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2008年05月23日18:31

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パズルのピースが埋まって行く

PALM 31巻『蜘蛛の紋様・2』読了。

若き日のカーター・オーガスの物語。
そして、幼き日のジェームス・ブライアンの物語。
折々過去の物語でも切れ切れに語られてきた
カーターの少年時代から青年時代までが
主にここまで刊行された2巻で語られ、
それとリンクする形で、ジェームスの幼年時代から
少年時代までが語られる。

『蜘蛛の紋様』のタイトルの通り、それぞれの人生は織物で、
それをつづら折る手は神の物だ。
その織り師は時に時に残酷な紋様を編み、徒にそれぞれの
人生を絡ませる。

しかし、今までPALMの長大な物語を読んできた者は全て知っている。

その偶然の織り成す紋様の美しさを。
美を知らず織り上げられる蜘蛛の巣が美しいように。

時に残酷に息を詰め、出会いに驚き、彼らの行き着く浜辺を
思い嘆息する。

それら全てが、美しい事を知るからだ。

全てを喪失する事を予見し、諦観している虚無主義者と、
『天才』という表象に惑わされた周囲の鳴動により、
弧絶を余儀なくされる二人の邂逅が『あるはずのない海』『星の歴史』の
両作品にそれぞれのサイドで描かれるまでのこの遍歴の物語は、
未だ出会わぬ彷徨の軌跡だ。

それはやがて出会い、そして散る。

始点の物語からPALMという物語の終結が始まる。

全ての登場人物の台詞は宝石のようであり、
全てのカットがクリスタルのように輝く、この物語の
美しさは、終結を常にその裡に孕んでいるからだろう。

この本を、特に最新刊を読む時、何故か祈るような心地で手に取る。
これは、聖書を持たない民族に産まれた私の聖書なのだ。

生きる指針として、常に過たずこの物語は存在してくれているから。
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