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子どもの詩を読みませんかコミュの八木 重吉

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 八木重吉さんは、1898年生まれで1927年に30才という若さでなくなられた詩人です。
 キリスト教徒でもある八木さんは、心の内面を深く見つめた詩を、数多く書いています。

 八木さんの詩は、ことばもやさしく、表現方法もやさしく、子どもにわかりやすいように思われますが、詩の内容は、深く思案的で、むしろ大人むきだと思います。
 八木さんの詩のやさしさに、心を癒されるのでしょうか、おおくのファンがいます。
 私も、八木さんの詩のファンです。八木さんの詩の、やさしさとともに深い思案的な部分に、魅力を感じています。

 やさしさのなかにほのかに感じる悲しみ、それが八木さんの詩の魅力でしょう。




     序

 私は、友が無くては、耐へられぬのです。
 しかし、私には、ありません。
 この貧しい詩を、これを、読んでくださる方の胸へ捧げます。
 そして、私を、あなたの友にしてください。





  手   八木 重吉

電気が消えた
お手手ないない
お手手ないないって
もも子がむちゅうで両手をふりだした
死んじまうようなきがしたんだ
手がないとおもったんだ








  フヱアリの 国

夕ぐれ
夏のしげみを ゆくひとこそ
しづかなる しげみの
はるかなる奥に フヱアリの 国をかんずる






  おほぞらの こころ

わたしよ わたしよ
白鳥となり
らんらんと 透きとほつて
おほぞらを かけり
おほぞらの うるわしいこころに ながれよう






  ふるさとの 山

ふるさとの山のなかに うづくまつたとき
さやかにも 私の悔いは もえました
あまりにうつくしい それの ほのほに
しばし わたしは
こしかたの あやまちを 讃むるようなきもちになつた






  しづかな 画家

だれでも みてゐるな、
わたしは ひとりぼつちで描くのだ、
これは ひろい空 しづかな空、
わたしのハイ・ロマンスを この空へ 描いてやらう






  うつくしいもの

わたしみづからのなかでもいい
わたしの外の せかいでも いい
どこにか 「ほんとうに 美しいもの」は ないのか
それが 敵であつても かまわない
及びがたくても よい
ただ 在るといふことが 分りさへすれば、
ああ ひさしくも これを追ふにつかれたこころ






  花になりたい

えんぜるになりたい
花になりたい






  咲く心

うれしきは
こころ 咲きいづる日なり
秋、山にむかひて うれひあれば
わがこころ 花と咲くなり






  つかれたる 心

あかき 霜月の葉を
窓よりみる日 旅を おもふ
かくのごときは じつに心おごれるに似たれど
まことは
こころ あまりにも つかれたるゆえなり






  かなしみ

このかなしみを
ひとつに 統《す》ぶる 力《ちから》はないか






  心 よ

ほのかにも いろづいてゆく こころ
われながら あいらしいこころよ
ながれ ゆくものよ
さあ それならば ゆくがいい
「役立たぬもの」にあくがれて はてしなく
まぼろしを 追ふて かぎりなく
こころときめいて かけりゆけよ






  赤ん坊が わらふ

赤んぼが わらふ
あかんぼが わらふ
わたしだつて わらふ
あかんぼが わらふ






  花と咲け

鳴く 蟲よ、花 と 咲 け
地 に おつる
この 秋陽《あきび》、花 と 咲 け、
ああ さやかにも
この こころ、咲けよ 花と 咲けよ






  心 よ

こころよ
では いつておいで

しかし
また もどつておいでね

やつぱり
ここが いいのだに

こころよ
では 行つておいで






  玉《たま》

わたしは
玉に ならうかしら

わたしには
何《なん》にも 玉にすることはできまいゆえ






  貫《つら》ぬく 光

はじめに ひかりがありました
ひかりは 哀しかつたのです

ひかりは
ありと あらゆるものを
つらぬいて ながれました
あらゆるものに 息《いき》を あたへました
にんげんのこころも
ひかりのなかに うまれました
いつまでも いつまでも
かなしかれと 祝福《いわわ》れながら






  秋の かなしみ

わがこころ
そこの そこより
わらひたき
あきの かなしみ

あきくれば
かなしみの
みなも おかしく
かくも なやまし

みみと めと
はなと くち
いちめんに
くすぐる あきのかなしみ






  石くれ

石くれを ひろつて
と視、こう視
哭《な》くばかり
ひとつの いしくれを みつめてありし

ややありて 
こころ 躍《おど》れり
されど
やがて こころ おどらずなれり






  竜舌蘭

りゆうぜつらん の
あをじろき はだえに 湧く
きわまりも あらぬ
みづ色の 寂びの ひびき

かなしみの ほのほのごとく
さぶしさのほのほの ごとく
りゆうぜつらんの しづけさは
豁然《かつぜん》たる 大空を 仰《あふ》ぎたちたり






  矜持ある 風景

矜持ある 風景
いつしらず
わが こころに 住む
浪《らう》、浪、浪 として しづかなり






  静寂は怒る

静 寂 は 怒 る、
みよ、蒼穹の 怒《いきどほ》りを






  葉

葉よ、
しんしん と
冬日がむしばんでゆく、
おまへも
葉と 現ずるまでは
いらいらと さぶしかつたらうな
葉よ、
葉と 現じたる
この日 おまへの 崇厳

でも、葉よ
いままでは さぶしかつたらうな






  雲

くものある日
くもは かなしい
くもの ない日
そらは さびしい






  在る日の こころ

ある日の こころ
山となり

ある日の こころ
空となり

ある日の こころ
わたしと なりて さぶし






  幼い日

おさない日は
水が もの云ふ日

木が そだてば
そだつひびきが きこゆる日






  白き響

さく、と 食へば
さく、と くわるる この 林檎の 白き肉
なにゆえの このあわただしさぞ
そそくさとくひければ
わが 鼻先きに ぬれし汁《つゆ》

ああ、りんごの 白きにくにただよふ
まさびしく 白きひびき






  おもたい かなしみ

おもたい かなしみが さえわたるとき
さやかにも かなしみは ちから

みよ、かなしみの つらぬくちから
かなしみは よろこびを
怒り、なげきをも つらぬいて もえさかる

かなしみこそ
すみわたりたる すだまとも 生くるか






  胡蝶

へんぽんと ひるがへり かけり
胡蝶は そらに まひのぼる
ゆくてさだめし ゆえならず
ゆくて かがやく ゆえならず
ただひたすらに かけりゆく
ああ ましろき 胡蝶
みずや みずや ああ かけりゆく
ゆくてもしらず とももあらず
ひとすぢに ひとすぢに
あくがれの ほそくふるふ 銀糸をあへぐ






  おほぞらの 水

おほぞらを 水 ながれたり
みづのこころに うかびしは
かぢもなき 銀の 小舟《おぶね》、ああ
ながれゆく みづの さやけさ
うかびたる ふねのしづけさ






  そらの はるけさ

こころ
そらの はるけさを かけりゆけば
豁然と ものありて 湧くにも 似たり
ああ こころは かきわけのぼる
しづけき くりすたらいんの 高原






  霧が ふる

霧が ふる
きりが ふる
あさが しづもる
きりがふる






  空が 凝視《み》てゐる

空が 凝視《み》てゐる
ああ おほぞらが わたしを みつめてゐる
おそろしく むねおどるかなしい 瞳
ひとみ! ひとみ!
ひろやかな ひとみ、ふかぶかと
かぎりない ひとみのうなばら
ああ、その つよさ
まさびしさ さやけさ






  こころ 暗き日

やまぶきの 花
つばきのはな
こころくらきけふ しきりにみたし
やまぶきのはな
つばきのはな






  夜の薔薇《そうび》

ああ
はるか
よるの
薔薇






  わが児《こ》

わが児と
すなを もり
砂を くづし
浜に あそぶ
つかれたれど
かなし けれど
うれひなき はつあきのひるさがり






  つばねの 穂

ふるへるのか
そんなに 白つぽく、さ

これは
つばねの ほうけた 穂

ほうけた 穂なのかい
わたしぢや なかつたのか、え






  人を 殺さば

ぐさり! と
やつて みたし

人を ころさば
こころよからん






  静かな 焔

各《ひと》つの 木に
各《ひと》つの 影
木 は
しづかな ほのほ






  石塊《いしくれ》と 語る

石くれと かたる
わがこころ
かなしむべかり

むなしきと かたる、
かくて 厭くなき
わが こころ
しづかに いかる






  大木《たいぼく》 を たたく

ふがいなさに ふがいなさに
大木をたたくのだ、
なんにも わかりやしない ああ
このわたしの いやに安物のぎやまんみたいな
『真理よ 出てこいよ
出てきてくれよ』
わたしは 木を たたくのだ
わたしは さびしいなあ






  稲妻

くらい よる、
ひとりで 稲妻をみた
そして いそいで ペンをとつた
わたしのうちにも
いなづまに似た ひらめきがあるとおもつたので、
しかし だめでした
わたしは たまらなく
歯をくひしばつて つつぷしてしまつた






  しのだけ

この しのだけ
ほそく のびた

なぜ ほそい
ほそいから わたしのむねが 痛い






  むなしさの 空

むなしさの ふかいそらへ
ほがらかにうまれ 湧く 詩《ポヱジイ》のこころ
旋律は 水のように ながれ
あらゆるものがそこにをわる ああ しづけさ






  こころの 船出

しづか しづか 真珠の空
ああ ましろき こころのたび
うなそこをひとりゆけば
こころのいろは かぎりなく
ただ こころのいろにながれたり
ああしろく ただしろく
はてしなく ふなでをする
わが身を おほふ 真珠の そら






  朝の あやうさ

すずめが とぶ
いちじるしい あやうさ

はれわたりたる
この あさの あやうさ






  あめの 日

しろい きのこ
きいろい きのこ
あめの日
しづかな日






  追憶

山のうへには
はたけが あつたつけ

はたけのすみに うづくまつてみた
あの 空の 近かつたこと
おそろしかつたこと






  草の 実

実《み》!
ひとつぶの あさがほの 実
さぶしいだらうな、実よ

あ おまへは わたしぢやなかつたのかえ






  暗光

ちさい 童女が
ぬかるみばたで くびをまわす
灰色の
午后の 暗光






  止まつた ウオツチ

止まつた 懐中時計《ウオツチ》、
ほそい 三つの 針、
白い 夜だのに
丸いかほの おまへの うつろ、
うごけ うごけ
うごかぬ おまへがこわい






  鳩が飛ぶ

あき空を はとが とぶ、
それでよい
それで いいのだ






  草に すわる

わたしの まちがひだつた
わたしのまちがひだつた
こうして 草にすわれば それがわかる






  夜の 空の くらげ

くらげ くらげ
くものかかつた 思ひきつた よるの月






  虹

この虹をみる わたしと ちさい妻、
やすやすと この虹を讃めうる
わたしら二人 けふのさひわひのおほいさ






  秋

秋が くると いふのか
なにものとも しれぬけれど
すこしづつ そして わづかにいろづいてゆく、
わたしのこころが
それよりも もつとひろいもののなかへくづれて ゆくのか






  黎明

れいめいは さんざめいて ながれてゆく
やなぎのえだが さらりさらりと なびくとき
あれほどおもたい わたしの こころでさへ
なんとはなしに さらさらとながされてゆく






  不思議をおもふ

たちまち この雑草の庭に ニンフが舞ひ
ヱンゼルの羽音が きわめてしづかにながれたとて
七宝荘厳の天の蓮華が 咲きいでたとて
わたしのこころは おどろかない、
倦み つかれ さまよへる こころ
あへぎ もとめ もだへるこころ
ふしぎであらうとも うつくしく咲きいづるなら
ひたすらに わたしも 舞ひたい






  あをい 水のかげ

たかい丘にのぼれば
内海《ないかい》の水のかげが あをい
わたしのこころは はてしなく くづをれ
かなしくて かなしくて たえられない






  人間

巨人が 生まれたならば
人間を みいんな 植物にしてしまうにちがいない








  キーツに 寄す

うつくしい 秋のゆふぐれ
恋人の 白い 横顔《プロフアイル》―キーツの 幻《まぼろし》






  はらへたまつてゆく かなしみ

かなしみは しづかに たまつてくる
しみじみと そして なみなみと
たまりたまつてくる わたしの かなしみは
ひそかに だが つよく 透きとほつて ゆく

こうして わたしは 痴人のごとく
さいげんもなく かなしみを たべてゐる
いづくへとても ゆくところもないゆえ
のこりなく かなしみは はらへたまつてゆく






  かすかな 像《イメヱジ》

山へゆけない日 よく晴れた日
むねに わく
かすかな 像《イメヱジ》






  秋の日の こころ

花が 咲いた
秋の日の
こころのなかに 花がさいた






  白い 雲

秋の いちじるしさは
空の 碧《みどり》を つんざいて 横にながれた白い雲だ
なにを かたつてゐるのか
それはわからないが、
りんりんと かなしい しづかな雲だ






  白い 路

白い 路
まつすぐな 杉
わたしが のぼる、
いつまでも のぼりたいなあ






  感傷

赤い 松の幹は 感傷






  沼と風

おもたい
沼ですよ
しづかな
かぜ ですよ






  毛蟲を うづめる

まひる
けむし を 土にうづめる






  春も 晩く

春も おそく
どこともないが
大空に 水が わくのか

水が ながれるのか
なんとはなく
まともにはみられぬ こころだ

大空に わくのは
おもたい水なのか






  おもひ

かへるべきである ともおもわれる






  秋の 壁

白き 
秋の 壁に
かれ枝もて
えがけば

かれ枝より
しづかなる
ひびき ながるるなり






  郷愁

このひごろ
あまりには
ひとを 憎まず
すきとほりゆく
郷愁
ひえびえと ながる






  ひとつの ながれ

ひとつの
ながれ
あるごとし、
いづくにか 空にかかりてか
る、る、と
ながるらしき






  宇宙の 良心

宇宙の良心―耶蘇






  空と光

彫《きざ》まれたる
空よ
光よ






  おもひなき 哀しさ

はるの日の
わづかに わづかに霧《き》れるよくはれし野をあゆむ
ああ おもひなき かなしさよ






  ゆくはるの 宵

このよひは ゆくはるのよひ
かなしげな はるのめがみは
くさぶえを やさしき唇《くち》へ
しつかと おさへ うなだれてゐる






  しづかなる ながれ

せつに せつに
ねがへども けふ水を みえねば
なぐさまぬ こころおどりて
はるのそらに
しづかなる ながれを かんずる






  ちいさい ふくろ

これは ちいさい ふくろ
ねんねこ おんぶのとき
せなかに たらす 赤いふくろ
まつしろな 絹のひもがついてゐます
けさは
しなやかな 秋
ごらんなさい
机のうへに 金糸のぬいとりもはいつた 赤いふくろがおいてある






  哭くな 児よ

なくな 児よ
哭くな 児よ
この ちちをみよ
なきもせぬ
わらひも せぬ わ






  怒り

かの日の 怒り
ひとりの いきもののごとくあゆみきたる
ひかりある
くろき 珠のごとく うしろよりせまつてくる






  春

春は かるく たたずむ
さくらの みだれさく しづけさの あたりに
十四の少女の
ちさい おくれ毛の あたりに
秋よりは ひくい はなやかな そら
ああ けふにして 春のかなしさを あざやかにみる






  柳も かるく

やなぎも かるく
春も かるく
赤い 山車《だし》には 赤い児がついて
青い 山車には 青い児がついて
柳もかるく
はるもかるく
けふの まつりは 花のようだ





母の瞳《ひとみ》

ゆうぐれ
瞳をひらけば
ふるさとの母うえもまた
とおくみひとみをひらきたまいて
かわゆきものよといいたもうここちするなり





お月見

月に照らされると
月のひかりに
こころがうたれて
芋《いも》の洗ったのや
すすきや豆腐《とうふ》をならべたくなる
お月見だお月見だとさわぎたくなる






花がふってくると思う

花がふってくると思う
花がふってくるとおもう
この てのひらにうけとろうとおもう








つまらないから
あかるい陽《ひ》のなかにたってなみだを
ながしていた








こころがたかぶってくる
わたしが花のそばへいって咲けといえば
花がひらくとおもわれてくる








ひかりとあそびたい
わらったり
哭《な》いたり
つきとばしあったりしてあそびたい





母をおもう

けしきが
あかるくなってきた
母をつれて
てくてくあるきたくなった
母はきっと
重吉よ重吉よといくどでもはなしかけるだろう

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