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2007年02月05日04:16

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♪ 夢で 逢えたら‥ ♡

【 店長のフローズン・カクテル Vol.10 】


ボクが 大学に 入りたての頃

ボクは 一人の女性に 恋をした 

カノジョは とても聡明な女性で

サークルの中でも 際立った美しさを 放っていた


もしカノジョが ミスコンに出ようものなら

2位と大差で 優勝するだろうと  誰もが 思うほどだった


彼女は お父さんの仕事の関係で 海外生活が長く

その語学力を武器に 早々と外資系の商社に 就職を決めていて

暇つぶしに とうに追いコンの終わった部室に 顔を出していた



『 想い 』 と いうものは 必ず 届くもので

『 カノジョへの ボクの想い 』 も 梅雨の切れ間の頃  届いた…

でも…

食事をしたり‥ 映画を観たり‥ ナントナク ‥潔い交際を強いられた

どんなに迫っても 年下のボクは KISS さえもさせてもらえなかった


ソレが原因で ボクが 小さな癇癪(かんしゃく)を 起こす度に

カノジョは とても悲しそうな顔をして つぶやいた…

「このままじゃ ダメなの?  今は 好きだけじゃ だめなの…?」

青かったボクは  まだ  暖める愛を  知らなかった…




ボクの前期試験が 終わったある日 ‥

気象庁が 3日遅れで 関東地方に梅雨明け宣言を出して笑われた日…

いつものように KISSが原因で またケンカになった…

今までなら カノジョが 悲しい顔をして終わるケンカだったのに

今日は   抜けるような夏空の下で

            カノジョが 泣き出してしまった…



しばらくして カノジョは 顔を上げ 赤く腫れた目で ボクを見つめて言った

「 行きたい所が あるの…」

  …

「 あなたと 行きたいの…」

今度は こちらを見ずに   遠くをみつめて  つぶやいた…


目的地は 告げなかった…

ボクは 時折 出される  カノジョの指示通り ハンドルを切った…



ボクの車は 海岸線から外れ 草深い急斜面を登りきった丘で止まった

そこは 太平洋が 一望できる丘の上だった


そこには  もう 夏は 来ていた


今までの沈黙を 押し破るような 紺碧の空と 海の藍だった…


手を伸ばして カノジョの腕を取り  一気に抱き寄せてみた

…  カノジョは  ナンノ抵抗もなく  すんなりと 抱かれた …


思っていた以上に 軟らかい唇だった…


夏草の 萌える匂い …

吹きあがる風に サラサラとなびく 亜麻色の髪 …

海を照らす太陽の乱反射 …


ボクの唇が カノジョの首筋をかすめた瞬間

カノジョは ボクから スルッっと 逃げて 笑った

ケンカの後、初めて見せた笑顔だった



「 少し待ってて‥ 」

そう言って カノジョは 海を背にして 右に歩いて行った

今まで気がつかなかったけど 丘の右後ろの木立の中に 山門が 在った

カノジョは その中に 消えていった



妙な展開に 色々な不安が 頭の中で パニックを起こし始めた時

カノジョが 元の道を 帰って来た




翌日、昼過ぎに ボクはカノジョの自宅近くの曲がり角で 車を止めた


ベタッ っとした 夏の昼下がりだった

一晩中 抱き合っていて ほとんど寝ていないのに

カノジョは 実に美しく  自宅へ続く角に向かい歩いて行った




山門から出てきたカノジョは 不安気なボクを見て 笑った

「 私の彼は あそこにいるの… 」

山門に目をやりながら 言った


… 《 ボクの不安は的中した! 》 …

言葉に困っていると

「 ウソ、ウソ!  あなたを からかっただけ! 」

「 ずっと あなたが 好きだったのよ 」

今度は カノジョから 絡みついてきた




夏の終わりに カノジョは 卒業旅行と称して

一人で 海外に旅立って行った

今まで暮らした土地にいる友達と会うだけでも

世界一周しなくては ならないらしい…


カノジョを見送った後、見送りに来た友だち数人で お茶を飲んだ

友達と言っても みんな ほとんど初対面に近かった


その中の おせっかいな女友達が カノジョの昔話を始めた

それは ボクと知り合う前の カノジョの話だった


カノジョは 眠る事が好きな時期が あったようだった

おせっかいな女友達曰く

カノジョには 長い間 付き合っていた彼がいて

でも

海外生活の多い彼女は 日本にいる彼とは すぐに会えない


とても 辛く淋しい想いで カノジョは海外で暮らしていた…


そんなある日 夢に彼が 現れた

カノジョは 夢の中に シアワセがあるコトを知った


その日からカノジョは 彼に会いたくなると目を閉じることを覚えた


8月に カノジョは 家族と一時帰国した

カノジョは 真っ先に彼の家に飛んで行った

そこでカノジョを迎えたものは 彼の写真だった


夢で逢えた 7月の初め… 

彼は 突然の事故で 命を落としていた…



彼が眠っているのは  海の見下ろせる丘の上だった…


あの日は 恐らく 彼の命日に当たる日だったのかも知れない…


ボクは 急に カノジョの後を追いかけて捉まえたい衝動にかられた


カノジョは 超えたのだろうか ?

ボクを踏み台にして 超えることができたのだろうか  … ?



日本に 帰って来てからのカノジョは 忙しく

やがて 赴任先のロスへ 行ったきり 連絡も遠くなり

ボク達の恋も  自然に消えてしまった…



今でも ボクは カノジョのコトを想い出したくなると

ソファーに横になり そっと目を閉じることにしている…


瞳を閉じると  いつだって 

ボクは 海を見下ろす丘の上に立つことができる…


丘の斜面では 海からの風を受けながら

カノジョと彼が シアワセそうに 話をしているのが 見える…



♪ 夢で もし逢えたら 素敵なことね
  あなたに逢えるまで 眠り続けたい

  あなたは私から 遠く離れているけど
  逢いたくなったら まぶたを閉じるの

  夢で もし逢えたら 素敵なことね
  あなたに逢えるまで 眠り続けたい


  薄紫色した 深い眠りにおち込み
  私はかけ出して あなたを探してる



  春風 そよそよ 右のほほをなで
  あなたは私のもとへかけてくる


    今も私 枕をかかえて 眠っているの
    もしも もしも 逢えたなら
    その時は力いっぱい 私を抱きしめてね お願い…


  夢で もし逢えたら 素敵なことね
  あなたに逢えるまで 眠り続けたい        ♪



                 BGM 大滝永一「 夢で逢えたら… 」





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