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日記ロワイアルコミュの日研2課の男たち

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どうも。アウェーに強い男、暴君です。

先日の日記でちょこっと触れた、一泊二日視察旅行から無事に帰って来ました。

普段の旅行と違って、一緒に行ったメンツがほぼ知らない人達だったので、2日間の旅行といえど上手くやれるか心配でしたが、そこは大人。

カモノハシに関するくだらない話で難なくうち解けました。




一日目。

視察を終え、俺達を乗せた観光バスは、地方のさびれた温泉旅館にたどり着く。その旅館の周りには、≪ヌード≫と≪デスコ≫という看板の建物があるだけで、住宅の他には何も見当たらない。

この地方唯一の娯楽であろう、その≪デスコ≫の二階には、スルメイカみたいな婦人物のシミーズが乱雑に干されている。この有様では、思っていたよりも夜は長そうだ。



女将さんの案内でロビーへ通され、館内の説明を受ける。その簡単な説明が終わると、俺達は女将に尋ねられた。

『今日は皆さん、何の集まりなんですか?皆さん揃って、少し日焼けされてますけど・・・サーフィンのお仲間とか・・・?でもそんな感じではないですね(笑)』

バスのフロントガラスのあたりにも旅館の入口にも、“○○御一行様”みたいな感じで、何の集団なのかが分かる団体名がしっかりと書いてあるのだが。

とりあえず、サーファーですか?という質問に対し、返事をする間も与えられず完全否定されて気分が悪い。



天の邪鬼に育てられた俺は、口から出てくる限りのテキトーな返事をした。


『今日は全国にチェーン展開している日焼けサロンの支店長の旅行なんですよ。』


テキトーもここまでくれば極道だ。真実の成分が0パーセント。


『確かに日焼けしてるけど、それはさすがに嘘よね・・・?ホントは?』


あまりの嘘臭さに、女将は信じようとしない。本当に日サロの店長会だっとしたら、とても失礼ないいぐさなのだろうが、こちらはテキトーだ。気にしないし、ひるまない。そして負けられない。


『んー、ホントは、日サロの機械を作ってる会社の社員旅行なんですよ。ウチは日焼けマシン研究開発2課で、通称、日研2課。』


自画自賛もなんだが、とっさについた嘘にしては“日研2課”という言葉の響きが、実際に五反田あたりのビルで1フロア構えてそうな感じがして、とてもリアルに思えた。


『そぉお。若いのにえらいわねぇ。日焼けサロンには行ったこと無いけど、そういう機械も作るの難しいんでしょう?今、忙しい業界なの?』

ここで疑われたら本当の事を言おうと思っていたのだが、めんどくさい事に女将は話に食らいついてしまった。もはや嘘をつき通すのも優しさだと思い、頭をフル回転させる。


『そうっスね。ここんとこ、ちょっと忙しくて。同僚と飲んでもワット(W)数の話しか出てこないっスよ。な?』


そんな無茶なフリを、たまたま隣にいた、今日会ったばかりの男に丸投げしてみた。


『東幹久5000W、加納典明7000W、松崎しげる10000Wとかね、ハハ。』


奇跡的な連携プレーにより、会話の信憑性が一段と高まってしまった。

ここに、架空の日焼けマシン製造開発の会社と、研究開発の課が誕生した。もう後戻りはできない。




そんな奇妙な会話を済ませ、仲居さんに案内されるがままにエレベーターに乗り込む。

仲居さんは、

『お兄さん、福山雅治に似てるってよく言われるでしょ?』

と、無理のあるお世辞を言ってきたので、「全然言われたこと無いですよ」とは言いつつも、

『小雪ぃ〜、小雪ぃ〜』

と、その場で出来る、精一杯のモノマネを披露した。


しかし、仲居さんは無反応。

自分で振ってきて無反応はないだろう、という悔しさもあり、

『仲居ぃ〜』

と、“小雪ぃ〜”っぽくアレンジするも、仲居さんは目をぱちくりさせてキョトンとしてるだけ。

エレベーターのドアが開くも、腑に落ちない俺は福山モード継続中。

『おもしろい!』

と、ガリレオの湯川先生の決めゼリフで部屋に着き、そこでやっと我にかえる。俺は福山では無い。




部屋で各自、三時間ほどの休憩をとり、宴会場での夕食。

決して色の良くない刺身、焦げて真っ黒なブリ、トマトの入ったイタリアン茶碗蒸し、噛めば噛むほど生臭い川魚・・・

25年間で東から西まで、様々な旅館に宿泊し、各地のいろいろな料理を食べてきたつもりでしたが、こんなにも箸のすすまない料理たちは初めてです。


とりあえずお酌されたビールを飲み干し、海原雄山には間違いなく怒られるレベルの迷い箸で食べられそうな物を探していると、なにやら向かいの席の若いお兄ちゃんが騒いでいる。

川魚がお口に召さなかったようだ。

『苦ぇーよ!マジ、二ゲーよ!』



そんな言葉を連呼した次の瞬間、隣の部屋とこちらの部屋を隔てていたふすまがターンッという音を立てて開いた。



『今、俺ノ事バカ二シタ奴誰ダ!!』



ふすまを開けたのはカタコトの日本語を喋る、大柄の黒人さんだった。

状況を把握できず、うろたえる俺達一同。


怒り荒ぶる黒人さんは、日本人の同行者の制止を振り切り、こちらの部屋に入ってきた。まさに予想ガイの展開。

川魚が“苦い”と叫んでいた男の方を睨み、浴衣の袖をまくり上げ、臨戦態勢に入る。

その大きな体に見合った、筋骨隆々の腕。まともにやりあったら、ただでは済まないだろう。楽しい楽しい夕食が、あっという間に鉄火場になってしまい、一触即発のその状況に誰もが固唾を飲む。そして、


『待て、レジャナルド!!さっきのは聞き間違い!≪苦い≫はお前を差別した言葉じゃないんだよ!!』


という、彼の連れであるサラリーマン風の男の一言で、何とかその場はおさまった。そして、この一件の説明を受けることに。


うすうす、感付いてはいたが≪苦い≫という言葉が、黒人差別の言葉に似ていたために、聞き間違えてしまったらしい。

レジャナルドと呼ばれたその男は、普段は温厚だが、酒が入ると時々人が変わったように暴れることがあるのだという。

そりゃあ彼がそこらへんにいたら目立つ。ストレスの一つや二つあるだろう。しょうがない。


『夕食中にすいませんでした。』

『スイマセンデシタ。』


大柄な男が急にシュンとなり、借りてきた猫のようになり頭を下げさせられている。

完全に酔いがさめた様子だ。

俺達一同、完全にあっけにとられていたが、意外な所で、差別を考えるいい機会になったと前向きにとらえた。




夕食を終え、二次会の前にとりあえず温泉に行くことに。

脱衣所で服を脱ぎ、大浴場へ向かうと、さっきのレジャナルドがお風呂に浸かっていた。そしてこちらを見て、開口一番、


『オー!サッキゴメンナサイ!コッチ来イヨ!』


礼節と失礼の織り交ざったとても不思議な台詞だ。俺達は体を洗ったあと、レジャナルドのもとに向かった。あんなことの後で、少しびくびくしながら浴槽に浸かろうとしていた俺達にレジャナルドは言う。

『モット近ク寄ニレヨ!一緒ニ風呂入ル位ジャ、AIDSハウツラナイカラ!』

その一言で、俺達は固まった。エイズなんていう言葉が登場したからだ。

大浴場に片足を突っ込みながら、最悪の場合をシミュレーションし、ムーンウォーク的な動きで逃げようかとも思ったのだが、それは全くの杞憂となった。


『笑エヨ!身ヲ削ッテ笑イヲ取ッテンダ! ソレクライ解レヨ!』


レジャナルドの、笑っていいんだかよく分かんない、自虐的なブラックジョークで一気にその場が明るくなった。しかし、レジャナルドからエイズ患者への配慮が一切無かった為、やっぱり笑えないなーと思い、あいだを取って苦笑いに落ち着いた。



『女将サンニ聞イタケド、日焼ケマシン作ッテンダッテ?俺モ肌焼イテミヨウカナ。』

俺達は顔を見合わせ、気まずいその言葉には誰も返事をしない。

(それ以上焼けないよ!)

その言葉が言えなかった結果、日研二課は、立ち上る湯けむりの中で、静かに、その短い歴史に終止符を打つこととなった。



浴槽の中で、俺達はレジャナルドと、たくさんの話をした。


ハル・ベリー、マイケルジョーダン、ビヨンセなどの黒人スターの活躍により、世界的に見ても黒人差別はだいぶ和らいできているということ。

日本に於いては、若者による黒人差別はほぼ無くなり、むしろ黒人文化に憧れる人が増えているものの、おじいさんおばあさんの世代では、少なからずとも今だ偏見があり、どうしても黒人は嫌われてしまうということ。

今勤めている会社でも入社当初、肌の色に関するいじめが酷かったこと。そして、それを解決したのが、先ほどの自虐ネタなのだとか。


『自分ヲ笑ッテ、笑イガ取レレバ、誰モ傷ツカズニ済ム。黒人デアルコトモ最大限イカス、コレ、日本デ考エタ処世術。』


そう言って、真っ白い歯を見せて笑っていたが、少し痛々しくも見えた。その姿を見て、ふと、昔話の≪泣いた赤鬼≫を思い出す。
彼は、赤鬼であり、きっと青鬼でもある。なんとなくそう思った。

『辛い時は、あんまり無理すんな。』

連れの誰かが、そう声をかけていた。



昼間の工場視察よりもじっくり話を聞いてしまい、のぼせかける俺達。

その後、レジャナルドが風呂から出るために立ち上がったその瞬間に、世界のスケールの大きさを目の当たりにする。

俺達の連れのおっさん曰く、


『空母みたいだった。』


とか。




風呂から上がり、2次会会場である“デスコ”に出向いた。看板こそデスコだが、建物内がカラオケホールになっている。

俺達は、人数は多い方がいいという事で、2次会にレジャナルド達を呼んでみた。

昼間はさびれた外観のデスコも、俺達、レジャナルド達、そして同じ旅館に泊まっていたОL三人の3組が入ったことによりそれなりに賑わった。レジャナルドはОL達に、

『オッス、俺、外人!』

という挨拶をし、大爆笑を取っていた。めちゃくちゃいい笑顔で、宴会場での取り乱し方とはまるで別人のよう。

かなりの大所帯なので、なかなかカラオケのマイクは回ってこないが、やっとレジャナルドにマイクが回った。

どんな曲を歌うのかと、みんなが注目する。

やはり、見た感じでは、50セントや、2PACなんかのブラックミュージックが似合いそうなのだが・・・



『♪きっとShinin’daysどこまでも 君と歩いて行けたら〜♪』


予想に反し、エグザイルだった。しかも上手い。


『女ヲ落トスナラ、エグザイル唄ウシカネージャン。コレ鉄板ゾ。』


その後も洋楽は唄わず、平井堅や、河島英五の≪酒と泪と男と女≫を唄い、ご満悦の表情。何曲か歌って少し飽きたのか、

『オ前モ何カ唄エ!』

と言って、うたぼんとマイクを渡してきた。


俺が入れた曲はウルフルズの≪笑えれば≫。

練習不足であまり上手に歌えなかったがレジャナルドは大きな拍手をしてくれた。そして、

『オイ!モット、メジャーナ曲ヲ唄エヨ!』

と、野次をとばしてきた。

その一言がツボにはまってしまった自分は、レジャナルドを軽く小突くと、レジャナルドも同じ事をやり返してきた。

そこからは歳も、性別も、肌の色も、生まれた場所も、何も関係無く感じ、気兼ねすることなく朝方まで騒いだ。


翌朝のチェックアウト時、ロビーにレジャナルドがいた。こちらを見て、

『コレ、昨日ノオ詫ビト、オ礼。』

おみやげ物屋に売っていたお茶葉を、人数分手渡してきた。

すでにみんなが忘れかけてたことだったので、だれも受け取ろうとしなかったが、2次会に誘ってくれたお礼、という名目で受け取った。

『昨日、久々ニ楽シカッタ。オマエノ“笑えれば”メジャージャナイケド、良イ曲。今度唄ッテミル。』

自分が作った曲じゃないけど、自分が褒められたようでなんだか嬉しかった。

そしてボソリと一言、

『昨日ノ事、≪モバゲー≫ノ日記ニ書コウ・・・。』

彼がどんな日記を書いて、どんなアバターを使っているのかがめちゃくちゃ気になったが、げらげら笑いながら、またどこかで会いましょうと、握手をして、さよならした。


縁とは不思議なもので、あの時の川魚が苦くなければ、レジャナルドが聞き間違えなかったら、一生会う事は無かったかもしれないし、あの時の風呂場ではちあわせしてなかったとしたら、俺達の中でただの怖い外国人で終わっていたかもしれない。


すべての偶然が重なり、とてもこれが偶然とは思えないほど盛り上がって、絶対に忘れられない一夜となりました。



コメント(209)

うわ何かすんげー好きだこの話。

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