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小説を書いてみよう!コミュの言葉よりも大切なもの

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かなり短い話なんですが
載せたいと思います^^)

ありきたりな設定で
どこまで自分なりに表現できるかなぁ〜
と思い挑戦してみました。

意見や感想など頂けたら今後の作品作りの糧にして行きたいと思います^^)

コメント(2)

僕には昔、金田と言う友達がいた

彼の家族は、両親二人と姉・弟・の5人で
市が経営している五階建ての狭いアパートに住んでいる

金田は、酷く貧乏だった

髪はボサボサで、いつも黄ばんで汚れたワイシャツを着ており、学ランの所々には虫が食った痕があった

そして、酷く臭かった
恐らく光熱費が払えずお風呂にもろくに入れていないのだろうなと僕は思った

教室にいても飛び切り目立つわけでもなく、どんよりとした暗いオーラを持っている男だった


そんな金田は回りから嫌われていた

中には『浮浪者』と呼ぶ奴もいた

クラスで金田の事を金田と呼ぶものは一人もいなかった

先生達でさえも、鼻をつまみ“やっかい者がきた”と言う顔をして金田を見ていた
でも、そんな金田と僕は仲が良かった

毎日一緒に登下校もしていた

テスト勉強もした

遊びにも行った

毎日のメールのやり取りは当たり前だった

僕には普通の友達だった


そんな金田は時々、僕にだけ見せるとびっきりの笑顔を持っていた

その笑顔を教室や人前でする事はまず無かった

僕はその笑顔が大好きだった
その笑顔を見るためだったら僕はどんな馬鹿な事でも平気でやれた

そんな生活が僕にとって
当たり前だった

そんなある日の事

金田が突然『頭が痛い』と騒ぎだした

目を血走らせ
体を小刻みに震わせていた

僕は心配になり、先生に早退させるように、うながした

先生は、鼻をつまみ、手をヒラヒラさせながら
すんなりとOKサインを出した




その日の帰り道は一人だった

いつも金田と二人で帰っていた
何か物足りない感じがした

でも、金田の頭痛が早く良くなって欲しいと願った
途中、他の友人に呼び出された
近所のカラオケボックスにいるから、お前も来いとの内容だった

僕は…しぶしぶ
カラオケボックスに足を運んだ



歌の途中、金田からメールが届いた

『いつも、ありがとう』と一言だけ書かれた内容のメールだった

僕は『なにも、有難がられる事してないぞ(笑)』と返した


金田から返信は無かった



ひとところ歌い終え、金田に電話をした

頭の調子を確認する為と

今日は何時もより帰るのが遅くなったから“なんと親に言い訳した方が良いか”相談しようと思っていた

金田は電話に出なかった

僕はシブシブ重い足取りで家路についた

家のドアを開けると、母がドタバタと足音をたて
僕の前に立ちふさがった

『今まで、どこに言ってたの!!』案の定、母は凄い剣幕で怒った

『ごめんなさい』僕は素直に謝った


すると母は、神妙な顔付きでこう続けた
















『金田君が…アパートの屋上から飛び降りたそうよ!』


嘘だろと思った

母が病院の連絡先やら
金田の状況やらを説明していた

でも僕の頭には、あまり入っていなかった

『金田に会いたい』

そう、思った


僕は、脱ぎかけていた靴の踵(かかと)を押しつぶし
金田がいる病院へと走った

息が切れるまで走った

片方の靴が取れ、バランスが取れずに何度も転んだ、その反動で膝を擦りむいた

しかし、金田が空中に身を投げ出し、冷たいアスファルトに叩きつけられた事を考えると、まるで痛みを感じなかった


今、金田は何をしているのだろう

病室のベットで体中に管を通され、苦しんでいるのだろうか? それとも、何も無かったかよ様に、あの…笑顔を用意して待っていてくれてるのか


答えは、まったく出なかった



病院に着くと、一目散に病室のドアを開けた




金田は大きな台の上に乗せられていた

ソレを取り囲む様に家族が立っていた


そして










金田の顔に…真っ白な布が被さっていた


胸の奥で、何かがズキンと音をたてた


『ヨシオのお友達ね?』と、金田の母であろう人が話かけて来た

何の迷いも無く、僕は首を縦にふった

『ごめんね…今さっき…息を引き取ったの』


その言葉を待っていましたとばかりに
金田の家族は一斉に泣き出した

信じられなかった

信じた所で、何も変わらないと思った

僕は無意識に金田の体を抱きかかえ

何度も揺らしていた


そして、その行動を誰も止めようともしなかった


『今日のヨシオは様子が変でした、晩御飯の時、クラスメイトの事を一度も話そうとしなかった子が、今日はご飯を食べる事も忘れて…ずっと友達の事を話していました…多分…貴方の事だったのね』

金田の母はそう言うと、ずっとこらえていた涙をボロボロと流しだした

『あ…あの子は…私の子供に生まれて…幸せだったのかしら』


少しの沈黙の後
僕は口を開いた


『僕は…金田の友達として生まれて…幸せです』




走り出したい気持ちをおさえ
ゆっくりと病室のドアノブを回した


僕には…金田の苦しみを
気付いてやれなかった

どうして

どうしてなんだよ




病室から出ると、満月の光が廊下を銀色に照らしていた

なんだかソレが、世界中の悲しみを全て飲み込む為にできた終わりの無い道に見え



僕には、その道を歩く勇気がなく

その場に、ひざまずくと








夜空に向かって
何度も金田の名前を叫んだ

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