阿炎に何もさせなかった「強さ」で賜杯の大の里。

■新小結・大の里が史上最速Vの快挙！幕下デビュー7場所目で涙の初賜杯、本割で阿炎を圧倒し12勝3敗【大相撲夏場所】
(TBS NEWS DIG - 05月26日 17:32)
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大相撲五月場所千秋楽、昨日三敗で単独トップに立った西小結の大の里が四敗で追走の関脇阿炎を押し出しに退け、12勝3敗で初優勝。初土俵から7場所目での賜杯は幕下付け出しの力士では同じ石川県出身の第54代横綱輪島の15場所を大きく更新する史上最速の優勝、また、新三役での優勝は、昭和32年の五月場所で新小結だった安念山（後の関脇羽黒山）以来、67年ぶり2人目の快挙達成となりました。
それにしても、テレビ桟敷で観戦していて、大の里の強さは相当なものだと感じました。立ち合い、阿炎の両手突きをものともせず、阿炎を起こして前に出て、正面土俵に追いやって勝負あり。敗れた阿炎は「圧力で押し負けました。やっぱ強かったですね。速かったというか重かった」と敗戦の弁。「強さと重さ」が、大の里の土俵を支えていたと感じます。　表彰式での優勝インタビューでは、
−今の気持ちは
「一月場所、三月場所と惜しいところで優勝を逃した。チャンスをものにできてうれしい」
−優勝した瞬間は
「歓声がすごくて優勝したんだなと、改めて思った」
−土俵下ではどんな思いだったか
「昨日、親方から“優勝しても喜ぶな”と言われていたので、冷静に冷静にと」
−お父さんが涙を流していたが
「うれしいですね」
−1年前に入門して、1年前の春まで大学生だったが
「1年前に優勝は想像していなかった。うれしいです」
−改めて賜杯を抱いたときの気持ちは
「本当に、一月場所から幕内優勝が夢から目標に変わった。目標達成できてうれしい」
−今日はどんな気持ちで臨んだか
「冷静にいつも通りに朝を迎えた。国技館に来るのもいつも通りだった」
−新小結の場所だったが
「番付が上がった中、自分の中で初めてのことだらけ。その中でいい成績を残せて良かった」
−石川県の方々も喜んでいると思うが
「こうやって優勝する姿を石川県の方に見せられてうれしいです」
−新三役で2桁勝利。大関昇進の起点にもなったが
「これからしっかり親方の言うことを守って、上へ上へと精進したい。本当に強いお相撲さんになっていきたい」
とのことで、インタビューでの冷静な語り口も含め、最後まで鮮烈な印象を残した優勝でした。八角理事長（第61代横綱北勝海）は、今日の大の里の一番について「突っ張らしても全然、動じなかった」とコメント、今場所の土俵、更には、今後については「内容が立派。ラッキーで勝った優勝じゃない。完璧な相撲が多かった。素質はあったが精神的にもよく頑張った。これから先がある。駆け上がってほしいな」とした上で、大関、横綱への昇進への期待を「一気に？　そうですね。チャンスだし。今年中？　もちろん。1年後は、もっと上に行っているかもしれない。そう感じさせる内容だった。優勝も立派だけど内容も立派。記録もまだまだ塗り替えていってほしいね」と、期待を寄せていました。また、優勝争いに関係なくなった結びの大関戦が終わると、琴櫻と豊昇龍について「この2人にとっても大の里は『下の者』というより、もう『ライバル』だろう。これから優勝争いをするだろう」と、刺激や危機感を感じての土俵の活性化を期待するコメントを寄せ、まさに、見事な優勝だと感じました。
元日の地震の被災地たる石川県の出身力士としても注目された一方、場所前に発覚した部屋の10代の若手力士に飲酒をさせた一件が報じられ、部屋の師匠（第72代横綱稀勢の里）の行動も問題視されたこともあり、今後は、“負のイメージ”を脱却させるような活躍をも期待したいところです。
さて、今場所の三賞ですが、三賞選考委員会の結果は、
殊勲賞：大関以外の優勝力士
敢闘賞：勝って10番に乗せることを条件に、前日（十四日目）で9勝5敗の東前頭十枚目の湘南乃海と新入幕で西前頭十四枚目の欧勝馬
（欧勝馬が金峰山を寄り切りで制した一方、湘南乃海は明生の寄り切りに屈し、欧勝馬が受賞）
技能賞：大の里
となり、大の里は殊勲賞と技能賞の獲得となりました。
その他。十両の優勝は西六枚目の若隆景が対馬洋を押し出しで制して14勝1敗で優勝し、来場所の帰り入幕の可能性が高まりました。また、決定戦となった三段目はモンゴル出身の西87枚目旭海雄（24歳、大島部屋）が、同じモンゴル出身の佐田ノ輝を寄り倒しに仕留め、6勝1敗同士となった序ノ口は東5枚目の野田（18歳、藤島部屋）が約1分もの長い相撲の末に聖白鵬を下手投げに仕留めて優勝しました。