人間味倶楽部コミュの中国地方の中学生

はじめまして、ネイチャ－トーマスです。
私、この度無事に会社を円満退社し、本州を車で時計周りに一周してきました。そんな中、一瞬とはいえまるでダイヤモンドがキラリと光るかのような素敵な人間味との出会いを果たしましたのでここに報告させていただきます。

いつでも出会いは突然訪れる。
私はその時、中国地方の田舎道を軽快に疾走中だった。周りは適度に民家が点在しつつ、田圃が多い。ホームセンターコーナンとファッションセンターシマムラが幅をきかせていて、コカ・コーラの看板は赤茶に錆びているようなどこにでもあるような田舎道だ。

暫く走っていると、向こうの方から中学生の男子が7人くらい自転車で走ってきた。田舎なので歩道も東京より広く、ある程度の台数であれば横に並んでトークしながら走る事ができる。
もちろん彼等もそうしていた。

フォーメーションは2・3・2といったところか。
かなり攻撃的だ。
確かに、2・2・1・2じゃ1のやつがかわいそうなので、ある意味必然的なとも言える。

しかしその攻撃的なフォーメーションがアダとなった。
犠牲者は真ん中の列の一番向こう側、右のMFだ。

私は見た。すごいクレイジーなクラッシュだった。
こっち側に走ってきているにも関わらず、その瞬間自転車は真横の姿をさらし、右MFに至っては頭が右下、背中が見えて足は左上。単純に言うと地面からおよそ1メートル50センチの場所でななめに1回転していた。

私が中学生自転車軍団を視認してからここまで約2秒。
そんな短い時間であんな素敵なクラッシュを拝めた私は運がいい。
だがしかし、それだけでは終わらなかった。

こともあろうにクラッシュした右MFは1回転して地面に叩き付けられた勢いそのままに、すかさず立ち上がり、体操の着地ポーズをとってしまったのだ。
「ああ、なんて・・・なんて・・・」
両腕を天に向かってのばし、一遍の曇りもない満面の笑みを浮かべる右MFを見たその瞬間、私の身はエクスタシーに到達した。
ここまで4秒。

チームメイトはみな自転車を止め、右MFを無表情で見つめている。
いや、きっと溢れる人間味を目の当たりにした時にどういう表情をしていいのか分からなかったのだろう。
顔も大して良くない、体も小さい髪型もダサイ。そんな右MFが伝説になった瞬間にただただみんな唖然としていた。
ここまで6秒。

そして私の車は身動き一つとれない彼等の横を通り過ぎた。

あの後一体どうなっただろうか。
右FW「だ、大丈夫？」
右MF「うん！見事な着地だったでしょ！？」
なんて人間味のおさまりきらないようなやりとりがあっただろうか。
それとも右MFはハッと自分のしていることに気付き、
「いって～・・・」
なんて照れ隠しをしただろうか。

しかしどうなったところでもう遅い。
一度あふれた人間味は決して拭い去る事ができないのだ。

そして今、私は思う。
楽しい時は笑えばいい。
悲しい時は泣けばいい。
だが、人間味を目の当たりにした時、どういった表情をすれば良いのか。
人間味にはまだまだ研究が必要だという事を。