史跡コミュの頭塔

　奈良県奈良市高畑町

　1922年03月08日指定

　1辺30ｍ・高さ10ｍの土製の塔で、七段の階段ピラミッド状の構造をしている珍しい仏塔。方形の封土を三段に築き、各段の周囲に一定の秩序で石仏を配列、五層の屋根と相隣を持っていた。
　『東大寺要録』の記録では、神護景雲元(767)年に東大寺のの僧実忠(ｼﾞｯﾁｭｳ；726～？)によって造営されたとされ、平安時代の『七大寺巡礼私記』では奈良時代の玄昉(ｹﾞﾝﾎﾞｳ；？～746)の首塚であるとされている。
　玄昉は唐で法相宗(ﾎｯｿｳｼｭｳ)を学んだ高僧で、帰国後、左大臣橘諸兄(ﾀﾁﾊﾞﾅﾉﾓﾛｴ)と結んで権勢をふるい、女性関係も派手で、聖武天皇の母の藤原宮子とも密通していたとも言われる。大宰府で挙兵して敗死した藤原広嗣(ﾋﾛﾂｸﾞ)は玄昉誅罰をスローガンとして掲げていた。その後、藤原仲麻呂が権力を握ると失脚、九州の筑紫観世音寺において、広嗣の怨霊によって空中に拉致され、首だけが奈良の興福寺に落ちて来たとの奇怪な伝説が伝わっている。
　頭塔は『東大寺要録』では土塔と記されており、ドトウが転訛してズトウと称されるようになり、玄昉首塚説との関連で頭塔という漢字が当てられたものと推定される。
　形状がインドの仏塔であるストゥーパに似ているため、玄昉が唐で知識を得たインド式仏塔として建立されたとの説もある。
　13体が残る石仏群は高さ1ｍ内外の自然石に薬師三尊・釈迦三尊・阿弥陀三尊等が刻まれたもので、重要文化財に指定されている。また、平成時代の発掘調査で見出された９体の石仏も追加指定された。