ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

生活保護者の集いコミュの「賞味期限切れ」食品を生活保護申請者らに支給した徳島市の対応は「何が」問題だったのか?現場のジレンマと今回の事例から学ぶべきこと

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/39988

大山典宏( 明治大学専門職大学院ガバナンス研究科(公共政策大学院)専任教授)

 徳島市が生活保護の申請者・利用者に賞味期限を過ぎた備蓄食品を配布し、「体調不良は自己責任」とする同意書に署名を求めていた。批判を受け、市長は謝罪した。


(Halfpoint/gettyimages)
ギャラリーページへ
 一方、長野のNPOによる物価高対策での期限切れ食品の配布は、地域の生活困窮者を「救う」事例として紹介されている。なぜ同じ「期限切れ食品の提供」の評価が、不適切と善意の支援に分かれるのか。

 本稿は徳島市の事例を切り口に、矛盾やジレンマを抱えながら支援に取り組む現場の実態を伝える。

徳島市の食料支援はなぜ問題視されたのか
 徳島市は、2023年5月から25年12月1日までの間、生活保護の申請者や利用者ら、その日の食料に困窮する59人に対して、賞味期限が切れた災害備蓄用のパンやアルファ化米、水など計約1100点を配布していた。最長で1年2カ月期限を超過したものが含まれ、配布時には「体調が悪くなった場合は自己責任」とする同意書への署名を求めていた。市は後に「不適切だった」として配布を中止し、遠藤彰良市長は「相談者への尊厳を欠いた行為」と述べて謝罪している(NHK、2025年12月22日)。

 政府は「食品ロス削減推進法」(正式名称:食品ロスの削減の推進に関する法律)に基づき、フードバンク活動を食品ロス削減と食料支援の両面から支援している。企業からの寄附促進、「食品寄附ガイドライン」の策定、フードバンク認証制度、災害用備蓄食品の活用などの取組を進めている。フードバンクの現場では、「提供者の責任」を明確にすることで、食品寄附者である企業や食品を口にする受益者の権利を守る法整備が進む。

 しかし、物価高騰による支援需要の高まりと、企業努力による食品ロスの削減が重なり、需給バランスが崩れつつある。「安全性を担保しながら、求める人すべてに必要な量の食品を提供する」という理想の実現が難しくなってきているのだ。

 これに加えて、「生活保護の利用者に食料支援を行うべきか否か」という制度の運用上で検討すべき点もある。問題を整理し、課題を浮き彫りにすることで、今後の政策への教訓を得ることを目指したい。

論点整理――期限超過、同意書、尊厳への配慮欠如
 報道や市長の記者会見から、今回の問題は「期限超過」「同意書」「尊厳への配慮」の3点に整理することができる。

 生活に困った立場の弱い人たちに、賞味期限の切れた売り物にならない食品を渡して、「何かあっても自己責任」という同意書にサインをさせる。自分の保身を優先し、市民への配慮を欠いた対応に言葉を失う。まったく役所はけしからん。

 乱暴に論調を整理すれば、このように整理できるだろうか。

 しかし、一つひとつの論点を丁寧に紐解いていくと、簡単に割り切れるほど単純ではないことがみえてくる。

賞味期限切れ食品は本当に危険なのか
 まず前提を確認したい。日本の制度では「賞味期限」は「美味しく食べられる期間の目安」であり、保存条件を守っていれば、期限を過ぎても直ちに食べられなくなる訳ではない。一方、「消費期限」は「安全に食べられる期限」で、超過食品は飲食を避けるべきとされる。したがって、「賞味期限切れ=即危険」と短絡するのは誤解だが、食品の種類や保存状況等によってリスクは変動するため、一律に安全と言い切ることもできない。

 消費者庁・農林水産省・関係団体が24年12月に策定した「食品寄附ガイドライン」では、寄附食品の品質・衛生管理、期限表示の伝達、合意事項の整備、トレーサビリティ、事故時対応などの遵守事項を整理している(消費者庁「食品寄附ガイドライン」)。

 ガイドラインには、賞味期限に関しては以下の記述がある。

賞味期限は「定められた方法により保存した場合において、期待される全ての品質の保持が十分に可能であると認められる期限を示す年月日」であることから、賞味期限を過ぎたとしても、直ちに安全性を欠き、食べられなくなることを意味するわけではない。そのため、賞味期限内に消費されることが望まれるものの、仮に賞味期限までの期間に余裕がない(期限切れを含む。)場合にも、以下の点に留意し、食品ロス削減の観点からの取扱いを提供先と合意の下検討することが望ましい。
・賞味期限は「定められた方法により保存した場合」を前提にした期限であることから、容器包装に破損等がなく、定められた方法で適切に管理を行ったものでなければ提供すべきではないこと。
・賞味期限が過ぎているものを提供する場合にあっては、提供先の自尊感情が損なわれることのないよう十分に配慮の上、まだ食べられる期限の目安について、提供元からの情報等に基づく科学的な根拠がある場合に限り提供されるべきである。
出所:消費者庁「食品寄附ガイドライン」、p62.
 なお、ガイドラインには法的拘束力はなく、罰則もない。ガイドラインの文言にしても「提供されるべき」という曖昧な表現に留められており、「提供が認められる」といった義務規定ではない。

 実際、賞味期限を過ぎた食品について、安全性を確認したうえで配付することは珍しいことではない。NHKの報道に取り上げられたNPOでは、賞味期限が過ぎた食品を提供する際は調理師や提供元の小売店などと協議した上で安全性が確認できたものを配っているほか、食中毒など、万が一の事故に備えて保険にも加入しているという(NHK、2025年12月24日)。

 消費者庁では、ガイドラインに適合した運営を行うフードバンクの認証制度に向けた検討を進めている。食品寄附活動への社会的信頼を高め、企業からフードバンクへの寄附活動の拡大につなげるという点では、意味のある取組である。

 一方で、154頁にもおよぶ食品寄附ガイドラインを読み込み、そこに定められた諸々の規定をクリアできるフードバンクは限られる。まして、食品ロスの担当課でもなく、本来業務に追われる生活保護の担当課が同水準をクリアすることは至難である。

 では、「賞味期限を過ぎた食品を配布すること自体が間違っていた」のか、あるいは「フードバンクではない自治体が食料を配布することに問題があった」のであろうか。不思議なことに、この点を明確に述べた報道機関はなく、結論は視聴者に委ねる構成になっている。

体調が悪くなっても自己責任」の同意書と現場の実情
 生活保護の現場では、食品ロス削減推進法が成立する前から、生活困窮者に対して災害備蓄品などの食料品を提供する取り組みが行われてきた。全国一律のルールがあるわけでもなく、一部の自治体を除いて予算措置が行われていた訳でもない。必要数を見積もり、議会に予算を要求して備蓄品を購入する防災担当課とは事情が異なる。

 多くの自治体では、災害備蓄品が入れ替えなどのタイミングで不要になった場合に、それを譲り受けて保管し、何らかの事情で生活保護の申請に至らなかった者、保護申請から決定までの間に手持金がない者、受け取った生活保護費を使い切ってしまい食事に事欠く者などに手渡してきた。

 部署間の力関係の中で、どうしても「いただく側」の立場は弱い。賞味期限ぎりぎりで入れ替えを行っている防災担当がいたとして、「生活困窮者のために、少し期限を残して提供してほしい」とはなかなか言えないだろう。

問題は食品の確保だけではない。
 現場の悩みとして吐露されるのは、渡した生活保護費を短期間で使い切り、「なくした」「盗られた」と主張して助けを求める生活保護の利用者である。もちろん、やむにやまれぬ事情で保護費を使い切ってしまった人もいる。薬物やアルコールなどの依存症、知的障害などの特性の影響がある人もいる。しかし、「もう少し何とかならないか」「あまりに無計画ではないか」と感じられる人もいる。

同意書
私は、徳島市から食料の支援を受けるにあたり、以下のことに同意します。
1. 支給される食料が賞味期限切れであることを理解しています。
2. 支給された食料の飲食によって体調が悪くなった場合、自己責任であることを理解しています。
3. 食料の支給は、今回限りであることを理解し、今後の適切な金銭管理の徹底に努めます。
出所:報道内容から筆者転記。原文はフリガナあり。
 そうした経験をもとに同意書を見ていく時に、目に留まるのは3番目の制約事項である。「何度も渡せるものではないから」「私たちにもできることとできないことがあるから」。筆者には、そう何度も念押しをして、食品を手渡す担当者の姿が目に浮かぶのである。

尊厳の徹底が支援を委縮させる
 遠藤彰良市長は、記者会見で「尊厳を傷つけるのはやってはいけないこと」「『困っているからこれでいいだろう』と職員にはそういう考え方はなかったと思うが、無意識の差別があったのではないかと言われても仕方がない」と対応に問題があったことを認めた。そのうえで、「個人に食品の安全性を押しつけることになった。公的機関が安全性を担保しないといけない」と陳謝した(FNNプライムオンライン、2025年12月23日)。

 遠藤市長のコメントは自治体の首長として当然の見解であり、生活保護を担当する職員はもとより、市職員すべてに、生活保護利用者に対する差別や偏見のまなざしがなかったかを、今一度、問い直してほしい。

 しかし一方で、こうも思うのである。「『余計なことをした』と言われるのなら、もうやめてしまおう」と考える職員が出てくるのではないか。

 これは、徳島市だけの問題ではない。他の自治体の担当者は、叩かれている徳島市をみて、「うちは余計なこと(法外援護)をしていなかったから問題にならなかった。よかった」と胸をなでおろしているのではないか。あるいは、ひっそりと法外援護を続けていた自治体の担当者は、「何か問題が起きる前に、やめてしまおう」と考えるのではないか。

 辞める理由まで容易に思い浮かぶ。「私たちの部署では、食品寄附ガイドラインに則った対応ができないから」と。何せ法外援護である。大半の事例では、議会を通す必要もなければ、要綱・要領の改正などの面倒な手続きをする必要もない。

 その結果、誰が困るのか。言うまでもなく、今まで食料支援を受けてきた受益者である。

厳格なルールと柔軟な運用のはざまで
 物価高騰の影響で、食料支援が必要な生活困窮世帯は増加している。これに伴い、フードバンク団体の業務量も増えている。一方で、支援に必要な食品や資金の寄付、ボランティアの参加は減っている(一般社団法人全国フードバンク推進協議会「フードバンク活動の動向と課題」)。


(出所)一般社団法人全国フードバンク推進協議会「フードバンク活動の動向と課題」より 写真を拡大
ギャラリーページへ
 大規模災害やコロナ禍などの影響で注目されたフードバンク活動は、今、曲がり角を迎えている。物価高騰のために経営体質の改善を進める民間企業は、生産量を調整することで、そもそも食品ロスを発生させないように努めている。こども食堂などの生活困窮者以外も視野に入れた食支援活動の広がりは、皮肉にも「生活困窮者層への資源の枯渇」を生み出している。

 こうした中で、マーケティング戦略やコンプライアンス体制の確立に熱心な中規模以上の民間団体に資源が集中し、地方で個人の善意で取り組んでいた中小零細の団体が存続の危機に陥っている。

 自治体でも格差が広がる。庁内連携や市民サービスの改善に熱心な自治体は民間企業や地域のボランティア団体を巻き込んで支援体制の構築を図っている。一方で、生活困窮者に対する差別や偏見が色濃く残り、従来型の発想から抜け出せないでいるところも少なくない。その中で、徳島市の対応を責めるだけで良いのだろうか。

 「どうして賞味期限切れの食品しか渡せなかったのか」「現場では、どんなことに困っているのか」「なにか助けてほしいことはないか」――。いたずらにルールの厳格化だけを求めるのではなく、生活困窮者の最も身近にいる職員に寄り添い、苦悩に耳を傾ける。努力している点があれば正当に評価し、改めるべき点があれば、どうすればよいのかを一緒に考える。

 徳島市の事例から学ぶことができるのは、「これから」である。

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

生活保護者の集い 更新情報

生活保護者の集いのメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。