今年、2024年6月に劇場公開された、押山清高が監督・脚本・キャラクターデザインを担当した映画『ルックバック』が、早速アマプラで配信になっていたので観ました。
いや、この映画、最高です!劇場公開当時から、クリエイターの方を中心に高評価がされているのを知っていたのですが、これは劇場で観たかったですね!劇場で観て興行成績に貢献したかったし、リアルタイムでの感動を共有したかった!!
それくらい良い作品でしたし、感動しました。
もう、冒頭から知らずに涙が流れて止まらなかったです。
何にそんなに感動したし、泣けて泣けて仕方なかったのかと考えると、やはり、周りから何を言われようと、自分にはこれしか無いと若くして思い決め、ひたすらそこに打ち込む姿に、自分が成し得なかった何かを重ね合わせてしまい、心が揺さぶられてならないのです。
藤本タツキの描いた原作漫画も即購入して読みましたが、主人公である藤野歩が、一心不乱に漫画に打ち込み続ける姿を丹念に描いている、映画版の方が私としては好きかなと思われました。
藤野が漫画家として成功していく過程で、どれほどの努力があったのかを伺わせるような描写も、映画版の方がしっかり描かれていましたし、
何よりも、藤野と京本の二人が街で遊ぶシーンで、手を引いて前を走る藤野が早すぎて、ふと京本が藤野の手を離してしまいそうになるカットには、ドキッとさせられました。その後に京本が藤野とは別の道を行く宣言をするシーンになるわけですが、既に、そのカットで二人の未来が暗示されているのがイイ!
その中で最も、問答無用で劇場版の方が良いと思わされたのは、漫画を止めてしまっていた小学校を卒業する日の藤野が、京本の言葉に鼓舞されて雨の畦道を走るシーンに尽きるのです!!
原作漫画の、躍動感溢れる見開きページいっぱいに描かれた藤野も凄く良くて、これこそ漫画表現だな!と思わされましたが、
そんな漫画をアニメーションに昇華した表現があまりにも素晴らしくて、これは事件だぞと思ったわけです!
で、エンドテロップを観ていたら井上俊之が原動画の筆頭に名前が出てきて、なるほど!井上俊之が原画ならばあの作画も!!と思ったのですが…
その後、監督である押山清高と井上俊之の二人が出ているインタビュー動画(1時間44分ある、なかなかのボリュームで実に興味深い内容でした)を視聴したところ、このシーンは押山清高監督が自ら描いたとのことでした。あの自由奔放な動きは、監督自ら原画を描いているからこそだと。
このインタビューでは、井上俊之と押山清高が互いにリスペクトしている様子が伺えて、本当に良いインタビューでした。「ルックバック」の製作裏話もたっぷり聞くことがきますし。
押山清高と言うと「電脳コイル」の作監の仕事であったり「フリップフラッパーズ」の監督等で有名ですが、私が連想するのは「スペース☆ダンディ」の第18話です。
第二期の「スペース☆ダンディ」は、第一期の成功に気を良くしたのか、第一期以上に各話監督の個性が爆発していて、この押山清高の第18話も自由に「らしさ」が出た感じでした。どことなくヨーロッパ映画のような雰囲気であったり、映像も「エル・トポ」のようなカルト・ムービーの風があったりと、自由すぎてとても好きな話しでした。
先のインタビューでも言ってましたが、藤野を「映画好き」と設定したのはアニメオリジナルとのことですが、そのために画面の情報として藤野の部屋に映画のポスターを配したと言うのは、同じく映画好きの私としては嬉しい演出です。
いかにもな「バタフライエフェクト」のポスターについての言及がネットには多いようですが、個人的には「ビッグウナギ」が分かりやすく「ビッグフィッシュ」だろうなと思ったところが気になりました。と言うのも、先に挙げた「スペース☆ダンディ」18話のタイトルにも「ビッグフィッシュ」が使われているからです。ティム・バートン監督作品はそれほど好きではない私ですが、この「ビッグフィッシュ」は好きなので、特に思い入れがあるのです。
あと、そもそも物語の展開には、きっとタランティーノ監督の「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」の影響もありますよね。そして、2019年の「京アニ事件」も。
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」で、タランティーノが救われない事件の救済を自分の作品にこめたように、あの忌まわしい京アニの事件に対する救済をこの作品にはこめられているのではないかと思います。救済されていませんが。でも、祈りはこめられていると。
しかし、いろんな解釈があると思いますが、私は、最後に戻ってきた4コマ漫画は、無意識のうちに藤野が描いたと思っています。
つまり、救済はそこには存在しないわけです
でも、藤野は、再び漫画を描くようになります。そこでまた号泣です。
2024年は、山田尚子監督の『きみの色』で決まりかと思っていましたが、この『ルックバック』も本当に良い作品でした。こうして映画史に残るような名作がどんどん生まれるの、本当に嬉しい限りです。
それでは、またです!!
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