※夜のドラマハウス調で、お読みください( ̄▽ ̄)
「雪女」
絵と文 ケルマさん
山小屋の中は、冷たく凍りついていた。
女は、凍てつく吐息と共に、巳之吉に近づいてきた。
巳之吉は観念した。
・・・・いよいよ、我が身も凍てつく骸と化すのか
しかし、突如として女の気配が変化した。
「お前も殺してやろうと思ったが・・・・
お前はまだ、若い。
それに、とても綺麗な顔をしている。
殺しはしない。
そのかわり、私を見たことを、誰にも言ってはならぬ。
もし、一言でも話したら、その時はお前を殺すからね。
必ず殺すからね!」
・・・・あれから70年の年月が流れた。若かった巳之吉は、今ではすっかり老人となっていた。
巳之吉は、じっと、長く連れ添った女房の顔を見続けた。
女房は、70年前からまったく老けていない。
女房は不審に思い、巳之吉に訊いた。
「あんた、どうしたんだえ?あたしの顔をジッと見て・・・」
「いや、べつに・・・」
村の者はみな、女房のことを雪女だと噂している。
いつだったか、息子が言ったことがある。
「なあ、うちの母ちゃんってさ、雪女じゃね?」
「ハッハッハ、馬鹿なことを言うんじゃねぇ」
「いや、絶対に母ちゃん、雪女だよ!村のみんなも、そう言ってるし!」
自分も、そう思う。
しかし、その事を言ってはならない。
約束だからだ。
巳之吉には、ずっと考え続けていることがあった。
・・・・もしかすると、俺は長い夢を見ているだけなのかもしれぬ
俺の身体は、じつはいまだに、あの山小屋の中にあるのかもしれぬ
本当は、俺は凍りつき、死にかけていて、長い長い夢を見ているだけなのかもしれぬ
もし、一言でも喋ったら、夢が覚めてしまうのだとしたら・・・
巳之吉は、笑いながら頭をふった。
・・・女房は優しく、愛らしい。それで充分だ
「見るな」「言うな」は、神話の代からの約束事なのだ。
・・・女の秘密は、決して暴いちゃいけねぇ
おしまい
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