競馬千夜一夜コミュの乙女達のその後

デッドヒート（Ｄｅａｄｈｅａｔ）は競馬が語源の言葉です。通常は「接戦」とか「激戦」などの意味で使われていますが、競馬用語としては「同着」を表します。これは１９世紀まで盛んに行われていたヒートという競走形態に由来します。ヒート競走とは、現在の競馬のレース形態とは異なり同じ馬同士が複数回走り、一方が連続で勝つとその馬が勝利となるもので、相撲における巴戦に似たものです。連続で勝てなければ勝負が決まらずドロー（引き分け）となるため「無意味な戦い」、死んだレースというのが本来の意味です。

１９８３年の第４４回優駿牝馬（オークス）はまさに「激戦」と呼べる「名勝負」でした。ゴール前のデッドヒートは見る者が手に汗を握り、２．３０．９というタイムの中にドラマが凝縮された素晴らしいレースでした。
直線で２番手から早目に抜け出し粘りこむタイアオバにダイナカールが襲い掛かり抜け出しを図るとメジロハイネが追い上げてきて、更にそこに後方からジョーキジルクム、レインボーピットが追い込み、最後はこの５頭が鼻面を並べてゴールイン。オークス史上最高の名勝負と謳われる激戦を制し、長い写真判定の末に第４４代のオークス馬に輝いたのがダイナカールでした。
１着から５着までに入った馬にはタイム差がなく、５頭が横一線に並んだゴールイン。６着には２馬身半の差がありました。それでも着順は非情です。この瞬間に全ては始まりました。

１着．ダイナカール（ノーザンテースト）岡部幸雄（２人気）　　　　２．３０．９
２着．タイアオバ（タイテエム）村本善之（２０人気）　　　　　　　（ハナ）
３着．メジロハイネ（メジロゲッコウ）的場均（１０人気）　　　　　（アタマ）
４着．ジョーキジルクム（アローエクスプレス）岡冨俊一（７人気）　（ハナ）
５着．レインボーピット（ハードツービート）津曲幸夫（１１人気）　（アタマ）

「優駿」には掲載されていた記憶があったので決勝写真の画像を探しましたが見つけられませんでした。
この数十センチに明暗を分けた５頭の乙女、その後の彼女たちにどのような運命が待っていたのか検証してみたいと思います。
因みにこのレースで競走を中止したのは、その名もマチカネオトメ。起き上がれないまま予後不良となりました。

コメント(18)

最初
全て
最新の40件

[1] mixiユーザー 01月27日 23:16

確かに優駿に掲載されていましたね。
面白ゴール版写真集の一枚でしたね。

異様に体が長く写っちゃつた馬とかいましたね。

私もこの五頭の話はなんかで見て
結構面白かった記憶があるので
続きが楽しみです。

[2] mixiユーザー 01月28日 00:07

＞デッドヒート
レース用語だとは思っていましたが、競馬でしたか。
毎度毎度、お勉強させていただいています。

[3] mixiユーザー 01月28日 01:08

「ハンディキャップ」という言葉も競馬からの説もありますが、乙女達がどうなったかを綴っていきたいと思います。
ご自身で観た方とか、調べれれたりした方がおられましたら書き込んでくでいただければ嬉しいですね。
「牝系」から競馬を見たら永遠のドラマになります。

[4] mixiユーザー 01月28日 15:13

生産牧場にとって産駒の成績、特に大レースの着順は大きく経営に関わってきます。ブラックタイプのセリ名簿にも着順が影響し、価格にも反映します。ハナ差とはいえマーケットブリーダーとしては牧場とその馬の運命を左右することもあります。産駒がクラシックを勝てば、その母親は名牝となり以後の子供の価値も上ります。クラシック馬となった牝馬は牧場に名誉をもたらすばかりでなく、繁殖に上れば大きな財産となります。
記録に残るタイムは全て同じ、しかし非情な写真判定は１着から５着までの着順に運命をわけました。

５着／レインボーピット
２歳の１１月にデビューしたレインボーピットが初勝利をあげたのは明けて３歳となった３月、４戦目のことでした。父がハードツービートだけにそれまでの１２００ｍでは結果を出せず、２０００ｍのレースで真価を発揮する快勝でした。１勝馬の身でオークストライアルに挑み４着となってオークスに出走できました。当時は５着までが優先出走権を得ました。
秋のエリザベス女王杯は７着、その後は条件級を低迷したまま６歳の３月に引退して故郷の飯田牧場に戻りました。初年度の配合相手はミルジョージ、当時売り出し中の種牡馬であり繁殖として牧場の期待の高さがわかります。
受胎確認を待つ状況で突然の不幸が訪れます。急に苦しみだしたレインボーピットは手を施す間もなく急死しました。５月６日に種付された２日後のことでした。死因は直腸破裂、種付時の直検で腸に傷がつくという信じられないものでした。
あまりにもあっけない最期でした。オークスの無念を晴らすチャンスさえ与えられず、レインボーピットはなにひとついいこともなくオークス５着の不運を背負ったまま死んだのでした。たとえハナ、クビ差でも、その運のなさは運命の歯車を狂わせることになります。
飯田正オーナーは事故に怒り弁償まで考えましたが「あの馬はこういう不幸な運命の星の下に生まれてきたんだ、これが前世からの約束事なんだ」と諦めることにしたそうです。そして「牧場の宝を失った痛手はあまりにも大きく、づっと未練を持ち続けてやることがレインボーピットへのせめてもの供養」とも言われました。
騎乗した津曲騎手は後５ｍあったら交わせたと発言して調教師から怒られたと伝えられました。
彼女の画像は見つけられませんでした。

[5] mixiユーザー 01月29日 00:28

実家のどこかにあります。
卒論終了しだい、実家の物置にしまってしまい
協力できずにすいません。

牝系は卒論で調べてみました。
私は以前『繁殖牝馬について』で卒論を書きましたと言った者です。

ファミリーナンバーについて調べたんですけど
結局何？？でした。笑

ジェームスウィザビーだったかな？？考えた人。

脱線しましたが
牝系はテイオー、スペシャルのが本当に面白いですよね。
日本競馬の結晶がこの二頭につぎ込まれていて
しかも二頭ともハイレベルな年のジャパンカップを勝っていることが、世界競馬に対して日本の牝系が遅れを取っていなかったと証明されているところが良かったです。

この二頭は牝系でも
競馬面でもドラマチックなエピソードばかり
何かあるんでしょうかね？？

ちなみに、知っているかもしれませんが牝系は
http://www.umakazoku.com/
で調べていました。

非常に受身ですが、続きを楽しみにしています。

[6] mixiユーザー 01月29日 06:55

現在は血統を調べるのも容易になりましたが、ネットや出版物が少なかった時代は苦労しました。ライフワークにしているソーダストリームの牝系図は膨大なものになっています。
レインボーピットは１号族で２代母が輸入された１９５７年生まれのビギナー(Beginner)です。母であるイーデンマッチとその妹のイーデンテックを通じて牝系はつながっていますが、クラシックを賑わす大物は現在のところ現れていません。

[7] mixiユーザー 01月29日 21:54

本当牝系は膨大すぎてきりが無いですよね。笑

ネットで楽になったにせよ私も、何をすればいいか迷いました。（一昨年の卒論でネット、文献無しの苦労はわかりませんが）
話は飛んでしまいますが

ファミリーナンバーも多すぎるので
私はとりあえず
過去５年間重賞馬の母の日本の在来牝系の繁栄比率を調べようと思ったんですが、
小岩井牝系、下総御陵牝系が区別不能のもの、途中で輸入されている牝系も山ほどあり、途中で終了でした　笑

Ｆ１族は日本では１０％くらいの馬がいたと思います。
それ以外は馬が多すぎてとてもじゃないけど無理でした。

ソーダストリームのことは全然わからないのですが、
自分の馬？？（失礼）の牝系から競馬を見れるのが少しうらやましいです。

[8] mixiユーザー 01月30日 06:51

馬ではありませんでしたが、私も卒論ではいろいろと思い出があります。明治時代に輸入された牝系に焦点を当てて研究しても面白かったと思います。
ソーダストリームは３号族の１分枝ですが、シラオキやＳＳとも同族となります。１頭の馬、ひとつの系統を調べることで血統が見えてきて楽しくなりますね。

[9] mixiユーザー 01月30日 07:12

第４４回優駿牝馬の映像をご覧下さい。

http://www.youtube.com/watch?v=Jk2j_cd7QRo

４着／ジョーキジルクム

当時の種付料としては高額の３００万円もするアローエクスプレスを付けて生まれたジョーキジルクムは当歳時は虚弱で見映えのしない馬でしたが、成長とともに力強さが出てきました。エリザベス女王杯では５着なり、生涯で５勝を挙げました。古馬となってからは芝よりダートを得意とし、ダート変更となった京都牝馬特別で１番人気となりました。猛然と追い込んだものの２着に敗れ、重賞には手が届きませんでした。その夏のオープン特別(ダート)を快勝し、秋に向けて調整中に骨折して放牧に出され翌年の１９８５年に引退しました。大成牧場に戻ったジョーキジルクムを基礎牝馬に斉藤場主はオーナーブリーダーへの転換を図ることにしました。ところがジョーキジルクムは活躍馬を出さず、牧場の大きな悩みでした。初仔のマーガレットジョーは未勝利、二番仔のコクサイパワーはトウショウボーイの産駒で当歳セリに出して６７００万円で売れましたが、中央では１勝しかできませんでした。３年目はブレイベストローマンを受胎したものの流産、４番仔のヤングブルボンも中央では未勝利に終わりました。５番仔オゴジョタイセイも南関東で４勝の成績でした。１９９０年には８００万円の種付料でミルジョージを付けたものの不受胎、ライブフォールという制度がなかった時代ですから大きな負担となります。ジョーキジルクムはオークスの不運を肌馬となってからも引きずっているようでした。
しかし、それでも斉藤さんは次の年もミルジョージを付けます。しかも１９９１年はミルジョージの産駒が大活躍したために種付料も１５００万円に高騰していたにも関わらずです。キジルクムで絶対に走る馬を作るという執念だけでした。その期待に応えるかのように翌年に生まれた仔が東京ダービーを勝ったジョージタイセイだったのです。期待馬の成績が不振でオーナーブリーダーとしては危ない状況に陥っていたときでした。
キジルクム【Ｋｙｚｙｌｋｕｍ】とは中央アジア、シルダリアとアムダリアの間を占める砂漠で、ウズベキスタン中部とカザフスタン南部に当たります。母のユキノカツラは準オープンクラスでしたが、ダートを中心に使われていました。砂漠というキーワードからタクラマカンを付ければ凄いダート馬ができないかと個人的には思ったものでした。
その後も母としてコンプルスキャンやスプリームコートなど中堅級は出しているものの重賞を勝つような活躍馬はいません。ジョーキジルクムは２００２年の１月になくなりました。２００１年生まれのウルトラクインが最期の仔になりました。
騎乗した岡冨俊一騎手（現・調教助手）は、翌年のオークスで９番人気のトーカイローマンに乗り雪辱を果たします。
写真はジョージタイセイです。

[10] mixiユーザー 02月03日 11:33

３着／メジロハイネ

「走る労働者」と呼ばれたメジロファントムの妹は、オークスの後にセントライト記念でダイナカールに雪辱を果たし、中山牝馬ステークスの二つの重賞を制しました。両親ともにメジロブランド、特に父親のメジロゲッコウはその母のメジロボサツを含めて１本のトピが立てられる物語があります。
繁殖に上ったハイネは日本古来の牝系であるアストニシメントを祖としています。初仔のメジロモニカは４勝してそこそこの活躍をしましたが、２番仔は生後直死、３番仔のメジメディオールと４番仔のメジロムイネは不出走、５番仔のメジロタカツキも未勝利、６番子のメジロワルツも２勝の下級馬でした。
門外不出といわれたメジロの繁殖牝馬が血の更新もあって売りに出される状況にが始まっていた時代、それでも１９９４年の繁殖牝馬セールにハイネが出るという情報は驚きでした。生粋のメジロブランド、オークス３着、二つの重賞を制した名牝をメジロが売りに出す、その背景には繁殖成績の悪さにありました。
ハイネは預託馬として吉田牧場に繋養されていました。メジロマックイーンの生産牧場としても知られる吉田牧場の吉田隆さんはハイネの乗った馬運車を見送った夜に美浦の大久保洋吉調教師から電話をもらいました。「ハイネは調教師になって初めてクラシックに出走した愛着の馬です。わが子同然の馬を他所には手放したくない、そうなったらハイネの仔はうちの厩舎には入らない。それは辛い、ハイネの仔だけは最後まで自分が手掛けたい。」というものでした。そして、「私の気持を理解してくれた国本さんがどんなことがあっても競り落とすから、いままでどおり預かってくれないか。」と話しました。メジロ牧場と吉田牧場の縁は深く、このタッグで多くの活躍馬を輩出しています。繁殖牝馬を預かる身である吉田さんは、どんなに愛着があってもオーナーの指示に従うしかありません。ハイネはお払い箱になったと落ち込んでいたときに大久保調教師の申し出は願ってもない話でした。繁殖牝馬セールに出たハイネのお台は８００万円、腹にはモガミの仔が宿っていました。安いか高いかは難しい問題ですが、彼女は１０００万円で国本さんに落札されます。大久保調教師に遠慮したか、これだけの牝馬を放出する裏の理由を警戒したか、既成事実だったのか…
実際、ハイネは生まれてくる仔が決まって虚弱でした。それは母乳に免疫抗体がないことでした。２番仔が死んだのも細菌感染でした。原因が判明してからは血清療法などの対策で順調になりましたが、新しいオーナーはそれも承知で買ったのです。
それ以降の馬は「メジメ」の冠名から「ショウナン」に変わります。１９９８年に生まれたトニービンの仔ショウナンマイラヴからショウナンタキオンが生まれた裏にはこんなドラマがありました。牝系はメジロモニカやメジロムイネ、メジロワルツ、ショウナンマイラヴを通じて続いています。これからも活躍馬が誕生すると思います。「ハイネの老後は我家で面倒みる。」と言った吉田さん、２００２年３月３１日に看取りました。

[11] mixiユーザー 02月04日 08:07

この年のオークスには史上最多の２８頭が参戦しました。桜花賞馬のシャダイソフィアがダービーに出走することになり、軸馬がいなくなったのも関係していたと思われます。１番人気はトライアルを制したダスゲニー、２番人気は桜花賞３着のダイナカール。ダスゲニーとダイナカールが単枠指定となりました。７枠と８枠には５頭づつ、今では考えられませんね。
単枠指定というのも懐かしいものになりました。

１枠１番　サクラハツユキ　　　　小島太
１枠２番　ラベンダーシロー　　　牧之瀬
１枠３番　トウコウダンサー　　　嶋田功
１枠４番　テイダイ　　　　　　　加　藤
２枠５番　ダイナカール　　　　　岡　部
３枠６番　ジョーキジルクム　　　岡　冨
３枠７番　メイショウコトブキ　　柴田人
３枠８番　サンエムビクトリー　　佐藤正
３枠９番　タイアオバ　　　　　　村　本
４枠10番　ダスゲニー　　　　　　大　崎
５枠11番　マチカネオトメ　　　　橋　口
５枠12番　ノースハーミット　　　宮　田
５枠13番　ブルービクトリー　　　武　田
５枠14番　ダテリージェンシー　　安田隆
６枠15番　メジロハイネ　　　　　的　場
６枠16番　ミホクイーン　　　　　久　保
６枠17番　ダイナキャンディ　　　竹　原
６枠18番　ビクトリジョオー　　　中島啓
７枠19番　レインボーピット　　　津　曲
７枠20番　リンツ　　　　　　　　坂　井
７枠21番　トーアロワイヤル　　　塚　越
７枠22番　チズブエ　　　　　　　嶋田潤
７枠23番　フェニックスダイナ　　加　賀
８枠24番　キヨヒホウ　　　　　　増　沢
８枠25番　ノムラテスコ　　　　　郷　原
８枠26番　ミホノヒーロー　　　　　東
８枠27番　カタトラシャトー　　　田　村
８枠28番　サンエイホープ　　　　斎藤博

全着順

１着５番　ダイナカール　　　　2.30.9
２着９番　タイアオバ　　　　　ハ　ナ
３着15番　メジロハイネ　　　　アタマ
４着６番　ジョーキジルクム　　ハ　ナ
５着19番　レインボーピット　　アタマ
以下１番　サクラハツユキ　　　２.1/2
　　23番　フェニックスダイナ　　６
　　13番　ブルービクトリー　　 3/4
　　24番　キヨヒホウ　　　　　１.1/2
　　４番　テイダイ　　　　　　１.3/4
　　22番　チズブエ　　　　　　 1/2
　　12番　ノースハーミット　　１.1/4
　　20番　リンツ　　　　　　　ク　ビ
　　21番　トーアロワイヤル　　ク　ビ
　　27番　カタトラシャトー　　ク　ビ
　　26番　ミホノヒーロー　　　ハ　ナ
　　３番　トウコウダンサー　　　２
　　14番　ダテリージェンシー　ク　ビ
　　16番　ミホクイーン　　　　ク　ビ
　　８番　サンエムビクトリー　ク　ビ
　　７番　メイショウコトブキ　ク　ビ
　　18番　ビクトリジョオー　　１.1/2
　　10番　ダスゲニー　　　　　　４
　　２番　ラベンダーシロー　　 3/4
　　17番　ダイナキャンディ　　　７
　　25番　ノムラテスコ　　　　アタマ
　　28番　サンエイホープ　　　　８
　　11番　マチカネオトメ　　　中　止

[12] mixiユーザー 02月04日 08:14

２着／タイアオバ

父のタイテエムも勝ち味に遅い馬でしたが、同様の産駒が多くタイアオバのハナ差もいかにもタイテエムを象徴する馬だったのかもしれません。中山増雄オーナーの父親がメイタイ牧場を創設したのは１９７０年のこと、約２０頭の繁殖牝馬でスタートしました。１９７４年に種牡馬となったタイテエムはオーナーの個人所有として持っていた肌馬全てに７年連続で徹底的に付けました。特定の馬への思い入れは牧場の命取りにもなりかねませんが、タイテエムは期待を裏切ることなく初年度から優秀馬を送り出しました。エンペラーエースやシャークテエムが重賞戦線で活躍して種牡馬として評価されるようになりました。タイアオバは母タイイサミの預託先である江島牧場で生まれました。母は娘を産んだ翌年に転売されたためタイアオバが最後の仔となりました。メイタイ牧場で育成され、３歳の１月に中京のデビュー戦を飾りました。３戦目に２勝目をあげ桜花賞に駒を進めましたが、後方のまま１５着でした。２勝目をあげたのが２０００ｍで、セントクレスピンの産駒であったタイテエムと母父がチャイナロックという配合から１６００mは忙しすぎたのかもしれません。桜花賞をブービー人気で惨敗した馬がオークスで人気になるはずもなく２０番人気でした。タイアオバのオークス好走はフロックではなかったと思いますが、その後のレースでもあと一歩が届かず、運のなさを引きずりました。持って生まれた運だったのか、父から受け継いだ血の宿命だったのか、結局は重賞を勝てないまま６歳の秋に引退、１９８７年より繁殖入りしました。
初年度はスルーザドラゴン、２年目のノーザンテーストを配合されたあたりにオーナーの期待がうかがえます。しかし、オークスのハナ差を牧場に引きずったように期待を裏切りました。初仔は競走馬になれず、２番仔のタイキャプテンも未勝利、空胎の後の４年目はベリファの仔を流産します。３番仔のタイビスマルク(ミスターシービー)が待望の初勝利をあげましたが成長に乏しく下級条件に低迷、その後のタイブレイク(リアルシャダイ)、タイビート(リズム)も成績を残せませんでした。アジャディケーティングを流産し、１８９７年に生まれたプロポンチスを祖とするタイアオバの牝系は１９９６年に生まれたタイグビジンソウ（パラダイスクリーク）が現在もつなげています。スリルショーの種が止まらなかった１９９７年１１月に用途変更となりました。母のタイイサミが受胎しにくい馬だったのを受け継いだのか受胎させるのに苦労が多かったそうです。
わずか数センチで栄光を逃したことは繁殖牝馬としての運まで奪い去ったのか。孫、ひ孫の代で活躍馬が出ることを願いたいものです。
タイアオバの写真も見つけられませんでした。管理した吉岡八郎調教師に登場してもらいます。

[13] mixiユーザー 02月08日 00:32

フォトチャートカメラは現在はカラーが当たり前ですが、カラーになったのは平成８年以降です。それまでは白黒でした。カラーでないと判定が困難であることは以前から指摘されていましたが、技術的に難しかったのが大きな要因のようです。第４４回優駿牝馬において５頭が横一線で重なり、勝負服を見分けられないとどうしようもないという事態が起きたことで開発に拍車が掛かりました。因みに、決勝写真はキャビネ判より大きくはしないそうで、鼻先だけを拡大するようなこともありません。鼻先だけを大きく拡大すれば着順がわかりそうなものですが、鼻先だけでは「本当に対象となっている馬の鼻先なのか」が確認できないからだそうです。テレビで放映する場合も、必ず一度はキャビネ判体全体を映すようにというお達しがあるのだそうです。ズームインする場合も服色とゼッケンが見えるように放映することが決まりです。

１着／ダイナカール

ガーサントが成功したものの、後継の種牡馬が続かずノーザンテーストが出るまでの社台はオイルショックもあって個人馬主に馬が売れなくなり牧場経営は厳しいものになっていました。そこで苦肉の策として始めたのが共同馬主です。ダイナカールはその三期生でした。ダイナースクラブとタイアップした社台レースホースには厳選された優良馬が提供されていましたが、皮肉なことに大きいレースを勝つ馬は吉田善哉さんが個人所有する馬ばかりで共同クラブに対する不満や誹謗中傷が高まっていました。前年のオークスをシャダイアイバーガ、この年の桜花賞をシャダイソフィア、春天をアンバーシャダイが勝つに及んで様々な憶測が乱れ、オークスを迎える頃には頂点となっていました。ソフィアをダービーに向かわせたのは、チャレンジ精神だけではない政策的な意図が存在したと思います。オークスでソフィアが勝ちカールが負ければクラブの運営が危うい状況に追い込まれることは必然でした。その意味で横一線からハナ差でもぎ取った勝利は、その後の社台ファームにとって価値のあるクラシック制覇となりました。共同クラブに対する偏見や中傷までも一掃し、ノーザンテーストの優秀性をアピールする結果となり会員も一気に増えました。ダイナカールがクラブの運営を軌道に乗せたと言えます。
その「開運の女神」も繁殖牝馬としての運には見放されました。
ダイナカールは２歳１０月のデビュー戦から暮れまでに３連勝、年明けのクイーンCは１番人気でダスゲニーの５着、当時の４歳牝馬特別でもダスゲニーの後塵を拝します。迎えた桜花賞は１番人気で３着、そしてオークス制覇となります。オークス後は好走はするものの勝ち運に恵まれずオープン特別を１勝したのみでした。５歳の中山記念で３着の後、４歳時に骨折した箇所が悪化して長期休養、そのまま６歳を迎え引退しました。社台ファーム早来(現ノーザンファーム)で繁殖入りしたのは１９８６年１月でした。
初年度はミスターシービーを配合されましたが、半年後に双子を流産します。ダービー馬とオークス馬、ファンサービス的な意味もあったと思いますが、当時としてはミスターシービーに力を入れていた社台の最高の配合でした。１９８８年に生まれたカーリープリンス（パドスール）は１勝、リアルシャダイを付けたものの不受胎、１９９０年生まれのカーリーエンジェル（ジャッジアンジェルーチ）は未勝利。その年は種付けをせず、空胎の後にＳＳの仔セシルカットが５勝して準オープンでそこそこの成績をあげましたがオークスを勝った良家の令嬢としては満足できる子供たちではありませんでした。そしてトニービンを得て１９９３年にエアグルーブが誕生します。

[14] mixiユーザー 02月10日 17:25

エアグルーヴは２歳時４戦２勝。３歳緒戦のチューリップ賞でビワハイジに５馬身差の圧勝、桜花賞の本命馬となりましたが熱発により回避せざるを得ませんでした。オークスにはぶっつけで挑み、武豊を背に桜花賞馬ファイトガリバーに１馬身半差を付けて完勝、母娘制覇を達成しました。秋華賞でレース中に骨折するアクシデントがあったものの、古馬になって牡馬を相手に一戦で活躍し続けます。プリティキャスト以来１７年振りとなる牝馬による天皇賞制覇を成し遂げ９勝、牝馬としてはトウメイ以来史上２頭目の年度代表馬に選出されるなど歴史的名牝となりました。

１９９４年生まれのカーリーパッション（トニービン）は１勝、１９９５生まれのエルフィンフェザー（ＳＳ）は３勝、１９９６生まれのマリーシャンタル（ＳＳ）は４勝、１９９７生まれのリングレット（トニービン）は２勝の競走成績でした。１年の空胎を挿んで１９９９年にモノポライザー（ＳＳ）が生まれます。デビューから３連勝したモノポライザーは期待されたものの重賞には手が届かず中央では５勝、２００６年８月に新しい活躍の場を求め佐賀にトレードされました。
カーリーエンジェルからはエガオヲミセテやオレハマッテルゼなどが生まれ、５勝したセシルカットからもピアチェヴォーレなど活躍馬が出ています。
エアグルーヴは初仔からアドマイヤグルーヴを出し、セリの高値で話題となったザサンデーフサイチなど母としても名牝となりました。これからも多くの優駿を産んで、エアグルーブという牝系を築いてくれるものと思います。今期はＤＩとの配合。
カーリーパッションからは昨年度の米年度代表馬となったインヴァソールにＵＡＥダービーで先着したフラムドパシオンが生まれ、エルフィンフェザーやマリーシャンタルも中央で活躍馬を出しており、リングレットもダイナカールの牝系を拡げています。

ダイナカールはとても負けず嫌いの性格だったようですが、母としては子供を大変可愛がる優しさを持っていました。種付けは出産から日数が経たないうちに行うので母仔ともに安心感を与えるために一緒に種付け場へ連れていきますね。ダイナカールは種付けの最中も子供を気にして少しでも変な素振りを見せれば子供の方に行こうとしたそうです。１９９９年４月１５日、トニービンとの交配中に急に立ちあがって嘶いたダイナカールは、そのままバランスを崩して転倒し動脈瘤破裂により死亡しました。その傍らには幼いモノポライザーがいました。激戦を制した樫の女王は社台スタリオンステーションのそばの高台で眠っています。

１着から５着までがすべて写真判定という競馬史に残る名勝負。微妙な着順の違いが彼女たちの運命にどのような関わったのか、心に残るオークスでした。そして血のドラマは今も続いています。

[15] mixiユーザー 02月12日 03:05

ダイナカール系は
本当牝系の面白さを感じますよね。
私も牝系を勉強する上で非常に入りやすかったのを覚えています。

もしかしたら何十年後かに、彼女等の牝系にから産まれた名馬が、再びオークスで戦うような面白い話もあるかもしれませんね。

[16] mixiユーザー 02月12日 07:36

吉田善哉さんは酒も飲まない馬一筋の馬喰でした。頭には馬のことしかなく、マーケットブリーダーとして世界中の牝系を日夜調べて活力のある牝系を導入していました。英国で５勝したダイナカールの祖母パロクサイド(Ｎｅｖｅｒ Say Ｄｉｅ)も彼の眼鏡に敵った一頭でした。８号族で大きく見ればトライマイベストやロイヤルスキー、ニジンスキーも出る系統ですが近親には目立った活躍馬はおりません。それでも何か琴線に触れる触れるものがあったようで、ガーサント、ノーザンテーストを配して生まれたカールには確信に近いものを持っていました。何十年後まで待たなくてもクラシックで競い合う孫、ひ孫が直ぐに誕生しても不思議ではありません。
社台グループの繁殖牝馬名簿を見ているだけで凄いドラマを予感します。
横一線でゴールした５頭の乙女たちは、ダイナカール、メジロハイネ、ジョーキジルクムがその子孫よりＧ１馬を出しました。１頭の重賞勝馬を出せば優秀な母になります、フラムドパシオンは世界に通用するポテンシャルを発揮しました。ダイナカールの牝系は続々と活躍馬が出てくると思います。
これこそが競馬です。

[17] mixiユーザー 02月14日 17:28

ダイナカール、１９９９年に亡くなっていたんですね･･･
彼女にそんな裏があったとは知りませんでした。
１９９１年にジャッジアンジェルーチとの子、当歳のカーリーエンジェルとダイナカールを見た日が遠い夢のようです。
その娘のエガオヲミセテが亡くなってしまったのは痛いですが、これからもずっとダイナカールの血が続くのをずっと願っております。
とてもよいお話をありがとうございました。

[18] mixiユーザー 02月14日 19:27

なるさん、カールと当歳のカーリーエンジェルに逢ったときのことを忘れないで下さいね。

エガオヲミセテはＪＲＡ史上初の馬名に「ヲ」を使った馬です。２０００年２月１１日に起こった山元トレーニングセンターの火災事故で焼死した競走馬２２頭のうちの１頭でした。競走馬としてもＧ?を２勝した活躍馬であり、繁殖としての期待もあったと思います。今週は全弟のオレハマッテルゼがフェブラリーＳに出走します。

カーリーエンジェルは比較的仔出しが良く、繁殖成績は初仔がエガオヲミセテ（1995牝ＳＳ）から、不受胎（1996フジキセキ）、リリカルモメント（1997牝ジェイドロバリー）、アドマイヤハッピー（1998牝トニービン）、不受胎（1999トニービン）、オレハマッテルゼ（2000牡ＳＳ）、チェルビム（2001牝ＳＳ）、ルーセントウイング（2002牝ＳＳ）、ドリームフェザー（2003スペシャルウィーク）、エノク（2004クロフネ）、不受胎（2005シンボリクリスエス）、（2006牡スペシャルウィーク）となっています。今年はクロフネを出産予定（もう生まれているかも）です。２００１年生まれのＣｈｅｒｕｂｉｍはセレクトセールでシェイク・モハメドの代理人に購入されました。ゴドルフィンの所有馬として２００１年１１月に米国に輸出され、競走馬としては５戦目に初勝利しましたが、日本での繁殖入りが決まり２００５年１１月に再度輸入されています。リリカルモメントとアドマイヤハッピーも繁殖入りして母親となっています。

ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ