
断は憲法の解釈を誤り裁判権の限界を越えた失当のものである(第三点)」と。
 であるから、本判決において判断されるべき主要問題は、刑事特別法二条は原判
示のような理由で憲法三一条に違反するといえるかどうかである。
 では、先ず大前提である憲法三一条の趣旨如何。これについてはわが国に二つの
説があると思う。第一説は大体次のような説である「同条の趣旨は、何人も国会を
通過した法律(手続法)に定めた手続によらなければ、刑罰その他これに近似する
刑事、民事もしくは行政上の不利益な裁判、処分、措置を受けない、のみならず、
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裁判所が刑罰手続等において準拠すべき裁判規範としての実体法(刑法等)も不適
正、不正義な、すなわち、憲法の人間尊重、人権、自由尊重の基本的精神に背くこ
とが明白なものであつてはならない、かような意味で明白に不適正な刑罰法規は憲
法の他の条項に直接違反しなくても憲法三一条違反となる、というのである」と。
(原判決はこのような説に属すると解される。)
 第二説はいう「憲法三一条は単に刑罰その他これに近似する不利益措置は国会を
通過した手続法によらなければ科せられない、というだけで、実体法(刑罰法規等)
が第一説のいう意味で明白に不適正、不合理的なものでないことをまで必要とする
趣旨ではない」と。
 そこで、もし、本判決がこの第二説を採るなら、次のようにいえば足り、それで
おしまいである。「憲法三一条は、決して実体的刑罰法規が明白に合理的理由を欠
くものであつてはならないという趣旨を含むものではない。原判決が刑事特別法二
条は合理的理由を欠くものと判断し、その故に同条を憲法三一条に違反する無効の
ものと断定したのは、その合理的理由を欠くとした法的理由の如何にかかわりなく
憲法三一条の解釈を誤つたものである」と。
 ところが、本判決はこのような趣旨を判示していない。だからといつて、本判決
は第一説の適正手続説に従つた趣旨の判示もしていない、と解される。ただ、第二
説に従うなら、訴訟法上不必要な、否、むしろ、してはならない判断までしている
(裁判所は法律に従つて裁判しなければならない)ということになるところから見
て、第一説の見地に立つていると解される余地はあるかも知れないが、私の解釈で
は、本判決が第一説の見地に立つことを暗黙に判示していると見るのも早計だと思
う。
 本判決は、私の解釈によると、次の趣旨に結論する。
 「わが国の平和と安全ひいてはわが国の存立の基礎に極めて重大な関係をもつ高
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度の政治性を有する条約については、一般の条約と異り、その内容が違憲なりや否
やの法的判断は純司法的機能を使命とする司法裁判所の審査には原則として適しな
い性質のものであり、一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは(憲
法八一条所定の)裁判所の審査権の範囲外のものであつて、それは第一次的には右
条約の締結権を有する内閣およびこれに対して承認権を有する国会の判断に従うべ
きものである。昭和三二年七月八日当時砂川町所在立川飛行場内の土地を使用して
いた空軍を含む米国軍隊の駐留の基礎である日米安全保障条約およびその三条に基
く行政協定は右のような高度の政治性を有する条約と解すべきであるから、その内
容が違憲なりや否やの判断をすることは裁判所の審査権の範囲に属しない。(尤も
右のような条約でも一見極めて明白に違憲無効と認められる場合には裁判所は違憲
審査権を有するところ、右安全保障条約および行政協定は一見極めて明白に憲法九
条二項前段に違反するものとは到底認められない。)原判決が同条約に基く米軍の
駐留を憲法九条二項前段に違反し許すべからざるものと判断したのは、裁判所の審
査権の範囲を逸脱し同条および憲法前文の解釈を誤まつたものであり、従つてこれ
を前提として本件刑事特別法二条を違憲と判断したことも失当である。(なお、右
行政協定は、右特別法二条の関係においてこれをみても、右条約三条に基き米軍の
配備を規律する条件を定めるもので、日米安全保障条約と同様の性質の条約である
から、しかる以上それが国会の承認を欠く違憲無効のものであるか否かの審査権も
前同様の理由で裁判所には属しない)」と。
 本判決によれば、原審が刑事特別法二条を憲法三一条違反とした理由であるとこ
ろの、右安全保障条約が憲法九条二項に違反するという判断は、裁判権の範囲を逸
脱した憲法上従つてまた訴訟法上許されない判断である、故にこの無権限判断の上
に立つて刑事特別法二条を合理的理由を欠くものとした原判決は、(a)前記第一
説的見地からいえば、「無権限判断に基いて右特別法二条を憲法三一条違反と断じ
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た違憲、違法(憲法八一条の違憲審査権の解釈の誤、刑事特別法二条の解釈方法の
誤)があるもので、その憲法九条二項前段の解釈が実体的に正当か否かは問うべき
限りでなく、この最後の点は、上告審といえども審査しえないところである」とい
わねばならない。(b)もし、第二説的見地からいえば、当審としては、「右特別
法二条は合理的理由を欠くという理由からは憲法三一条違反とはいいえないから、
原判決が右特別法二条は合理的理由を欠くから憲法三一条に違反すると結論したの
は、その合理的理由を欠くとした判断が無権限のものか否か、その内容が如何なる
ものかを問うまでもなく憲法三一条の解釈を誤まつたものである」と判示して、そ
れだけで原判決を破棄してよい筈である。
 本判決は第一説、第二説いずれの見地に立つかを明らかにしないが、いずれの見
地に立つにせよ原判示の理由からは右特別法二条が憲法三一条違反といえない点で
は一致するのであつて、この結論的理由においては反対意見はないと解される。
 本判決が、日米安全保障条約については裁判所は違憲審査権なしといいながら、
これが憲法九条二項前段に適合するか否かについて判断し、そのために、わが国が
固有の自衛権を有することから説き起こして憲法の右条項の趣旨を判示し、平和目
的のため自らを防衛する手段として、わが国が主体となつて指揮権管理権を行使し
えない外国軍隊に頼る途を選んで締結した日米安全保障条約およびこれに基いてわ
が国内に米軍を駐留させることは、少くとも「一見極めて明白に」憲法の右条項に
違反するといえないという実体的憲法判断をまでしたのは、いうまでもなく、かよ
うな性質の条約であつても裁判所に違憲審査権のある場合に当らないかどうかを審
査するためであつたと解される。
 本判決は、本件刑事特別法の基く行政協定が形式的に国会の承認を欠く違憲無効
のものか否かの点についても裁判所に違憲審査権がないことを念のため判示した。
この判示は傍論ではあつても、わが訴訟法上は差戻後の裁判所を拘束する規範とな
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ろう。
二、裁判所の違憲審査権 裁判所は、国内法としての一般条約を含む一般の法律、
命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する(憲法八
一条)。これが原則である。しかしわが憲法の三権分立の理念、司法権の性質、行
使の仕方、その効果に照らし、例外として、ある種の国会各院の行為または政府の
行為で、裁判所によつてそれが違憲であると決定されるに適しないため裁判所の審
査権の対象から除外されるべきものがある。私は欧米の憲法上「統治行為」、「裁
判所の審査に服しない高権行為」もしくは「政治問題」などと呼ばれるものについ
て知るところがないが、わが国には、統治行為の観念はこれを定義しまたは悉く列
挙する方法で明らかにすることは困難であるとしつつもこの名の下に国会の行為ま
たは政府の行為のうちには裁判所の違憲審査の対象とされるべきでないものが存す
るとの学説もあり、上告趣意第三点は明らかにこれを主張する。本判決は、この点
を検討し、国内法としての日米安全保障条約(および同条約三条に基く行政協定)
が「わが国の平和と安全ひいてはわが国の存立の基礎に極めて重大な関係をもつ高
度の政治性を有するものであつて裁判所の違憲審査には適しない性質のものである」
と判定し、その故に、両条約が違憲なりや否やを審査することは憲法八一条に定め
る裁判所の権限の範囲外のことであるとして司法権の一つの限界を示し、法律にも
例外として裁判所の違憲審査に服しないものがあることを判示したのである。(本
判決において、一般に条約とは、条約がその文言ないし趣旨どおり国内法としての
効力をも持つものとして公布されたものを指す。従つて一般国内法律と同じく憲法
に違反するときは無効とされるのを原則とする)。この両条約の国際法上の効力を
裁判所は否定できないが、すでに両条約についての政府の締約行為および国会の承
認行為の違憲審査が司法権の限界外にある以上、これらに基いて出来上つた両条約
の国内法的部面の違憲審査も権限外であるという訳である。裁判所の違憲審査権の
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限界を決定することも裁判所の権限であると考える。
 ところが、原判決は、「日米安全保障条約とこれに基く米軍の駐留が憲法九条二
項前段に違反するから刑事特別法二条は憲法三一条に違反する」と判決したのに対
し、本判決は、「原審が権限なくして同条約を違憲であるとした判断に基いては右
特別法二条を憲法三一条違反と判断することは許されない。けだし、前記のような
高度の政治性を持つ条約については、一般の条約その他一般の法律と異り、その内
容が違憲か否かの判断は一見極めて明白に違憲無効と認められない限りは裁判所の
審査権の範囲外のものであつて、それは内閣および国会の判断に従うほかないから
である。これは国内法律でも裁判所が例外として違憲審査権を持たない場合である。
右安全保障条約および行政協定の内容は憲法九条、九八条二項および前文の趣旨に
適合しこそすれこれらの条章に反して違憲無効であることが一見極めて無効である
とは認められない。」という。
 思うに、条約内容が前記のような高度政治性のものであることが判つたら裁判所
はその違憲審査権がないとの理由でそれが憲法九条二項に牴触するか否かについて
判示せずその条約規定を遵守適用するほかないことを判示すれば足る筈である。思
考の論理上条約内容を審査することによつてのみ、それが「違憲無効」、しかも「
違憲無効であることが一見極めて明白だ」という判断が生れるのだから、本判決は
違憲か否かの実体的審査権があるかどうかの形式的審査(裁判所の権限審査)のた
めにその実体的審査をすることを認容するものの如くであるが、これは本件では必
要でない判断であるとしても、判断しても差支ないであろう。(私は、判示のよう
な高度政治性の法律についても、裁判所は、合憲か違憲かの実体的審査はしなけれ
ばならず、する権限を持つのではないか、ただこの場合、かような高度政治性法律
については、裁判所はこれを違憲と考えても、違憲と考えたことを理由としてこれ
を無効としてその適用を拒否する権限を持たないという制限を受けるのではないか、
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違憲審査権というものはそういうものではないか、という疑問は検討に値すると考
える。)
三、刑事特別法二条と憲法三一条 原判決のいうような理由では刑事特別法二条は
憲法三一条に違反するとはいえない。というのが訴訟法上本判決の主たる理由であ
る。裁判所が前記第一説(適正手続説)の見地に立つて判決するとしても、このよ
うな場合判決理由中に右特別法二条の持つ合理的理由を一々判示する必要はないと
考える。けだし、幾千に上る法律の中の一規定について憲法の全条項や他のすべて
の法律の規定との関連においてその合理的理由の総てを示すことは至難の業である。
それほど個々の法条とその集積である全法体系の趣旨は含蓄に富みかつ流動的でも
ある。が、今、本件刑事特別法二条を是認すべき理由の一、二について触れてみよ
う。第一に、同法条に違反する犯罪行為は日米安全保障条約および行政協定三条に
基いて米軍が日本国内およびその附近に具体的に配備され許されて特定の施設また
は地域を使用する状態が現実に発生したのでなければ起りえない。しかるに、米軍
がわが国に駐留し特定の施設または地域を使用するのは右両条約に基くのであり、
この両条約のわが憲法上の違憲性は国際法上米国に対抗できないから、両条約の違
憲、合憲に拘らず、駐留米軍の使用する施設または地域の平穏を、軽犯罪法一条三
二号をもつて、一般の内外公私の施設または地域の平穏よりも少しく厚く保護する
ことは一概に理由なしとなしえない。(かく保護しなければならないことはないが
保護してもよい。立法政策の問題である)。第二に、刑事特別法二条が保護しよう
とする施設または地域というのは(a)条約に基き(b)わが国の平和と安全を防
衛することを一の重要目的として駐留する(c)外国の(d)軍隊が使用するもの
である点において、わが国内に存する一般の内外公私の施設または地域と異る全く
独特の存在である。軍隊は非常事態の勃発に際しては敏速機宜の組織的な広範囲の
活動を出来る限り他人に阻害されないで行わなければならない。そのためには演習、
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移動の際その他平時においても軍隊ないしその従属者によるその施設、地域の使用
の自由(軍人、軍属、家族等の組織的生活におけるその使用の自由)が特に十分に
確保されていることが適切であつて、そこにみだりに人々がはいつたり障害物が持
ち込まれたりしてはならない。(地域内の教会、家庭、映画館にいる軍人が軍務の
ため至急そこを飛び出し地域内の空地に集合しなければならない場合もあろう。)
このことはわが国の安全にも関係する。また駐留軍使用の施設、地域には危険物が
ありうる、また、わが警察力はここに充分には及ばない。第三に、わが国を防衛す
るための駐留軍である以上、その使用する立入禁止の施設、区域にみだりに立ち入
るために相互の誤解等によるトラブルなどが起り両国の友交関係に悪影響を及ぼす
ようなことがあつてはならない。そのために、あるいは単なる国際礼譲として、駐
留米軍の法益を特に重く保護すべき理由も成立する。刑法九二条が、外国に対し侮
辱を加える目的でその国の国旗、国章を損壊、除去などする行為を処罰し、自国の
国旗、国章の損壊について同様の処罰をしない(外国にも同様の立法例を見る)の
と同様の意味で、かような法益の保護も妥当とされよう。
 とに角、日米安全保障条約および行政協定がたとえ違憲であつても、わが政府が
これを理由として米軍の駐留を拒否せずこれを現実に国内に駐留させたからには、
米軍は国際法上の大義名分すなわち権利があつて駐留しているのであるから、その
面からみて、これを条約に基かないわが政府の単純な同意によつて一時的に滞在す
る外国軍隊と区別しそれよりも少しく厚く保護する刑事特別法二条のような立法を
しても、これを適正でないことの明らかな憲法三一条違反の刑罰法規とはいえない
のではないか。

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