記憶と想像の中の居場所 岡田裕子は映像作品《翳りゆく部屋》において「ゴミ屋敷」に住む老女を自ら演じ、人々がゴミとみなす物全てが彼女にとってかけがえのない宝物であることをコミカルに主張する。2009年に制作した本作品の続編である新作の《A Sketch of the Dusky Room》では、「実家の2階、20年以上誰も入っていない。かつて大事だったはずのモノはゴミになっていた」という言葉が画面に現れ、ビニールに入った大量のゴミが映し出される。その画像に白い線が重ねられていき、やがて真っ白に塗りつぶされる。
岡田裕子《A Sketch of the Dusky Room》2011 岡田裕子《A Sketch of the Dusky Room》2011 家族にとって「居場所」だったかつての家が次第にゴミだらけになっていく。成長して新たな居場所を見つける子供たちと年老いていく親。大切だった物、かけがえのない人、そして「必要とされていた自分」がいる記憶こそが、年老いた人間にとっては永遠の居場所なのかもしれない。
竹村京&鬼頭健吾《Playing Field 00》《Playing Field 004》《Playing Field 005》《Playing Field 006》2020 展示風景 2021 撮影:堀蓮太郎 左の立体及び壁面 竹村京&鬼頭健吾《Playing Field 00》《Playing Field 004》《Playing Field 005》《Playing Field 006》2020 展示風景 2021 撮影:堀蓮太郎 夫婦でありアーティストでもあることは自明ではなく、互いに確かめ合い、会話を積み重ねることで「家族になって」いった過程が伝わってくる。MOM+Iの作品タイトル「FAMILY MOVE」が示すように、家族は不動ではない。常に動き、変化し、成長するものなのだ。