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‐HOUND‐コミュのハウンド―14―

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「この子が…ヒロ?」

メグまでもが、目を点にして驚いていた。

「違うよ。ちーちゃんだよ」

「…メグよりちっちゃい」

確かに、ニューマンであるとはいえ、同年代の男子たちより明らかに大きい体だったヒロと比べて、か細いこの少年は似ても似つかなかった。

「どないすんねん、あれ」

とりあえず、子供は子供に任せて、状態でアキラと蛟はこそこそ会議中。

「どうもこうも、ヒロを元に戻す方法考えなきゃ」

「そもそもあれ本当にヒロなんか?」

蛟の疑問にアキラは眉間に皺を寄せる。

「何言ってんの?自分で名乗ったじゃん」

「同じ名前のどっかの子供って事もあんで。ヒロ拉致らんてるんちゃうか?」

「どう考えてもありえないでしょ。あの家には誰もいなかったし、誰かいたとしてもあの短時間でヒロを拉致るなんて無理だよ」

アキラの反応は冷ややかで、蛟も分かり切っていたようにため息を零した。

「せやな…」

「分かった。じゃあ、とりあえずあの子がヒロじゃない可能性も踏まえて、あの子を検査してみよう」

「検査?」

「DNAデータはハンター登録の際に必須だからあの子がヒロかどうか分かるでしょ?それに、もしヒロが縮んだんなら体に異変があってもおかしくないでしょ」

「病院に連れてくんか?」

「まさか、あたしらには頼れるお医者様がいるじゃない」

アキラはにやり、と笑った。





「私、死人専門なんだけど」

若干不機嫌さを匂わせる理子だったが、無事に検査を終えていた。

「そんなこと言わないでさ、フジコちゃん」

アキラは理子の元を訪れていた。
ハンターライセンスさえあればいかなる病院の診察も検査も受けられるが、彼らがそれを望まない理由があった。
バウンティハンターということはつまりニューマンやハーフであるということ。
それだけですべての視線が変わるのだ。
それを多くのハンターたちは避けていた。
その上、バウンティハンターが病院に入るということは弱っていることを知られやすい為、それだけ危険な状況に陥りやすいということだった。
多くのハンターたちが危険と背中合わせの生活の中、病院を避け、通いの医者を持っていた。

「でさ、結果は?」

「DNAはライセンス登録時に提出されたものと一致。間違いなくヒロ本人よ」

「やっぱり、それで、縮んだ原因って何か分かった?」

「その辺はさっぱりね。あの子は普通の健康な4歳の人間の子供よ」

「そっか…ま、問題ないだけマシだよ」

「何言ってるの?」

「へ?」

「大問題よ。分かってないのね。あの子は人間の子なのよ。ニューマンじゃない」

「!」

「つまり、あの子が能力に目覚める前の金剛千尋なのか、それともまったく別の金剛千尋なのか分からないってこと」

「そんな!DNAは一致したんでしょ!?」

「人格の問題よ。脳に異常はないけれど、あれはまさに4歳児の脳よ。肉体も精神も退化したのか、あるいは新たな金剛千尋が誕生したって可能性もある」

「…もとに戻す方法はないかもしれないってこと?」

「原因次第ね。瑠璃ちゃんを狙ってた奴の能力で元に戻せるかもしれないわ」

「結局仁野を捕まえるしかないってわけか」

「でも、気をつけた方がいいわ」

「え?」

「能力に目覚める前に退化したのなら、これから能力に目覚める可能性があるわ。能力に目覚めたばかりのニューマンがどれだけ危険だか、私より知ってるでしょ?アキラ」

「分かった」

「ところで、瑠璃ちゃんはもう安全なのかしら?」

「仁野を捕まえるまでは安全とは言えないよ。もう少しの間だけどね」

その笑みは確かな自身と決意の表れ、握られた拳は言いようのない不安と恐れの表れだった。







「ヒロは?」

「もう寝たわ。ママに叱られるからて、随分エエとこの育ちみたいやなぁ」

アキラが帰ったのは20時過ぎだった。

「で、データは?洗ったんでしょ。それに、二人は?」

「ガキはエエ子でみんなおやすみ、や。こっからは大人の話」

「メグはまだしも、銀まで8時就寝なんて…」

アキラは思わずため息を零した。

「バウンティハンターのデータベースの他にメグが記録にハッキングして、過去のデータいくつか見つけてきよったで」

アキラはマグカップにインスタントのお茶を注ぎ、二人は向かい合って椅子に座った。

「ご存知、警視庁のハンターデータベースは基本的な生体データとハンターとしての経歴が載ってる程度やからな」

「で、どっからハッキングしてきたのよ」

「新成所」

「新成所!?」

新種未成年保護管理所、政府によって設立されたその施設はニューマンとして能力に目覚めた未成年児を保護収容する施設だ。
しかし、収容された多くの子供たちは能力の発現時に傷害などの問題を起こし、それまでの社会に適応出来なくなってしまっているのだ。

「それで?」

しばらくは動揺を露わにしていたアキラだったが、大きく息を吐くとようやく一言問いかけた。

「能力の発現は4歳ん時、幼稚園で同い年の子を殺しとる」

「殺し?」

「衝突による身体圧迫で内臓破裂。ヒロの方はその一週間後には新成所へ入ってる」

「両親は?」

「ヒロが新成所に入って一カ月後には海外へ引っ越しとる。それ以来親との接触はゼロやな」

「ニューマンの子が親に捨てられるのは珍しくない」

「もともと内気なお母さん子やったみたいやな」

「…つまり、あの子が退化したヒロなら、能力の発現前って事?でも、どうしてそんなことになったのか…」

「やっぱり夢に関係あるのかもしれんな」

「仁野の見せた夢が体を作りかえるなんて!」

「奴の能力が正夢を見せる事だとしたら、脳に直接作用する力やってことやろ」

「でも、いくら脳に直接攻撃出来ても体が退化するなんてありえないよ」

「何にせよ、睡眠ガスを仕込んどったくらいや。その能力で侵入者を撃退する確証はあった筈や」

「でも、操作系の能力者には大抵影響可能範囲がある。私らが来るのが分かってたってこと?」

「その可能性は否定出来んな。でも、ただのトラップってこともあり得る。ハイレベルな能力者なら一回くらい力を残留させることも可能やろ」

二人の推論が白熱していくなか、階段を下りてくる足音に気づいた。

「なんや、早寝しすぎて早起きか?」

ドアの向こうから姿を現したのは。

「ヒロ」

「ママ…?」

「!」

どうやら寝ぼけているようだった。

「ちーちゃん、ようちえんいきたくないの。さとるくんがいじわるするから」

「さとるくん?」

「ヒロが能力発現時に殺した子や。宮野悟」

蛟がアキラの耳元で囁く。

「大丈夫だよ、ちーちゃん。幼稚園はお休みだから。だから、もう少し眠って」

「…うん」

「さ、もう一回階段を上って」

「分かった。お休みなさい」

「お休み」

小さなヒロをアキラは再び寝室へと送りだした。

「若いオカンが務まっとるやないか」

「うるさいな。でも、事のきっかけはちょっと分かったかも」

「せやな。恐らく4歳のヒロはその悟君に追い詰められとった」

「その時は近いってことか」

「早いとこ、仁野を捕まえなあかんな」

その時、玄関のベルが鳴る。しかし、時間はすでに深夜3時。
二人はそっと目配せをし、蛟が前をその後ろをブローニングを構えたアキラが続いた。
そしてゆっくりとチェーンを外し、鍵を回す。
音もしないほどゆっくりドアを開いた。

「おいおい、ちょっと大胆すぎやろ」

そこに立っていたのはかわいらしいパジャマを着た。

「瑠璃ちゃん!」

「こんばんは、アキラちゃん」

その微笑みはいつもの瑠璃のものだが、その目はぼんやりと夢を見ているようだ。

「どうしてこんな時間に?」

「狭山さんがね、ハウンドのみんなを案内しなさいって」

「仁野が?」

「どうやら操られとるみたいやな」

「アイツ…挑戦のつもり?」

「銀を起こしてちっさいヒロを連れてきい」

「ヒロを連れてくの?」

「連れてかな、元に戻せんやろ。俺は車を用意しとくわ」

アキラはまず、夢の中にいる小さなヒロを抱えて蛟の黄色いハマーに乗せ、
そして、眠ったままのメグにメッセージを残し、銀牙を叩き起こして車に乗せたのだった。





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