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アナタが作る物語コミュの【ホラー・コメディ】吸血鬼ですが、何か?第1部復活編第7話

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力なく頷いたマイケル・四郎衛門に大富豪ポールは満足げにハンケチで首を拭ってやり身を離した。
どういう訳か判らないがマイケルの喉の傷はすぐに塞がり出血も収まった。
大富豪ポールの顔は常人のそれに戻ってマイケル・四郎衛門にワイングラスを持たせた。

「儀式は終了した。
 さあ、マイケル、ワインを飲みなさい。」

言われるがままにマイケルがワインを口に含んだ。
先ほどの酸味が強い感じだったワインはふくよかで芳醇な最上等なワインの味がした。

「どうだ?ワインの味が変わっただろう?」
「は…はい、すごくおいしいワインになっています。」
「そうだろうな、私の血を少しだけ混ぜておいたのだ。
 これでお前と私の血液の交換が完了したと言う事だ。
 いささか強引で説明不足かも知れないが…これでお前も人々の言う『吸血鬼』となったのだ。」

大富豪ポールの宣告にマイケル・四郎衛門はひどく狼狽をしたが、その後のポールの時間をかけた丁寧な説明にマイケル・四郎衛門は落ち着きを取り戻し、大富豪ポールの助手となることを改めて承諾した。

「では、血を吸われただけでは吸われた人間も吸血鬼になると言う事は…」

俺の問いにマイケル・四郎衛門は手をひらひらと振った。

「無いぞそんな事。
 血を多く吸われたら死ぬが、たいていの吸血鬼はコップ1〜2杯くらいの血で満足する。
 それ以上吸うと胸焼けして苦しくなる。
 大抵は血を吸われた人間はぐったりするが数時間程度で回復するよ。
 また人間を吸血鬼にするには体液を交換しないといけないのだ。」
「でも、人間の血を吸わないと生きて行けなくなるんじゃないんですか?」

処女の乙女の質問にマイケル・四郎衛門は苦笑いを浮かべた。

「そんな事は無い。
 吸血鬼にとって血は、何と言うか、たばこや酒のような嗜好品に近いな。
 血を求めて人間を襲いまくるなんてことは気でも狂った吸血鬼くらいだ。」
「でも、吸血鬼になると言う事はかなりショックを受けたのじゃないの?」

処女の乙女が尋ねるとマイケル・四郎衛門はクスリとした。

「でもまぁ、伝承にあるような吸血鬼とポール様は全然違うからな。
 伝承だと吸血鬼は昼間は棺の中で眠っているとか十字架やニンニクが苦手とか日の光で燃えてしまうとか人間の食事を摂らないとかそういう事が全然無かった。
 日曜の礼拝にだって普通に出ていたんだよ。
 それを見ていたから、われは自分がポール様のようになったからと言ってさほどショックは受けなかった…ただ…」
「ただ…ただ何ですか?」
「不老不死となり年をとらなくなった事とひどく大食いになった事、そして…悪鬼の類がわれの体臭か精神の波長かに引き寄せられて集まりやすくなった事だな。
 そんなに頻繁ではないがな…奴らは最初から上等な餌だと襲い掛かってくる者もいれば同類と思って近づいてくるが、われとポール様が奴らと違う考えを持っていると気が付くと態度を豹変してきたり…今までポール様が体験した事がわれにも降りかかってきて少し忙しくなった事だ。
 またわれとポール様が吸血鬼であることを周りの者に隠すことに神経質になった。
 まぁ、普通に生活をしていればさほどばれる危険は無いのだが、一度でもばれてしまうと人間達が大挙して押し寄せ残虐非道な方法でわれとポール様を滅ぼそうとするのは確実だからな。
 怪異な事件が起きてわれとポール様が疑われないように近辺に現れる質が悪い悪鬼や人間を可能な限り静かに排除して平穏を保つ必要があるんだ。
 結果としてポール様は周りの人間を守護して平安である事が自分の身も守るという考えであったし、われもその考えに賛成だ。」

そしてマイケル・四郎衛門は吸血鬼となった後、大富豪ポールとともに近辺に姿を現す悪鬼、そして質が悪い人間、悪鬼に操られて凶悪になった人間を排除する仕事にとりかかったと言う事だ。

人間の守護をする吸血鬼…今までの吸血鬼の概念が壊されてしまい、混乱しながらも、俺と処女の乙女はマイケル・四郎衛門が語る様々な怪異な戦いの事を時間を忘れるほどに聞き入った。

「凄い人生ですね…ところで何故そんなあなたが棺に封印されてアルゼンチンの修道院に隠されてしまったのですか?」

俺が訪ねるとマイケル・四郎衛門は苦笑いを浮かべた。

「その話まで話すともう少し時間がかかる…われは…お腹が空いてしまった、何か食事をふるまってほしいのだが…」
「今さっと作れるのがペペロンチーノとパンくらいですが…」
「ペペロンチーノ?」
「イタリアのパスタ料理です…ニンニクが入りますけど大丈夫ですか?」
「普通に料理に入っていれば問題ない。
 ぜひ頼みたい。」
「はい、しばらく待ってください。」

俺が食事の準備をしている間、処女の乙女は自分の事をマイケル・四郎衛門に話し始めていた。
俺と処女の乙女はもう、マイケル・四郎衛門に対する恐怖はすっかり薄らいでいた。
少なくともいきなり襲われて生き血を吸われると言う事は無いだろう。


続く





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