「初恋大江戸タロット」
絵と文 ケルマさん
さぁて、江戸八百八町。
世を吹く風は、みな通りすがり。
正しく江戸の町にゃ、通りすがりの風が吹きまくってましてな。
年は十五、六。まだ桃色のほっぺに産毛の生えた丸ぽちゃ娘が、こう嘆いて言いやした。
「あたしゃ、いったい、どうしたらいいんだい?」
さてさて、あっしは通りすがりの風。名は米坊。西洋歌留多の占い師、人呼んで多路問の米坊。
「娘さんよ。まずはこの札を引いてみなせえ」
娘が歌留多束から引いた札を並べて、おいらが語るは、鬼神も呆れるばかりの大上段!
「さあさあ!よく見なせぇ!
一番の札はラバアス(恋人)!娘さんよ。あんた、好きな男がいるのかね?」
・・・ぉっと!娘の眼が真ん丸に見開いて、潤みだした!ほっぺを真っ赤にして、こりゃ、生娘の純情ってやつさね!なんだか、おいらのほうが恥ずかしくなっちまうね。
「どうやら、あんた、えらく思い詰めてるようだが、二番の札は厄介事の札さ。
盃の十番の逆さまだ。
盃の十番は、家や身内の幸せだ。しかし逆さまなら、そこが辛いとこだ」
「お父さんおっ母さんには、育ててもらったご恩があります。お父さんおっ母さんは、あたしを、あるお武家さんのとこに嫁がせようと計っております。でも・・・」
「・・・他に好いた男がおるんだね?」
娘さんが、涙をぽろぽろ溢しはじめた。
ああ〜泣くんじゃねぇ!
まいったなあ・・・おいらは、女の涙にゃ弱いんだよ!
「三番目の札は、剣の九。あんたは、決めなきゃならねぇ」
「お父さん、おっ母さんには、悪くて悪くて、ほんに辛いけど。あたしは、好きな人と一緒にいたい!欠け落ち者になっても」
この時代、決まりに背いて結婚した者は、一族郎党処罰される恐れがあるので、戸籍から欠け落ちるのが常であった。
ゆえに、欠け落ち者と称される。「駆け落ち」の語源だ。
「四番の札は、改善策だ。ほう、こりゃ剣の皇后(クィーン)だ。娘さんよ。あんた、欠け落ち者になっていいってんならさ。そうしなよ。あんたの人生だ。あんたがしたいようにしたらいいんだ!悔いがねえようにさ!」
娘の顔に戸惑いと、そして若さに溢れた喜びが溢れた。
若ぇ娘の純情!どんなに世間の垢にまみれたおいらでもよ。こればっかは、手助けしてやりてぇもんさ。
「五番目の札は、まあ結末だがね。
金貨の十だ。
ほほう!こりゃたまげた。子々孫々に繋がる財産ができるかもな」
「え!」
「あんたに、欠け落ち者になるくらいの覚悟があるってんなら、な!
真心を通しなせぇ!
それが、あんたの幸せよ!」
「あ・・・あたしは・・・」
おいらには、娘さんがなにを言うか、わかってたんですぜ。なんしろ、この娘は、良い娘さんだから。
「あたし、あたし・・・!欠け落ち者になってもいいから、あの人と一緒にいたい!!!!」
その時でさ。
一人の若いお侍が、いきなり娘に近づいてきたんすよ。
娘さん、びっくりした顔してやしたね。
若いお侍が、咆哮しました。
「お玉よ!そなたの気持ち!我が身心に嘘偽りなく染み渡った!
嬉しいぞ!私は嬉しい!!!
そなたのすべての罪は、私が引き受ける!!
お玉!」
ぉっと!気がつけば、周りをたくさんのお侍さんたちが囲んでいるじゃあないっすか!
娘さんを抱き締めたお侍さんが、おいらにこう言いやした。
「この娘を勇気づけてくれたそなたには、礼を伝えたい」
「へ、へぇ!お、お侍さまはいったい?」
周りに集まったお侍の一人が、おいらに言いやした。
「これこれ、頭を下げてくださらぬか。こちらにおわすは・・・」
・・・・・・・・・・・・
時を経て、江戸城では盛大な輿入れが行われたのであった。
八百屋の娘、お玉が、欠け落ち者を覚悟して将軍家に嫁いだという噂は、江戸八百八町を駆け抜けた。
以降、「玉の輿に乗る」という言葉が、現代に伝わっている。
お玉、後の将軍綱吉の生母である。
今日もお江戸は、日本晴れ。
空を見上げながら、おいらは呟いたんでさぁ。
・・・お玉ちゃん、幸せになあ・・・
今日も今日とて、おいらは風に吹かれてふぅらふら〜。
おしまい
突然だけど、
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そうそう、11月7日、香川で四国プロジェクトスタートします。
四国すべてをリンクさせることで、世界をアップデートし、すべての争いを消すのだ。
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