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日記ロワイアルコミュのsubtitle:わがままジュリエット

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「おやすみなさい、さようなら
別れがこんなに甘い、心よい悲しみなら、
私はいっそ夜明けまで、こうしてさようならを言い続けます。」

ウィリアム・シェークスピア 「ロミオとジュリエット」より

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夢も見ない深く黒い眠りから醒めると隣で寝ていた男は目を開けて死んでいた。
アケミはその目にライトを当て瞳孔縮小が無い事を確認した後、
専用の直通ダイヤルに電話した。

「ジュリエットのアケミです。ええ、仕事が終わりました。
場所はホテルヴェローナの303号室です。」

すばやく身支度を整えた後、枕元に置いてある錠剤の入った薬瓶を手にする。
そのビンのラベルには黒い文字で「KAGEROU」と書かれていた。
アケミはそのラベルをしばらく見つめたあと深い溜息と共にバッグにしまう。
電話を切って3分もしない内に担架と人工呼吸器を持った救急隊員がやってきた。

ヴェローナはジュリエット社の提携ホテルなので
救急隊員は常に一階で待機しているのだ。
隊員は二人、年配の方は何度か顔を合わせているが若い方は初見だった。
ルーチンの脳死確認の後、人工呼吸器を付ける作業を横目で見守る。
その時偶然、若い方の隊員と目が合った、畏怖と軽蔑が入り混じった視線。
何人の男と寝ようが、何人の男を看取ろうがその目には決して慣れる事が無い。
男の視線を振り切る様にアケミは衣服を整えホテルを後にした。
        
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ジュリエット社のオフィスに戻ると早番の事務員が数人居たが、
あいにくジュリエット達は皆出払っていた。
事務員達からまたあの視線を浴びる、軽蔑と畏怖が入り混じった視線。
アケミはその視線を無視して黙って席に着くと、自分のPCを起動した。
もっともジュリエットである自分にあてがわれたディスクワークがある訳ではない。
何気なくブラウザを立ち上げるとデフォルトページに設定されている、
ジュリエット社のポータルサイトが表示された。

「貴方の最後の瞬間のお供に」

TOPページの趣味の悪いロゴが一仕事終えてささくれ立ったアケミの神経に障る。

その時だった。

「おはよう!」

後ろから威勢の良い声が掛かった。
声の主はジュリエット仲間のハルカだ。

「おはよう、ハルカ。相変わらず元気ね。」

「元気でも無いとやってられないでしょ…、この仕事は」

ハルカはやれやれと言いながらアケミの隣に腰を下ろした。
ハルカは風俗嬢からジュリエットに転職した変り種だ。
職業柄、暗くなりがちなジュリエットの中で、
ハルカの明るさはアケミにとって一種の清涼剤だった。
彼女も一仕事終えた後らしく顔には若干の疲労と睡眠不足の跡が浮かんでいる。

「この仕事、ギャラは良いんだけどリピーターが出来ないのが難点ね。」

「ふふっ、確かに」

水商売上がりらしいハルカのブラックジョークにアケミは愛想笑いを返した。
ハルカもそうだが、元々ジュリエットに出社義務は無い。
ただアケミは仕事が終わると何となく社に立ち寄る事を日課にしていた。
仕事が仕事なだけに終わった後一人だと鬱になる事が多いのだ。

そんなアケミにとって能天気なハルカの存在はありがたかった。

ただ今日のハルカは席に着くとすぐに机の上に突っ伏すとそのまま寝息を立て始めた。
アケミは仕方なくさっき起動したブラウザで、
ジュリエット社のポータルサイトを眺める事にした。
愛社精神などは皆無だがここ数年急激に業績を伸ばしている
この会社の存在自体にまんざら興味が無い訳でも無い。

アケミはポータルサイト内に有る、
「Histry・・・・ジュリエット社の成り立ち」
と書かれたリンクをクリックした。

その先のページにはここ数年の社会情勢の変化と、
ジュリエット社設立に至るまでの過程が大まかに記載されていいた。
アケミは退屈しのぎにその記事に目を通した。
そこには大体以下の内容が書かれてあった。

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20××年、脳死臓器移植法が大幅に改定され、
日本でも大々的に臓器移植が行われる事になった。

脳死臓器移植法の改定の背景には、ある薬品の登場が大きい。
その薬品とは「ブラックスリープ錠剤」、通称「BS錠剤」と呼ばれる薬だ。
当初、睡眠導入剤として開発されたこの薬には、
副作用として脳幹に血栓を作り脳に向かう血流を止めてしまう作用があったのだ。
血栓は一時的なモノで半時間もすれば自然融解するが、
血流が止まったままの30分という時間は、
人体の4分の1の酸素消費量を誇る脳が脳死するのには充分な時間だった

当然BS錠剤を開発したXX製薬は速やかに製品の自主回収を行った。
ただ既に売られてしまったBS錠剤がかなり有り、
それは闇ルートで非常な高値で取引された。

BS錠剤が重宝されたのには特別な理由がある。
この薬のユニークなところは、脳に向かう血流を止める以外に
体に一切悪影響を及ぼさない点だ。

つまりBS錠剤を飲むことで臓器提供に必要不可欠な
「理想的な脳死患者」を意図的に作ることが出来るのだ。
これまで脳死臓器移植の最大の難点は移植元である脳死患者の確保の難しさだった。
その問題がBS錠剤の存在によりクリアされ移植手術の機会は増大した。

勿論、BS錠剤の存在自体が違法である為、
それらの手術も当然表立って行われた訳ではない。
その後、開かれた国会でBS錠剤の製造及び所持を合法化する法案が可決された。
法案が可決した表向きの理由は、
人道的死刑制度による脳死研究目的との事だったが、
その真の理由はある政界の黒幕が高齢により余命幾許も無くなり、
寿命を延ばす唯一の手段がもはや臓器移植しか無かった為だった。

皮肉にもこの黒幕は法案可決直後に亡くなったが、
相次ぐ訴訟で倒産寸前だったXX製薬は大手を振ってBS錠剤の製造を始めた。
BS錠剤は安楽死用の薬として「KAGEROU」という商品名で生まれ変わり、
民間レベルで流通し始めたのだった。

「KAGEROU」の普及にしたがって脳死の研究が進み興味深い事実が判明した。
実は脳死は必ずしも人の死とはいえないのだ。
いや、正確に言うと多くの人にとっては「脳死=人の死」だが、
ごく稀に脳死状態から生き返る体質の人間が居るのだ。
当然その人間に「KAGEROU」は効かない。
医学的な用語で「脳死耐性体質」と呼ばれる
その体質の人々は巷では「ジュリエット」と呼ばれた。
ジュリエットというのはもちろん
シェークスピアの「ロミオとジュリエットの」ヒロインの事だ。

「ジュリエット」体質の持ち主は約10万人に一人…
更になぜか女性に限られるのだった。
「KAGEROU」合法化に伴い脳死臓器移植も一歩合法化に近づいたが、
完全合法化には最後の高い壁が有る、その壁が自殺に関する法律だ。
実は生者が「KAGEROU」の使用に立ち会うのは自殺幇助罪という犯罪なのだ。

まあ立ち会いを行わずに「KAGEROU」を服用したところで、
脳死患者は自発呼吸が停止する為たちまち酸素不足が起こる。
酸素不足が起こると、それによって発生するチアノーゼで、
折角の新鮮な臓器は瞬く間に駄目になってしまうのだ。
ただ抜け道が無いわけではない。
それが先の「ジュリエット」の存在だった。

自殺したい者(依頼者)の元にジュリエットが赴いて一緒にBS錠剤を服用する。
この事自体はなんら違法行為ではない。
何故ならBS錠剤を飲んだ「ジュリエット」は
まもなく脳死を迎えるため紛れも無い死者なのだ。
生者には自殺を引き止める義務があるが死者に法律は適用できない。
その後ジュリエットは自力で脳死から復活し、
脳死した依頼者に対して肉体の延命措置を施すのだ。

依頼者はの多くは多重債権者で脳死後の臓器は高値で売買される。
つまり依頼者は自らの命でもって生前の負債を清算するのだ。

また依頼者にとってジュリエットに立ち会ってもらうメリットは
何も経済的なものだけではない。
誰だって一人で死ぬのは怖いのだ。
その事に目をつけていち早くジュリエットを囲い込んだのが、
元脳外科医の黒田速雄、ジュリエット社の代表取締役だった。

HPには「黒田速雄」の画像が上がっていた。
端正だが表情の乏しいその顔を見ながら、
アケミは初めてこの男に会った3年前の事を思い出していた。

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3年前、当時のアケミには将来を誓い合った恋人が居た。

しかしその恋人は心臓に重い障害を抱え余命幾許も無く助かる術は心臓移植だけだった。
「KAGEROU」の合法化により移植手術は身近になったとはいえ、
その為に掛かる費用は、サラリーマンの生涯賃金に相当した。

当時、ただのOLであったアケミにその費用を捻出する術は無く。
男を愛すれば愛するほど、そのベクトルは死へと傾き続けるのだった。
そしてある9月の夜、二人はとうとう一緒に死ぬ事を決意した。
アケミは枕元のピルケースにお守りの様に入っていた
「KAGEROU」を2錠取り出し、どちらともなしにそれを口に含むと、
枕元に有ったワインで流し込む。

「どうして貴方なんて好きになったんだろう…」
最期の瞬間、アケミは男の腕に抱かれながら言った。
しかしそれは答えの出ない究極の謎…

「僕を好きになった事…、後悔しているの…」

「全然…、だってたとえ100歳まで生きようと、
今以上に幸せな瞬間は来ないと思う。」
九月の夜は熱くも寒くも無く外からは虫の声が聞こえてきた。
心は平明で少しの乱れも無く窓からは十五夜の満月が見える。

ああ、こんな夜に死んでいくのも悪くはない。
ワインの酔いと共に、耐えられない程の眠気が襲ってきた。
その背後には死という決して抗えず二度と醒めない永遠の眠りがある。
胸の上に置かれた手が、男にぐっと握られるのがわかる。

「この手、死んでも離さないでね…」
アケミは最後の気力を振り絞って男の手を握り返すとやがて意識を失った。
     
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目が覚めたのは見知らぬ部屋の中だった。
見覚えの無い白い壁と天井、どうやらここは病院らしい。
アケミは自分が生きている事に何よりも驚くと慌てて辺りを見回した。

枕元には一人の男がいた。
年齢不詳の長身の男、ただ決して医者では無い。
何故なら得体の知れないその男は黒いスーツを着ていたからだ。

「教えて?私はどうして生きてるの?「KAGEROU」を飲んだのに?」
アケミはとりあえず枕元にいるその男に話しかけてみた。

「おめでとう、君はジュリエットだったんだよ。」
男の声は低く地の底から響いてくるようだった。

「あなたは誰?」

「君のメフォストフィレスさ…」
男はそう言うとアケミに名刺を差し出した。

『ジュリエット派遣株式会社代表取締役 黒田速雄 』
「ジュリエット派遣株式会社」というのは最近出来た心中屋の社名だった。

「なんて事なの…、ロミオとジュリエットのつもりで毒を飲んだのに
目が覚めたらファウストだった訳ね。
確かに原作者は同じだわ…、で…、私のロミオは何処なの?」

「彼は今、同じ病院にいるよ。
胃洗浄が間に合って何とか脳死を免れた。
ただ心臓は完全にオシャカだったので今は人工心臓に繋いでる。
医療費はとりあえず私が立て替えておいたよ」

それを聞いてアケミは驚いた。
人工心臓の利用料金は、確か一日辺り
平均的なサラリーマンの月給に近かったはずだ。

「どうして彼を助けたの?私にそんな高額な医療費なんて払えないわよ。」

「その事だがね、今日は君をスカウトに来たんだ。」

「スカウト!?」

「ああ、その通り…、どうだね?
ウチの会社でジュリエットとして働かないか?」

「お断りします…」

「まあ、とりあえず…、話だけでも聞いてくれ…」
男は構わずに話を続けた。

「君の彼氏の病気については少し調べさせてもらった。
『特発性拡張型心筋症』本来なら心臓移植が必要な症例だ。」

「その手術が受けられなくて年間何人の人が亡くなってると思ってるの?
移植心臓のマッチング率って知ってる?移植に掛かる総予算ってご存知?」

いくら「KAGEROU」が認可され、脳死患者が世界に溢れたところで、
貧乏人におこぼれは回ってこないのだ。

「君がジュリエットとしてわが社と契約してくれるなら、
その二つの問題は同時にクリアできる。
と言えば君も話を聞く気になるかね?」

「…いいわ、…とりあえず話してみて…」
アケミは男の話に興味を持った。

「ジュリエットには一つ面白い特典があってね。
看取った相手に対する、臓器移植の優先権が与えられるんだ。
もし君が心中した相手の心臓が君の彼氏の心臓に適合したなら、
君の彼氏は即座に心臓移植手術が受けられる。」

「続けて…」

「おまけにジュリエットは非常に高給だ。
仕事自体は完全歩合制だが一回の仕事で得られる収入が、
大体平均的なサラリーマンの年収に値する。
10回の仕事で彼の移植手術費用を賄える事は社長である僕が保障するよ。」

黒衣の男はそう言うとサインペンと契約書をアケミの前に差し出した。

「貴方がメフォストフィレスなら、さしずめこれが悪魔の契約って訳ね。」

「もちろんこちらは強制はしない。
ただし君が断った場合、君の彼氏の人工心臓は直ちに外される事になる。」

結局、この男の薦める二択とは、
「契約するか」「契約しないか」でなく「生きるか」「死ぬか」の二択なのだ。
なぜなら彼を失ってまでアケミは生きていたくはないからだ。
結局、アケミはその黒衣の男に言われるまま契約書にサインをした。

今から3年前の事だった。

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「プルルルルルルルルルルルルルル」

PCを前に、ぼんやりしていると、いつのまにやら携帯が鳴っていた。
発信者は「黒田速雄」つまり社長だ。
かなり会社が大きくなったにも関わらず、
いまだに仕事を依頼する電話は黒田から直接掛かってくる。

「もしもしアケミです。」

「黒田だ、今、何処に居る?」

「ホテルヴェローナから戻ってきて今は本社に居ます。」

「そうか、悪いがまた一本仕事が入った。
先方が君をご指名なんだ。
もしよければ今からホテルヴェローナに出向いて欲しい。
フロントには話を通しておく。」

ジュリエットは写真で指名できるシステムになっていて、
美人のアケミは結構な人気なのだった。

「解りました。今から向かいます。」

アケミはそれだけ言うと電話を切った。
どうせハルカは寝ているし会社に居てもする事なんて無い。
だったら束の間のジュリエットも悪くない。
ただロミオは入れ替わり立ち替わり擦り切れジュリエットは西へ東へ…
アケミは身支度を整えると再びホテルヴェローナに向かったのだった。

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フロントに案内されるまま、ホテルの部屋に入ると中には既に男が居た。

歳は30代半ばくらいだろうか?
影が薄くて冴えない無い男だ。
ソファーに座ってウイスキーを飲んでいたがその仕草はぎこちない。
おそら彼のくワードローブではないのだろう。

「はじめまして、ジュリエットのアケミです。」

アケミが近づいて挨拶すると、男の顔がこちらを向いたが
その視線はアケミを捕らえていなかった。

「どうも、始めまして。アケミちゃんだね。」

男に近寄ると傍から異様な臭気が伝わってきた。
嗅覚で伝わる類の匂いではなくある種の気配の様なもの。

屠殺機に掛けられた豚の匂い。
路地裏の行き止りの匂い。
ああ、判っている…、これは紛れも無い死の匂いだ。
男の目は底なしの深い穴の様、生きる希望を全て奪い取られた人の目だ。

ジュリエットと心中する男の何割かは、
こんな風に「生きながら死んでいる」男たちだった。
ルーチンどおり男に依頼内容の説明をする時も、
「KAGEROU」を渡してベッドに横になる時も男はいかなる感情も見せなかった。
ただ一緒に「KAGEROU」を飲んでベッドに横になった瞬間、
その深い穴のような目から一滴の雫がこぼれ落ちた。

「手を・・・」

「えっ!?」

「手を握ってて欲しいんだ・・・」

「手をですか…」

アケミはちょとだけ躊躇した。
恋人との最期の夜を思い出したからだ。
ただ、死に際の頼みを断るのは人として不義理だ。
アケミが男の手を握ると男は安心したように眠りについた。
それを見届けたアケミもしばらくして
「KAGEROU」が効きはじめ、やがて意識を失った。

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夢も見ない深く黒い眠りから醒めると、
隣で寝ていた男は目を開けて死んでいた。
アケミの手は男に握られたままだった。

「この手、死んでも離さないでね…」

3年前の恋人の今際の言葉が頭を過ぎり、
アケミは思わずベッドの横に置いていたナイフで自らの喉を突きそうになった。
記憶が混乱し今までに看取った名も知らぬ男達の顔が脳裏をフラッシュバックする。
しばらくすると、やがて気分が落ち着いてきた。
「KAGEROU」を続けて飲むと稀にこの様な記憶障害を起こすことが有るのだ。
アケミは握っていた男の手を離すと、
その目にライトを当て瞳孔縮小が無い事を確認した。

「ジュリエットのアケミです。ええ、仕事が終わりました。
場所はホテルヴェローナの304号室です。」

救助隊員が来るまでは数分あるが、
今のアケミには身支度を整える気力が無い。
死んだ男の横顔をうつろな目で見ながら、
この男の体が辿る運命をボンヤリと考えてみた。

男は速やかに人工呼吸器を付けられた後、
心臓、肝臓、腎臓、すい臓と言った全臓器が移植用に摘出される。
その後、皮膚、角膜、骨髄、筋繊維など
移植に使える組織は全て同様に摘出される。
途中で出る血液は全部輸血用にパックされ、
骨髄液は白血病の治療用に利用される。

そして最後に残った脳は新たな脳死患者を生み出す為に利用される。
そう「KAGEROU」は脳死した人の脳から作られるのだ。
まるで生者を死者に変える死鬼(ゾンビ)のように・・・

男の過酷な運命から目を逸らすべく
アケミは自分の携帯に手を伸ばしあるサイトに接続した。

サイトに映し出される映像はアケミの恋人の病室のリアルタイム動画…
そこには3年前から眠り続けるアケミの恋人の映像が写っていた。
恋人の胸から伸びているコードは人工心臓につながれその胸は穏やかに上下している。
彼は機械の力により無理やり生かされているのだ。
恋人の目は堅く閉じられているが血色は決して悪くは無い。
その様子を見てアケミは深い安堵を覚えた。




ああ、私のロミオ・・・
あと何人の男と寝れば、もう一度、貴方に逢えるの?

もう一度、貴方と幸せな朝を迎える為なら、
私は全人類だって看取ってみせる。

だからお願い、それまでは生きていてね。
いつか貴方のハート(心臓)をこの手で捕まえるその日まで・・・

私の愛・・・
私の未来・・・
私の存在意義(レゾン・デートル)

そして、私のたった一人のロミオ・・・






そこには「KAGEROU」に翻弄された、わがままなジュリエットの姿があった…

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