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2024年05月18日15:02
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山登りはじめました＃341「残雪の涸沢カールに行ってきた」その��
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続きました。
◆2日目【活動時間/2:30、行動時間/2:20】
5:00/起床⇒5:30/朝食⇒7:15/涸沢ヒュッテ(標高2309m)幕営場へ移動⇒
7:35/お山歩スタート、お花畑を直登してザイテングラート右側のルート
へ⇒9:20/ザイテングラートの取り付きと獅子岩の中間点(標高2600m)で
折り返し⇒10:05/涸沢ヒュッテ(標高2309m)に帰還
※途中、小休止×2回で計20分
◆写真はYAMAPへ↓
残雪の涸沢カールでお山歩
https:/
おはようございます。涸沢逗留2日目の朝です。例年だと北穂高岳か涸沢岳へのアタックの日なんですが、今回は登るんだか登らないんだか、イマイチはっきりしないまま朝を迎えました。というのも昨日ね。。涸沢ヒュッテに上がって来る途中に見たデブリも勿論なのですが、とにかく北穂沢がねえ。。
長野県警の事前情報から北穂沢で4月中旬に大規模な全層雪崩が発生したのは知ってましたが、実際にその爪痕を見ると・・・。もうね、めっちゃ岩が露出しちゃってるんですよ、特に下の方。ゴルジュの辺りはもう、全く雪が無くなっている。その下も一応、雪は残っているけど、土が出ていて真っ茶色なの。上部は遠くて良く目視出来ないけど、インゼル近辺も例年よりM字型の岩がかなり大きく見えるよ。これって相当、岩が露出しているってことだよね？多分、インゼル自体も周囲にシュルンドが出来てるんじゃないかな？昨年登った梅さん達の話を聞くと、昨年の残雪量でもインゼルの周りにはシュルンドが出来ていたって話だし。
それとね、ちょうど上高地から歩き始める時、ニュースで北穂沢で滑落した50代の女性が死亡した、って知りまして。これ、滑落したのはその時ではなく4月の下旬なんだけど、日程的に雪崩のあった2週間後に発生した事故なのよ。北穂沢上部で滑落して下の岩にぶつかって意識不明のまま病院に収容され、それが昨日の朝に亡くなった、って内容でさ。
で、今。目の前の北穂高岳を見るとどうよ？毎年、梅さんが言ってたことを思い出す。「ここで滑落したら、ゴルジュの辺りまで止まらないからね！」北穂沢の上部で滑落したら止まらないって場所。インゼル近辺だよね。あそこは斜度が50度もある雪壁ですから。そこから数100m滑落して通常ならゴルジュの辺りで止まる、って言うけど、そのゴルジュが完全に岩が露出してるんだもん。雪と氷のツルツル滑り台を滑走して露岩帯で挽肉になるコースだよ、そりゃあ死ぬって！
もうね、朝にこのニュースを見て、夕方にカールから北穂沢と北穂高岳を見上げて、メンバー一同「こりゃあ今回、北穂高岳アタックという選択肢は絶対ないわ！」ってなったのねん。で、「じゃあ明日は涸沢岳の方に行きますか」となって、今朝この時に至ります。ちなみに誰も「登頂しよう」とは言わない。一応、「行けたら行く」とは話していたけど、北穂を見てモチベーションが下がったのも勿論あるんだけど、涸沢岳の方もこれ、かなり危ないんじゃないか？
昨年、自分は登頂している
コレ↓
★山登りはじめました＃311「涸沢岳に行ってきた」その��
https:/
★山登りはじめました＃312「涸沢岳に行ってきた」その��
https:/
★山登りはじめました＃313「涸沢岳に行ってきた」その��
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★山登りはじめました＃314「涸沢岳に行ってきた」その��
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ので何となくわかるけどまず下部。具体的にはお花畑の台地に上がる斜面、めっちゃブッシュが出てる。そしてその更に下、つまり涸沢ヒュッテの幕営場までの区間は例の大雪崩のデブリがてんこ盛りだぜ！ザイテングラートも昨年より明らかに岩が露出しているYO！ルート的には今年もあずき沢ではなく、ザイテンの北側にトレースが沢山付いているが、途中からザイテンの上に乗るんですよ。昨年の日記にも書いてますが、ザイテンの上って要は岩尾根の上ですからね、雪が浅いのよ。
昨年の時もザイテンの上は雪の数cm下にはもう、ハイマツが埋まっていて何度もアイゼンの爪を引っ掛けそうになるし、ピッケルだってシャフトを深く突き刺せないから、よろけたりした時にスゲー怖いのね。昨年は先に上に上がっていたハッシーから色々と事前に情報をもらっていたけど、今回は実際に行ってみるまで何もわからない。気温も昨年より明らかに高いし、登りは良くても帰りは雪が融けてグズグズになってると思うのねん。
昨年だって復路は緩んだ雪がグズグズ過ぎて自分もザイテンから降りる時にちょびっと滑落しかけたし、自分らが登頂した翌日の早朝にはザイテンで滑落した人が死にましたからね(朝、下山しようとしたら県警のヘリが遺体回収に来ててさ。下山してからのニュースで後から知ったんだけどね)。涸沢岳は北穂高岳と比べたら相対的に易しいってだけで、絶対的には決して難易度が低い、ってわけじゃあないんだよ。どちらも滑落したら充分死んでしまうし、雪崩だってどっちも巻き込まれる可能性がある。
まあ、昨日は夕方、テラスで飲みながらアタック予定の自分・弟氏・O野さんの3人でそんな話をしてましてね。「いやいや、せっかくだから登頂しようぜ！」なんて話にはならず、「山歩でいいんじゃね？」と何となく合意したのでした。ザイテングラートの取付辺りまで登ったら、後は日照のあるうちにテラスでダラダラ飲もうぜ、って。と言うのも、昨日は14時過ぎから急に気温が下がって外で長居が出来なかったので。つまり荷揚げした生食材を一切、消費出来なかったので、本日はそれらを全て腹に収めてしまう必要があるのです。これは正直、登頂よりも優先度の高い項目っすわ。
さて、少し時間を巻き戻すよ。朝は5時に起床、朝食は5時半〜の1ターンのみ。7時にテラスの先に集合・出発なので、そんなにノンビリはしていられない。コンタクト入れたり日焼け止めヌリヌリしたりして、さあ、後はウンコしなきゃ！って時にタイミングが悪かったのか、トイレが大渋滞！そして今回は荷物整理にも手間取ってしまった。山歩だけなら手ぶらでも良いんだけど、万が一「ピークアタックするかも」って可能性を考えたら、やっぱりちゃんとザック背負って行くか、ってなって部屋を出る前にパッキングをし直したりしてね。
予定時刻を15分程オーバーしてテラスに出ると、一番外側のテーブルで待機していたHGさんが
「俺氏さん、弟氏もO野さんももう、先に行っちゃったよ！待ってられないってさ。Hりさんも何か自分のペースで歩きたい、って言って先に出て行っちゃったよ！」
と伝えられる。靴紐を締めてアルパインゲイターを装着したらHGさんの座っているテーブルに移動する。今回、HGさんは最初からずっとヒュッテのテラスからうちらの行動観察をする予定なのだ。双眼鏡ではなく、光学20倍ズームのコンデジを代わりに持参した模様。これでヒュッテのテラスからアタックする自分達3人と、別行動のHりさんを見守る手はずなのです。無線で会話しながらね。ちなみに今回、無線は予め内輪で決めておいたサブチャンネルを使用することにしており、HGさんからその周波数を確認する。
雪の上でアイゼンを装着したら、QSOの確認をして自分も歩き出す。どうせ単独行動だし、しばらく周囲を散策してみることにした。まずは幕営場の周辺を涸沢小屋方面に進んで行く。すると、昨日宿泊者の間でも話題になっていた「謎の僧侶(仮称)」が立っているのを発見！
本物の僧侶かどうかはわからないし、どこの国の人なのかもわからない。でも確かに昨日、喫煙所で一瞬見かけた通り、「ビルマの竪琴」に登場するようなタイとかミャンマーとかにいる仏教徒スタイルの人がいるじゃねえか！どうもテント泊のようだ。近づいてみると、ホントに布切れを身体に纏っているだけだよ、腕とか完全にノースリーブ状態。防寒とか全く考慮してないみたいだけど、大丈夫なのか？衣の色はオレンジではなく茶色っぽいので、もしかしたら僧侶じゃないのかも知れないけど、やはりどう見て東南アジア圏の仏教徒なビジュアルだよ。
ちなみに足回りはチェーンスパイクでした。2012年の初めての富士山で遭遇したサラリーマンスタイルの中国人にも驚いたけど、これもそれに引けを取らないぶっ飛び具合だよ。コスプレじゃないとは思うんだけど、会話したワケじゃないので詳細は結局の所、不明なんですがね。
360度、ぐるっと転回して一通り写真を撮ったら、ザイテングラートを目指して歩き出す。とは言っても、どこを歩いてもデブリの畝を乗り越えて行かないとダメっぽい。この畝が一つ一つが高さ数メートルはあるんだよね。人が乗っても崩れることのない固さ。雪というかこれってもう、氷でしょ！絶対に素手じゃ掘り起こせない。こんなのに飲み込まれて下敷きになったら、そりゃ死ぬわいな。雪崩、恐ろしいぜ！で、デブリを乗り越えて行くと3人組がアバランチゾンデとアバランチビーコンを使って捜索の訓練をしてました。えっと、訓練だよね？まさか本当に誰か行方不明者が埋まっていて、捜索中なんてことはないよね？うん、無いってことにする！
お花畑の台地に取り付くと、HGさんから無線が来た。
「俺氏さん、そこまさか直登するの？」
「え、ダメ？」
「いや、良いんだけど、O野さんたち3人はその台地を上がった上にいるよ、そこからじゃ見えないと思うけど」
「あ、そうなんですね。確かにここからじゃ何も見えないや」
「Hりさんも途中まで一緒だったみたいだけど、先に降り始めてるみたい」
「了解です。また何かあったら無線飛ばして〜」
うーん、無線。便利や。この界隈はスマホはauしか電波入らんからなあ。みんなキャリアはバラバラだし、最初から連絡は無線で行うのが楽で良いよ。カールは地形的に稜線に出るまではどこからもCQが入らないので、メインチャンネル使っても良いんだけど、まあそれはルール違反ってことで今回は最初からサブチャンネルを設定したんだよね。CQ入らないんだから、サブが混線することもないので、気軽に会話が出来ますもん。
台地の斜面はブッシュが顔を出している辺りから左斜め上、つまりあずき沢の方向にトラバースの踏み後が付いてる。直登すると斜度はともかくブッシュを潜ったり跨いだりしないといけないので、ここは素直に斜登高しますか、とトレースに入るとHりさんから無線が来た。
「俺氏さん、ちょっと降り方、教えて！」
「Hりさん、どこにいます？」
「俺氏さんの右上！涸沢小屋方面へトラバースするトレースにHりさん、いるよ！」
とすかさずHGさんから無線が。そうか、テラスから全体を観察して各メンバーの配置が俯瞰出来るからこそのこの芸当か。AWACSから情報と指示をもらう戦闘機パイロットみたいで面白いなあ。で、進行方向と逆方向、右上を見上げると、あ！いた！Hりさん発見！
「おーい、Hりさん！目視したよ〜！見えます？Hりさんから見て右下っす！」
「あー、ちょっとこれ、どうやって降りたら良いの？教えて〜！」
「今から行くので、ちょっと待ってて！」
「いや、口頭で言ってくれれば良いよ、わざわざこっち来なくても大丈夫！」
ところが全然大丈夫じゃない様子。台地の斜面にもたれかかるように座り込んだまま動かない。いや、正確には動いてるんだけど、立ち上がらずに座ったまま移動している。しかもピッケルの持ち方！両手でシャフトを握っちゃってるよ、ちょっと何やってんの？
「Hりさん、ピッケル！ケインポジションでちゃんとピッケル持って雪に差し込んで！」
ダメだ、何か知らんがパニックになってるみたいだぞ？しかもHりさんが降りようとしているトレースを、下から長野県警山岳救助隊のパトロール2名が登ってくるじゃねえか！このまま放置したら絶対、救助隊に声掛けられてお世話になってしまうぞ。リーダーとしてそれだけは避けなくては。幸いまだこの時間は雪がある程度の固さを維持しているので、急いでHりさんの元へ登って行くことにした。
ちょうど自分が到着するのと山岳救助隊のパトロールが到着するのが同じタイミングだった。さりげなくパトロールの2名に「ご苦労様で〜す！」と挨拶をする。Hりさんも引き攣った顔で挨拶をする。そのまま特に何もなく、パトロールの2名は台地の上に登って行ってしまった。
「Hりさん、どうしたの？大丈夫？」
「ダメ、ここ、どうやって降りるの？」
「え、立って歩いて降りれば良いと思いますが・・・」
「いや、怖くて立てないんだよ〜！」
「は？だってスキー場のゲレンデなら中級レベルの斜度ですよ。いつもスキー場じゃ普通に立ってるじゃん。何で？」
「とにかく怖いんだYO！」
「そしたらまずはピッケル、教えた通りにちゃんと持って！シャフトを雪に刺して！」
よろよろと立ち上がるが谷側にピッケルを構えてる。
「Hりさん、ピッケルは基本、山側に持って！谷側には刺さないで〜！」
するとまた座り込んでしまった。本人曰く、このままズルズルと座って降りるらしいので、後は本人に任せることにした。滑落するシチュエーションじゃないし、ここの台地を降りれば幕営場のデブリの所に出る。HGさんからも目視出来てるし、無線もあるので大丈夫だろう。もし北穂にアタックしていて、下りでインゼル近辺の雪壁でこうなったらそりゃあ確かに一大事だけど、ここならまずもって大丈夫。
ちなみに今朝、部屋で支度している時にHりさん、レインパンツ履かないでゲイターだけで出ようとして、流石にHGさんからも「レインパンツ履け」って言われて履いて出たんだけど、結果的には良かったよね。本人は立ち休憩しかしないから、座らないから、って言ってたけど、座って休憩どころか座って雪の上を降りることになりましたからね。なお、アイゼンの爪を引っ掛けてゲイターに穴を空けてしまったそうですぜ。
さて、堀さんを見送ったら自分も行動再開。当初の斜登高と反対方向に来てしまったので、ここから更に反対方向に再び斜登高で登って行く。程なくしてお花畑の台地の上に出ると、直ぐ先に先行の3人が休憩しているのが見えた。合流して集合時間に遅れた理由と今までの顛末を話し、自分もザックを下ろして休憩に入る。常念山脈の方を見ると、例年雪の少ない時期でも必ず冠雪している常念岳に全然、雪が無いYO！勿論、蝶ヶ岳への稜線も燕岳への稜線にも雪が無い。ホント年々、気温が上昇しているんだなあ、と実感する。
休憩を切り上げて活動再開。時刻はまだ9時前だ。いくらなんでも飲み始めるには早過ぎるよ。お花畑からザイテングラートの取付まではまだ少し距離があるので、もう少し登ってみることに。なお、装備を持参していない瑞YOさんはここまでとのこと。直ぐには引き返さず、ここでうちら3人が戻って来るのを待つとのこと。
O野さんが先行して登り始める。ザイテンの取付を超えると斜度が急になってきた。この辺りは40度弱、と言ったところかな？確実にピッケルが必要な斜度っす。獅子岩の下段部分が真横に見えるくらいの場所でO野さんの動きが止まった。弟氏と二人で追いつくと、
「もう今日はこの辺でいいんじゃないかな？さっさとヒュッテに降りてテラスでビール飲みたい！」
とO野さん。
「どうすんの？これでおしまい？上、行かない？」
と弟氏。うーん、時間的には全然、上行っても良いんだけど、昨年のことを思い出すに登頂するとなるとヒュッテに降りてくるのは早くても14時くらいになりそうだよ、この雪質だと。で、おそらく今日もそのくらいの時間帯から気温が下がるだろうし、下で待ってる2人にも直前での予定変更は申し訳ないから、ここは素直に降りる、で良いんじゃないだろうか？なお、無線でHりさんは無事、テラスのHGさんと合流したことを確認済み。
「そっか、じゃあ今回の山行ではここが最高到達地点だね。標高は約2600mか」
「だね、せっかくだからチームブラザーで記念撮影でもすっか」
「ブラザーチームと言えばバーティカル・リミットのベンチ兄弟じゃね？」
「あー、いたいた、目にキュウリのパックするやつね。あの兄弟、二人とも死んじゃうんだよねえ」
「縁起悪いこと言うなや！本当は登頂したら飲もうと思ってたんだけど、記念にここでちょびっとだけ！」
と、弟氏が年代物のホワイトホースを入れたピューターのフラスコを取り出す。ショットグラスにちょびっとだけ入れて、登頂してないけど二人で乾杯しました。なお、O野さんは休憩せずにトンボ返りで下山を始めてて、既に下で待ってる瑞YOさんと合流、更に下降を進めている。無線でHGさんに夫婦チームと兄弟チームに分かれて下山開始の旨を伝える。
10時過ぎ、涸沢ヒュッテに下山。お山歩(さんぽ)は3時間弱で終了。後は日照のある暖かい時間帯に外のテラスで酒盛り！いやー、一回やってみたかったんだよ、コレ！まあ、毎回やってはいるんだけど時間が短いからね。今回は日中、ほぼフルで使えますから。勿論、途中で各人、部屋に戻って昼寝したりデッキで昼寝したり、テン泊組は日照で雪が緩むのでテントは張り直しに幕営場に戻ったりと、色々と出入りはありましたが。
それにしても涸沢ヒュッテのテラスは快適だよね！酒もわざわざ担ぎ上げてこなくてもビールやハイボール、日本酒に焼酎、ワインも赤白それぞれカップでもボトルでも売ってるし。金で大抵のことが解決できる。そして雪の世界なので天然の氷室よ！ワインのボトルは雪の中に突っ込んでおけば天然のワインクーラーですから、時間が経っても冷たいまま飲めるのです。
午後は前日と同じくらいの時間帯になると、やっぱり飛騨側から雲がやってきて急に気温が低下する。風も昨日より強いかも。適当なところでお開きとし、明日は時間が合えば一緒に下山しよう、ということでテン泊組とわかれ、小屋泊組の自分達3人は部屋へと戻りました。荷物整理をしたら前日と同じ時間から夕食。今日は流石に混雑していて、食事は2ターンに分かれてました。夕食後は肉体的疲労は殆どないけど、ずっと昼前から飲んでたので酔っ払って身体が怠いので、そのまま寝てしまいました。
◆3日目【活動時間/7:10、行動時間/5:10】
5:00/起床⇒5:30/朝食⇒7:10/涸沢ヒュッテ(標高2309m)をチェック
アウト⇒7:15/下山開始⇒Sガレの涸沢寄り地点で小休止5分⇒8:45/
本谷橋(ここで9:20までアイゼン脱着とウェアリング調整のため大休
止)⇒10:05/岩小屋跡を通過⇒10:25/横尾(標高1620m/ここで10:50まで
中休憩)⇒梓川右岸の臨時の迂回路へ⇒11:45/徳沢(標高1562m/ここで
12:25までお昼休憩)⇒13:15/明神(ここで13:30まで小休止)⇒14:25/
上高地バスターミナル(標高1505m)へ帰還⇒タクシーで沢渡駐車場へ
【復路】
おはようございます。涸沢カール逗留3日目、今日は下山の日。朝食は昨日の夕食と同じく2ターンに分かれます。自分らは最初のターンでした。Hりさんが「今日の下山は自分はきっと横尾まで8時間はかかりますよ。だから早く出発しましょう！」と言うのでいつもより気持ち、早めに準備をして7時過ぎには涸沢ヒュッテをチェックアウト。アイゼンを装着したら幕営場へ移動してテン泊組と合流する。
「自分、もう出発していいですか？絶対時間かかるし、みんなに迷惑かけるといけないので」
とHりさん。
「え？ダメですよ。そんな不安な状態で単独行動しちゃダメでしょ？何かあったらどうすんの？」
「横尾まで8時間もかかるわけないでしょ、下りの方が絶対早いから！ピッケル不要な斜度の下りで何言ってるんですか？」
とHGさん。
取り合えず全員で集合写真だけ取ったら、早く動きたくて仕方ないHりさんも居るので、小屋泊組は先に下山を開始することにした。この後、多分、本谷橋辺りでまたテン泊組には追い越されるんだろうなあ。挨拶を済ませて下山を開始する。懸念のHりさんは全然問題無し！サクサクと歩いてるじゃねえか、昨日の行動が嘘みたいだよ！
「いやー、気持ちいいね！マジで気持ちいい！雪は楽しいな〜！」
「でしょ？一体何をそんなに深刻になってたんですか？」
とにかく良かった。要は慣れの問題よ。慣れちゃえばこんなもん。ただ、復路は流石にGW真っ只中ですからね。登って来る人達とのすれ違い待ち渋滞が凄くて、それなりに時間を取られました。それでも9時前には本谷橋まで降りて来て、ここでアイゼンを外して川の水で泥を洗い流してから収納、ゲイターも外して夏山スタイルに。横尾で中休憩を入れたら徳澤でお昼ご飯。14時半には無事、上高地バスターミナルに戻って来ました。
が、上高地がスンゲー人！人！人！過去に見た中で最高の混雑具合でしたよ。なにせバスの乗車待ちの列が河童橋の方まで続いてるんだもん。タクシー待ちの列も物凄い！重たいザックを背負ったまま40分以上、並びました。いやいや、第一候補の日程で動いて大正解でしたよ。第二候補の日程だと、往路も多分、こんな感じの混雑だったかと予想します。
タクシーで沢渡に移動したら、車を回収して一路、塩尻の信州健康ランドへ。風呂⇒ビール⇒焼肉⇒居酒屋⇒風呂⇒寝る、といつもルーチンをそつなくこなし、翌朝はこれまたいつも通り、6時にチェックアウトして帰路へ。途中、談合坂SAで朝食を摂り、午前中には全員、帰宅出来ました。
なお、テン泊チームはSガレ近辺で追い越され、その後一度も遭遇することはありませんでした。テン泊チームは信濃大町の方に宿を取っていたようで、そこでもう一泊してから帰ったようです。
【まとめ】
まずは今回の山行期間中、該当エリアで死亡事故がゼロだったのは良かったです。昨年は3件発生して3人、死亡してますからね(1件は1名死亡、1件は2名死亡の1名重傷、1件は1名重傷、って内訳)。ちなみに死亡事故が起きなかったってだけで、普通に事故は起きてます。自分らのいた期間だと前穂で1件、奥穂で1件ね。どちらも重傷で済んで、無事、ヘリで救助されます(復路の横尾街道で前穂の北尾根上空を長野県警のヘリがずっとホバリングしてたんですが、それがまさにこの事故だったと後で知りました)。
あと今回思ったのは来年のGWのこの時期はもう、登れないんじゃないか？ってこと。残雪期なのに厳冬期並みの積雪量がお目当てでこの界隈に毎年通ってますが、2018年から定点観測を続けて毎年、残雪量が減ってきているのは明らかですよ。本来の意味である残雪期登山、北穂高岳にしろ涸沢岳にしろ、雪岩ミックスのコンディションでは危険過ぎて登りたくないですもん。
このイベントは一人でも「登頂したい！」って人がいれば企画するので、来年もし、Hりさんが「自分もどっちかのピークに登頂してみたい！」と言い出さない限り、次は別の場所に行こうかな、って思ってます。現状、候補としては唐松岳です。八方尾根ルートでピストンね。後立山連峰なら同じ北アルプスでも南部エリアよりはもう少し、雪が残ってるんじゃね？って単純な考えなんですけどね。
それと、上までリフトで上がれるので、初日を移動だけにしてリフトで上に上がって八方池山荘で前泊。翌日、早朝から唐松岳をピストンしてその日に下山してもう一泊、というプランなら2泊3日でかなりコンパクトに出来るんじゃないかな、って。
まあ、来年は来年の風が吹く、ってことで。
■写真解説
�±疎凜�ール逗留2日目は午前中、ちょびっとお山歩したら昼前からヒュッテのテラスで飲み散らかしの食い散らかし！天気も良くて暖かくて、絶景を見ながら飲むビールは最高でした！
�▲競ぅ謄鵐哀蕁璽箸亮茲衂佞�辺りから涸沢ヒュッテ方面を見下ろす。常念岳に全く雪が無いのに驚きましたよ。年々気温が上昇してどんどん雪が少なくなっていってるねえ。
��上高地に下山！美しい梓川と穂高連峰の雄姿！何度見ても飽きない景色よ。しっかし、岳沢も全然雪が無いじゃねーか！
◆2日目【活動時間/2:30、行動時間/2:20】
5:00/起床⇒5:30/朝食⇒7:15/涸沢ヒュッテ(標高2309m)幕営場へ移動⇒
7:35/お山歩スタート、お花畑を直登してザイテングラート右側のルート
へ⇒9:20/ザイテングラートの取り付きと獅子岩の中間点(標高2600m)で
折り返し⇒10:05/涸沢ヒュッテ(標高2309m)に帰還
※途中、小休止×2回で計20分
◆写真はYAMAPへ↓
残雪の涸沢カールでお山歩
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おはようございます。涸沢逗留2日目の朝です。例年だと北穂高岳か涸沢岳へのアタックの日なんですが、今回は登るんだか登らないんだか、イマイチはっきりしないまま朝を迎えました。というのも昨日ね。。涸沢ヒュッテに上がって来る途中に見たデブリも勿論なのですが、とにかく北穂沢がねえ。。
長野県警の事前情報から北穂沢で4月中旬に大規模な全層雪崩が発生したのは知ってましたが、実際にその爪痕を見ると・・・。もうね、めっちゃ岩が露出しちゃってるんですよ、特に下の方。ゴルジュの辺りはもう、全く雪が無くなっている。その下も一応、雪は残っているけど、土が出ていて真っ茶色なの。上部は遠くて良く目視出来ないけど、インゼル近辺も例年よりM字型の岩がかなり大きく見えるよ。これって相当、岩が露出しているってことだよね？多分、インゼル自体も周囲にシュルンドが出来てるんじゃないかな？昨年登った梅さん達の話を聞くと、昨年の残雪量でもインゼルの周りにはシュルンドが出来ていたって話だし。
それとね、ちょうど上高地から歩き始める時、ニュースで北穂沢で滑落した50代の女性が死亡した、って知りまして。これ、滑落したのはその時ではなく4月の下旬なんだけど、日程的に雪崩のあった2週間後に発生した事故なのよ。北穂沢上部で滑落して下の岩にぶつかって意識不明のまま病院に収容され、それが昨日の朝に亡くなった、って内容でさ。
で、今。目の前の北穂高岳を見るとどうよ？毎年、梅さんが言ってたことを思い出す。「ここで滑落したら、ゴルジュの辺りまで止まらないからね！」北穂沢の上部で滑落したら止まらないって場所。インゼル近辺だよね。あそこは斜度が50度もある雪壁ですから。そこから数100m滑落して通常ならゴルジュの辺りで止まる、って言うけど、そのゴルジュが完全に岩が露出してるんだもん。雪と氷のツルツル滑り台を滑走して露岩帯で挽肉になるコースだよ、そりゃあ死ぬって！
もうね、朝にこのニュースを見て、夕方にカールから北穂沢と北穂高岳を見上げて、メンバー一同「こりゃあ今回、北穂高岳アタックという選択肢は絶対ないわ！」ってなったのねん。で、「じゃあ明日は涸沢岳の方に行きますか」となって、今朝この時に至ります。ちなみに誰も「登頂しよう」とは言わない。一応、「行けたら行く」とは話していたけど、北穂を見てモチベーションが下がったのも勿論あるんだけど、涸沢岳の方もこれ、かなり危ないんじゃないか？
昨年、自分は登頂している
コレ↓
★山登りはじめました＃311「涸沢岳に行ってきた」その��
https:/
★山登りはじめました＃312「涸沢岳に行ってきた」その��
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★山登りはじめました＃313「涸沢岳に行ってきた」その��
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★山登りはじめました＃314「涸沢岳に行ってきた」その��
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ので何となくわかるけどまず下部。具体的にはお花畑の台地に上がる斜面、めっちゃブッシュが出てる。そしてその更に下、つまり涸沢ヒュッテの幕営場までの区間は例の大雪崩のデブリがてんこ盛りだぜ！ザイテングラートも昨年より明らかに岩が露出しているYO！ルート的には今年もあずき沢ではなく、ザイテンの北側にトレースが沢山付いているが、途中からザイテンの上に乗るんですよ。昨年の日記にも書いてますが、ザイテンの上って要は岩尾根の上ですからね、雪が浅いのよ。
昨年の時もザイテンの上は雪の数cm下にはもう、ハイマツが埋まっていて何度もアイゼンの爪を引っ掛けそうになるし、ピッケルだってシャフトを深く突き刺せないから、よろけたりした時にスゲー怖いのね。昨年は先に上に上がっていたハッシーから色々と事前に情報をもらっていたけど、今回は実際に行ってみるまで何もわからない。気温も昨年より明らかに高いし、登りは良くても帰りは雪が融けてグズグズになってると思うのねん。
昨年だって復路は緩んだ雪がグズグズ過ぎて自分もザイテンから降りる時にちょびっと滑落しかけたし、自分らが登頂した翌日の早朝にはザイテンで滑落した人が死にましたからね(朝、下山しようとしたら県警のヘリが遺体回収に来ててさ。下山してからのニュースで後から知ったんだけどね)。涸沢岳は北穂高岳と比べたら相対的に易しいってだけで、絶対的には決して難易度が低い、ってわけじゃあないんだよ。どちらも滑落したら充分死んでしまうし、雪崩だってどっちも巻き込まれる可能性がある。
まあ、昨日は夕方、テラスで飲みながらアタック予定の自分・弟氏・O野さんの3人でそんな話をしてましてね。「いやいや、せっかくだから登頂しようぜ！」なんて話にはならず、「山歩でいいんじゃね？」と何となく合意したのでした。ザイテングラートの取付辺りまで登ったら、後は日照のあるうちにテラスでダラダラ飲もうぜ、って。と言うのも、昨日は14時過ぎから急に気温が下がって外で長居が出来なかったので。つまり荷揚げした生食材を一切、消費出来なかったので、本日はそれらを全て腹に収めてしまう必要があるのです。これは正直、登頂よりも優先度の高い項目っすわ。
さて、少し時間を巻き戻すよ。朝は5時に起床、朝食は5時半〜の1ターンのみ。7時にテラスの先に集合・出発なので、そんなにノンビリはしていられない。コンタクト入れたり日焼け止めヌリヌリしたりして、さあ、後はウンコしなきゃ！って時にタイミングが悪かったのか、トイレが大渋滞！そして今回は荷物整理にも手間取ってしまった。山歩だけなら手ぶらでも良いんだけど、万が一「ピークアタックするかも」って可能性を考えたら、やっぱりちゃんとザック背負って行くか、ってなって部屋を出る前にパッキングをし直したりしてね。
予定時刻を15分程オーバーしてテラスに出ると、一番外側のテーブルで待機していたHGさんが
「俺氏さん、弟氏もO野さんももう、先に行っちゃったよ！待ってられないってさ。Hりさんも何か自分のペースで歩きたい、って言って先に出て行っちゃったよ！」
と伝えられる。靴紐を締めてアルパインゲイターを装着したらHGさんの座っているテーブルに移動する。今回、HGさんは最初からずっとヒュッテのテラスからうちらの行動観察をする予定なのだ。双眼鏡ではなく、光学20倍ズームのコンデジを代わりに持参した模様。これでヒュッテのテラスからアタックする自分達3人と、別行動のHりさんを見守る手はずなのです。無線で会話しながらね。ちなみに今回、無線は予め内輪で決めておいたサブチャンネルを使用することにしており、HGさんからその周波数を確認する。
雪の上でアイゼンを装着したら、QSOの確認をして自分も歩き出す。どうせ単独行動だし、しばらく周囲を散策してみることにした。まずは幕営場の周辺を涸沢小屋方面に進んで行く。すると、昨日宿泊者の間でも話題になっていた「謎の僧侶(仮称)」が立っているのを発見！
本物の僧侶かどうかはわからないし、どこの国の人なのかもわからない。でも確かに昨日、喫煙所で一瞬見かけた通り、「ビルマの竪琴」に登場するようなタイとかミャンマーとかにいる仏教徒スタイルの人がいるじゃねえか！どうもテント泊のようだ。近づいてみると、ホントに布切れを身体に纏っているだけだよ、腕とか完全にノースリーブ状態。防寒とか全く考慮してないみたいだけど、大丈夫なのか？衣の色はオレンジではなく茶色っぽいので、もしかしたら僧侶じゃないのかも知れないけど、やはりどう見て東南アジア圏の仏教徒なビジュアルだよ。
ちなみに足回りはチェーンスパイクでした。2012年の初めての富士山で遭遇したサラリーマンスタイルの中国人にも驚いたけど、これもそれに引けを取らないぶっ飛び具合だよ。コスプレじゃないとは思うんだけど、会話したワケじゃないので詳細は結局の所、不明なんですがね。
360度、ぐるっと転回して一通り写真を撮ったら、ザイテングラートを目指して歩き出す。とは言っても、どこを歩いてもデブリの畝を乗り越えて行かないとダメっぽい。この畝が一つ一つが高さ数メートルはあるんだよね。人が乗っても崩れることのない固さ。雪というかこれってもう、氷でしょ！絶対に素手じゃ掘り起こせない。こんなのに飲み込まれて下敷きになったら、そりゃ死ぬわいな。雪崩、恐ろしいぜ！で、デブリを乗り越えて行くと3人組がアバランチゾンデとアバランチビーコンを使って捜索の訓練をしてました。えっと、訓練だよね？まさか本当に誰か行方不明者が埋まっていて、捜索中なんてことはないよね？うん、無いってことにする！
お花畑の台地に取り付くと、HGさんから無線が来た。
「俺氏さん、そこまさか直登するの？」
「え、ダメ？」
「いや、良いんだけど、O野さんたち3人はその台地を上がった上にいるよ、そこからじゃ見えないと思うけど」
「あ、そうなんですね。確かにここからじゃ何も見えないや」
「Hりさんも途中まで一緒だったみたいだけど、先に降り始めてるみたい」
「了解です。また何かあったら無線飛ばして〜」
うーん、無線。便利や。この界隈はスマホはauしか電波入らんからなあ。みんなキャリアはバラバラだし、最初から連絡は無線で行うのが楽で良いよ。カールは地形的に稜線に出るまではどこからもCQが入らないので、メインチャンネル使っても良いんだけど、まあそれはルール違反ってことで今回は最初からサブチャンネルを設定したんだよね。CQ入らないんだから、サブが混線することもないので、気軽に会話が出来ますもん。
台地の斜面はブッシュが顔を出している辺りから左斜め上、つまりあずき沢の方向にトラバースの踏み後が付いてる。直登すると斜度はともかくブッシュを潜ったり跨いだりしないといけないので、ここは素直に斜登高しますか、とトレースに入るとHりさんから無線が来た。
「俺氏さん、ちょっと降り方、教えて！」
「Hりさん、どこにいます？」
「俺氏さんの右上！涸沢小屋方面へトラバースするトレースにHりさん、いるよ！」
とすかさずHGさんから無線が。そうか、テラスから全体を観察して各メンバーの配置が俯瞰出来るからこそのこの芸当か。AWACSから情報と指示をもらう戦闘機パイロットみたいで面白いなあ。で、進行方向と逆方向、右上を見上げると、あ！いた！Hりさん発見！
「おーい、Hりさん！目視したよ〜！見えます？Hりさんから見て右下っす！」
「あー、ちょっとこれ、どうやって降りたら良いの？教えて〜！」
「今から行くので、ちょっと待ってて！」
「いや、口頭で言ってくれれば良いよ、わざわざこっち来なくても大丈夫！」
ところが全然大丈夫じゃない様子。台地の斜面にもたれかかるように座り込んだまま動かない。いや、正確には動いてるんだけど、立ち上がらずに座ったまま移動している。しかもピッケルの持ち方！両手でシャフトを握っちゃってるよ、ちょっと何やってんの？
「Hりさん、ピッケル！ケインポジションでちゃんとピッケル持って雪に差し込んで！」
ダメだ、何か知らんがパニックになってるみたいだぞ？しかもHりさんが降りようとしているトレースを、下から長野県警山岳救助隊のパトロール2名が登ってくるじゃねえか！このまま放置したら絶対、救助隊に声掛けられてお世話になってしまうぞ。リーダーとしてそれだけは避けなくては。幸いまだこの時間は雪がある程度の固さを維持しているので、急いでHりさんの元へ登って行くことにした。
ちょうど自分が到着するのと山岳救助隊のパトロールが到着するのが同じタイミングだった。さりげなくパトロールの2名に「ご苦労様で〜す！」と挨拶をする。Hりさんも引き攣った顔で挨拶をする。そのまま特に何もなく、パトロールの2名は台地の上に登って行ってしまった。
「Hりさん、どうしたの？大丈夫？」
「ダメ、ここ、どうやって降りるの？」
「え、立って歩いて降りれば良いと思いますが・・・」
「いや、怖くて立てないんだよ〜！」
「は？だってスキー場のゲレンデなら中級レベルの斜度ですよ。いつもスキー場じゃ普通に立ってるじゃん。何で？」
「とにかく怖いんだYO！」
「そしたらまずはピッケル、教えた通りにちゃんと持って！シャフトを雪に刺して！」
よろよろと立ち上がるが谷側にピッケルを構えてる。
「Hりさん、ピッケルは基本、山側に持って！谷側には刺さないで〜！」
するとまた座り込んでしまった。本人曰く、このままズルズルと座って降りるらしいので、後は本人に任せることにした。滑落するシチュエーションじゃないし、ここの台地を降りれば幕営場のデブリの所に出る。HGさんからも目視出来てるし、無線もあるので大丈夫だろう。もし北穂にアタックしていて、下りでインゼル近辺の雪壁でこうなったらそりゃあ確かに一大事だけど、ここならまずもって大丈夫。
ちなみに今朝、部屋で支度している時にHりさん、レインパンツ履かないでゲイターだけで出ようとして、流石にHGさんからも「レインパンツ履け」って言われて履いて出たんだけど、結果的には良かったよね。本人は立ち休憩しかしないから、座らないから、って言ってたけど、座って休憩どころか座って雪の上を降りることになりましたからね。なお、アイゼンの爪を引っ掛けてゲイターに穴を空けてしまったそうですぜ。
さて、堀さんを見送ったら自分も行動再開。当初の斜登高と反対方向に来てしまったので、ここから更に反対方向に再び斜登高で登って行く。程なくしてお花畑の台地の上に出ると、直ぐ先に先行の3人が休憩しているのが見えた。合流して集合時間に遅れた理由と今までの顛末を話し、自分もザックを下ろして休憩に入る。常念山脈の方を見ると、例年雪の少ない時期でも必ず冠雪している常念岳に全然、雪が無いYO！勿論、蝶ヶ岳への稜線も燕岳への稜線にも雪が無い。ホント年々、気温が上昇しているんだなあ、と実感する。
休憩を切り上げて活動再開。時刻はまだ9時前だ。いくらなんでも飲み始めるには早過ぎるよ。お花畑からザイテングラートの取付まではまだ少し距離があるので、もう少し登ってみることに。なお、装備を持参していない瑞YOさんはここまでとのこと。直ぐには引き返さず、ここでうちら3人が戻って来るのを待つとのこと。
O野さんが先行して登り始める。ザイテンの取付を超えると斜度が急になってきた。この辺りは40度弱、と言ったところかな？確実にピッケルが必要な斜度っす。獅子岩の下段部分が真横に見えるくらいの場所でO野さんの動きが止まった。弟氏と二人で追いつくと、
「もう今日はこの辺でいいんじゃないかな？さっさとヒュッテに降りてテラスでビール飲みたい！」
とO野さん。
「どうすんの？これでおしまい？上、行かない？」
と弟氏。うーん、時間的には全然、上行っても良いんだけど、昨年のことを思い出すに登頂するとなるとヒュッテに降りてくるのは早くても14時くらいになりそうだよ、この雪質だと。で、おそらく今日もそのくらいの時間帯から気温が下がるだろうし、下で待ってる2人にも直前での予定変更は申し訳ないから、ここは素直に降りる、で良いんじゃないだろうか？なお、無線でHりさんは無事、テラスのHGさんと合流したことを確認済み。
「そっか、じゃあ今回の山行ではここが最高到達地点だね。標高は約2600mか」
「だね、せっかくだからチームブラザーで記念撮影でもすっか」
「ブラザーチームと言えばバーティカル・リミットのベンチ兄弟じゃね？」
「あー、いたいた、目にキュウリのパックするやつね。あの兄弟、二人とも死んじゃうんだよねえ」
「縁起悪いこと言うなや！本当は登頂したら飲もうと思ってたんだけど、記念にここでちょびっとだけ！」
と、弟氏が年代物のホワイトホースを入れたピューターのフラスコを取り出す。ショットグラスにちょびっとだけ入れて、登頂してないけど二人で乾杯しました。なお、O野さんは休憩せずにトンボ返りで下山を始めてて、既に下で待ってる瑞YOさんと合流、更に下降を進めている。無線でHGさんに夫婦チームと兄弟チームに分かれて下山開始の旨を伝える。
10時過ぎ、涸沢ヒュッテに下山。お山歩(さんぽ)は3時間弱で終了。後は日照のある暖かい時間帯に外のテラスで酒盛り！いやー、一回やってみたかったんだよ、コレ！まあ、毎回やってはいるんだけど時間が短いからね。今回は日中、ほぼフルで使えますから。勿論、途中で各人、部屋に戻って昼寝したりデッキで昼寝したり、テン泊組は日照で雪が緩むのでテントは張り直しに幕営場に戻ったりと、色々と出入りはありましたが。
それにしても涸沢ヒュッテのテラスは快適だよね！酒もわざわざ担ぎ上げてこなくてもビールやハイボール、日本酒に焼酎、ワインも赤白それぞれカップでもボトルでも売ってるし。金で大抵のことが解決できる。そして雪の世界なので天然の氷室よ！ワインのボトルは雪の中に突っ込んでおけば天然のワインクーラーですから、時間が経っても冷たいまま飲めるのです。
午後は前日と同じくらいの時間帯になると、やっぱり飛騨側から雲がやってきて急に気温が低下する。風も昨日より強いかも。適当なところでお開きとし、明日は時間が合えば一緒に下山しよう、ということでテン泊組とわかれ、小屋泊組の自分達3人は部屋へと戻りました。荷物整理をしたら前日と同じ時間から夕食。今日は流石に混雑していて、食事は2ターンに分かれてました。夕食後は肉体的疲労は殆どないけど、ずっと昼前から飲んでたので酔っ払って身体が怠いので、そのまま寝てしまいました。
◆3日目【活動時間/7:10、行動時間/5:10】
5:00/起床⇒5:30/朝食⇒7:10/涸沢ヒュッテ(標高2309m)をチェック
アウト⇒7:15/下山開始⇒Sガレの涸沢寄り地点で小休止5分⇒8:45/
本谷橋(ここで9:20までアイゼン脱着とウェアリング調整のため大休
止)⇒10:05/岩小屋跡を通過⇒10:25/横尾(標高1620m/ここで10:50まで
中休憩)⇒梓川右岸の臨時の迂回路へ⇒11:45/徳沢(標高1562m/ここで
12:25までお昼休憩)⇒13:15/明神(ここで13:30まで小休止)⇒14:25/
上高地バスターミナル(標高1505m)へ帰還⇒タクシーで沢渡駐車場へ
【復路】
おはようございます。涸沢カール逗留3日目、今日は下山の日。朝食は昨日の夕食と同じく2ターンに分かれます。自分らは最初のターンでした。Hりさんが「今日の下山は自分はきっと横尾まで8時間はかかりますよ。だから早く出発しましょう！」と言うのでいつもより気持ち、早めに準備をして7時過ぎには涸沢ヒュッテをチェックアウト。アイゼンを装着したら幕営場へ移動してテン泊組と合流する。
「自分、もう出発していいですか？絶対時間かかるし、みんなに迷惑かけるといけないので」
とHりさん。
「え？ダメですよ。そんな不安な状態で単独行動しちゃダメでしょ？何かあったらどうすんの？」
「横尾まで8時間もかかるわけないでしょ、下りの方が絶対早いから！ピッケル不要な斜度の下りで何言ってるんですか？」
とHGさん。
取り合えず全員で集合写真だけ取ったら、早く動きたくて仕方ないHりさんも居るので、小屋泊組は先に下山を開始することにした。この後、多分、本谷橋辺りでまたテン泊組には追い越されるんだろうなあ。挨拶を済ませて下山を開始する。懸念のHりさんは全然問題無し！サクサクと歩いてるじゃねえか、昨日の行動が嘘みたいだよ！
「いやー、気持ちいいね！マジで気持ちいい！雪は楽しいな〜！」
「でしょ？一体何をそんなに深刻になってたんですか？」
とにかく良かった。要は慣れの問題よ。慣れちゃえばこんなもん。ただ、復路は流石にGW真っ只中ですからね。登って来る人達とのすれ違い待ち渋滞が凄くて、それなりに時間を取られました。それでも9時前には本谷橋まで降りて来て、ここでアイゼンを外して川の水で泥を洗い流してから収納、ゲイターも外して夏山スタイルに。横尾で中休憩を入れたら徳澤でお昼ご飯。14時半には無事、上高地バスターミナルに戻って来ました。
が、上高地がスンゲー人！人！人！過去に見た中で最高の混雑具合でしたよ。なにせバスの乗車待ちの列が河童橋の方まで続いてるんだもん。タクシー待ちの列も物凄い！重たいザックを背負ったまま40分以上、並びました。いやいや、第一候補の日程で動いて大正解でしたよ。第二候補の日程だと、往路も多分、こんな感じの混雑だったかと予想します。
タクシーで沢渡に移動したら、車を回収して一路、塩尻の信州健康ランドへ。風呂⇒ビール⇒焼肉⇒居酒屋⇒風呂⇒寝る、といつもルーチンをそつなくこなし、翌朝はこれまたいつも通り、6時にチェックアウトして帰路へ。途中、談合坂SAで朝食を摂り、午前中には全員、帰宅出来ました。
なお、テン泊チームはSガレ近辺で追い越され、その後一度も遭遇することはありませんでした。テン泊チームは信濃大町の方に宿を取っていたようで、そこでもう一泊してから帰ったようです。
【まとめ】
まずは今回の山行期間中、該当エリアで死亡事故がゼロだったのは良かったです。昨年は3件発生して3人、死亡してますからね(1件は1名死亡、1件は2名死亡の1名重傷、1件は1名重傷、って内訳)。ちなみに死亡事故が起きなかったってだけで、普通に事故は起きてます。自分らのいた期間だと前穂で1件、奥穂で1件ね。どちらも重傷で済んで、無事、ヘリで救助されます(復路の横尾街道で前穂の北尾根上空を長野県警のヘリがずっとホバリングしてたんですが、それがまさにこの事故だったと後で知りました)。
あと今回思ったのは来年のGWのこの時期はもう、登れないんじゃないか？ってこと。残雪期なのに厳冬期並みの積雪量がお目当てでこの界隈に毎年通ってますが、2018年から定点観測を続けて毎年、残雪量が減ってきているのは明らかですよ。本来の意味である残雪期登山、北穂高岳にしろ涸沢岳にしろ、雪岩ミックスのコンディションでは危険過ぎて登りたくないですもん。
このイベントは一人でも「登頂したい！」って人がいれば企画するので、来年もし、Hりさんが「自分もどっちかのピークに登頂してみたい！」と言い出さない限り、次は別の場所に行こうかな、って思ってます。現状、候補としては唐松岳です。八方尾根ルートでピストンね。後立山連峰なら同じ北アルプスでも南部エリアよりはもう少し、雪が残ってるんじゃね？って単純な考えなんですけどね。
それと、上までリフトで上がれるので、初日を移動だけにしてリフトで上に上がって八方池山荘で前泊。翌日、早朝から唐松岳をピストンしてその日に下山してもう一泊、というプランなら2泊3日でかなりコンパクトに出来るんじゃないかな、って。
まあ、来年は来年の風が吹く、ってことで。
■写真解説
�±疎凜�ール逗留2日目は午前中、ちょびっとお山歩したら昼前からヒュッテのテラスで飲み散らかしの食い散らかし！天気も良くて暖かくて、絶景を見ながら飲むビールは最高でした！
�▲競ぅ謄鵐哀蕁璽箸亮茲衂佞�辺りから涸沢ヒュッテ方面を見下ろす。常念岳に全く雪が無いのに驚きましたよ。年々気温が上昇してどんどん雪が少なくなっていってるねえ。
��上高地に下山！美しい梓川と穂高連峰の雄姿！何度見ても飽きない景色よ。しっかし、岳沢も全然雪が無いじゃねーか！
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