競馬千夜一夜コミュのカンタベリーピルグリム

「壮大なる血統の巡礼者」カンタベリーピルグリム（ＣａｎｔｅｒｂｕｒｙＰｉｌｇｒｉｍ）

牝・栗毛・イギリス産　１８９３年生　１９１７年死亡
父トリスタンＴｒｉｓｔａｎ　母ピルグリメッジＰｉｌｇｒｉｍａｇｅ(ＴｈｅＰａｌｍｅｒ)
通算成績：１０戦４勝
主な勝ち鞍：英オークス、リバプールサマーＣ、パークヒルＳ、ジョッキークラブＣ

「カンタベリー物語」は１４世紀のイギリスの詩人、ジェフリー・チョーサーによって綴られた説話集。中世英文学としてシェイクスピアなどに大きな影響を与えたといわれています。「昔病めるとき、癒し給いし聖なる殉教者に、お参りしようと旅に出る。」から始まるこの物語は聖トマス・ア・ベケットを祭るカンタベリー寺院への参拝の途上、偶然の引き合わせから一緒になった身分も職業も違う３０人の巡礼者たちが、旅の道すがらそれぞれの不幸な話を聞かせる展開で進行します。

第１６代ダービー卿はダービー家の宿命ともいえる競馬との関わり取り戻すべく、爵位を継いだ１８９４年にニューマーケットの１歳セールで１８００ギニーを出して１頭の牝馬を購入します。
アスコットＧＣの勝馬トリスタンを父に、「巡礼の旅」を意味する２０００ギニーの勝馬ピルグリメッジを母とする１８９３年生まれの牝馬は、母の名前からイングランド南東部の都市で大聖堂のある「カンタベリーへの巡礼」を意味するカンタベリーピルグリムと名付けられました。

コメント(8)

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[1] mixiユーザー 09月15日 09:06

２歳時は４戦０勝。スピードは確かながら４ハロンを越えると失速する姿は、ダービー卿の馬を預かるラムトン調教師をひどく落胆させます。ラムトン調教師はドンカスターで老獪な調教師と出会い、こう言われました。「その昔、マリースチュアートという牝馬がいて、この馬は２歳時には４ハロンも持たなかったが、３歳になってセントレジャーを勝った。カンタベリーピルグリムはそのマリースチュアートにそっくりだ。」　助言に従ったラムトン調教師は調教方針を転換しステイヤーとして育成を始めると、馬体の成長も手伝って隠れていた能力が開花していきます。１０００ギニーを捨て狙いをオークスに定めると、直線で１０００ギニー馬タイズを下して見事にレースを制しました。次戦１マイルのコロネーションＳは落としましたがすっかりステイヤーとしての脚質が定着し、楽な相手にリバプールサマーＣ(芝２２００m)を楽勝、パークヒルＳ(芝２８００m)を馬なりで勝つと、迎えたジョッキークラブＣ(芝３６００m)では２着グリスタンに１５馬身もの差をつけて圧勝しました。
競走生活を終えたカンタベリーピルグリムは、ダービースタッド（ウッドランド牧場）で繁殖入りします。そして、競馬の歴史に大きな足跡を残すことになります。

[2] mixiユーザー 09月15日 13:45

『カンタベリー物語』の作者であるジェフリー・チョーサー（Geoffrey Chaucer, １３４３年頃～１４００年１０月２５日）はロンドンのワイン商人の家に生まれ、エドワード３世、リチャード２世に仕えました。外交使節としてイタリアを訪問した際にイタリアルネッサンス文化に触れ、詩人のペトラルカと親交を結びました。ペトラルカが用いたソネット形式を英文学に導入したイギリスルネッサンスの先駆的作家です。ボッカチオの作品に影響を受け、「カンタベリー」物語はボッカチオの「デカメロン」のイギリス版ともいえます。登場人物も題材も極めて庶民的であり、カンタベリー大聖堂へ向かう巡礼者たちが語るという体裁の説話集であり、未完ながら中英語（Middle English）を代表する文学作品のひとつです。チョーサーは多彩な学歴を持ち、学識が豊かで、Ｆather of ｅnglish poetryと呼ばれる大詩人となりました。
１９９８年７月にロンドンのクリスティーズで競売にかけられた『カンタベリー物語』の初版本は４６２万ポンド（約１０億８千万）で落札されています。

カンタベリーピルグリムの父トリスタン（Ｈｅｒｍｉｔ）はアスコットＧＣの勝馬。母ピルグリメッジは２０００ギニーの勝馬。２歳下の弟Jeddah（ジェッダ・父ジャニサリーＪａｎｉｓａｒｙ）はダービーを単勝１０１倍という人気薄で勝ち、イギリスで種牡馬入りしました。

[3] mixiユーザー 09月15日 15:47

カンタベリーピルグリムは生涯に牝７頭、牡３頭の産駒を残しました。彼女を特に有名にしたのは２番仔のチョーサーChaucer と、７番仔のスウィンフォードSwynfordです。チョーサーはファロスとハイペリオンの母父となり、スウィンフォードはブランドフォードの父となりました。つまり、カンタベリーピルグリムはセントサイモン以後に主流となるファロス系（ネアルコ系）、ハイペリオン系、ブランドフォード系の全ての血脈において源流となった歴史的な繁殖牝馬といえます。大馬産家として知られる第１７代ダービー伯爵が生産した馬の殆どはカンタベリーピルグリムの血を強く受けています。

「史上最高のＢＭＳ」チョーサー（Ｃｈａｕｓｅｒ）
牡・黒鹿毛・イギリス産　１９００年生　１９２６年死亡
父セントサイモンSt. Simon　母カンタベリーピルグリム（トリスタン）
通算成績：３５戦８勝
主な勝ち鞍：ジムクラックＳ、リバプールＣ

チョーサーはセントサイモンを父として生まれました。カンタベリーピルグリムの父はセントサイモンの引き立て役となったトリスタンというのも皮肉です。
２歳時は５戦２勝、重賞ジムクラックＳ(１２００m)を制し、ルースメモリアルＳ(１２００m)で３着するなど非凡な才能を見せましたが、年が明けて結膜炎に罹り成績が低迷します。２０００ギニーは三冠馬となるロックサンドの４着と好走しますが、ダービーとセントレジャーには出走の機会さえ与えられず、ヨークプレートやロイヤルハントＣなどを連敗し、この年は４戦して未勝利に終わります。４歳以降は名馬の面影もなく二流や三流のハンデ戦を走り、４歳時は１０戦３勝、５歳時は１１戦２勝、６歳時５戦１勝。リバプールＣなどで勝利を挙げましたが、６歳の秋に腱を痛めて引退しました。ダービー卿の牧場で種牡馬入りした後は順調に種牡馬成績を伸ばし、１９１６年にはサイアーランキングで２位となりました。衰退するセントサイモン系にあって特に母の父としてその名を残し、１９２７年と１９３３年にリーディング・ブルードメアサイアーに輝きました。
チョーサーは母譲りの小さな馬で体高は１５６cmほどしかありませんでした。優れた体格というわけではありませんでしたが、美しい馬体だったと伝えられています。
１９１９年生まれの牝駒セレーネＳｅｌｅｎｅはハイペリオン（1930 Gainsborough）、ファラモンドPharamond（1925 Phalaris）、シックルSickle（1924 Phalaris）の母となり、１９１４年の牝駒スカパフローＳｃａｐａＦｌｏｗはファロスPharos（1920 Phalaris）、フェアウェーFairway（1925 Phalaris）の母となりました。チョーサーは２０世紀で最も優れたブルードメアサイアーと呼ばれています。
ニューマーケットのウッドランド牧場で１９２６年に死亡。牧場にはチョーサーの記念碑があり、そこには「ダービー・スタッドの開祖」と刻まれています。
セントサイモン系は大繁栄を遂げましたが、輸送手段が現代とは比較にならない時代で限られた地域の繁殖生活で活躍馬を出し続けたことにより血の飽和状態により滅亡に向かいました。フランスに残った系統からわが国にもボワルセルを通じたヒンドスタンが輸入されシンザンをはじめとする多くの活躍馬が出ましたが、現在は衰退しています。

[4] mixiユーザー 09月17日 08:54

「ブランドフォードの偉大なる父」スウィンフォード (Ｓｗｙｎｆｏｒｄ)
牡・黒鹿毛・イギリス産　１９０７年生　１９２８年死亡
父ジョンオーガントJohn o'Gaunt　母カンタベリーピルグリム

通算成績：１２戦８勝
主な勝ち鞍：セントレジャー、エクリプスＳ、ハードウィックＳ(２回)、プリンセスオブウェールズＳ、リバプールＣ、リバプールセントレジャー

ブランドフォードの父としてサラブレッド史に名を残すスウィンフォードは第１６代ダービー卿の生産馬として１９０７年１月３０日生にウッドランド牧場で生まれました。
父のジョンオーガント(１９０１年)は三冠馬で１敗の名馬アイシングラスＩｓｉｎｇｌａｓｓ(１８９０年)を父に、クラシック三冠の名牝ラフレッシュＬａＦｌｅｃｈｅ(１８８９年)を母に持つという、日本でいえばメジロリベーラ(シンボリルドルフ×メジロラモーヌ)のような極め付きの良血でした。母はオークス馬のカンタベリーピルグリム、英国馬産の粋を集めた血統でした。生まれた時は母同様に小柄でしたが、健康で順調に成長していきました。１９０８年の６月に第１６代ダービー卿が亡くなり、第１７代ダービー卿がオーナーとなります。１歳になったスウィンフォードは、新たに建てられたスタンリーハウス厩舎を管理するジョージ・ラムトン調教師のもとへやって来ました。この頃には馬体は大きくなり、動きも力強く際立っていたのでラムトン師も期待をかけていました。
２歳７月に初めて行われた追い切りでも、年上の馬を相手に同斤量で楽勝するなどよい動きを見せていました。こうして迎えたニューマーケットのデビュー戦エグゼターＳ(芝1200m)でしたが、発走と同時に鞍上のダニー・マーエ騎手の抑えを振り切って飛び出してしまい、結局前半で力を使い果たしてしまったスウィンフォードは着外に敗れました。その後、飛節軟腫がひどくなり２歳シーズンは結局この１走だけで終わりました。

[5] mixiユーザー 09月23日 08:59

ラムトン調教師はよほどスウィンフォードの素質を見込んでいたのか、ダービーを３歳の初戦に選択します。しかし、他の馬と接触して負傷したこともあって結果としては１１着(１５頭)と惨敗します。怪我の程度は軽く、２週間後に行われたセントジェームズパレスＳ(1600m)ではダービー馬で生涯のライバルとなるレンバーグＬｅｍｂｅｒｇ(Ｃｙｌｌｅｎｅ)から４馬身差の３着に終わりました。スウィンフォードの長距離適正を見抜いていたラムトン師は２日後のハードウィックＳ(2400m)に出走させます。軽い斤量と持ち前のスタミナを活かして後続に３/４馬身差を付けてようやく未勝利を脱したスウィンフォードは、次戦のリヴァプールサマーＣ(2000m)で持てる素質を開花させます。勢いよく先頭に立つと、後続をぐんぐんと引き離し、最後は５馬身差をつけて圧勝したのでした。そして７週間後、ドンカスター競馬場に堂々たる勇姿を現せたスウィンフォードはセントレジャー(2920m)のゲートに向かいます。人気はレンバーグに次ぐ２番目でしたが、発走と同時に先頭に踊り出たままハイペイスを刻み、最後はブローンジーノＢｒｏｎｚｉｎｏ(Ｍａｒｃｏ)に迫られながらも頭差しのいで逃げ切り勝ちを決めたのでした。しかし、陣営はレンバーグが内に包まれ脚を余して３着に敗れたため、この結果が実力通りとは人々は思っていませんでした。
３歳シーズンをリヴァプールセントレジャー(2400m)での単走で締めくくったスウィンフォードは、４歳になってさらに力強さを増していきます。まずニューマーケットでのチッペナムプレート(2400m)を楽勝すると、エプソムでのコロネイションＣ(2440m)は、待ち望んだレンバーグとの再戦となりました。ところが、スローとなったこのレースで、これまでと違ってやや後方に下げる作戦を取ったスウィンフォードは、レンバーグを３/４馬身差捉えることができれずに２着に敗れてしまいました。しかし、気を取り直して臨んだロイヤルアスコットのハードウィックＳ(2400m)を４馬身差で連覇すると、プリンセスオブウェイルズＳ(2400m)でレンバーグと５度目の対戦となりました。互いに全力を出し切った勝負で、１４１ポンド（約６４ｋｇ）という斤量を背負いながらも、今度はなじみの逃げ戦法に戻したスウィンフォードは、５ポンド（約２.３ｋｇ）斤量の軽いレンバーグに１馬身半差をつけて好敵手を力でねじ伏せたのでした。半月後のエクリプスＳ(2000m)で１４０ポンド（約６３.５ｋｇ）の斤量を背負ったスウィンフォードは、終始先頭を走り、後ろを振り向くことなくレンバーグに４馬身差をつけて完勝。これで勝負は完全につきました。
しかし、これがスウィンフォードの最後のレースになるとは誰がこの時予想したでしょう。

[6] mixiユーザー 09月24日 09:29

ジョッキークラブＳへ向けて順調に調整中だった１９１１年９月のある朝のことです。
ラムトン調教師と専属騎手のウートンは、これから調教をつけようというスウィンフォードについて「５ハロンだろうが５マイルだろうがこの馬なら勝てる」と素直な感想を話していました。調教を見守っていたラムトン師の視線から走っていた２頭が干草の山の陰に隠れて消えました。しかし、いつまでたっても１頭が出てきません。急いで駆けつけたラムトン師が見たものは３本の脚で立っているスウィンフォードの姿でした。スウィンフォードの怪我は球節の骨が粉々に砕けてしまっているという深刻なものでした。これほどの重傷は即安楽死処分というのが当時の常識でしたが、ダービー卿の馬を管理するラムトン調教師はスウィンフォードの能力を高く評価しており、競走馬としてはハイペリオンＨｙｐｅｒｉｏｎより上と見ていたので、名獣医リヴォックを呼び寄せて大手術を行いました。懸命な看護と馬自身の精神力によって奇跡的に一命を取りとめたスウィンフォードは、その後種牡馬として２０世紀のサラブレッドに大きな影響を及ぼす存在となります。６歳になってウッドランドスタッドで種牡馬生活に入ったスウィンフォードは、初年度から活躍馬を送り続け、１０年後の１９２３年にはリーディングサイアーとなりました。１９２８年５月１８日に２１歳で世を去るまでにフェリーＦｅｒｒｙ（１０００ギニー）、キーソーKeysoe（セントレジャー）、ベッテナBettina（１０００ギニー）、トランキルTranquil（１０００ギニー・セントレジャー）、サンソヴィーノSansovino（ダービー）、ソーシースーSaucy Sue（１０００ギニー・オークス）と６頭のクラシック勝ち馬を送り出しました。さらに後継種牡馬のセントジャーマンズSt.Germans（コロネーションＣ・ドンカスターＣ）、チャレンジャーChallenger（リッチモンドＳ）はアメリカで成功します。
スウィンフォードの馬名は、兄チョーサーが母の名に因んでいたのに対し、こちらは父ジョンオーガントがジョン・オブ・ゴーント（John of Gaunt・ランカスター公）から、その后スウィンフォードと名付けられました。
そしてダービー馬４頭の父となったブランドフォードBlandfordがその血脈を伝えていきます。

[7] mixiユーザー 09月29日 14:52

ブランドフォード（Blandford）

牡・黒鹿毛・アイルランド産　１９１９年５月２６日生　１９３５年４月２４日死亡
父スウィンフォード　母ブランチBlanche（White Eagle）
通算成績：４戦３勝
主な勝ち鞍：主な勝ち鞍：プリンセスオブウェールズS、パラダイスプレート

父のスウィンフォードは、その父ジョンオーガントと祖母ピルグリメッジから肢の悪さを受け継ぎ、つなぎの部分が短く曲がっていました。この性質はブランドフォードにも受け継がれ、右前脚の屈曲、両前脚の長さが違うというハンデを負っていました。その上に、生まれて間もない頃に牧場の柵に登って大怪我をします。さらに傷が癒える間もなく肺炎を患い生死の境を彷徨い、１歳時には牧場に迷い込んだ馬車馬に噛み付かれ危うく死にかけるという散々な目に遭いながら、それでも２歳の６月にデビューします。ニューベリーでのデビュー戦ケネットプレート(１０００m)はゴール２ハロン前で先頭に立ち３/４馬身差で快勝、アスコットの２戦目ウィンザーキャッスルＳ(１０００m)もスタートから先頭に立って快調に跳ばしたもののゴール寸前で膝が痛みだして、よろけたところをクビ差交わされました。３戦目は長い休養から年が明けた４月ハーストパークのパラダイスＳ(２０００m)をクビ差で勝利し、７月ニューマーケットのプリンスオブウェールズＳ(２４００m)で古馬を２馬身ちぎって快勝したあと、脚部不安が悪化しターフを去りました。前肢の膝下に爆弾を抱えていたためクラシック登録はなく、現役生活は時代は４戦したのみでした。因みに、パラダイスＳでブランドフォードから４馬身差の３着に敗れたスパイクアイランドＳｐｉｋｅＩｓｌａｎｄはこのあと愛２０００ギニーと愛ダービーを制しています。
腱炎が原因で引退しアイルランドのクロフラン牧場で種牡馬入りしたブランドフォードは性欲の弱さ、受胎率の低さというハンデを持っていました。初年度の種付料は１４８ギニーと平均的なものでしたが（この年の最高種付料はザテトラークＴｈｅＴｅｔｒａｒｃｈの５００ギニー）、２年目の産駒トリゴーＴｒｉｇｏがダービーと英愛セントレジャーを制し、３年目の産駒ブレニムＢｌｅｎｈｅｉｍもダービーを勝ち、その後も凱旋門賞馬ブラントームＢｒａｎｔｏｍｅや英三冠馬バーラムＢａｈｒａｍなどを輩出したために１９３１年には４００ギニーにまで高騰しました。産駒の多くも優秀な種牡馬となり、一代系統を築く大種牡馬となりました。
ブランドフォードは１５歳の時に肺炎で急死します。この年には英愛仏でリーディングサイアーを獲得しています。ダービー馬４頭を輩出した種牡馬はブランドフォードの他にはサーピーターティーズルＳｉｒＰｅｔｅｒＴｅａｚｌｅとサイリーン／シリーンＣｙｌｌｅｎｅの２頭しかいない記録です。
日本にはドンカスターCに勝ったアスフォードＡｔｈｆｏｒｄやトリゴーの全兄で愛ダービーや愛セントレジャーを勝ったプリメロＰｒｉｍｅｒｏｔが輸入され、プリメロはミナミホマレ、トサミドリ、クリノハナ、クモノハナ、トキツカゼなど数多くの名馬を輩出しました。
現在ではドイツのＳＳ的スーパーサイヤーでシロッコShiroccoの父としても知られるモンズーンMonsunがブランドフォードの系統を拡げています。

競馬用語でもギニーという言葉が多く出てきます。ギニー（Ｇｕｉｎｅａ）は、かつて英国で使われていた金貨の単位です。ギニアで産出された金を用い鋳造されたことに由来します。１７１７年に１ギニーは２１シリングの価値があると定められ、１８１６年には新しいソブリン金貨(１ポンド)に取って代わられましたが、１９７１年の十進法移行までは医師や弁護士への謝礼、品物の鑑定料、土地、馬の取引等の名目単位として使われていました。競馬の世界でも当時の賞金額から１０００ギニー、２０００ギニーにその名を留めています。１ポンドは２０シリングなので、１ポンドと１ギニーでは１ギニーのほうが１シリング分だけ余計に価値があります。この余分な１シリング（５％相当）は、日本で言う「心づけ」的な趣旨があり、売り手に対する感意を込めた「おまけ」のようなものでした。この「おまけ分」は馬の売買においては仲介者（調教師など）への手数料に当てられることが多く、現在でも伝統的にセリ市での馬の売買価格の表示などで「ギニー」が好んで使われています。１シリングは１２ペンス（ペニーの複数形）、1ペニーは現在の日本円で約５０円に相当します。現在では１ポンド＝１００ペンスで計算されています。

[8] mixiユーザー 10月07日 12:15

カンタベリーピルグリムに配合されてスウィンフォードの父となるジョンオーガントは前述したように三冠牝馬ラフレッシュを母に持っています。余談になりますが、この歴史的名牝にも触れてみたいと思います。

ラフレッシュ／ラフレッチェ／ラフレシ(ＬａＦｌｅｃｈｅ)
牝・黒鹿毛・イギリス産　１８８９年生　１９１６年４月２２日死亡
父セントサイモン／サンシモンＳｔ.Ｓｉｍｏｎ　母クァイヴァーＱｕｉｖｅｒ（Ｔｏｘｏｐｈｉｌｉｔｅ）
通算成績：２４戦１６勝２着３回３着２回
主な勝ち鞍：２歳時４戦４勝（シャンペンＳ、モルコムＳ、チェスターフィールドＳ、ラヴァントＳ）／３歳時９戦８勝（セントレジャー、オークス、１０００ギニーＳ、ナッソーＳ、ケンブリッジャーＳ、ニューマーケットオークス、ランカシャープレート、グランドデュークマイクルＳ）／４歳時７戦２勝（ローザーＳ、リヴァプールオータムＣ）／５歳時４戦２勝（アスコットゴールドＣ、チャンピオンＳ）

父は「煮えたぎる蒸気機関車」（ＢｌｏｏｍｉｎｇＳｔｅａｍ－ｅｎｇｉｎｅ）とも言われたセントサイモン。母クァイヴァーは２勝馬。その父トキソフィライトＴｏｘｏｐｈｉｌｉｔｅはタッチストン系で、ファーラップと並ぶオセアニア競馬史に残る名馬カーバイン／カービンＣａｒｂｉｎｅ（マスケットMusket）の祖父として知られています。フランス語で矢を意味する名前は母Ｑｕｉｖｅｒ（矢筒）からのものです。
ラフレッシュは１８８９年にヴィクトリア女王が所有するハンプトンコート王室牧場で生まれました。１歳のイヤリングセールでは、後肢が発達し均整のとれた優れた馬体と、父が歴史的大種牡馬、加えて全姉のメモワールＭｅｍｏｉｒがオークス、セントレジャーの変則二冠を達成した直後ということもあり牝馬でありながら５５００ギニーのレコード価格でモーリス・ド・ヒルシュ卿に購入されました。気性難で知られるセントサイモン産駒にしては珍しくおとなしい気性だったと伝えられています。２歳の７月にデビュー、シャンペンＳなど４連勝します。３歳緒戦の１０００ギニーは相手を見ながら１馬身３/４差で楽勝し、僚馬オームＯｒｍｅが水銀を盛られダービーに出走できなくなったことからダービーに挑戦することになりました。１３頭立てのダービーは、単勝１.１倍(１１-１０)の圧倒的な大本命となりました。しかし、騎手が２日後に控えるオークスのために楽に勝たせようと仕掛けを遅らせたため、シャンペンステークスで７馬身半差も切り捨てたサーユーゴＳｉｒＨｕｇｏ（父Ｗｉｓｄｏｍ）に３/４馬身差で敗れる結果になってしまいました。このレースには２０００ギニー馬のボナヴィスタBona Vista（父Bend Or）も出走していました。ボナヴィスタは直仔のサイレーン／サイリーン／シリーンＣｙｌｌｅｎｅを通じてベンドア系を発展させ、ネアルコ系・ネイティヴダンサー系へとつながる父系となりました。
オークスをハナ差で辛勝したラフレッシュはマイルのナッソーＳを楽勝し、秋のセントレジャーではこの世代のもう一頭の名馬オームとの初対決で話題を集めましたが、早めに先頭に立ったオームを楽々と抜き去る２馬身差の快勝、この勝利で史上4頭目の三冠牝馬になりました。４歳時に転厩したこともあって調子を落とし、エクリプスＳとゴードンＳでオームに連敗。ランカシャープレートも３着に敗れ不本意な成績で終えましたが、５歳時には古馬の最高峰の１つであったアスコットゴールドカップに楽勝し歴史的名馬の地位を揺るぎないものにしました。１０月にはお腹に仔を宿したままチャンピオンＳを勝って競走生活を終えました。
ラフレッシュの繁殖成績は競走成績から考えれば物足りないものがありましたが、ジョンオーガント（両親共に三冠馬+アスコットＧＣ）がスウィンフォードを出し、ブランドフォードが父系を発展させたことで充分に名牝の資格が与えられるものです。そして牝駒のバロネスラフレッシュＢａｒｏｎｅｓｓＬａＦｌｅｃｈｅが牝系を伸ばし、１３頭の産駒から１０００ギニー馬でオークス２着のＣｉｎｎａ（Polymelus）を含め勝馬９頭が２５勝しています。現在でもその牝系にはサンデーサイレンスを初めとしてメジロムサシやファビラスラフインがおり、ツインターボの母系を１０代遡るとラフレッシュになります。
因みにラフレッシュの全姉メモワールからは輸入種牡馬ヒンドスタンやバンブーアトラス、アローエクスプレスやプリモディーネのソーダストリーム一族がおり、３号族は世界各国に根をはやしております。
ラフレッシュは１９１２年に繁殖牝馬としても引退し、その後はスレドメア牧場で余生を送っていましたが、２７歳の春に老衰で死亡しました。

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