[mixi]ぐりぐさんの『牧場便り』 - 競馬千夜一夜

[1] mixiユーザー 02月06日 20:51

はじめまして(^-^)
ぐりぐりと申します。
町人学者さんからお声を掛けていただき、今回「競馬千夜一夜」で牧場便りを皆様に届ける大役をおおせつかりました。
九州で産湯につかり、海の見えない横浜で育ち、大学卒業後は１５年の旅行会社勤務を経て、まったく未知の世界の北海道に上陸、さらにまったく未知の世界の競走馬の生産牧場なんかに来てしまい、とんでもないことばかりの毎日ですが(^_^;)
素人の私の目から見た「馬社会」、拙い文章ですが、皆様がより一層競走馬に興味を持っていただけたらいいなぁ、と考えてます。
不定期ではありますが、これからもよろしくお願いしますm(__)m

そして。
もうひとつのはじめまして。

そうです！当牧場今年の一番仔が今朝産まれました！
母馬のカモンは一昨日朝からお乳にヤニ(松脂みたいなものがお乳に付くとお産が近いと言われてます)が付き、予定日は１４日でしたが急遽分場から本場のお産馬房に移し、今か今かと夜も寝ずにお産番をしてました。
で、今朝。
放牧地で破水して、しばらく様子を見てから馬房に連れていき、そして９時頃、お父さんのマンハッタンカフェ似の流星がある未来のオークス馬(笑)が産まれました(≧∇≦)
比較的すぐに人の手を借りずに立ち上がり、初乳を飲むまでそれほど時間もかかりませんでした。
夕方にはお母さんの周りを跳ねたり、飼い葉桶に興味を持って覗き込んだり。
お母さん譲りのおてんば娘に育ちそうです(;￣_￣)=3

そして早速牧場での呼び名、決定！

命名「タマチャン」

写真は産まれたてほやほやのタマチャン。分かりづらいですがタマチャンから湯気が出ています(゜ww゜)

[2] mixiユーザー 02月06日 21:31

未来のオークス馬誕生おめでとうございます。
無理なお願いをお引き受けいただき感謝しております。
お忙しい中、時間の許す範囲で牧場の様子をお知らせ下さい。
タマチャンの成長が楽しみです。

[3] mixiユーザー 02月07日 22:19

タマチャン、本日放牧地デビュー(^-^)
好奇心旺盛で、カモン母ちゃんの心配をよそにあっちへちょこちょこ、こっちへちょこちょこ。
後ろを追い掛けるカモンが大変そうでした(^_^;)
最後は疲れて母ちゃんの足元でおねんね。
風邪を引かなきゃいいけど…

「なんだなんだ？？」

[5] mixiユーザー 02月29日 21:27

オリンピックイヤー…いわゆる閏年に産まれた競走馬はレベルが高い…なんて巷で噂が流れてますが(^_^;)

４年に１度しか来ない今日と言う貴重(?!)な日に、今年２番目の仔が産まれました(o^o^o)

お昼過ぎ、ファンタ母ちゃん放牧地でお産始まっちゃって。
急いで厩舎に入れ、無事馬房の中で元気な女の仔(父クロフネ)を出産しました(^-^)
とにかく元気な仔で、産まれた途端に大暴れ(-"-;)
おかげで立ち上がるまでにほとんど時間を要しませんでした(^_^;)
立ち上がると今度は馬房の中をうろちょろ。
顔立ちも優しい目をしたお母さんとは違い、切れ長のきりっとした目をしていて、意志が強そう。
タマもおてんば娘だけど、この仔はさらに上を行くおてんば娘になりそうです(*_*)

で、この仔は…「チャコちゃん」と命名されました(^^)v

チャコの体をやさしく舐めるファンタ(^-^)お産の後のほのぼのする瞬間です(*^_^*)

[6] mixiユーザー 02月29日 23:33

なんてかわいいんだ

写真をもっと見たいです

[7] mixiユーザー 03月02日 08:06

予定日より１週間以上も早いとは驚きですね。ゲートの出は良さそうです。
牝馬が強い牝系なので、おばあちゃんが２着だったオークスを目指して欲しいものです。。
ＰＧＯが奔りの頃にこの子の伯母さんを持っていてデイリー杯クイーンＣを勝ったときに嬉しかったことを思い出します。

[8] mixiユーザー 03月08日 12:53

さて、突然ですが問題です。

チャコの毛色は何色でしょう？

Ａ．鹿毛
Ｂ．栗毛
Ｃ．黒鹿毛
Ｄ．青鹿毛
Ｅ．青毛
Ｆ．芦毛
Ｇ．栃栗毛
Ｈ．白毛

なぜこんな問題を…？
実は先日調教師先生がチャコを見に来て「この仔、何色になるのかなぁ」と言い出して。
今現在分かっていることをお教えします。
ぜひ皆さんも考えてみてください(^^)v
解答は…分かり次第お知らせします！

☆今は鹿毛
☆父クロフネ(芦毛)、母ファンタは黒鹿毛
☆母の父は青鹿毛、母の母は黒鹿毛
☆今現在は目の周りに白い毛は見当たらず
☆尻尾に白とグレーの差し毛あり
☆チャコのアップ写真添付します(^-^)

ほか、質問受け付けます(笑)。

ちなみに、調教師先生は「芦毛」と予想してました(^_^;)

[9] mixiユーザー 03月08日 13:01

＞あしゅらこさん
めんこいですよ～(≧∇≦)
ホントは動画を添付したいんですが。
ぴょんぴょん跳ねまわっている姿はめちゃ可愛いです♪
出来る限り写真添付しますね！

＞町人学者さん
ＰＯＧで叔母ちゃん持っていてくださったとは嬉しいかぎりです(^-^)
ファンタの仔は最近地方ばかりでしたが、今年の２歳(父ゴールドアリュール)は中央デビューです。
ぜひＰＯＧ候補に挙げてください！育成場では評判いいみたいです。

[10] mixiユーザー 03月29日 22:37

報告が遅くなりましたが…

３月１３日の１６時半頃、待望のダービー馬が誕生しました(≧∇≦)

２頭続けて牝馬で
「次も牝馬だったら牧場潰れる…」
と崖っぷち状態だったので喜びもひとしお(^-^)
アリーズ母ちゃんに「でかした！」と何度も頭を撫でてました(^_^;)
父フジキセキで半兄に重賞勝ち馬がいるので、ぜひ３年後のクラシック戦線をお楽しみに(^-^)v

ところで。

なぜ牝馬ばかりだと牧場潰れる…のか？

日本の競馬界の問題点でもあるのです。
海外に比べて日本の競走馬は牝馬の値段があまりにも安すぎる、と言われています。

スポーツ紙で読んだことがあるのですが、オーナーブリーダーの牧場所有の某Ｇ１馬は６月の遅生まれの上牝馬だったので「これは売れない」と、牧場名義で走らせたそうです。
よほどすばらしい血統でない限り、牝馬はどうしても売れ残ったり、売れても二束三文で赤字になる…下手をすれば種付け料さえ取れない、と言う状態なのです。

なので。
悲しい現実ではあるのですが、実際、牝馬が産まれるとその場で処分してしまう牧場もあると聞きます。
産んだ母馬にも、ましてや牝馬に産まれてしまった仔馬にも、なんの罪はないのですが…
種付け料がフリーリターン(前払いで、万が一不受胎や流産、死産だった場合翌年も種付け権利がある特約)やライブホール(種付け料生後払い)であれば、産まれた牝馬を捨てて来年の牡馬に賭けた方がまだまし、と言う考えからの悲劇なのです。

牧場にとって馬は宝であり財産である一方、「ペット」ではなく「経済動物」なのです。
利益を生まなければ淘汰されてしまうのが現実なのです。

だから、生産者は口を揃えて言います。

「もっと牝馬限定レースを設けてくれ」

やはり牝馬は牡馬相手では力の差がどうしても出てきてしまいます。

牡馬相手では勝てない
↓
牝馬限定レースを使いたいけどあまりない
↓
牝馬は賞金を稼げない
↓
牝馬の買い手があまりいない
↓
牝馬の値段が安くなる

悪循環です(-"-;)

競馬ファンの皆さんはどう思われますか？

[11] mixiユーザー 03月30日 09:23

アリーズは予定日を過ぎての出産で気が休まらなかったと思います。年明けにお兄ちゃんが重賞に勝っているので注目度の高い子ですね。今年のドバイシーマクラシックはフジキセキ牝駒の優勝でしたね。

日本のマーケットブリーダー、特に中小は厳しいものがあります。牝馬は農家における畑でもある大切なのものですが、畑ばかりを増やすわけにもいきません。牝馬限定の大きいレースの創設や牝馬に対しての生産者賞を増額するとか、改革が必要だと思います。大きいセールは報道の扱いも多いので、サラブレッドは高いという印象がありますが、平均的には牝馬は低い価値の評価になります。子馬を高く売るには人気種牡馬を付けざるを得なく、当然種付料も高くなります。高額で取引されれば問題ありませんが、人件費や飼料、医療、牧場維持に要する費用などを含めて１頭の馬を牧場から送り出すまでには多額が必要です。ある意味では生産者が一番のギャンブラーかも知れません。採算が合わなくても手放さなくてはならない牝馬が続くことは死活問題です。
でも孝行息子が誕生したので、今年のセールが楽しみですね。金額はしっかりとチェックさせていただきます。

[12] mixiユーザー 04月08日 14:42

みにくいあひるのこ

って童話、ご存じですか？

あひるの子供たちの中に１羽だけ色の違う、灰色のみにくいこがいました。
そのこは他の子供たちに「みにくいあひるのこ」と言われていじめられていました。
ところが、大きくなるにつれ、その「みにくいあひるのこ」は白く、美しく成長し、やがては白鳥となってはばたいていきました…

と言う有名なお話。

うちの牧場にも「みにくいあひるのこ」がいます(^_^;)

タマ、産まれた時は鹿毛で、お父さんの青鹿毛にも、お母さんの栗毛にも似てなくて。
そのうち、産毛が抜けはじめ、今はまだら模様(-"-;)
鼻のまわりは泥棒みたいに黒く、目の下にはやくざのような黒い模様が。
可哀相なぐらい汚い顔してます(笑)。

でも。

とねっこは産まれてひと月たった頃から産毛が抜けはじめ、本当の毛色があらわれます。

鹿毛だと思っていたタマは、どうやら黒鹿毛か青鹿毛だったようです(^-^)

タマはきっと夏になる頃には、真っ黒な馬体にきれいな流星をもった美しいサラブレットの仔になっています。

タマが白鳥になる日も近いのです…！

[14] mixiユーザー 04月30日 13:58

日高にもようやく春がゆっくりとやってきました。
桜の名所、静内の二十間道路の桜並木も見頃は５月３日とか。

…とは言っても、朝晩はまだ寒くて、朝氷の張る日もたまにあります。

この時期、晴れてぽかぽか陽気の日中、あちこちの放牧地ではとねっこが日向ぼっこして昼寝ている姿を見かけます。

今日は暖かく時折薄日のさす花曇り。
うちのちびっ仔軍団もご他聞にもれずお昼寝中(^-^)
普通人が近寄ると起きるもんなんですけどね(^_^;)

写真手前からアリーズの仔、ファンタの仔チャコ、立っているのがファンタ。
爆睡してます(-_-)zz

[15] mixiユーザー 06月01日 12:20

ある中央の調教師先生からお伺いした話です。

今年２月に催されたパーティーの席でのこと。
ある馬主さんが調教師先生と馬主さんの、まだデビュー前の愛馬の担当厩務員さんにこう話したそうです。

「うちの馬、走らんだろ。デビュー出来るかも分からないだろ。いやいや、何も言わなくてもそれぐらい俺にも分かるって。でもな、あいつは俺の夢なんだ。あいつが競走馬になって、レースに出て、ゴールを駆け抜ける…それが俺の夢なんだ。だから、本当に申し訳ないが、俺の夢にもう少しだけ付き合ってくれないか」

調教師先生と厩務員さんは何も言えなかったそうです。
実際、その馬はプロの眼から見て、１勝どころかデビュー出来るかも分からない…それこそ馬主さんの言う通りだったから。
でも、馬主さんの愛馬に対する深い思い入れを感じ、そのふたりの目標は馬主さんの夢を叶えることになりました。
無事デビューさせて、そしてウイナーズサークルで馬主さんと口取り写真を撮ること。

そして…

それから１ヵ月半後、その馬は中京のターフを駆け抜けました。
さらに１ヵ月後、１番人気に応え、見事初勝利を飾りました。

馬主さんの夢はまだまだ続き、そして馬主さんの馬はその夢に向かって走り続けます…

そして今日はダービー。
８１５０頭の馬たちの夢が、その８１５０頭の馬たちに携わってきた人たちの夢が、さらに８１５０頭の馬たちのファンの夢が走ります。

皆さんの夢は…なんですか？

写真は私の夢のひとつ、３年後のダービー馬です(^O^)

[16] mixiユーザー 06月02日 17:46

馬への愛情の深さが人を動かし不可能な夢を叶えることもあるんですね。
名馬の子供が活躍するのも競馬の楽しみではありますが、経済原理で取引された高額な馬ばかりが活躍するのも味気ない気がします。愛情に育まれた馬とありったけの愛情を注ぐ馬主の夢を応援したいものです。
生まれたサラブレッドの数だけ夢がある。デビューするのも大変、１勝するのも大変、ダービー馬になる前に１８頭しか与えられない枠に入ることが大変です。３年後を目指して馬産地では既に競争が始まっているんですよね。

[17] mixiユーザー 09月21日 21:14

最近、他人の命を簡単に奪ったり、さらには自らの命も簡単に絶ってしまったり。
色々な事情があるのかも知れませんが、たったひとつきりの命を絶ってしまう…やはり愚かなことで決して許されるものではありません。
「生んでくれなんて頼んだ覚えはないや！」
なんて母親に反抗したりしますが、そんなことは決してないのです。
私たちはこの世に生まれてきたかったから、「陣痛」と言う形で母親に知らせ、そして母親と、自分の力を合わせて産道を通り、この世に生を受けたのです。

そんな当たり前で、大切なことを、恥ずかしいことに私はこの牧場にきてから知りました。

獣医さんは言います。

生産牧場ではやはり、お産の事故で命を落としてしまう馬が多いそうです。
それは、実は馬だけでなく人間の世界でも同じこと。
今は医療技術の発達でお産の事故は少なくなったものの、今も昔も、新しい命を授かるということは命懸けであることは変わりないそうです。

そして、今年うちの牧場ではお産で３頭の繁殖牝馬と、この世の光を見ることすら出来なかったとねっこ２頭の尊い命を失いました。

これから何回かに分けて、３頭の繁殖牝馬の、最期まで生きることを諦めなかったその死と、そして母馬の死で一時は命も危ぶまれたとねっこが乳馬によって再び生を授かった話をしていきたいと思います。

時間を見てなのでなかなか書き込めないかも知れませんが…

[18] mixiユーザー 09月24日 19:55

コロナ　　(１)

コロナが２年近くも過ごしてきた分場から本場のお産馬房に移ってきたのは出産予定日から５日遅れた１月２３日。
馬運車でコロナを迎えに行くと、連れ馬のビッグも一緒についてくる。
「お前はまだまだ先。そのうちまた本場でコロナに会えるから」とコロナだけを馬運車に乗せて分場を後にする。
ふと後ろを振り返るとぽつんとゲートで見送るビッグ。
「ひひ～ん」
といななく声もすぐに聞こえなくなってしまいました。

本場に来ててから２日後の夕方、コロナを入れようとすると放牧地で横になっている。
こんな寒い時におかしい・・・もしや・・・
すぐそばに行くと比較的すんなり立ち上がり、馬房に連れて行くと、案の定、陣痛らしい動きをし始めた。

私たちの牧場では、初産の時は馬房には近づかず、なるべく自力で出産させるようにします。
もちろん、何かあっては困るので監視カメラで見張っていますが。
初産は馬も時として自分に何が起こっているのか理解できず、人が近くでばたばたしていると気が立ってしまい、急に立ち上がって生まれたばかりの仔を踏んでしまったりと事故が多いからです。

コロナの時も私たちは監視カメラをまだかまだかと見張っていました。

ところが、なかなか破水をしない。
１時間近くなっても破水をせず、おかしい、と思い始めた矢先
・・・血が出ている！！

異常分娩なのは明らかでした。

急ぎ獣医さんを呼び診てもらうと
「とねっこが産道でつまっている」
獣医さんが必死でひっぱり出そうとするけどとねっこの脚が掴めない。
馬房では無理だということで、枠場のある近所の診療施設に。

馬運車で移動している間、私はずっとコロナに付き添ってました。
思っていたよりもコロナは落ち着いていて、「きっと大丈夫｣と心の中で呟きました。

でも、神様は意地悪ですよね。
事態はどんどんと悪い方へと進んでいきました。

枠場で繋いで固定して、獣医さん二人掛かりでもダメで。
最後の手段、さらに１５分ほどいった診療所で、麻酔をかけ、横に寝かせてとねっこを取り出すことに。

そして・・・
麻酔をかけ、横に寝かせてもとねっこは頑として出て来ず、本当に本当に、最後の、最悪な手段が待っていました。

私はこの時点で、本場に残っている馬たちの夜飼いをやらなくてはならず、そして、これから起こる惨状を見ないようにとの取り計らいで、牧場へ返されました。

コロナは麻酔がかかっているにも関わらず、よほど苦しいのか荒い息を体全体で
していました。

コロナ！！
頑張るんだよ。
牧場で待っているからね、
ビッグだって、待っているんだから。
絶対帰ってくるんだよ。

・・・続く

[19] mixiユーザー 04月07日 22:06

コロナの話が中途半端なまま違う話をするのは気が引けたのですが…

今回、お産のお話をさせていただきたいと思います。

お産の時の対処の仕方は牧場によって変わってきますが、ここではウチの牧場でのやり方を。
また、知識や言葉が多少違っているかも知れませんが…その辺りは大目に見てやってください…

まず、お産が近くなるとお乳の先にヤニ(松ヤニのように乳白色のもの)が付きます。そうすると大体の母馬は遅くとも２～３日中にはとねっこを出産します。
なのでヤニが付くと24時間態勢で母馬の監視に入ります。お産は夜とは限らないですからね、実際今年ウチの馬は放牧地で産んじゃってますし。

さらにお産の直前になると大体の母馬は陣痛で落ち着きがなくなりウロウロし始めます。
そして破水！しばらくすると風船のように羊膜が現れ、前脚が出てきます(写真がその状態。テレビ画面を写メで撮ったので分かりづらいですが)。
母馬は寝っ転がったり立ち上がったりしていますが、そのうち寝っ転がってイキみ始めます。

特に難産や異常分娩でない限り、ウチではそのまま放置プレー(笑)。監視カメラや、馬房の外で見守りながら自然分娩をさせています。

そしてとねっこが産まれ少し経ってからとねっこの鼻に口をつけて息を吹きかけます。そうやって肺を膨らませてから酸素ボンベを使って酸素を鼻から送ってやります。そうすると比較的立ち上がるのが早くなるとか。それと同時進行でタオルでゴシゴシ擦るようにとねっこの体に刺激を与えます。勿論、羊水で濡れた体を拭く意味もありますが、やはり刺激を与えることによって立ち上がるのを早くさせる意味があります。母馬が産まれたとねっこの体を舐めるのと一緒の意味ですね。

そんなことをしている間にへその緒が切れ、ヨードチンキで消毒。

しばらくするととねっこは立ち上がろうとします。そしてなんとか立ち上がったところで酸素とタオルを止め、とねっこを支えます。産まれたばかりのとねっこはまだ三半規管がしっかりしておらずフラフラしているため、三半規管が機能するまで支えてやります。これが私はキツくて腕と腰にかなりきます。

やがて自分の力で立っていられるようになると、いよいよお乳を付けます。
不思議ととねっこはお乳の大体の場所を知っていて、自然と母馬のおしりの方へと行きます。でも、やはり母馬のお腹やトモに吸い付いたりしてなかなかお乳に辿り着けない。すると母馬はとねっこのおしりを舐めて自分のお乳に誘導。私たちも軽くとねっこのおしりを押してあげます。

ちなみに、よく牝馬より牡馬の方がお乳を付けるのに難儀する、と言われてます。

[20] mixiユーザー 04月07日 22:08

続き

そしてお乳が付いたらひと段落…ではないんです。

ウチはこの後浣腸をして胎便を出します。この浣腸に関しては「腸管を傷つけて獣医さんを呼ぶことが年に何件かあるので、なるべくしない方がいい」と言う意見もあるようです。ウチも今年は半日待って、とねっこがしっぽをあげて気張っているようだと浣腸することにしました。

さらに！
ウチではこの後24時間以内に血漿輸血をとねっこにします。
この「血漿輸血」をするととねっこの免疫力がアップすると言われてます。普通はベビーチェックといって産まれたとねっこから採血をし、γ‐グロブリン数値が低いなど、何か問題があった時に血漿輸血をするのですが、日高では採血の結果が早くて半日後、もし土曜だと日曜が休みのため月曜の午後にしか分からない。それからでは遅すぎるのでウチではベビーチェックをせずに念のため全馬にしています。

血漿輸血はまず、母馬から1000mlの血を取ります。
それを約８時間かけて分離させます。
そして分離した血を獣医さんが手作業で分けます。
写真が分離して分けた後の母馬の血です。
この右側の透明な方をとねっこに輸血します。

この血漿輸血の効果は約２ヶ月、と言われています。でも、獣医さんに言わせると「何だかんだ言って一番効果あるのは初乳だよ」。初乳も研究書などでは500ml授乳させろ、言われていますが、ウチに来ている獣医さんは「最低800ml」と言います。かといって、とねっこがどれだけ初乳を飲んだかなんて量っていませんが…。

あとは「人間は怖くないんだよ～」と教え込ませるため、とねっこを触りまくります。耳やおしり、脚の飛節や球節などを触ります。産まれたばかりの時からしていればとねっこも慣れ、大きくなってから削蹄や検温、手入れなどをする時嫌がって暴れる、と言うことがなくなります。

よく「馬のお産を見た時、生命の誕生に感動しました！」とききますが、いえいえ、私は感動する暇がありません。ウチは特に罵声が飛び交うので感傷に浸る時間はないのです(笑)。

それでも、いとおしそうに母馬が産まれたばかりのとねっこを舐めているのを見ると、寝不足も腰の痛みも(笑)全部吹き飛んでほのぼのとした気持ちになると同時に、生命の大切さをいつも感じています。

今年も無事全馬無事に誕生しますように…

余談：お産から１～３時間の間に「後産(胎盤)」が落ちます。この後産、実はひとつ5000円で買い取られてます(ちなみに昨年は8000円でした)。買い取られてどうなるかって？

なんと！

化粧品などに含まれるコラーゲンの原料になるんです！！

[21] mixiユーザー 04月11日 12:15

町ちゃま

＞馬への愛情の深さが人を動かし不可能な夢を叶えることもあるんですね。
名馬の子供が活躍するのも競馬の楽しみではありますが、経済原理で取引された高額な馬ばかりが活躍するのも味気ない気がします。
愛情に育まれた馬とありったけの愛情を注ぐ馬主の夢を応援したいものです。

って！どの牧場でも同じですよ。

リアルに私は、その深い愛を感じていますから！
有名有名じゃないに関わらず牧場のスタッフは自分の子供のように愛を注いでいますよ。

[22] mixiユーザー 04月11日 13:10

＞華凛ちゃん

私も多くの牧場を訪ねて生産馬への愛情はどこも同じであると理解しているつもりです。
市場原理で取引された高額な馬だけが活躍するよりも時には小さな牧場から大レースを勝つような馬が生まれるのも見たいと思います。
表現で不快感を与えたようなら謝ります。

[24] mixiユーザー 07月24日 10:02

ぐりぐりさんの牧場だよりがここに！
今気づきましたあ！！！！！

ぐりぐりさんの愛情あふれるタッチの牧場便り最高です。
熟読させて戴きます～。

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