<緊迫する中東情勢(8)>
2025年1月16日に、イスラエルとハマスの間で、一時的な停戦協定が成立した。同月19日以降、協定内容に従い、双方決められた期日まで身柄拘束者を段階的に解放する。紆余曲折を経ながら、3月1日迄の第一段階を終えた。第2段階へ移行するに当たって、イスラエル軍が、突如要求を引き上げ、先に人質の解放を求めた。ハマス側は、唯一の切り札である人質を安易に引き渡せない。協定どおり、イスラエルへガザからの撤退を条件に挙げた。双方譲り合わず、決裂した。3月18日には再開した戦闘の現状について探っていく。
前第7回 4月11日付 ガザ地区の惨劇 朝新聞特派員マンスール氏の死、
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第6回 4月8日 シリアの国作りに向けて続編 2025年3月6日から4月7日迄
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目次
第1章 緩衝地帯を広げるイスラエル軍
第2章 病院の被害 停戦交渉へ
第3章 パレスチナ域外 イエメンのフーシー派が、奮闘する
第4章 深刻な人道危機 米軍とフーシー派の戦いは一端終了。
第1章 緩衝地帯を広げるイスラエル軍
イスラエル軍は、兼ねてからガザ地区を分離壁によって包囲し、推定200万の住民を閉じ込めていた。2023年10月7日以降、ハマスの戦闘員による越境攻撃により、過去に例のないほど国民に被害が出た。死者は推定1200人、ユダヤ人殲滅を公約に掲げるハマスを根絶やしにするべく、ガザの町を破壊しつくした。
4月12日、カッツ国防省は、エジプト国境に接したラファを、緩衝地帯に組み込んだと宣言した。イスラエル紙ハーレツによると、推定20万が暮らしていた住民の多数は退避していた。イスラエルは、軍事的に睨みを利かし、帰還を許さず、住民を一方的に締め出したのである。最南部ラファと中部ハンユニスとの間の「モラグ回廊」の設置も完了し、ガザ地区北部と南部を縦断する「ネツァリム回廊」を拡張中とも明らかにしている。中東の衛星テレビ「アル・ジャジーラ」によると、12日早朝以降の死者は少なくとも15人になった。ガザ保健当局によると、2023年10月の戦闘開始以来のガザ側の死者は5万933人になった。【毎日新聞 エルサレム支局 松岡大地】
写真=ガザシティの様子:出展ロイター通信 参考記事 毎日新聞 2025年4月13日 午前7時15分付
https://mainichi.jp/articles/20250413/k00/00m/030/019000c
ユダヤ人のイスラエル軍が、アラブ人のガザ地区への侵害は今に始まったわけではない。2007年にパレスチナ自治区の総選挙にて、ハマスが、穏健的なPLOを退けて、第一党になって以来、俄然警戒を強めていた。2005年にユダヤ人がガザ地区の入植地から引き上げに伴い、分離壁を建設して、ガザ地区の住民を閉じ込めた。西側は地中海、唯一の出口は南方のエジプトに面したラファの検問所だった。
IDF(イスラエル軍)は、2002年にヨルダン川西岸を隔てる壁の建設を始めていた。ガザ地区の境界線となる壁を敷設するにあたり、周囲300mを独自に緩衝地帯に定めた。国境警備隊を配備し、立ち入るガザ住民の射殺を認めてきたのである。2023年10月7日の武力衝突以降、より安全意識の観点から、緩衝地帯を1kmに拡大した。分離壁に程近いガザ市シュジャイヤ地区は、住民たちの雇用を支える工業地帯と化していた。既に建物の大部分は、IDFによって破壊され、跡形もない。生活の基盤を失った従業員らは、避難生活を送っているとみられている。ハマスに関係のない工員らを犠牲にしてまで、緩衝地帯を広げるイスラエル軍の作戦は、「財産権の侵害」といえる。2023年末に、南アフリカが、率先してICJ(国際司法裁判所)に、イスラエルの軍事作戦は、ジェノサイドにあたると、提訴していた。同月11日に審理が始まった。市民の生活の場を一方的に破壊した行為も、国際法に該当するか、審理の対象になる。
英BBCは、ガザに住む一般市民の声も積極的に取り入れた。ガザ中部のブレイジ郊外に祖父から受け継いだ土地で、40年間農園を営むアブドゥル・アジズ・ナバヒンさんは、悲痛な思いを語った。ガザやイスラエルの住民は、雨が少なく乾燥した土地でも、少ない水で育つ食物の栽培に力を入れる。オリーブやオレンジ、グアバを栽培して、市場へ出荷することにより、家族を支えていた。
息子のマフムードさんには、3歳の娘がいた。農園の後継者も育ち、安定した暮らしを送っていたという。大規模な武力衝突が起きて以降、財産となる農園を一時的に手放し、退避を余儀なくされた。一時的な停戦協定が結ばれた2025年1月16日以降、農地へ帰還したところ、自宅とも無くなっていた。
「家は破壊され、樹木はブルドーザーでなぎ倒されていた」と語った。IDFがつかの間の休戦協定を設けて、緩衝地帯拡大へ兵員を投入したのである。
息子のマフムードさんは昨2024年6月下旬、自宅近くでたき木を集めていたところを、イスラエル軍の戦車に砲撃されて死亡した。一緒にいたいとこも重傷を負った。
「イスラエル人は故意に彼らを狙った。ただ、たき木を集めているだけで、抵抗も戦闘もしていないと知っていたのに。焚き木を積んだ荷車がはっきり見えていたのに狙われた」とIDFを犯罪行為だと糾弾する。
「あそこへ行けば誰であれ殺される」とやりきれない思いを打ち明けた。いまだに世界をリードするのはアメリカである。オランダのハーグに本部があるICJの手続きは、煩雑で、審理にも時間がかかっていた。提訴された内容から、事実関係をつき合わせて、初めて裁判官による判決が下る。例えイスラエルの軍事作戦をジェノサイドと認定が下されても、強制的に武力行為をとめられる手段はない。国連やICJの権限では、天井のない監獄内でのガザ市民の救出を求める声にこたえることはできなかった。国連は設立から80年、改革を求める声が上がっている。
詳細 イスラエル軍の破壊行為 CNN.co.jp 2025年4月14日 16時9分付け
https://www.cnn.co.jp/world/35231757.html
第2章 病院の被害 停戦交渉へ
イスラエル軍は、全200万のガザ市民を盾にとり、強圧的な手段でハマスに人質解放を迫っていた。4月13日に、北部ガザシティを空爆する。、完全に機能している病院としては市内最後だった「アル・アハリ・アラブ病院」の一部が破壊された。インターネットに投稿された映像から、暗闇の中で2階建て建物が炎上している様子が克明にとらえられていた。院内に勤務する看護師と共に患者らは、外へいっせいに退避した。病人を気遣い、ベッドごと担ぎ出される様子も、ビデオカメラに映し出された。目撃者らによると、同病院の集中治療部門と外科部門が破壊されたとのことである。イスラエル国防軍(IDF)は、攻撃について、毎回決まりきった言葉を述べる。「ハマスの指揮系統センターが病院にあった」と正当化した。ハマスの戦闘員をターゲットに、患者を巻き込むことは、国際法では許されない。イスラエル軍は、国際的な批判を和らげるため、治療中の患者や医師、看護師に配慮したと説明する。「テロのインフラがある地域で、事前に退避勧告を出し、精密な砲弾を使い、上空からターゲットの病院を監視した」と民間人の犠牲者を出さないように措置をとったと弁明した。
現場からの報告によると、退避勧告が出たことにより、直接的に院内患者やスタッフに被害は出なかった模様である。同病院を運営するキリスト教聖公会エルサレム教区は、頭部を負傷していた子ども1人が、避難を急いだ結果、死亡したとする声明を出した。教区によると、聖フィリップ教会など病院周辺の建物も、被害を受けた。
院内で仕事をしていた現地ジャーナリストによると、IDFは救急部門で手術中だった医師に電話をかけ、直ちに病院から避難するように勧告した。「すべての患者と(病院で生活している)避難者が安全な場所に避難する必要がある」、「避難する時間は20分だけだ」と弁解の猶予を与えずに迫った。
病院で治療中の子供を見守っていた一般市民のハリル・バクルさんは、BBCアラビア語放送の番組「ガザ・ライフライン」で切迫した状況を如実に語った。爆撃のほんの数分前に、けがをしている娘3人と逃げ出して、命拾いしたと、興奮気味に語った。「恐ろしかった」、「私はすでに負傷していたので、状況は困難だった。娘も1人は片足を切断し、もう1人は片手を切断し、もう1人は体中にプラチナのプレートが入っている」と深刻な状況を伝えた。「わずか2分が生死を分けた」とほっと胸を撫で下ろした。
緊急退避によって、治療を中断せざるを得なかった状況が浮き彫りになった。医療観点において、迅速に適切な治療を受けることにより、後遺症が残るか、否か、分けることになる。IDFは事前に通告したとはいえ、病院を破壊した行為は、一般市民を脅かす行為につながる。アメリカをバックにすることにより、全て自国民をハマスから守るための「自衛権」の範囲でまかりとおしていた。
写真=アル・アハリ・アラブ病院の爆撃後、瓦礫と化した様子 掲載元 BBC NEWS JAPAN 2025年4月14日付
https://www.bbc.com/japanese/articles/ce8g70g066po
4月15日にネタニアフ首相は、IDFの上層部のメンバーやカッツ国防省を従え、ガザ北部を視察した。「イスラム組織ハマスは大きな打撃を受けている」として、IDFのメンバーの奮闘振りを称えた。
停戦協議も今なお進む。ハマスの代表団は4月13日に、エジプトの首都カイロを訪問した。ロイター通信が報じた内容によると、イスラエル軍の要求は緩和し、人質の解放人数を当初の11人から減らしたとみられる。ハマス側は、解放に応じる人数は5人と主張していた。より公平な視点に立てるエジプト側は、ハマスとイスラエルの間を取り、解放する人質は8人と提案した。一方でイスラエル軍は、人質解放人数に比例して、刑務所に収監したパレスチナ人の釈放数も減らすと、主張している。双方の溝は埋まらないままだった。
人質解放人数について 毎日新聞 2025年4月14日午前9時59分
4月17日、現在ハマスのトップとなるハリル・ハイヤ氏が、深刻な人道危機を察して、声明を出した。イスラエル国籍の人質と、収監されたパレスチナ人の身柄交換する包括的な取引をする容易がある、とテレビ演説で訴えた。この日もガザ地区では、少なくとも女性と子供を含めて、32人のパレスチナ人が、IDFの攻撃で死亡している。
詳細 ハリル・ハイヤ氏の演説 Reuters 2025年4月18日午前9時14分付け
ハリル・ハイヤ氏は、ハマスの支部があるカタールのドーハに在住している。殺害された先代のハニヤ氏と共に、イランと強いパイプを持つ。停戦交渉においても主導的な立場だったとみられる。イスラエル軍が新たに策定した停戦案は、人質10人解放と引き換えに、停戦45日間、ハマスの武装解除が含まれている。ハリル・ハイヤ氏は、武装解除についてはかたくなに拒否した。
パレスチナの地元メディアは、4月18日の死亡者は34人と報じている。
写真=ハリル・ハイヤ氏 詳細 NHK NEWS WEB 4月19日午前5時10分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250419/k10014783771000.html
第3章 パレスチナ域外 イエメンのフーシー派が、奮闘する
パレスチナ域外でも戦闘は行われる。4月17日に米軍は、親イラン組織フーシー派の西部の港を中心に攻撃した。標的にした理由について、米軍はイランからの燃料の密輸に使用していたと正当化した。地元メディアによると、港周辺に滞在していた74人が死亡し、170人以上が負傷した。米軍と結託するIDFも、上空に飛来したフーシー派が発射したとみられるミサイルを迎撃したと発表した。なお米軍は、フーシー派と中国企業の関連を指摘する。フーシー派が、紅海を航行する船舶の取り締まりに、中国企業の衛星画像を使用していると、非難声明を出した。企業名については公表していない。米中間では今貿易戦争途上でもある。
詳細 米軍のフーシー派への攻撃 NHK NEWS WEB 2025年4月18日22時27分付け
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250418/k10014783201000.html
中国は、フーシー派を支援するイランとは、上海協力機構(SCO)の一員として、経済的に繋がりが深い。イランを通して、フーシー派に送られたとみられている。
4月24日に1週間前と同じく米軍は、フーシー派の施設を攻撃した。ターゲットは、西部ホデイダの石油施設である。地元メディアによると、少なくとも74人が死亡、171人が重軽傷を負ったと報じた。空爆の標的となったラスイサ港では、複数の巨大な火球が夜空に向かって立ち上り、オイルタンカーなどの輸送車両の残骸が放置されていた。
続けて28日にも米軍は、フーシー派へ攻撃を加える。イエメンの親イラン武装組織フーシ派が所有する地元メディアは28日、北部サーダ州でアフリカからの不法移民の収容施設が米軍の空爆を受けたと報じた。収容者ら少なくとも68人が死亡し、47人が負傷したと明かした。施設に滞在していた約100人は、サウジアラビアを中心に職を求めて紅海を渡って来たアフリカ人が中心だという。米軍が、イスラエルに関係した船舶を取り締まるフーシー派へ敵愾心を抱き、攻撃をすることで、無関係な人々の命まで失う。なお米軍は、攻撃の意図について説明を避けていた。
写真=4月25日、首都サヌアでのフーシー派を支持する若者 掲載元 詳細記事 フーシー派が所有する施設への空爆 毎日新聞 2025年4月28日16時58分付
https://mainichi.jp/articles/20250428/k00/00m/030/117000c
IDF(イスラエル軍)は、レバノンにも介入する。実のところレバノンには南部のヒズボラを含めて、イスラエル戦線を張る武装組織がネットワークを築く。イスラム教スンニー派の武装組織ジャマーア・イスラミーヤは22日、イスラエル軍の無人機攻撃により、レバノンの首都ベイルート南部で武装部門「ファジュル・フォース」の上級司令官が殺害されたと発表した。
合わせて、IDFも、ハマスとつながりのあるジャマーア・イスラミーヤの重要人物を殺害したと明らかにした。国境に展開するイスラエル軍兵士を標的にした「テロ」計画と実行に関与していたと正当化する。
ファジュル・フォースは昨2024年、レバノンで停戦が発効するまでイスラエルに向けてロケット弾を発射していた。IDFは諜報機関モサドを通して、敵対組織にスパイを潜りこませて、幹部の情報を把握しているとみられている。スパイ網によって、敵対組織の壊滅にも追い込んでいく。
詳細 レバノンでの殺害計画について。Reuters 2025年4月22日午後 9:07
4月27日には、首都ベイルート南郊のヒズボラが所有する武器庫を空爆した。IDFは、新たな武器の生産は、2024年11月27日にアメリカの仲介で発布した停戦協議に反する行為だと指弾する。近隣の一般市民には、事前に退避を呼びかけたと、訴えた。ヒズボラとイスラエルとの間に立つレバノンのジョゼフ・アロン大統領は、イスラエルの空爆の正当性を否認する。停戦履行の監視役を引き受ける米仏に、好戦的なIDFを説得するように求めた。
詳細 ヒズボラの施設の空爆 読売オンライン 2025年4月28日12時24分付
IDFは、4月17日に停戦交渉決裂を受けて、ガザでの軍事侵攻を続ける。4月23日に、地区北部のガザシティにて、多くの避難民が身を寄せていた学校を空爆した。地元救急当部は、ただちに10人が亡くなったと、発信した。現場にもカメラが入った。すっかり天井が抜け落ち、煤けた骨組みが残された。机は一部脚の部分が残るものの、生徒が教科書を置く台座は失われている。仲介国のエジプトとカタールは、被害を受けるたびに、奔走する。両国は、5年から7年に渡る長期の停戦計画を練り、ハマスに人質全員の解放、合わせてイスラエルにパレスチナ人の釈放を求める考えを示した。ネタニアフ首相は、国内与論を気にして、人質を取り戻す旨を強調する。本心では、ハマスを根絶やしにすることを優先し、折り合うつもりはない。停戦交渉も暗礁に乗り上げた。
写真=4月23日に空爆を受けた学校の跡 詳細記事 掲載元 NHK NEWS WEB 2025年4月23日20時43分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250423/k10014787621000.html
第4章 深刻な人道危機 米軍とフーシー派の戦いは一端終了。
4月27日、世界食糧計画(WFP)は、3月2日にイスラエル軍により、ガザへの支援物資停止から8週間受けて、現状を報告した。ハンユニスのナセル病院に入院する9歳のウサマ・ラカブ君は、体重9kgにとどまる。栄養失調で食べ物を吸収できず、げっそりとやせこけていた。平均5歳児の体重は13kgである。母親のモナさん(28歳)は、「このままでは息子の命が亡くなってしまう」と悲痛に叫んでいた。WFPは、支援をしてきたパン店の全25店舗について、3月末で小麦と燃料の枯渇で閉鎖をする。4月25日、ガザの備蓄食料が枯渇したと発表した。南部ハンユニスの食料配給所には、朝から人々が列を作る。1日に5万〜7万人が豆やパスタの入ったスープを受け取っていた。朝8時に並んでも、午後にようやく洗面器一杯の食料を与えられるという。
イスラエルの治安閣議は25日、「支援物資を近い将来、ガザに入れない」と引き続き検問所の封鎖を続ける決定を下した。国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のフィリップ・ラザリーニ事務局長は危機感から声明を出した。「人為的で政治的動機による飢餓だ。物資搬入を求める呼びかけは無視されている」
イスラエルは、ハマスの戦闘員に食料がいきわたる可能性から、検問所を封鎖している。ハマス殲滅を優先して、民間人を無視していた。
写真=ハンユニスの食糧配給所に殺到する人々 掲載元 読売オンライン 2025年4月28日19時16分付 読売通信員撮影
https://www.yomiuri.co.jp/world/20250428-OYT1T50117/
5月3日、イスラエルメディアは、予備役数万人を動員すると報じた。自国の安全保障政策のうえで、緩衝地帯を拡大し、ハマスの掃討作戦を強化する。
5月4日の治安閣議では、ガザ占領計画を承認する。あわせてガザに暮らす210万人を移転させると表明した。検問所については、民間企業による支援物資の搬入は概ね認める。なお国連機関は「本的な人道主義の原則に反している」として、非難声明を出す。
イギリスやEUは、イスラエルの軍事作戦の拡大に対して、明確に反対の立場を示した。アメリカのトランプ大統領は、イスラエルについては触れず、ガザ地区の食糧支援を約束すると、表明した。5月9日に、アメリカ政府は、イスラエルが、ガザ地区への支援物資を民間企業に委託する仕組みを準備中だと認めた。アメリカのマイク・ハッカビー駐イスラエル大使が記者団の前で語った。IDFによる直接支援物資の配達や分配への参加を否定するものの、周辺を警備する内容が含まれていた。国連機関は、支援物資の提供と引き換えに、軍を導入する行為だと指摘し、再度計画への参加を否定した。ガザ地区内では需給の逼迫により、食料品価格は急騰した。ガザ市では25キロ入りの小麦粉1袋が415ドル(約6万円)で販売されていた。OCHA(国連人道問題調整事務所)によると、2月末から30倍に値上がりしている。3月2日から、検問所を封鎖して、食料品を縦にとり、軍の動員を正当化した。住民の頼みの綱となる停戦交渉はもはや頓挫している。
5月4日の治安閣議の決定事項について BBC NEWS JAPAN 2025年5月6日付
https://www.bbc.com/japanese/articles/cly14ev15dlo
5月9日の民間企業を通じた支援物資の搬入について BBC NEWS JAPAN 2025年5月10日付
https://www.bbc.com/japanese/articles/cn84jjngd5po
ハマスの方は、停戦再開の道筋を探っている。5月11日付、米国人男性の人質を解放すると表明した。写真を公開し、怪我なく、過ごしている様子を伝えた。米国籍を持つイスラエル兵のエダン・アレクサンダー氏と身元も明かした。AP通信などによるとハマスは、米政府とここ数日、連絡を取ってきたと説明している。トランプ氏が13日からサウジアラビア、カタール、UAEの歴訪にあわせて、妥協を示してきた。イスラエルの戦時内閣へ、停戦へ圧力をかけてもらう狙いがみえる。ハマスの戦闘員も、物資や弾薬不足により、厳しい状況が浮き彫りになった。ウクライナ情勢と同じく、トランプ大統領の本気度も問われている。
イエメンから奮戦するフーシー派にも動きがあった。5月4日朝方、イスラエルのベン・グリオン空港の主要ターミナル付近にて、フーシー派が発射したとみられるミサイルが着弾した。イスラエルのメディアによると、死亡者は出なかったものの、爆発時に巻き込まれた4人が負傷し、2人が避難中に怪我をしたという。幸いにも重症者は出はなかった。ネタニアフ首相は、黙って見過ごすことはない。直ちに報復宣言した。
詳細 ベン・グリオン空港でのミサイル着弾 掲載元 BBC NEWS JAPAN 2025年5月5日付
https://www.bbc.com/japanese/articles/cx25rywl71eo
5月6日に、イスラエル軍はイエメンの首都サヌア空港を空爆した。その他発電所やコンクリート工場がターゲットになった。地元メディアによると、死亡者3人、負傷者35人が出た模様である。前日の5日にもフーシー派が使用するホデイタ空港を空爆していた。
詳細 イスラエル軍の空爆 NEWS WEB 2025年5月7日午前2時45分
フーシー派の戦闘能力を支えるのはイランである。一説によると、紅海を挟んで対岸のソマリアの一部地域を支配するスンニー派の武装組織アル・シャバブと協力関係も指摘されている。紅海の船舶を取り締まるうえでは、情報網が必要になる。紅海を挟んで両岸から、目を光らせることにより、イスラエル行きの船舶の発見が容易になった。5月6日のことである。アメリカのトランプ大統領が、フーシー派が「屈服」したとして、攻撃停止命令を出した。アメリカとフーシー派の間をオマーンが仲介を担っていたという。オマーンのバドル・アルブサイディ外相は、「航行の自由と国際輸送の円滑な流れが確保される」と成果を強調した。
詳細記事 米軍のフーシー派への攻撃停止について BBC NEWS JAPAN 2025年5月7日付
https://www.bbc.com/japanese/articles/c5y6y0erx6no
米軍自身も、フーシー派の関連施設の空爆により、国際的に非難されていた。先日4月27日に、サアダ空港を爆撃した際、罪のない68人のアフリカからの渡航者を巻き添えにしてしまったのである。国際的批判を交わすためにも、幕引きを図っていた。仲介役のオマーンは、速やかに紅海を航行する船舶の安全性を確保するべく、協定にはイスラエルへの軍事行動を外していた。イスラエルに連帯を示すトランプ大統領だが、迅速な解決を優先した。
写真=ハドル・アルブサイディ外相 アラブデイリー 2025年1月31日付
https://arabiandaily.com/openness-neutrality-and-mutual-respect-shape-omans-foreign-policy-omani-fm-affirms/
5月12日、ハマスに捕縛されていた唯一のアメリカ人国籍の人質、イスラエル兵のイダン・アレクサンダー氏(21歳)が、国際赤十字に身柄を引き渡された。イスラエル国内に入り、待ち受けた家族と再会を果たしている。精鋭歩兵部隊の一員としてガザとの境界で警備に当たっていた際、ハマスの戦闘員に捕縛された。IDFは円滑な引渡しのため、数時間軍事行動を止めていた。ガザに残る人質は遺体を含めて58人である。
詳細 イスラエル兵の解放 BBC NEWS JAPAN 5月13日付
https://www.bbc.com/japanese/articles/c9q0lrnzp9qo
ハマスとイスラエル軍の戦いは、聖地エルサレムを巡る軋轢から始まった。犠牲になるのは、争いとは無関係な民間人である。イスラエルの戦時内閣が目標に掲げるハマス壊滅が実現したとしても、アラブ人の間の潜在的な反ユダヤ感情は募っていく。泥沼化した衝突は、解決のめどが立っていない。
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