今回は、昭和から平成に一般家庭で普及したVHS、また秘かにディスクメディアとして世に登場し、いつのまにか姿を消したレーザーディスク(通称LD)についても紹介する。
前回 記録メディアについて 2024年11月27日付 昭和時代の懐かしきVHS ベーター・マックスとの規格争い 船井電機の破産について 録画メディアの今後の行方
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1988885432&owner_id=32437106
・第1章 VHSが再生できなくなる
・第2章 ヴィデオディスク規格 LD 対 VHDの争い
・第3章 4K対応メディア ULTRA HD Blue -ray登場 記録文化の衰退
第1章 VHSが再生できなくなる。
昭和から平成にかけて、どの一般家庭でも所有していたビデオデッキは、2016年に船井電機の生産を最後に、販売終了した。家電量販店でも平積になっていた録画用VHSテープは、購入者の一般家庭や企業、団体のオフィスの中で、細々と生き残っている。一般家庭では、子供の成長過程を記録する手段としても使用されていた。その懐かしい映像が詰まったビデオテープは、再生機器がなく、置きっぱなしであるケースが多い。今家庭用VHSを、ブルーレイディスクを始め記録メディアへのダビングサービスを受け付ける業者がにわかに注目を浴びている。VHSテープは、高い温度や湿度の影響により、カビがはえやすい。また使用頻度に応じて、テープが伸びることにより、ノイズの発生にも繋がる。VHSテープの寿命は20年から30年、一般家庭では1990年代から2000年代前半に広く購入された。2000年代半ばには、VHSからDVDへと移行が進んだ。一般家庭の残存テープは、既に20年から30年経過し、経年劣化により、再生に不具合を生じるケースが考えられる。
写真掲載元 カメラのキタムラ 2024年8月20日付
https://www.kitamura.co.jp/news/2024/20240820_01.html
VHSの再生機は、船井電機が2016年に生産終了を発表して以降、市場に出回っていない。部品の保有期間が8年であることを踏まえると、2024年まで修理を含めアフターサービスを受け付けていた。VHS再生機器の最後の砦だった船井電機は、2024年10月24日には東京地裁にて破産手続きをした。現在VHSの再生機器は、中古市場が頼りになる。中古品を購入しても、既に年数の経過から劣化は避けられない。今思い出の映像を、デジタル移行する必要に迫られている。船井電機の倒産は、VHSテープの再生危機に拍車をかけた。従って、カメラのキタムラでは、VHS再生機器のアフターサービスが2024年で終了する事実から、思い出の映像をデジタル移行する必要性を訴えた。「ビデオの2025年問題」として、独自のダビングサービスを展開する。今メディアでもひそかに取り上げられるようになった。
第2章 ヴィデオディスク規格 LD 対 VHDの争い
ビデオデッキ、いわゆるVHSは、1975年にテレビ番組を録画できる媒体として市場に登場する。当時VHSの開発元Victor社と、よりソフトのコンパクト化に成功したSONYが生み出したベーター・マックスとの間で、激しい規格競争が繰り広げられた。5年後の1980年には、Victor社のVHSが優勢になり、ベーター・マックスは徐々に姿を消していった。1983年に毎日新聞が「VHS陣営の勝利」との見出しで報じたことにより、事実上規格争いに決着がついた。
ネットが普及する前、テレビ番組を録画する文化が根付いていた。現在は、You tubeやNet flix、Amazonプライムを初め、ネットコンテンツの充実化により、録画メディアの受容は無くなりつつある。VHSにとって変わる存在として普及したブルーレイレコーダーに内蔵されるハードディスクの大容量化、テレビのハードディスクの内臓が、録画メディアの衰退に拍車をかけた。実際一時視聴であれば、HDDで事足りる。購入者減に伴い、家電量販店内でも、ディスクメディアの取り扱いスペースは減少した。
一般家庭で一家一台はVHSデッキを所有していた時代、忘れ去られつつある規格が出ていた。直系30cmのディスクの表、裏に映像を記録できる「Laser Disc(通称LD)」である。標準録画モードで、片面60分、裏面60分、合計120分になる。2時間番組を記録する際、録画が途切れてしまう欠点があった。西暦2000年に普及したDVDは、標準記録モード120分、全て片面で記録が実現した。
LDは、開発元はPIONIA社である。先にアメリカ市場へ参入し、1979年2月に業務用として販売する。日本では、翌1980年6月に家庭用製品として発売した。1980年代に登場した際、JVCケンウッドが開発したVHDとの、次世代ビデオディスク規格争いを繰り広げていた。LDは光ディスク、対してVHDはレコード盤形状である。従って針で盤面を削ることにより、磨耗する。一方のLDディスクは、盤面を読み込むタイプで、基本無劣化保存が可能だった。
写真=LD(左側)とVHD(右側)掲載元 古いハードに囲まれて 2019年10月26日付
https://lancelot2.c.blog.ss-blog.jp/_images/blog/_293/lancelot2/DSC01878.JPG
1983年当時LD陣営にはパイオニアのみ加わっていた。翌1984年以降、針で盤面を削るVHDから、より再生がシンプルなLD陣営側が、パイオニアの技術提供により、優勢に立つ。東芝、三洋電機、三菱電機、日本楽器製造、日本電気ホームエレクトロニクスが、VHDから鞍替えした。1985年には、ビデオディスク規格において、LD側が、VHD側を上回り、事実上勝利する。
1980年代から1990年代、一般家庭が録画するメディアは、明らかにVHSだった。画質の物差しとして、水平解像度は、LDの450本に比べて、VHSは240本にとどまる。ビデオディスク規格のLDが普及しなかった最大の要因は、販売戦略の失敗にある。1993年までLDは、開発元のPIONIAの意向により、販売専用商品として売り出されていた。従って、録画用ソフトとしての販売を禁じていたのである。もう一つは、VHSデッキよりも販売価格が高くて、重量があったことにある。1993年にLDのレンタルソフト解禁以降も、市場では各社販売用映像作品について、軒並みVHSを採用していた。LDのソフトは、一般家庭用の学習ソフトをのぞき、極端に少なかったのである。現在LDは、アナログからデジタル移行への過渡期の製品だったと認識されている。
1996年には、DVD-Video規格が登場すると、VHSに変わる存在として定着した。DVDレコーダーの登場は西暦2000年、第一号機はPIONIA社だった。
1999年までにSONYやパナソニックは、LD専用プレーヤーの生産を終了した。2009年1月14日に、最後の生産メーカーであるPIONIAの撤退表明により、ビデオディスク規格LDは市場から姿を消したのである。
2020年11月パイオニアは、部品調達の困難を理由に、アフターケアサービスの終了を発表した。z世代の間では、LDの存在さえ知られていない。秘かにVHSとベーター・マックスとの規格争いの裏で、次世代ビデオディスク規格競争が起こっていた。今その存在は、昭和生まれの間にさえ忘れ去られようとしている。
第3章 4K対応メディア ULTRA HD Blue -ray登場 記録文化の衰退
現在記録メディアの最新規格は、第3光ディスクであるブルーレイの進化版、4K映像を記録できるULTRA HD Blue-rayである。2015年11月に、開発元のPanasonic社が、ULTRA HD Blue-rayの再生に対応できる機種「DMR-UBZ1」を発売した。同機種は通常のハイビジョン映像は、録画機能が備わっている。
写真=ULTRA HDDの宣伝 パナソニック
https://panasonic.jp/diga/uhd.html
ただし、新たな規格が出ても、一般家庭で普及していない。人々の間では、ハイビジョン映像でも満足度が高い。また相対的にテレビの視聴時間が下がっている影響からか、レコーダーを買い換える必要性も感じていないのである。
記録メディアは、各社規格争いを繰り広げるごとに、進化を果たしてきた。今海外では、メディアに録画する文化さえ失われ、クラウド保存が一般化した。録画できるメディアは、日本のみ残っていくとみられている。インターネットの普及により、我々の生活スタイルそのものまで変わってしまった。
■ビデオテープ「2025年問題」第二弾…残しておきたい、それぞれの“あの時”とは?【THE TIME,】
(TBS NEWS DIG - 12月18日 07:03)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=266&from=diary&id=8136761
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