ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

STICK & RUDDER 倶楽部コミュの尾輪式飛行機の世界

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
なぜ尾輪式飛行機が存在するのか?
なぜそのような設計になったのか?
尾輪式飛行機の訓練を勧める訳は?
飛行において注意することとは?
どうしたら安全な運用ができるのか?

尾輪式飛行機の世界へようこそ。

コメント(85)

3. Tail-low Wheel Landing
尾輪が地面から離れた状態での着陸は全てWheel Landingと表現されますが、私はそれを否定します。
Wheel Landingの長所を最大限に発揮するためには、主輪接地時の姿勢は水平近くにあるべきで、それより下がった状態では不具合ばかりが存在します。
これには3 Point Landingの長所もWheel Landingの長所も見られず、全く別の着陸方法と考えられ、区別するために、尾輪が下がった状態でのWheel Landingを私たちはTail-low Wheel Landingと呼びます。
唯一長所があるとすれば、草地や雪の深い滑走路などの軟らかい場所へのSoft Field Landing形式の着陸が可能なことや、川原や砂漠などの滑走路以外の荒れた場所に着陸するときに、主輪の負担を減らし脆弱な尾輪を保護できることなどです。
Wheel Landingよりも難易度が高いものだと思いますが、習得していると便利でしょう。
引き続きTail-low Wheel Landing

Tail-low Wheel Landingの長所
(1). 3 Point Landingに近い、比較的低速度、また揚力を得た状態での接地となるため、荒れた滑走路でも主輪に加わる負担が少ない。
(2). Wheel Landingと同様に、尾輪を地面から離れた状態となるので、荒れた滑走路でも尾輪に加わる負担を最小限にできる。

Tail-low Wheel Landingの短所
(1). Rudder Authorityが弱い姿勢での着陸となり、方向安定性が弱くなる。
(2). 主輪と重心位置の距離が長いために機首上げMomentが大きく、主輪接地時に迎え角が上がり揚力が増え再浮揚してしまう可能性が高い。
4. その他の着陸方法
(1). Carl Dye Landing
WACO Classic Aircraft Company所属のCarl Dye氏が考案した方法で、Tail-low Wheel Landingに多少の特徴を与えたものです。
WACO YMFには、3 Point Landingの姿勢とWheel Landingの姿勢の間にRudder Authorityが極端に低い領域が存在します。
多くの尾輪式飛行機にも多少は見られるこの特徴ですが、WACO YMFという飛行機ではとても大きな特徴で、例えばWheel Landingを終えて尾輪を接地するとき、このRudder Authorityの低い領域で方向安定を失いGround Loopするという事故は多いようです。

彼はこの問題を、「Wheel Landingを行うと必ずこの領域を通ってから尾輪を接地することとなる。では、この領域よりもさらに尾翼を下げた状態で、いわゆるTail-low Wheel Landingをすればよいのではないか?」と考え、この着陸方法を考案しました。
つまりTail-low Wheel Landingに、Rudder Authorityが若干回復した姿勢で主輪を接地するという特徴を加えたものがCarl Dye Landingと言えます。
これによってRudder Authorityの急減少という問題は解決したかに見えますが、現実にはどのような方法を使ったとしても必ずこの領域を通って尾輪が接地する必要があり、説得力に欠けるところが残念です。
また、先のTail-low Wheel Landingの特徴で述べたように、これにも3 Point Landingの長所もWheel Landingの長所も存在せず、実用性は低い着陸方法に思います。
引き続きその他の着陸方法

(2). Tail-first Landing
最後に、これは尾輪から接地するという着陸方法。
3 Point LandingでFlareを多く取りすぎて尾輪から接地してしまうということはよくあり、軽度なものであればそれは許容されます。
ここで言う尾輪からの接地とは、意図的に尾輪から接地する着陸方法です。

「尾輪から接地させることで、速度が遅い状態での着陸とすることができる。」という長所が語られますが、これはどうでしょうか。
飛行機の着陸は低速度であればよいというものではなく、特に尾輪式飛行機は地上走行時の安定性が負であるため、Rudder Authorityが減少する前に主輪と尾輪を含め、全ての車輪の接地を完了しておくということが必要だと考えます。
機首を大きく上げた状態では、垂直尾翼付近は胴体と主翼からの空気の影響下に入り、乱れた空気が流れていることになります。
つまりはRudder Authorityが弱くなっている状態でありながら、飛行機はまだ着陸をしておらず、このことは次に控えた着陸後の方向安定に非常に疑問のある状況です。
引き続きその他の着陸方法、Tail-first Landing

「尾輪から接地させることで機体尾部に方向安定性が発生し、Rudderへの入力がなくても飛行機は自動的に滑走路に正対する。」とも語られますが、これはどうでしょうか。

結論から言えば、ほとんどの尾輪式飛行機において、このような夢の力は存在しません。
例外としては、DC-3に装備されているTail Wheel Lock機構を使用した場合でしょう。
DC-3は離着陸時、Tail Wheel Lock機構を使用することによって尾輪が直進状態で固定され、この場合は尾輪からの接地を行うことで機体を滑走路に正対させようとする力が働くでしょう。
もっとも、あのような巨大な機体が機体尾部からの接地に耐えられるのか疑問ですし、Wheel Landingのみが推奨されるという飛行機ですから、実際には試すこともできませんが。
話を訓練機であるCitabriaやPiper Super Cubなどに戻すと、それらに装備されたSteerable Tail Wheelは、RudderとはRudder Springを解して接続されているだけであり、仮にRudderが中立位置にあったとしても自由に回転し、そこに得られる力は主輪が空中に浮いた状態ではほとんど存在しません。

そのような夢の力を期待するのではなく、操縦士自らが自分の意思で操縦することが大切だと考えます。
引き続きその他の着陸方法、Tail-first Landing

以上のことから、私は尾輪から接地するという着陸方法を否定的に考えますが、もう一つは構造的な理由からです。
設計上の観点からは、尾輪には明らかに主輪としての役割はなく、尾脚も含めて機体尾部に繰り返される大きな衝撃に耐えられる強度は与えられていないからです。

これまでの私の整備作業でも、胴体尾部や尾輪周辺に損傷が見つかったことは一度や二度のことではありません。
飛行中の構造破壊など、重大事故を防ぐために正しい取り扱い方法を行って頂きたいと思います。
尾輪にロックがあるなしに関わらず、尾輪が先に着くことにより機体進行方向へ正対する作用はあります。

単純に重心より後方に接地によるドラッグが生じるためで、尾翼があるから風見鳥効果があるのと原理は同じです。尾翼が相対風に対して風見鳥になるのに比べ、尾輪の接地は地面との摩擦によるものなので風に無関係に機体のベクトルに正対させようとします。尾輪が無く、ただ尾部を擦るのでも、曳航索を引きずるのでも、機体尾部に地面からの抵抗があれば必ず機体のベクトルに正対しようとします。

また、尾輪からの接地での尾輪へのダメージですが、尾輪が僅かに先に接地するくらいでは問題は無いと思います。接地時の尾輪の荷重は、叩きつけるような着陸でない限り重心位置とベクトルを考えると過荷重にはならない筈だからです。斜めにした棒を上から押して体重を掛けようとしても棒が倒れるだけで体重を支えないように、尾輪が機体の重量を支えるような着陸は有り得無いからです。

問題は尾輪からつけようとノーズハイで接地したり、落着したり、尾輪を叩きつけた場合でしょう。三点か、ほんの僅かに尾輪が先に着く、というのは私がいつも心がけていることなので、コメントしてみました。
>尾輪にロックがあるなしに関わらず、尾輪が先に着くことにより機体進行方向へ正対する作用はあります。

>単純に重心より後方に接地によるドラッグが生じるためで、尾翼があるから風見鳥効果があるのと原理は同じです。尾翼が相対風に対して風見鳥になるのに比べ、尾輪の接地は地面との摩擦によるものなので風に無関係に機体のベクトルに正対させようとします。尾輪が無く、ただ尾部を擦るのでも、曳航索を引きずるのでも、機体尾部に地面からの抵抗があれば必ず機体のベクトルに正対しようとします。

>また、尾輪からの接地での尾輪へのダメージですが、尾輪が僅かに先に接地するくらいでは問題は無いと思います。接地時の尾輪の荷重は、叩きつけるような着陸でない限り重心位置とベクトルを考えると過荷重にはならない筈だからです。斜めにした棒を上から押して体重を掛けようとしても棒が倒れるだけで体重を支えないように、尾輪が機体の重量を支えるような着陸は有り得無いからです。

>問題は尾輪からつけようとノーズハイで接地したり、落着したり、尾輪を叩きつけた場合でしょう。三点か、ほんの僅かに尾輪が先に着く、というのは私がいつも心がけていることなので、コメントしてみました。


飛ぶ親父さん
ご意見ありがとうございます。
尾輪式飛行機の飛行が長い別の方からの意見がとても嬉しいです。

尾輪から接地することによって、機首は自動的に滑走路に正対する。
おっしゃる通り、尾輪が自由に回転してしまうとしても、そこには小さくとも抵抗が存在するために重心周りに回転力が生じ、多少は滑走路に正対しようとする力が働くでしょう。
それはどのくらいの力なのか?正対するためにどのくらいの時間がかかるのか?そもそもそれを頼りにして着陸するという方法は飛行機操縦としてどうなのか?ということが問題だと思います。
尾輪からの着陸に関する考察

尾輪からの抵抗によって発生するMomentは、Forceが同じだとするとArmの長さによって増減します。
上に30度くらいの角度を持った状況と、5度程度と角度の小さい状況を描いてみました。
30度の角度を持った場合、存在するMomentは大きく発生するForceは大きなものとなり、そこで得られる機首方向の変化は大きなものとなるでしょう。
次の5度程度の角度を持った場合は、Momentが限りなく小さく発生するForceはとても小さなもので、先の角度が大きかった場合で得られたような機首方向の変化は期待できません。
その結果、操縦士による意図的なRudderの操作がない限り、飛行機はCrab Angleを保ったままの醜い着陸となることでしょう。
「5度くらいの角度は許容範囲。」ということはなく、しっかりと正対させるという心構えが大切であることは言うまでもありません。
引き続き尾輪からの着陸に関する考察

では、その力が多少なりともあるとして尾輪から着陸してみましょう。
おそらく、その時の着陸の姿勢は上の図のようなものとなるでしょうが、どちらも接地する速度や降下率は同じとしてみます。
大迎え角の場合は尾輪にかかる飛行機の重量負担が大きく、小迎え角の場合はその負担が小さくなることは図からも理解できます。
ここではどちらの状態でも尾輪への負担を無視できるとしても、現実に行われるであろう尾輪からの接地は小迎え角の方でしょう。

さて、この姿勢で尾輪が先に接地し次に主輪が接地する状況があるとして、その間の時間はどのくらいでしょうか。
1秒稼げれば見事、実際にはそれ以下の状況ではないかと思います。
先の機首方向変化のMomentが機体に加わったとして、その極僅かな時間に本当に機首が滑走路に正対するのか、または少しでも機首方向が変移するのか。
先の状況と同様、飛行機は多少なりとも横を向いたCrab Angleを処理しきれていない状態での着陸となることが予想できます。

得られる力が小さく、機首に正対させるために時間がかかるのなら、尾輪接地後に機首上げを長く保っていれば問題も解決できそうです。
では、どのようにすれば長く機首上げの状態を保つのか考えてみましょう。
尾輪はすでに接地してしまっているので、Elevatorを操作しても機首上げ状態を調節することはできないでしょうから、考えられる方法としては、Flaps装備の飛行機ならFlapsを下げる、または出力を操作しての揚力調整くらいだと思います。
もっとも、私自身このような操作を試したこともないので、どれだけの効果が得られるのかは判りませんが、どうやら実用的な操作方法ではないようです。
引き続き尾輪からの着陸に関する考察

ここで尾輪式飛行機から離れて、直進安定性に非常に優れた、先輪式飛行機を題材にしてみたいと思います。
機体はもっとも一般的だと思われるCessna C-172です。
ご存知のように、これら先輪式飛行機では主輪である後輪部分からの接地を基本として設計されています。

横風着陸の訓練において、飛行教官はどのように訓練生にCrab Angleの修正を教えるのでしょうか。
「先輪式飛行機は元来直進安定性に優れている。だから主輪から接地することによって、機首は自動的に滑走路に正対する。特別な操作の必要はない。」と教育する飛行教官がいたら、その人は飛行教育証明を剥奪されてしまいます。
なぜなら、そのような着陸操作方法は根本的に間違っているから。
もし訓練生がそのような技量ならば、Stage Checkに合格することはできないでしょうし、実技試験官は不合格の判定を下します。
一般的に、尾輪式飛行機は先輪式飛行機よりも技量を求められますから、この操縦方法は当てはめられないのではないでしょうか。

では、どのようにしたら飛行機を滑走路に正対させることができるのか。
答えはRudder操作を必要に応じて行うことでしょう。
最も簡単な方法ではないかと思います。
尾輪を先につける=尾輪で正対させる、ではありません。私の言う「三点か僅かに尾輪が先」の接地ですが、尾輪が先につくから何か技術的に省略する、というものではありません。滑走路への正対は勿論Rudderを用い、尾輪の状態には関係なく操作を行います。

尾輪を先に接地しようが、三点だろうが接地時は滑走路に正対するように操作します。エアクープ乗りでも無い限りクラブで接地する馬鹿はいないでしょう。そうはいっても完全に正対していることはあまり無いわけで、ほんの僅かなズレ(1度とか多くても5度程度でしょう)が残っています。

propさんが書いた通り、尾輪のドラッグによる機体を正対させようとする力は弱いものです。しかし、実際に尾輪が先に接地すると主輪がつくまでの1秒くらいの間に確かに機体を正対する助けになる力を感じます。尻で引っ張っている状態ですので、僅かなずれが接地までに修正されるような、機首のブレが早く収束するような、そんな感じがあります。

時間にして1秒ほど、機首の動きとしては1度2度の僅かな範囲の話ですが、明らかに操作が楽に感じられます。曳航索を引き擦ったまま降りたりすると(危険ですけど)この効果を非常に強く感じることが出来ます。

尾輪をつけることで正対させる、ということではなく、尾輪が先に着くとちょっと楽でちょっと安心、というような感じでしょうか。そもそも理想は綺麗な三点姿勢であり、着陸技術としては三点姿勢で滑走路に正対し定点に下ろす訳です。常に完璧には出来ないので、もしこの理想から外れるなら、私は「僅かに尾輪が先」の方が良いということです。

ちなみに高起こしなどで大きくピッチが上がったまま激しく尾輪から接地すると、かなりの加速がついた状態で主輪が接地します。これがエクストラの主脚のクラックの原因では最大のものになるそうです。激しく主輪から下ろすのは難しいので、機体へのダメージリスクから考えるとWheel Landingと三点着陸の間を目標に指導する方がいいのかもしれません。

考えずに下ろすとWheel Ladingになるカブやエクストラでは無理に三点着陸を目指す必要はないと思います。(三点着陸好きの私がWheel Landingばかりだったのを覚えていると思います)デカスロンやシタブリアなどは三点着陸が非常にやり易くWheelLandingを無理にする必要を感じません。尾輪式と言っても機体ごとに考え方を変える必要があるような気もしますね。

機体、環境、操縦者のくせ、反応、操作の仕方、こういったものが違うので、各個人にとって「良い着陸」が違ってくるのではないでしょうか。基本になる部分は同じでも、その先は「私は三点か僅かに尾輪が先の方が楽だ」とか「Wheel Landingが安心」とか「好み」に違いが出るのだと思います。誰が正しいとか間違っている、という問題ではないでしょうね。教育には最も普遍的なものを用いるべきですので、使用機材や訓練環境からもっとも良い指導方法を選ぶのが良いでしょう。
「尾輪を先に」というパイロットは多いですが、彼らは別に尾輪の効果を当てにしている訳ではありません。彼らが他のパイロットと違った着陸操作をする訳でも、Wheel Landingと三点着陸でRudderの操作が変り、三点だと突然Rudderを使わなくなる訳でもありません。

主輪が先に着くよりも尾輪が先に着く方が、より操縦していて安心感がある、というだけです。主輪が先につく着陸の利点はpropさんが書かれていましたが、尾輪を先につく利点もある訳です。その利点、欠点を操縦者がどう感じるかの話なので、「主輪が先につくとRudderの利きが良い?大して変らないように感じるよ。むしろ、尾輪をつけた方が安定するぜ」と言う人も居れば、「尾輪で安定?全然分からないよ、主輪から降りたほうが操作し易いぜ」と言う人もいる。と言うことではないでしょうか。
第七章 Go-around
飛行という行為は目に見えない空気という存在を相手にしていますから、操縦士の技量に関わらず飛行機は常に安定から不安定に行き来する状態にあります。
もし、現在飛行機に起きている状況が自分の求めることと異なり、その逸脱を修正できなくなったらどうするべきか。
そんなときでも何の心配もありません。
全ての事柄をResetしてやり直すことはどんな時にも残されており、着陸に関してはGo-aroundという行動があります。

Go-aroundという選択肢を決心するためには、まず心構えが必要でしょう。
何かしらの心理的要因があってGo-aroundを決心できない状態にあると、必要に迫られても行動の妨げとなり遅れとなってしまいます。
飛行の最終的な目標は一度の着陸で飛行を終えることではなく、安全に飛行を終えることであり、Go-aroundの心の準備は常に持ち、この選択肢は常に残しておきたいものです。
「Go-aroundするなよ。」などと訓練生に言う飛行教官は問題外。
操縦席にあって冗談は不要、訓練生に「Go-aroundしないように着陸しなくては。」という心理を植えつけるような飛行教官は飛行機を降りて頂きたいものです。
引き続きGo-around

これまでの尾輪式飛行機の飛行訓練で、出会う訓練生には二種類の操縦士がいました。
「訓練飛行中にGo-aroundをほとんどすることなく、短期間で順調に訓練を終了できた操縦士」と、「訓練飛行中に多くのGo-aroundを経験してきた操縦士」。
傍目からは格好悪く見えたとしても、後者のような操縦士が望ましいものです。
そのような操縦士は過去の経験からGo-aroundすべき状況を的確に判断でき、そしてGo-aroundを円滑に行えるために無事に帰ってくることが確実。
私は安心して格納庫内で飛行機整備に没頭できるというわけです。
引き続きGo-around

Go-aroundを行うべき状況は以下のようなところでしょうか。
先輪式飛行機と重複するようなところは除いて、尾輪式飛行機にのみ考えられるような事柄を書いてみました。
(1). Flareを高い高度で開始してしまい、すでに3 Point Landingの姿勢に到達してしまっている。
(2). Flare時に、目標とした3 Point Landingの姿勢よりも機首が高くなっている。
→その姿勢は許容範囲なのか。尾輪の強度試験をする必要はありません。Go-aroundの練習のよい機会でしょう。
(3). 接地時に機体が再浮揚した。
→Porpoiseの前兆でしょう。
(4). 激しい着陸となることが予期できる。
(5). 激しい着陸となった。
(6). 強い横風のため、Wing Lowを限界まで行っても飛行機が風下へ流される。
→3 Point Landingを行っているのなら、次にWheel Landingを試すこともよいでしょう。しかし、Go-aroundをすることは必要です。
(7). 強い横風のため、Rudder Pedalを最大限まで踏んでも機首が滑走路に正対しない。
→着陸後は減速することになりますから、Rudder Authorityはさらに弱くなります。
(8). Wheel Landing時、機首方向を維持のために踏んでいたRudder Pedalが尾輪が接地する前に限界に達した。
→これから尾輪を接地させる必要があり、Rudder Authorityは徐々に弱くなります。Ground Loopの可能性があります。
(9). 着陸後、滑走路上でS-Turnを起こしてしまった。
→S-Turnを繰り返すとGround Loopを起こす危険が高くなります。
(10). 着陸後、Rudder Pedalが急激に軽くなった。
→追い風が吹いている可能性があります。Ground Loopの可能性があります。
(11). 着陸後、強いYawingを感じた。
→Ground Loopの前兆です。
(12). 未経験の状況に遭遇した。
→何が起こるか判りません。興味はありますが、ここはGo-aroundをしましょう。
引き続きGo-around

私はこれまで尾輪式飛行機に1500時間ほど乗ってきましたが、実はまだGround Loopを経験したことがなく、尾輪式飛行機の操縦士としてはまだ半人前というところでしょう。
Grond Loopになりかけたことは過去に2度ありますが、それらの話でもしましょう。

一度はWACO YMF。
45度左後ろから5-8 KTS程度の追い風が吹いている状態で着陸したとき、それまでRudderにかかっていた重さが消え去り、その瞬間飛行機は強い左への旋転に入りました。
前席の教官が操縦を取ってGo-aroundを行って無事でしたが、追い風は尾輪式飛行機にとって危険なのだと身を持って知った瞬間でした。
同じ風速の向かい風の状況に比べ、倍の速度でRudder Authorityを失うわけですから注意しなくてはいけません。

次はPitts S-2S。
それまで乗っていたPitts S-2BやS-2Cに比べると完成度が低く、Rudder Authorityの若干の低さは少し感じていました。
ある日、Wheel Landingで着陸した後、調子に乗った私は機体の水平状態を永く保ちすぎ、減速によてRudder Authorityがなくなった瞬間に飛行機は左旋転。
おそらく30度くらいは左を向いてしまったと思います。
Full PowerでGo-aroundをして事なきを得ましたが、一瞬観念したことを覚えています。
Wheel Landingで主輪を接地した後は、Rudder Authorityがなくなる前に尾輪を接地しなくてはいけないのだと理解した瞬間でした。
第八章 尾輪式飛行機 Taxi Out
「Citabria 408, Expedite taxi out at taxiway Delta. A fast jet is at 1 mile final.」

滑走路に居座りそこで休憩をとる予定は全くないのですが、管制官としては交通を円滑にしたい、安全性にさらに余裕を持たせたいという願いがあるのでしょう。
言葉に強制はないと頭では判っていても、それは多少なりとも心にあせりを与え、次に関わってくる行動に乱雑さが加わってきます。
操縦士は自分の飛行を最優先することが重要で、その他のことは後続の航空機や管制官に任せるようにしたいものですが、実際その状況に置かれてしまうと難しいものです。

尾輪式飛行機において、Taxi Out時には先輪式飛行機以上に注意が必要です。
ほとんどの中小の飛行場の場合、滑走路からTaxi Outするには90度の旋回となることが多いことでしょう。
ここでは、あわててTaxi Outするとどういう結果になるのかを考えてみます。
引き続き尾輪式飛行機 Taxi Out

尾輪式飛行機で着陸直後のまだ対気速度がある状態で、先のような管制塔の指示から即座に滑走路を離れる行動をとったとします。
尾輪式飛行機という特性上、高い迎え角のために主翼は多少の揚力を保っていますから、主輪と尾輪に掛かっている荷重は完全ではありません。
このことは車輪の摩擦力を低くし、旋回性能を低いものとしています。
Cessna 172では曲がりきれたところも、尾輪式飛行機ではそうは行かず、曲がりきれずに草地へ向かってしまうことになるでしょう。

そのことを理解し、今度は速度を十分に低くしてのTaxi Outをするとします。
速度が低いことで、一見急旋回は可能のように見えますが、どうでしょうか。
急旋回が可能なことは事実ですが、実は急旋回が行き過ぎGround Loopという結果を招いてしまうかもしれません。
速度が十分に低い場合はのGround Loopは主翼を損傷したりProp Hitになる可能性は低いかもしれませんが、それを試すことはないでしょう。
Taxi Out時の速度は十分に遅く、旋回は緩やかにと心がけましょう。
第九章 尾輪式飛行機 離陸時よりも気象状況が悪化
尾輪式飛行機におけるほとんどの飛行訓練は1時間前後というところですが、飛行場に戻ったときの気象状況が離陸したときよりも悪化しているということはまれにあることです。
多くの小型飛行機の離着陸時の最大横風成分は15−17 KTS辺りでしょうが、今回はそのような風が使用滑走路に存在していると仮定してみましょう。

搭乗している飛行機は、再び7ECA Citabria、使用滑走路はRunway 30、風向210度、風速17 KTS、風向の変化やGust(突風)の報告はなし。
滑走路に対し90度の角度で15 KTSの風速ですから、横風成分は17 KTSです。
7ECA CitabriaのMaximum Demonstrated Crosswind Component(離着陸可能な最大横風成分)も17 KTS。
過去にこのような横風の状態での飛行経験がない、飛行経験が浅い、または教官が同乗していない場合、そんな場合は交差する別の滑走路を要求するか最寄の飛行場に行って一休みをしましょう。
帰りの予定時間が迫っていますが、この風では次の飛行予定の方も取りやめとするでしょうから、心配することは何もありません。
それに、1時間の飛行でこれだけ風が強くなったということは、少し休憩していれば弱くなることもあるはずです。
1. 3 Point Landingで横風着陸に挑戦
今回は後席に飛行教官が同乗しているので、試しにこの滑走路に着陸を決行してみましょう。
同乗教育であれば、その時の気象状況は悪ければ悪いほど練習になるものです。
着陸方法は3 Point Landingです。
風に突風が加わり、風速に変化があるならばその成分を考慮しなくてはいけませんが、このときは17 KTSの風が同じ方向から順調に吹いているとしてみます。
引き続き3 Point Landingで横風着陸に挑戦

(1). 最終進入速度は通常と同様の65-70 MPH。しかし、上空で風が強いということは地上付近では風が弱くなることがほとんどであるから、少々速めの70-75 MPH程度に。
(2). 左からの横風成分があるため、最終進入では飛行機はCrab Angle(横を向いた状態)を保ち左を向いている。
(3). 順調にRound Outを終了し、滑走路上1-3 ftで降下率を止める。
(4). ここからFlareに移行し、機首を3 Point Landingの姿勢に。同時に右Rudderを踏みDe-Crab(機首方向を滑走路に正対)させる。
引き続き3 Point Landingで横風着陸に挑戦

(5). 機首方向が右に変移すると同時に横風成分を止める要素がなくなり、機体は風下側である滑走路右側に流され始める。
(6). 風下側への移動を、Wing Low(主翼の傾き)によって発生する横方向の揚力によって防止する。すなわち入力は左Aileron。左側翼端と滑走路の間隔に注意。特に修正のための右Aileronの入力は滑走路への接触の可能性があるために注意を払うこと。
(7). 機首方向の維持を目的にRudderへの入力は増え、同様に左Aileronの入力も増やす必要があるので、常に調整を続ける。
(8). 希望する3 Point Landingの姿勢になった時点でFlareを終了し、その機首上げ姿勢を維持する。
(9). 左に傾いているために左側主輪、そして尾輪が同時に接地。
(10). 順調に操縦桿を後ろに引きStick Backに移行。
(11). 減速と共に飛行機は揚力を失い、滑走路上に安定し始める。徐々に主翼は水平に戻り、右主輪も接地。
(12). 着陸後も風上側へのAileronの入力は続け、方向維持のための右Rudderへの入力も続ける。
(13). 無事に着陸を終えて滑走路からTaxi Out。
引き続き3 Point Landingで横風着陸に挑戦

このようなところでしょう。
文章では無事に着陸できましたが、安全度を確保が必要な実際の着陸で、私の経験上この風速でこのように順調に着陸が進むことはありません。
私がこの横風成分で着陸するとしたら、最低でも30 cm程度の間隔を翼端に保ちたいところですし、しかも主脚は重量により沈み込みますから、実用上の最大横風成分は15 KTS以下だと思います。
Piper Super Cub、7ECA Citabria、どちらも主翼が長いので、操縦席からは15度程度のWing Lowでも翼端が接触するように見え、あまりの近さに驚かされます。
また尾輪の接地と同時に、尾輪が左右に振動し不快なShimmyが発生し、一回のShimmyでも激しい磨耗となり、尾輪に対する負担や経済性を考えると、強い横風下での着陸には向いていないと言えるでしょう。
2. さらに強い横風成分の中、3 Point Landingを決行
さて次は、同じ滑走路Runway 30で、風向210度、風速20 KTS、同様に風向きの変化やGustはなしとします。

すでに飛行機のMaximum Demonstrated Crosswind Componentを超えてしまっており、前回よりも横風成分が大きいのでさらに難しい状況なのはすでに予想できますが、後席の飛行教官に3 Point Landingで試して頂きましょう。
このような状況でも、Go-aroundの心構えと準備をしておけば何も危険なことはありません。

残念ながら、この風の状況では先の(1)から(13)の手順を踏んでも、無事に(13)までたどり着くことは不可能です。
なぜなら、(6)の時点ですでにWing Lowの限界に達し、しかもまだ機首は正対すらしておらず、それ以上右Rudderを踏んで正対させようとしても、飛行機は風下側に流されてしまうからです。
この状態で無理に接地させようものならLanding Gearの負担は相当なものですし、何よりもすでに操縦装置の限界に達していますから、最終的にはGround Loopの可能性のあるとても危険な状況であることに疑いはありません。
迷わずGo-aroundしましょう。
3. Wheel Landingで横風着陸に挑戦
別の飛行場に行くこともよいのでしょうが、せっかくの機会ですから再び後席の飛行教官にWheel Landingで試して頂きましょう。

(1). 最終進入速度を通常の80 MPHに多少速度に余裕を持って、85 MPHとする。先に記したとおり、Wheel Landingには速い進入速度、少ない出力、高い進入角度の方が遂行しやすい。
(2). 先と同様、左からの横風成分があるため、最終進入では飛行機は左へのCrab Angleを保っている。
(3). ゆっくりとRound Outを開始、降下率を減らす。しかし、降下をは止めず、ゆっくりとした降下を保つ。
(4). Round Outと同時にDe-Crabを開始、機首を滑走路に正対させる。
引き続きWheel Landingで横風着陸に挑戦

(5). 同時に滑走路右側に流され始めるため、Wing Lowを増やしてそれ以上の移動を防ぐ。
(6). 先ほどの3 Point Landingの時よりもWing Lowに余裕があり、またRudderに掛かる相対風は明らかに重く、高いRudder Authorityを与えている。引き続き着陸操作を続行。
(7). 左側主輪が接地。同時に迎え角が増えないように、また滑走路への接地を確実にするために機首をElevator操作によって若干下げる。
(8). 減速と共にAileronの効果が減り、主翼はWing Lowから水平状態に戻る。左Aileronは引き続き維持。
(9). この辺りでRudderの操舵量に特に注意。機首を正対させるために踏んでいるRudder Pedalが最前方に届いたらそれは限界に達したということであるのでGo-Around。
(10). 操縦桿が最前方少し手前に来たら、その余裕分を使ってゆっくりと尾輪を接地させる。最前方まで届くということは対気速度が遅すぎ、尾輪を接地させる直前にRudder Authorityを失いGround Loopとなる恐れがある。
(11). 尾輪の接地後はStick BackとAileronを風上側に。
(12). 十分に減速させて、ゆっくりとTaxi Out。
引き続きWheel Landingで横風着陸に挑戦

Wheel Landingは横風に強い、突風混じりの気象状況でも着陸が可能とはよく語られることですが、実はそれはYesでもありNoでもあります。
なぜなら、Wheel Landingを行っても最終的な着陸形態は3 Point Landingであり、それに移行する必要があるからです。
適当にWheel Landingを行えば、自動的に対処可能な横風成分を増やすことができるということはなく、飛行機の特性を把握し、操縦装置の効果を最大限に発揮させる努力が必要です。
それは上の文章に書いたように、Wing Lowの限界量を最大限にし、Rudderを通る相対風に乱れを作らないように機体姿勢を限りなく水平に、そしてRudder Authorityが喪失する前に尾輪を接地させて操舵力を得ることであると、私は思います。
私の経験から、7ECA CitabriaでWheel Landingの着陸方法を用いた最大横風成分は20 KTSまでは十分に対応が可能です。

追記として、Rudder Authorityの補助に操作側のBrakeを使用することもよいでしょうが、Rudderを踏みながらのBrakeの微調整は難易度が高いものですから注意をしてください。
また当然のことながら、BrakeはあくまでRudder操作の後の補助とした使い方を行い、それを主な操縦装置としては使わないようにしましょう。

3 Point Landingという着陸方法があるのに、なぜわざわざ余計な時間をかけてWheel Landingという着陸方法まで練習する必要があるのか。
その答えは尾輪式飛行機の横風着陸の限界と可能性を見たときに出せるのではないでしょうか。
ほぼ真横の風の際に、Quatering Tail Windに風が回ると非常に恐ろしいです。接地後にRudderの利きが急激に失われてGround Loopに陥りそうになります。私はこれで林檎谷の滑走路を横幅一杯使った事があります。

理由を考えたことはなかったのですが、こういうケースの際は特に、Wheel Landingの方が比較的ゆとりをもって対処できると思います。良ければ解説してください。
飛ぶ親父さん
「離陸時よりも気象状況が悪化」という主題を考えるとその考察は面白いですね。
これまで、横風という状況しか考えていませんでした。
ぜひ追加させて頂きます。ありがとうございます。
4. 強風の中、駐機場へ
無事に滑走路に着陸し一安心。それでは駐機場へ帰りましょう。

しかし、Taxiをしようとしてもどうしても真っ直ぐに走りません。
どうやら先ほど風速はさらに強まり、30 KTS超の風が吹いているようです。
向かい風がある場合のTaxiはWeather Vane Effectによって直進安定には優れていますが、反面、横風を受けてしまうような状況では機首は風上の方向に転回してしまい、直進を非常に困難なものとします。

同様に風下側に方向転換することは非常に無理があり、過去の30 KTS超の風では、2000 RPMの出力とBrakeでようやく旋回が可能になったものでした。
尾輪式飛行機は横風時の離陸や着陸には強くても、飛行機の向きが変わり横風、そして追い風となった場合の地上移動は非常に弱いというとことが短所と言えるでしょう。
飛行機が多数駐機している狭いTaxiwayを通過する必要があるのなら、Brakeの負担や磨耗という問題だけでなく、安全のために諦めて近くの空いている場所に駐機した方が懸命です。

もし、目的の駐機場所が風上側にあるのなら、向かい風となり移動にも問題はなさそうですが、7ECA Citabriaにとって30 KTSという向かい風は離陸可能な速度に十分近く、わずかな前進速度でも簡単に浮き上がってしまいます。
10度程度の角度の風なら上の図の方法で対処できますが、それ以上の角度やさらに強い風だと風上側の翼が持ち上げられることも考えられますから、やはり風が収まるまで近くの駐機場所に避難する方がよいでしょう。
5. Quartering Tailwind 45度後方からの横風着陸
尾輪式飛行機の着陸装置の配置である後輪操舵方式は、安定した地上走行に不向きなことはすでに述べたとおりです。
工場や倉庫、工事現場で使用される特殊車両を除き、自動車の車輪配置は前輪操舵と呼ばれる重心前部に操舵装置が備えらることがほとんどで、その理由は高い走行安定性を保つことで運転者の積極的な修正操作の必要を軽減し、平均的な運転技術でも高速走行を安全に行うことができるという理由からです。

前輪操舵と後輪操舵、どれくらいの差があるのか、次回買い物に出かけたときにショッピングカートを使って試してみるとよいでしょう。
いつものように前向きに押したとき、そして後ろ向きに押したとき。
比べてみると方向安定性の差は明らかで、それは速度が高くなればなるほど顕著に現れます。
これが地上を高速で走行する自動車のほとんどが前輪操舵である理由です。

そのような負の方向安定性を持ちながらも、尾輪式飛行機が地上移動や高速走行を伴う離着陸を可能としているのは、Propeller Slipstreamと相対風が胴体及び尾翼に作用して、本来負であるはずの方向安定を補っているからです。
では、もしも離着陸時に追い風という状況が存在し、対気速度と実際の地上滑走速度に負の差があったらどのようなことが起こり得るのか、さらに横風成分が加わったら何が予想できるのかを考えてみましょう。
写真: Livermore空港周辺の騒音公害対策。飛行を避けるべき場所が記されています。


引き続きQuartering Tailwind 45度後方からの横風着陸
騒音に対する配慮や、天候、出発や到着の飛行経路、使用滑走路と駐機場所の関係などの問題がない限り、風向きの変化に応じ適切な滑走路へ変更することが一般的ですが、実際には追い風という状況を認識しながらもそれまでの滑走路を引き続き使用してしまうことは多くあります。

それは、追い風成分そのものが弱く影響を無視できる程度であるから、または風向きが頻繁に変わり安定しないため使用滑走路の変更がついて行けていない、現在飛行しているほとんどの飛行機が先輪式飛行機であり、多少の追い風でも安定した着陸を遂行できるからという理由もあるでしょう。

過去のGround Loopの事故は、私の過去の出来事も含め、ほとんどが5-8 KTS程度の追い風、しかも若干の横風成分を含めたQuartering Tailwindという状況の着陸時であるようです。
同じ状況で離陸時にGround Loopが起きにくい理由は、高い出力設定による十分なPropeller Slipstreamが働き、方向安定を維持できるためです。
私たちは尾輪式飛行機が生まれながらに持っている弱点をしっかり認識する必要があると思います。
引き続きQuartering Tailwind 45度後方からの横風着陸
まず最初に、横風成分のない、単純な追い風という状況から考えてみます。
現実に起こり得るであろう追い風での着陸として、5 KTSという比較的穏やかな風が真後ろから吹いている状況としてみます。
着陸滑走距離が延長してしまう理由は、同じ対気速度を保っていても速い滑走速度であることから減速に時間と距離が必要なこと、そして多くの場合はいつも通りのApproachを行っても、高度が低くなるに従い対気速度が増加していく傾向があり、Round OutからFlareに至るまでの時間が長くなるからでしょう。
これらの原因から、多くの小型飛行機では2 KTSの追い風につき着陸滑走距離が10%増加するとされています。

着陸後の滑走速度が速いということは、着陸滑走距離だけでなく、地上からの衝撃も増加させ方向安定性にも大きな影響を与えます。
追い風という状況による低い対気速度は対処可能な限界量を減少させ、これらの相乗効果から、尾輪式飛行機の要であるRudder Authorityの喪失が早期に起こります。
喪失後は負の方向安定を補う操縦装置は尾輪の操舵力以外一切を失うということになり、しかし貧弱な操舵装置では方向安定を維持できず、Ground Loopという結果が待っていることは明白です。

またこれは操縦士の感覚的なことになりますが、操縦士が過去に行ってきた着陸が向かい風、仮に5 KTSという状況が多かったとすると、その向かい風と追い風の差は実に10 KTS。
7ECA Citabriaの最終進入速度が65-70 MPH(約56-60 KTS)ですから、それは実に対気速度の約16-18%にもなり、わずか5 KTSという追い風の存在が操縦士に視覚的、そして実際に飛行機に与える影響の大きさが伺えます。
無事に滑走路に着陸しても、接地場所は予想よりもはるかに延長され、目の前には滑走路末端が迫り、操縦士に緊張と焦りを与え、判断力や操縦能力を低下させてしまうことでしょう。
引き続きQuartering Tailwind 45度後方からの横風着陸
7ECA Citabriaでは、対気速度が30 KTSを下回るとRudder Authorityは少なくなり、その速度以下から尾輪からの操舵力が得られる安全な滑走速度、約10 KTS辺りに減速するまでは方向安定に注意が必要です。
Propellerはその速度域では空回りするように空気を切る音を立てるだけで推力は発生せず、Propeller Slipstreamの効果は期待できません。
向かい風であればこの危険域は減り、反対に追い風であれば危険域が増え、これが尾輪式飛行機において追い風という状況を避けたい理由であると言えます。
3 Point Landing、Wheel Landing、どちらを行ったとしても、この速度域では飛行機の挙動に特に注意する必要があります。
引き続きQuartering Tailwind 45度後方からの横風着陸
次に、横風成分が存在する追い風という状況です。
同様に現実的なQuartering Tailwindでの着陸として、45度左後方から8 KTSの風が吹いているという状況を考えて見ましょう。
このときの追い風成分は約5 KTS、横風成分も約5 KTS、この程度の数字は実際によく見られる光景です。
追い風成分が約5 KTS存在しているため、先の1のような状況が存在しています。

Quartering Tailwindといっても、途中までは単なる横風状態での着陸とも考えられますから、いくつかの速度域に分けて考えてみます。
Round Outを終了、Flareを続け、操縦士は飛行機に与えられている横風の存在を確認し、De-Crabで滑走路に正対、Wing Lowで横風成分を相殺。
左からの横風着陸ですから、まず左側主輪と尾輪が接地、続いて右側主輪が接地、横風着陸の完成です。
引き続きQuartering Tailwind 45度後方からの横風着陸
しかし、問題はここから。
飛行機から見た風向きは刻々と変化し、減速と共に向かい風成分は減っていき、それと共に横風成分のみが残ることになります。
30 KTSを下回れば周囲の空気は飛行機と共に移動するような状況になり、操縦装置の空力的な効果は得ることができず、残った5 KTSの横風成分のみが飛行機に与えられ、Ground Loopを発生させる可能性は高くなると考えられます。

私はこれまで様々な状態の風で離着陸を行ってきましたが、このように横風成分が弱い状況での着陸は意外に難しいものです。
それは、横風成分そのものが弱いために存在を軽く見てしまう、またはわずかに存在しているCrab Angleを見逃してしまい、追い風という存在ならばその影響の大きさに着陸後になってから気づき、減速後には時すでに遅しということではないでしょうか。
写真1: 基本的なRudder Pedalの操作法。不必要なBrake入力を防ぐため、踵を床に置いてRudder Pedalを操作するという方法が一般的です。
写真2: Rudder Pedalは固定し、Brakeの入力のみを行う方法。特別な状況がない限り避けたい操作法ですが。


引き続きQuartering Tailwind 45度後方からの横風着陸
では、Rudder Authorityを喪失した状況下で、どのようにしたら方向安定を維持することができるか、何か方法はないのでしょうか。

「BrakeはRudder操作の後の補助として使い、主な操縦装置としては使わないように。」という基本がありますが、これから外れた方法がありそうです。
本来ならば、Rudder Pedalを最前方まで踏みこみ、操縦装置としての効果を多少なりとも得てからBrakeを使用したいところですが、Rudder Pedalを左右に大きく動かした状態からの微妙なBrake操作をすることは非常に難しく、操作の遅れ、過大な操作となりがちです。
すでに効果の少ないことからRudder操作は無視し、Brakeを左右に微調整しながらの方向安定をすることがありますが、やはり最善の策はQuartering Tailwindは避けるということに変わりはありません。

ここではQuartering Tailwindという状況での着陸を考えてみましたが、仮に向かい風の状況で着陸を行っても、突然の風向風速の変化の可能性は常にあります。
飛行場のATISやAWOS、管制塔からの風の情報も参考になりますが、最終的に飛行機そのものをWindsockに見立てて風を読み、常にGo/No-Goの判断を続けることが必要でしょう。
それは、Crab AngleやWing Lowの量から横風成分を判断し、実際の着陸地点、対地速度に気をくばり、Rudder Pedalの重さでRudder Authorityの存在を確認するということに尽きます。
向かい風か追い風かに関わらず、これらに少しでも疑問を持ったらすぐにGo-aroundを決行し、状況を再確認してみましょう。

今日の飛行で得られた経験はとても貴重な財産となることと思います。
第十章 尾輪式飛行機の薦め
飛行機の操縦資格を得た方たちには、10人いれば十通りの目的があることでしょう。

将来旅客機の操縦士として飛行をしたい。
家族や友人を乗せて遊覧飛行に出かけたい。
曲技飛行に挑戦したい。
滑空機の曳航機を運行し、仲間の助けになりたい。
人里を離れて冒険飛行にでかけたい。
航空整備士として、飛行機の理解を深めたい。

ここで登場した尾輪式飛行機たちは訓練する場所も借りる場所も限られ、操縦に癖のある風変わりな飛行機ばかりです。
尾輪式飛行機の飛行経験、特にそれらでの離着陸経験が旅客機などの職業操縦士として役に立つことは少ないでしょうが、その飛行で得られた技術は無駄になることはありません。

飛行機が今何を起こそうとしているのか、何を欲しているのか、次にどのような行動が適切なのか。

操縦系統に与える入力が全て飛行機に挙動として表れ、操縦席はまるで空を飛ぶ航空力学教室のようです。
「なぜ?どうして?」そんな疑問が解決できるでしょうし、そこで得られた考える力は今後いろいろなところで役立つことと思います。

「教科書に書いてあるから。」
「誰もがそう言っているから。」

疑問を持たずに素直に理解することは習得を早くしますが、少し回り道をして、学習の問題児となることも楽しいものです。
新しい何かが見つかるかもしれません。

ここでは長々と「尾輪式飛行機の世界」と題して、私がこれまでの飛行で得た経験を元に綴ってみました。
ほとんどの事柄が、既に出版されている本には書かれていない、独自の理論ばかりです。
間違ったところも多いことでしょう。
そして、当然のことながら私の未経験のことは何一つ触れられておらず、理論は未完成のままとなっています。

次に表れる研究者が、ここにある私の理論を打破し、完成されたものとしてくれることを願っております。

お付き合いありがとうございました。

ログインすると、残り46件のコメントが見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

STICK & RUDDER 倶楽部 更新情報

STICK & RUDDER 倶楽部のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング